リーリエロスでカントー行ったよ 作:バケットモンスター、縮めてバケモン
アクジキング。
目に映すもの全てを喰らい尽くす、この世のポケモンではない何か……つまりウルトラビースト。
フンなどが見られないことから、食べたものの100%をエネルギーに変換していると考えられている……だったか。
つまり、あの舌に喰われれば即死。
「ドカグイィィィイイイ!」
「っ!!」
俺めがけて伸びてくる触手。咄嗟に走り出した俺の横を黒い影が通り過ぎて行った。
ちくしょう、いくらスピード特化の回避盾イーブイでも、一撃で死ぬ状況じゃ分が悪い。そう簡単にポケモンを出すわけにも……。
「モ゛ァァァアアア!」
「うおっ!? カビゴン!?」
上から……俺が落下してきた穴をぶち破り、カビゴンが落下してきた。
着地の振動ですっ転ぶ俺。いてえ。
「モ゛ァ!」
「ガガッ!?!?!?」
カビゴン右ストレートがアクジキングに突き刺さる。
デカイというのはそれだけで強い……とはよく聞くけど、まさかこれほどまでとは。
「モ゛ァァァアアア!」
「ドカグイィィィイイイ!」
「怪獣大決戦みてえだ……」
実際、巨大カビゴンはアクジキングと接戦を繰り広げている。
胃に入ってしまえば一貫の終わりだが、このカビゴンのように丸呑みができないほど大きなものは飲み込めないんだろ。
岩とかも砕いてから食べてたしな。
「とにかく、今のうちにモモンの実を……」
降り注ぐ石や岩を掻い潜り、木の幹に足をかける。
そのまま力を入れてジャンプ。上の方を掴んで身体を持ち上げる。めちゃくちゃ厳しいけどリーリエの笑顔さえあればどうとでもなるもんね。
それで、件のモモンの実は……っと。
よし、よし、手が届きそうだ。
………………。
取った!
「ドカグイィィィイイイ!」
「モ゛アアア!?」
「おぉっ、わっ、っとと!?」
カビゴンが洞窟の壁に激突する。
「……グゥ……」
「カビゴン!? カビゴン!!」
気を失っている!? あのカビゴンがやられた!?
「ガアア!」
「うわっ」
無様にも落下した俺。
見ると、アクジキングの舌が木を掴んでいる。
根っこごとみしみしと宙に浮き上がり、地面から離れたと思うとすぐさまアクジキングの口の中へ放り込まれていった。
まさか、木ごと行くなんて。
「いって!?」
なんとか受け身は受けれたけど……あれ?
「……どこいった?」
モモンの実は!?!?!?
ッ、あった、あんなところに!
と、起き上がろうとしたその時、俺はあることに気がついた。
アクジキングが、地面に転がった金色のきのみを見ている。
先ほどのきのみに味をしめたのだろうか。
……いやまて。木はすでにアクジキングの口の中。
「……やめろ……」
もう、稲色のモモンの実は手に入らない。
つまり、もしアレが本当にウツロイドの毒に効くものだったなら?
ルザミーネは……。
「それだけは……やめろ……」
動け、身体。
言うことを聞くんだ。
「ドカグイィィィイイイ!」
「……やめろおおおおおおお!!!!」
ッ、やるしか無いか!
ポケットにあるモンスターボールを、アクジキングの舌めがけてぶん投げる。
確率でゲットできれば、なんとか回避はできる!
───カンッ
「……え? なんで?」
そうして俺の目の前のモモンの実は、無惨にも黒い触手に呑まれて消えた。
「…………」
「ガガ……!」
「…………ぇ……」
「…………?」
「お前ェッ!!!!!!!!!」
その瞬間、俺はアクジキングに向かって走り出していた。
何か有効打があるわけじゃない。けど。……けど!
一発殴らないと気が済まない!
「ドカグイ!」
「───ッ」
上から舌が伸びてくる。
でもいい。腹の中から食い破ってやる。
リーリエの笑顔のない世界に意味はない!
死んでも、刺し違えても! コイツを!!!!
「───ぇぼ!」
「っ」
ゴッ。
イーブイに体当たりをされ、俺の身体が少し止まった。
そのおかげか、舌は俺の目の前の岩を穿ち、衝撃波だけで俺たちは吹き飛んだ。
地面を数回跳ね、カビゴンのやわらかい腹にぶよんとぶつかる。
衝撃は吸収されてる。折れてそうなくらい痛いところは無い。
「えぼぼ!」
「…………」
「えぼぼいぼ!!!! へぽぉい!」
「……はは。そうか、へぽぉいね」
何言ってるか全然わからん。
でも、まあ……そうだよなぁ。
俺にゲットされる対価の「きのみ食べ放題」、まだ払ってないもんな。
ありがとう。冷静になった。
「……カビゴン。起きろよ」
「…………」「えぼぼ……」
「お前あれだろ? あの木をずっと守ってたけど、アクジキングにやられて追い出されたんだろ?」
いわゆる、ココのヌシと言ったところか。
……縄張りを荒らされたままじゃ、悔しいよな。
「起きろよ」
「………………」
「はあ。仕方ねえ」
俺はカバンから取り出したものを咥える。
……ピィィィイイイ!
「モ゛アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!」
「カビゴン! 『10まんばりき』!」
「───ッ!!!!!!」
ズゴオオオオオン!
大きく揺れるアクジキングの身体。
「『ヘビーボンバー』!!」
そうだ。カビゴンの技は、俺がこの身に受けたもの!
手に取るようにわかるぜ、お前の気持ち! やりたいこと! できること!
これがポケモンとのシンクロ……!!!!
「『ギガインパクト』!!」
「モ゛アアアアアア!!!!!!!」
「ド……グゥ……!?」
負けじとアクジキングが舌を伸ばす。
カビゴンはギガインパクトの反動で動けない。
だけど、それで負けるお前じゃないだろ!?
「耐えろ!!」
「モ゛ッッッ……ガァ!」
「そのまま舌を掴むんだ!!!!」
「ガッ!? ドゥッ、ガッガッ!? グガ!?」
「『とっておき』!!!!」
「グオオオオオオオ!?」
背負い投げの要領でカビゴンがアクジキングを持ち上げる!
ひっくり返った逆さまの状態のアクジキング。これじゃあ持ち直すのも難しいだろ!
「行くぜカビゴン! 次で決めるぞ!」
「モ゛アアア!」
「これが俺たちの、全力……いや、
「オ゛オ゛オ゛オ゛!!」
「カビゴンッ!! 『ほんきをだすこうげき』ッ!!」
「モ゛ァァァアアア!!!!!!」
───ッ
ズガアアアアアアアン! という爆音とともに、アクジキングはパンケーキになった。
「終わったんだ……」
生きてる。
生きてる……!
「モ゛ッ」
「ありがとう、カビゴン。お前のおかげで助かったよ」
「モ゛」
「…………?」
カビゴンがご自慢の体毛を指差した。
なんだろう。手を突っ込めってことだろうか。
もっさあ。わあふかふか! いい枕が作れそうだね!
……じゃなくて。
「…………え」
俺の手が掴んだのは、モモンの実だった。
それも、金色に光り輝いている。
「稲色のモモンの実……?」
「モア」
「……良いのか……!?」
「もっ」
「〜〜〜ッ、ありがとう!!!!」
もっふう。
「ごめんな……あの木を守れなくて……」
「…………」
「お前のご飯だったんだよな……?」
「……も゛」
「この償いは、するから……!!」
これで、ルザミーネさんが永遠に治らないという最悪の結末は無くなった。
まだ効くかどうかもわかってないけど、このカビゴンに救われた。
「おーい! 大丈夫か!?」
「…………あ」
ポケモンレンジャーだ。ちゃんと治療を受けて、こちらに手を振っている。間に合ったんだ……良かった……!
「クロウさん!!」
「げっ、リーリエ……」
「一人で行くなんて絶対にしないでください! 今からロープを降ろしますから!! 後で話したいことがたくさんあります!!」
怒ってるリーリエもかわいいな。
「聞いてるんですか!? 私、怒ってるんですよ!!」
「大丈夫大丈夫生きてるから」
「もう!」
リーリエがロープをこちらに垂らす。は? 蜘蛛の糸? 天女か何かか?
いやあ、あの位置からでもその美貌は衰えることないですね。暗い洞窟が輝いて見えるぜ。
「……じゃあ、カビゴン。またな」
ロープを掴み、くいくいと引っ張る。そうした瞬間、俺の身体がゆっくりと浮かび上がった。ポケモンレンジャーさんとリーリエだけの力じゃ絶対無理だな。何人後ろにいるんだこれ。
そして小さくなっていく、カビゴンとアクジキングの姿。
……アクジキング……。
『───カンッ』
『え? なんで?』
ウルトラビーストでも、モンスターボールに収納することはできたはずだ。その確率が極端に低いだけで。
それが、簡単に……ボールに入る前に弾かれるなんて、一体どう言うことだ?
俺の知る限り、ポケモンがモンスターボールに入らない例なんて……。
「既に誰かにゲットされている……ってこと……?」
じゃあ、あのアクジキングをここに放った奴がいるってことになる。
近くにトレーナーがいた気配はない。もしいたとしても、指示の声などが聞こえなかった。
……じゃあ……意図的に、放ったってことに……。
「クロウさん?」
「ん? あぁ、リーリエ。さっきぶり」
「さっきぶり、ではありません! どうして病気の身体で危険な場所に行くんですか! 自分の身体のことを気にしてください!」
「わかった、わかったから落ち着いて……」
気づけば穴から引き上げられ、俺の周りをたくさんの大人が囲んでいた。
ポケモンレンジャーはもちろん、ジュンサーさんやジョーイさんもいるし、他にもポケモントレーナーらしき姿がたくさん。
「大丈夫かキミ!?」
「怪我はない!? だいぶ高いところから落ちたようだけど……」
「リーリエ、これは一体」
「ポケモンレンジャーさんと先ほど会いまして……。いろんな人に呼びかけて、協力してもらったんです。もう夜中ですよ」
「まじ?」
洞窟にいたから全然気づかなかった。お昼前に家を出たっていうのに。
というかこの人数を引き連れて捜索願い出すリーリエさん聡明すぎない? 来世は知将かな。
と、俺の無事を確認して良かった良かったとポケモントレーナーが解散していく中。
「…………リーリエの言う通りだ……」
「えっ」
「……? どうしましたか、クロウさん?」
振り返り、声の主を探すも見失ってしまう。
リーリエ? 今リーリエって言ったか?
思い出せ。雑音の中、あの声はなんて言っていた?
リーリエが関係するのなら、俺はなんでもできる……! 思い出せ……!
『アクジキングがやられた……回収がめんどくさいね……』
『まさかこんなところにいるとは』
『───リーリエの言う通りだ……』
ウルトラビーストの……トレーナーがいる?
待てよ待てよ。こんな奴放置しておいて良いわけない。いつリーリエに危害を加えるかわからんぞ。
と言うか、リーリエの言う通り? 知り合いがこのあたりにいるのか?
「……クロウさん?」
「……………………」
「な、なんですか、何かついていますか……? あっ、泥ですか? 確かにいろんなところを探しましたが、別にこれは大したものではないので……」
リーリエが……何かを隠しているようには……見えないけど……。
◇
ザ───ザザ───
「うん。やっぱりリーリエの言う通りだった。あそこに偽物はいたよ」
───ザザ───?
「大丈夫だって。でも黄金のきのみの木をアクジキングが食べちゃったのは後でお仕置きかな。簡単に強くなれるから楽だったのに」
───ザザザ───ザ───
「うん。すぐに偽物を倒して見せるよ、リーリエ」
「……ふぉんふぉん」
「さぁ、今のは聞いていたでしょ? すぐに偽物を倒しにいくんだ、テッカグヤ」