リーリエロスでカントー行ったよ 作:バケットモンスター、縮めてバケモン
カミツルギ。
鉄塔をも一撃で両断できる、折り紙のような見た目をしたウルトラビースト。
イーブイとどっこいどっこいな体躯に似合わない攻撃力と凶暴性を秘めており、少しでも刺激してしまったらその瞬間に真っ二つになっていることだろう。
……あいにく、今の俺たちには攻撃するどころか抵抗する力さえも残っていないが。
そう、手出しさえしなければ、カミツルギは温厚なはずなのだ。
「テッカグヤを助けに来たってことなのか……? もう俺たちを敵と判断してるのか……?」
表情は読めない。
ただそこに浮遊し、こちらをじっと見つめている。
「こっちに敵対の意思はないぞぉ〜……むしろ助けてくれ〜……」
「…………」
無駄か。
モンスターボールを斬ったのがカミツルギならば、つまりそれはテッカグヤにボールが当たるのを阻止したということだ。
であれば、敵じゃないにしても味方というわけじゃない。
「どうしたもんかなぁ」
と力無く呟くと、どこからか聞こえる音色に気づいた。
───フォォォ……───
といった、笛の音色。
それに気づいたカミツルギが音のする方を向く。同時に、気絶していたテッカグヤが意識を取り戻し浮遊した。
「熱ッ、あっつっ、アチチ……」
やがてカミツルギとテッカグヤは月へ向かって飛び立っていった。
軽いやけどを負いながらその姿を眺めていると、俺が落ちている穴を覗く影が一人。
リーリエ……じゃない。フードを被った人物だ。リーリエなら注視すれば気配と香りと雰囲気でわかる。リーリエかそれ以外かの判断なら容易い。
「アンタ……誰だ?」
「答える義務はない」
「あの笛の音はアンタが? どういう理屈でウルトラビーストを?」
「答える義務はない」
あからさまに怪しいじゃないか。
「イーブイ……動けるか……」
「え……ぶぉ……いぃ……」
「無理だよ。Zワザを無理やり使ったんだろ? このイーブイは『とっておき』を覚えてないじゃないか。……むしろ良くナインエボルブーストを扱えたね」
「無茶には定評があってね」
こうしている間にも腕がちぎれそうだ。
テッカグヤの飛翔のおかげで全身に軽い火傷を負っているし、息も絶え絶え。
自己診断だけど生きてるのが奇跡だ。
「そのしぶとさもここまでだけど」
「俺を殺す気?」
「まあね。君は邪魔なんだ」
なんだってんだよチクショウ(´;ω;`)
一難さってまた一難。泣きっ面に蜂。ゴミ溜めにベトベター。
このまま放置でもしていれば死にそうなものを、なんでコイツはトドメ刺そうとしてんだよプロの暗殺者か。
ま、俺がこんな死にそうな時にも呑気なのは理由があるんだけどね。
「クロウさーん!」
言ったろ。リーリエだけは気配と香りと雰囲気でわかるって。
森が歓迎してるんだよ。リーリエという存在を。火事になりつつも、リーリエというエルフよりも尊い存在を守るためだけに木々同士が力を振り絞り火を抑えようとしているのさ。
貴様にはわからないだろうがな!!!!
「……リーリエ?」
おや。ご存知?
「クロウさんっ、どこですか!?」
「……ッチ……偽物は殺さなきゃ……でも……」
「……誰ですか……? ウルトラビーストもいなくなってる……?」
「やっぱり邪魔だ……!」
リーリエを知っていると思われる人物は、その声の方を向き呪詛にも近い小さな声で呟く。
その後、懐からモンスターボールを取り出し、リーリエの声のする方法に投げた。
「かげっ!」
「ヒトカゲ……ちゃん?」
「かげ……ざーッ……ド……ッ!」
あ!? 何!? 何が起こってんの!? 見えない!!
なんでリーリエの声のする方から光が放たれてるの!? なに!? ヒトカゲがなんかした!? ごめんリーリエヒトカゲの不始末は俺が!
「リザーッ……ドッ!」
進化してる!?!?!?!?!?
えー待ってよB B B B B! 進化キャンセル! この世界に来てポケモンの進化って見たことないんだよ! 進化みたい! 見たーい!
「りっ……『りゅうのいぶき』です!」
「ザァーッ!」
「クソ……なんで戦えるんだよ……戦えないはずだろうが……!」
フードの男へ向かって紫の炎が放たれる。
驚いた男はモンスターボールを戻して、リーリエとは反対方向に走っていった。
つまりは相手の逃走による、戦闘終了である。
「はぁ……はぁ……。っ、クロウさん! クロウさん、返事してください!」
「ザァー!」
「ここにいるよぉ……」
「……クレーター……? クロウさん……!」
土を踏む音が近くなる。
シンクロの影響が残っているのか、鋭敏になった嗅覚が愛しのリーリエがこちらへ向かってきている事を教えてくれた。
そして彼女は、瓦礫の上で死体のように転がっている俺を見て絶句する。
おおヒトカゲ、大きくなったな。リザードに進化したんだ。お前の進化、見届けたかったぞ。
「ひどい怪我……」
「がめが……?」
「そうですね。周りの消火をお願い致します」
「がめー!」
「クロウさん、動かないでくださいね!」
そういうとリーリエは手早く髪をゴムで縛り、降りられる場所を見つけて穴に降りてきた。
スカートのくせに大胆な。そんな必死にならなくても大丈夫なのに。
「クロウさん……!」
「先にイーブイを治してやって」
「でも……!」
「イーブイは、俺を守りながら最前線で戦ったから」
「…………ッ……」
リーリエが手に持つのはかいふくのくすり。状態異常も体力も全回復できる優れものだ。
それを吹きかける音が聞こえる。同時に、イーブイの呻き声が幾分かマシになった。まだ辛そうにしているのは、シンクロや技の反動だろう。
「クロウさん、ポケモンさんの治療は終わりました。次はクロウさんです。かいふくのくすりを……!」
「もったいないなぁ……3000円くらいするでしょそれ」
「なに……呑気なこと言ってるんですか……。クロウさん、状況がわかってるんですか……? 血がこんなに……火傷も酷くて……お腹に……」
「お腹ぁ……?」
腹部を見てみる。
しっかり木が刺さっていた。Jesus。
「どうして……そんな無茶ばっかりするんですか……!?」
「あは……ははは……あはー」
「なんで笑ってるんですか!? なんで懲りないんですか!! なんで……なんで……私の気も知らないでぇ……うぇぇぇん……」
泣いちゃった。
「泣かないで、リーリエ」
「意地悪です……クロウさんは意地悪です……!!」
「ごめんね。心配かけて、ごめん」
「許しません……!! 絶対に許しません……!!」
「俺、何にもできないから。無茶する以外に、ルザミーネさんとの約束守る方法無いんだよ」
「やくそく……?」
「君を護る。たとえ死んでも、ポケモンに生まれ変わって君を護るよ」
「嫌です! 絶対嫌です!」
「ぐぶ…………」
「クロウさんッ!!!!」
口から血が出た。俺、長くないなこりゃ。
「リーリエ」
「………………」
好きだよ。
とは、言えなかった。
「クロウさん───!!!!」
◇
みゅうー。
みゅう? みゅうみゅう。
みゅうみゅみゅう! みゅー。
じら。ちらーじゅ。
じら〜〜〜。……ちゃ。
せれびぉ? せれびぁ。しぇれびぃ。
───……。
シナリオに成長・日常パートが不足と判断しシナリオを当初想定していたものより変更しました。