リーリエロスでカントー行ったよ 作:バケットモンスター、縮めてバケモン
「黒色のメテノ!?!?!?」
「──────!」
「かげっ!」
ふふんと胸を張るヒトカゲが連れてきたのは紛れもない色違いのメテノ。
大声を出した俺にビビり、ヒトカゲの影に隠れてしまっている。ダジャレではなく。
「な、なあ君……ほしのかけらって持ってないか?」
「───」
「持ってたら俺たちにくれないか? それを必要とする人がいるんだ」
「……───!」
メテノは何かを考えるそぶりを見せた後、自身が纏っていたであろう殻から、サイコキネシスのようなパワーでそれを持ち上げた。
薄赤い色味で、サイズにして俺の目ほどの大きさのそれは、まさしくほしのかけら。
「そっ、それくれないか!?」
「───ッ!?」
えへ、えへへ……。もしもこれでルザミーネが完全に治ったらハッピーエンドだぞぉ……。
そしたらリーリエに惚れられたりして……。
「ぐへへへへ……」
「───!!」
「かげ!?」
「あっ逃げた!? 待ってくれ、何もしないからー!」
俺の邪な気持ちが溢れてたのか!?
と、とにかく追わないと!
メテノは……森の方へ逃げたな。
その前にまずは、報告を!
みさきのこやのドアを開け、部屋に入ってすぐのところにあるカバンを掴んで中にむしよけスプレーがあることを確認する。
「黒メテノが出た! ほしのかけらも持ってたけど逃げちゃったから追ってきます!」
「えぇ!? 待ってくださいクロウさんっ、あっ、火が……!」
「ごめん!」
「クロウくん行ってらっしゃ〜い」
あの博士はいつかしばく。もっと興味関心を持てや。
「ヒトカゲ、ゼニガメ、戻れ! ケンタロス、もう一踏ん張りだから頼まれてくれないか!?」
「ぶもう……!」
「サンキュー、助かるよ! イーブイ、いくぞ!」
「えぼ!」
ケンタロスに跨り、イーブイが俺の膝の間に座る。
あなぬけのひもを加工したリーリエお手製の手綱をケンタロスに噛ませ、周囲の安全確認ヨシ!
「GO!」
「ぶもおおお!」
土を蹴りケンタロスが走り出す。
ヒトカゲの尻尾の炎が森の奥で小さな灯りになっている。目指すはあそこ。
この森はゲンガーのいた森……。さすがに今は苦戦しないだろうけど、急に出てくるとビビるんだよな。
……待てよ? リーリエは後から追ってくるのか? 俺を? 徒歩で? 森の中を!?
ぜっっっっっったいダメ!
「ケンタロス、目的地に着いたらすぐに戻ってリーリエの護衛をするんだ」
「ぶも!?」
「辛いだろうけどしょうがないだろ、リーリエが傷ついても良いのか」
「ぶも……」
「てかお前リーリエに乗られるとかご褒美じゃんなに渋ってんの???」
息を切らしながらケンタロスが走る。
ここ最近ライドポケモンとしか使ってない気がする。バトルでケンタロスを使うのって難しいからなぁ……。やっぱり小柄なイーブイやヒトカゲの方が重宝するイメージだ。
まあ、ケンタロスは最大火力を担当してるし、いつか活躍の日も来るだろう。
枝葉を掻き分けそんなことを思っていると、やがてヒトカゲの火が近くなって来た。
躍り出たのは、森の中の小さな広場。ここだけ木々が薙ぎ倒されていて、地面が露出している。
ポケモンバトルの跡……なのか? まるでヘリのような大きい何かが頻繁にここに着陸してるような感じだけど……重量級ポケモンって言ったらカビゴンしかなくねえ?
「っと、そんなことよりメテノだ。ケンタロス、リーリエの元にダッシュ」
「ぶも……!?」
「ダッシュ!」
「んも゛う」
ケンタロスが踵を返し戻っていくのを確認し、俺はヒトカゲに近寄る。
怯えるメテノに何かを語りかけているようだ。
「───!」
「かげ! かげ……げ?」
「───? ───! ───」
「かげぇ……」
全くわからん。人語で話してくれ。いややっぱ怖いからポケモン語でいいや。
「かげ……」
「──────」
おや。
落ち込んだヒトカゲに寄り添うように、メテノがぴたっとくっついた。
おおかた、励ましきれなくて落ち込んだヒトカゲを可哀想に思ったんだろう。
そして次に、メテノは俺をみる。
「……どうした?」
今度はしゃがんで、視線を合わせて。
「───」
メテノはなんらかの力で浮かび上がったほしのかけらを俺に近づける。
……くれるんだろうか。
「──────」
そっと触れようと手を伸ばす。
メテノの背後で、一際大きく輝く流れ星。
すっげー……綺麗……。
…………ん?
あの流れ星、どんどん大きくなってないか……?
「やっと追いつきました! クロウさん、なんで先に行っちゃうんですか」
「こっちに来るな!!!!」
伸ばした手でメテノとヒトカゲを掴む。
そして思い切りリーリエにぶん投げた。
瞬間、地面を揺らすほどの衝撃が俺を直撃し、投げた直後の体勢のためバランスを崩した俺は吹き飛ばされた。
……このままだと死ぬ。
直感的に理解する。小さく丸まり威力を逃す。幸運にも近くの木にぶつかったおかげで、犠牲は背中だけで済んだらしい。
リーリエは!? ……無事か。ヒトカゲとメテノも大丈夫。
いますぐ助けに行きたいけど、全身に力が入らない。背中を強く打ったからか、身体中がビリビリと痺れて呼吸もままならないのだ。
「ぇぼ…………ぼ……」
「ッ、イーブイ……!」
逃げ遅れたイーブイがよろけながら立ち上がる。
そのイーブイを、大きな影が覆った。
「『でんこうせっか』!」「えぼ!」
カビゴンを凌駕するドデカい図体。アクジキングよりも重たい鋼の体。
───ガンッ
「ぼぇッ!?!?!?」
「イーブイ!!!!」
イーブイを軽く跳ね除け、こちらをギロリと睨むそいつは。
「……テッカグヤ……!」
ウルトラビースト、テッカグヤにほかならない。
放出された熱が、離れている俺の元にも届く。血液が沸騰しそうだ。
「ゼニガメ……! リーリエのとこにいけ……! 『みずでっぽう』で少しでも熱から守れ……ッ」
「がめッ!!!!!!」
自分でも弱々しいと思えるスピードで投げられたボールからゼニガメが飛び出す。
森が……森が燃える……!
「がめがー!」
「ゼニガメちゃん……クロウさんは!?」
「がめー!!!!!」「ぶもうっ!」
「あっ、ちょっと待ってくださいケンタロっっっ、まだクロウさんが!」
「かげかげかげ!」
「───!!」
いい判断だポケモン共。
絶対にリーリエだけは護れ。
「えぼ……ぼい」
「二人だけになっちまったな、イーブイ」
一人は背中の負傷のため全身が麻痺して動かない。
一匹は圧倒的なレベル差で殴られ気絶寸前。
テッカグヤに対し、できることは何もない。
「それでも、時間を稼ごう」
「……えぼ!」
「『シャドーボール』!」
直撃した部分から煙があがる。
これで仕留められるとは思ってねえよ!
「もう一度『シャドーボール』!」
「ッぼぃ!」
「続けて『でんこうせっか』!」
ズシン、とテッカグヤの状態が揺れるのを確認してイーブイが走り出す。
テッカグヤはようやく脅威と認めたのか、イーブイに大してその腕を構えて……。
「右に避けろッ!」
「ぇアッ!!」
「イーブイ!」
直撃は避けたが、あのでかい図体で地面を打ち付けたら当然その分衝撃が生まれる。
シャドーボールが比にならないほどの威力。イーブイの小さな体は埃が飛ばされるかのように宙を舞う。
「えぼッ!」
「……っ、『シャドーボール』!」
頭上から聞こえた声に思わず指示をする。
飛ばされた空中で体勢を整えたのか。さすが。
遥か上から落ちて来た毛玉が俺の隣に着地する。
その目はまだ、戦えると訴えているようだった。
お互いに全身擦り傷だらけ。熱で開いた傷口から血と汗が混じってズキズキと痛む。
油断したら、意識など一瞬で落ちてしまう。
動け、俺の体。
ふらふらと立ち上がり、イーブイの横に立つ。
「最近こんなことばっかだなぁ」
「……えぼぼ」
「わかってるよ。俺一人で無茶はしない」
アクジキングに突っかかろうとした時、コイツは止めて来た。
それは多分、俺の身を案じてじゃない。
「無茶をするなら、一緒に」
「えぼ」
「死ぬなら、一緒に」
「えぼ!」
「悪いな、相棒」
「………………。えぼ」
俺はポケモンと戦えない。
お前はどこから攻撃が来るのかわからない。
「俺の命、お前に預ける!」
「えぼ!!!!」
今ならできる。
何故かはわからないけど、できる。
これが、ポケモンとのシンクロ。
「行くぜイーブイ! 俺たちのゼンリョクのZワザ……!」
「ぼぉぉぉお゛お゛お゛!!!!」
「イーブイッ!! 『ナインエボルブースト』ッ!!」
イーブイの体から溢れ出るオーラが、色とりどりに輝く。
バチバチと弾ける力が四肢を駆け巡り、俺に立つためのエネルギーをくれる。
「……でんこうせっか!」「ブイッ!」
「シャドーボールを撒き散らせ!」「イッ、ブイ……ッ!」
「たいあたり! でんこうせっか!」「ブブイッ!!!!」
消えたイーブイがテッカグヤの足元に現れる。
瞬間、大量のシャドーボールが空中を彷徨い、その一つに体当たりをした途端に全てのシャドーボールが連鎖して爆発する。
当の本人は巻き込まれる前に俺の元へ戻ってきた。
今、こいつが何を考えているのか手に取るようにわかる。
そうだ。こいつを通して見える。今まさに、俺たちにテッカグヤの腕が迫って来ていることも。
「「ッッッ!」」
お互い違う方向に避け、テッカグヤの腕越しに視線を交換する。
今度は吹き飛ばされない。もう後ろには退かない。
それが俺たちの覚悟。揺るぎない、戦うと言う意思。
「スピードスター!」
「ブイ!」
使ったことない技だって使える。
今まさに、俺たちのレベルが上がっていく!
たいあたりを忘れて、スピードスターを覚えたように……できること、あるよな!
「なきごえ……いや、まねっこ!!!!」
「ブブイ!」
「ゼンリョクの『うちおとす』!」
イーブイがぶるりと震えると、あたりの瓦礫が浮遊しテッカグヤに向かって飛んでいく。
テッカグヤはそれを、腕から出る光線で焼き払った。
「それ、貰ったぜ! まねっこ!」
「ブイ!」
「ゼンリョクの『ラスターカノン』!!」
本来覚えるはずのない技だって、イーブイだったらできるんだ。
テッカグヤに、もう勝機は無い!
「……ははっ、見ろよイーブイ。あいつ、なんか溜めてやがる」
「えぼぼい」
「多分なんかすっげー技だ。ソーラービームとかラスターカノンとか?」
「えぼぼ?」
「まあその通りだ。勝てるよ」
テッカグヤが、溜めに溜めた何かを放とうとする。
それを見逃す俺らじゃないんだ。
「まねっこだ」
「えぼ!」
「ゼンリョクのぉぉぉ……!」
「えぼぼぼぼ……!」
「「
光線同士がぶつかり合い、火花が生まれる。
イーブイが後ずさるのと一緒に、同調している俺の足も後ろへ下がる。
押されてる……! 俺たちが……!
「お゛ら゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」
「え゛ほ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!!」
ボッ、という音と共に、打ち勝ったはかいこうせんがテッカグヤを穿つ。
巨大が大きく揺れ、テッカグヤの腕の光───おそらくガスの光───が消える。
俯いていることから察するに、気絶か何かなんだろう。
「ハァッ、ハァッ、ハァッ……」
「ひゅ……ひゅ……えぼ……」
もう動けない。
ゼンリョクを出し切った俺たちははかいこうせんを放った体勢のまま息を吐いていた。
自分より遥か格上相手との戦いをした上で、限界を引き出すポケモンとの
体への負担はお察しだろう。死にそう。
せめて……せめてモンスターボールチャレンジだけでも……。
今回はちゃんとモンスターボールを大量に持って来ている。メテノ捕獲用に50個。
それでもウルトラビーストを捕まえるのは至難の業だろうけど、今ここでこいつが復活したらカントーは終わりだ。
「ウルトラビースト……強すぎ……」
ゲームでは簡単にコテンパンにしていたけど、実際に戦うとこんなに命懸けだったとは。
ガチで死ぬ可能性のあるアクジキングは例外で、ウルトラビーストとの戦闘はそこまで苦戦するものじゃないと思ってた。
「頼んだぞ……モンスターボール……」
震える手で、テッカグヤにボールを転がす。
どうせ捕まえられないだろうから、と次のボールを膨らませようとしていると……。
───キンッ───
金属音が響いた。
「え……?」
視線をカバンから上げる。
思えば先ほどの金属音もゲットができた後ではなかった。では件のモンスターボールはというと。
「…………?」
切れていた。いや、斬れていた。
真ん中から真っ二つに、まるでそれがあるべき姿だったかのような違和感のない綺麗で異質な切れ方をしていた。
───キンキンキンッ───
先ほどの同じ金属音が3回響く。
その瞬間に、地面が落下した。
俺とイーブイを囲むように、四角形に地面がくり抜かれて崩落していったのだ。
今にも倒れそうな体で受け身など取れるはずもなく、俺とイーブイは瓦礫と共に倒れる。
何事かと霞む視界に映るのは、小さくも雄々しく気高いとプレイヤー間で名高い影。
「ウソ……だろ……?」
ウルトラビースト『SLASH』……カミツルギがそこにいた。
続きます
ポケモンの世界での流血・骨折・命に関わる大怪我はあり? なし? (リーリエには何があっても怪我を負わせません。)
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あり
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なし
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ある程度ぼかしてくれるなら良し
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人間同士の争いなら良し(殴り合い等)
-
ポケモンの技による事故等の被害でなら良し
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対ウルトラビースト戦でのみ良し
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主人公のみ怪我・骨折して良し