リーリエロスでカントー行ったよ 作:バケットモンスター、縮めてバケモン
───さん!
──────ロウさん!
クロウさん!!
「ぬぉっ!?」
「クロウさん!!」
「ひっ!? リーリエ!? リーリエナンデ!?」
呼ぶ声に目を開けてみれば、涙ぐむ金髪の美少女が俺に抱きついてきた。
おほー天国(´ω`) ……じゃなくて。
「俺……生きてる?」
「覚えてないですか、クロウさん」
「いやなんも……お腹に木が刺さって死ぬってなったこと以外は」
というか今まさに俺の心臓が持たない。死ぬ。
嗚呼リーリエの髪サラッサラで気持ち良すぎだろ! 諸行無常。
これは美少女の風格。ヒロインレーストップの貫禄を感じるね。
「ポケモンさんが、クロウさんを助けてくれたんです」
「ポケモンが?」
「何か光を放っていたのでちゃんとは見えませんでしたが、そのポケモンさんがクロウさんの体に何かを入れたような気がします。その後、木や石などがクロウさんの身体から弾き出されるように出てきて……」
だから俺の傷は塞がっていると。
……え? この石俺の体から出てきたの? え? これも?
待って知らないうちに身体に不純物取り込みすぎじゃね? どうりですこぶる調子がいいと思った。うっわぁこれらが俺の体から排出されるの想像しちゃったよこっわ。グロ画像じゃん。
「無事……ですか……?」
俺に抱きついたまま、上目遣いでこちらを見る。
チキンでゴミヘタレな俺は、頭ぽんぽんとかイケメンムーブはできそうになかった。
ので、イーブイが拾ってきていた俺の帽子を貰ってリーリエに被せる。
「無事かはわかんないけど、生きてる」
「………………はい。よかったです」
光を放っていたポケモンかぁ。
順当に考えれば(?)フラッシュを使いまくったハピナスとかかな。
「ポケモンさんは三匹いました」
UMAトリオかな???
「とりあえず……動くこともできるようになってるし、帰ろっか」
「本当に大丈夫なんですか……?」
「え? うん」
「本当の本当に?」
「ほ、ほんとうだよ」
「本当の本当のほんと〜〜〜っに! 大丈夫なんですか!?」
「大丈夫だよ!? どうして!? なんで腕の力を強めてるの!? 痛いよ!?」
痛いくらいに抱きしめられているのは正直ご褒美でしかないんだがな。
「……クロウさんのばか」
嗚呼アアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!
あぁ!?
アアアアアアアアア!?!?!?!?!?
イアアアアアアタアオオオオオオッフウウウウウ!!!!!!
おお!?!?!?
「ごめんね」
「しばらくお家に監禁しますからね」
「なにそれ怖い」
「ちょっと目を離すとクロウさんはすぐにどこかに行っちゃいますから! 博士にも協力してもらいます!」
「ちょっ、マジで……? ごめんて……」
おこリーリエだ!! おこリーリエがおるぞ!! おがめおがめ!!
ハイ天使! 女神! マーメイド! 銀河の中心! ダ・ヴィンチが唯一理解できなかった美しさ! いよっ
「リザードさん、ケンタロスさん、クロウさんを運んでください」
「うわっちょっ、動けるから! なあ! 動けるって自分で!」
「ゼニガメちゃんはそのまま消火活動を」
「おおぃ! 聞けよお前ら! トレーナーのピンチだぞ!」
「イーブイちゃんは……私と一緒にいきましょうか」「えぼ!」
「お前ら俺の手持ちだろォ!?」
リーリエ親衛隊としての教育が仇になったか!?
いやしかし、リーリエがピンチになった時にリーリエの言う事を聞かなかったらそれはそれでやばいから成長を喜ぶべきなのか!?
いやでもこれは流石に名誉毀損! トレーナーとしての恥!
「頼むから俺の言うこと聞いてくれよぉ〜!!」
テッカグヤの爆心地から救出される俺の声が、未だ燃える森に響いた。
◇
「いやぁ、リーリエちゃんほんますごいな! まさかあの焼け野原が完全に元に戻るとはなぁ! ハハハ!」
「カビゴンさんも食べ物の在処を見つけられましたし……結果としてはうまく行ったのかもしれませんね」
あの後、都合よく雨が降ったあの森。
ゼニガメがかなり頑張ったこともあり、残った火はその雨で全て消え去った。
問題は、テッカグヤが着地したことで草木が焼かれ地面が剥き出しになってしまったあの空間だが、そこにはあの洞窟にいたカビゴンが住み着いている。
森なら木の実や水は豊富にある。生態系が変わることが気がかりだが、元々たった一本の樹に成っていた実だけで生活していたカビゴンだ。まあ多分大丈夫でしょ。もしダメならその時はその時だ。
焼け野原広場もカビゴンやポケモン達の協力もあり、木の実の種などを植えることで草を群生させることだけは成功したし。
そしてその交渉ごとはリーリエが行った。ポケモンと心を交わせるリーリエはすごいね。全知全能の神の生まれ変わりか?
それでさ、博士。
「助けてくれません?」
「無理や」
「どうしたんですかクロウさん? お手洗いですか? チャック、おろしますか?」
「いやそれは博士についてきてもらうから───ってそうじゃなぁい!」
1番の問題は!
リーリエが行動してる時に!
俺がずっと監禁されてたこと!
「マジで監禁されるとは思ってないじゃん!」
「ダメですよクロウさん、縄解いたら絶対にすぐ逃げるじゃないですか」
「博士ぇ!」
「堪忍な、クロウくん。窓まで塞がれたらもうどうにもならん」
前回俺が逃げ
さらに、俺の手首と親指同士をくっつけて縄でぐるぐる巻きにし、ありとあらゆる行動に監視がついていた。
「はいクロウさん、朝食です。あーんしてください?」
「あーん……じゃなくて!」
こんなシチュエーションであーんしてほしくは無かった!!!!
「博士ぇ!」
「無理やぁ!!!!」
自身の家をここまで改造されたマサキは座ったままふるふる震えて動かない。
リーリエ大暴れの巻。リーリエがこんなに恐ろしく見えるなんて、生まれて初めてだ。
「イーブイ、助けてくれよ……相棒がこんなに助けを求めてるんだぞ?」
「もぐもぐ。えぼ?」
「ヒトカゲ……いや、リザード! お前のそのかっこいいツメでさ、縄をチョチョイと!」
「ガツガツ。ザァー……?」
「だ め で す か ら ね ?」
「「ぴぃっ!?!?!?」」
「この無能どもめが!!!!」
リーリエ親衛隊がリーリエに恫喝されてどうするんだよ! 根性が足りねえ! 根性が!
恨みを込めて視線を送るも、ポケ共は揃って俺から目を逸らす。
救いは無いのか!!
くそう、これならまだ死んだ方が美談になって良かったじゃないか!? なんだってこんなことに! 笑いもんだよこれじゃ!
「な、なぁリーリエちゃん。朝食、ママさんのとこに持ってった方がええんとちゃうかなぁ〜?」
「そう言って
「いッ!? いやいや、まさかそんな、ハハハ……」
「……はぁ。とはいえ、母様もお腹を空かしているでしょうし……。ちゃんと見張っていてくださいね?」
「お、おう! まかしとき……!」
パンケーキを乗せた皿を持ち、リーリエが家を出る。
ようやく震えがおさまったマサキが安堵のため息を吐き、こちらにコップを近づけた。ストローがついてる。優しい。
「鬼嫁やな」
「リーリエと結婚する人は大変でしょうね」
「……は? お前さん……まぁええわ。身体の調子はどうや? なんや、また無茶したんやって?」
今度はパンケーキをフォークで刺し、こちらに寄せてくる。
ん〜、うめえ。さすがリーリエ。その努力から来る手先の器用さを監禁に使ってほしくはなかったな。うん。
「もごご……。ごくん。でもやっぱりなんかおかしいんですよ。普通、こんなにウルトラビーストが来ます? あのフードの野郎だって、追い払っただけなのか使役してるものなのか……。手持ちかどうかだって怪しいんですよ!? ほんっとに謎だらけ!」
「なんやろなぁ……。確か、笛でなんかしたんやっけ?」
「フォォォ……って感じの」
「うーん……。もしかしたら、笛で使役してるんじゃのうて笛の音で脅しとるんやないか?」
笛の……音で? 脅す?
どういうことだってばさ。
「たとえば、クロウくんの持ってる笛、あるやろ?」
「あぁ、カビゴンを叩き起こすやつ」
「せやせや。で、それを使ってカビゴンを起こして、森で暴れさせたとする」
「ふむふむ」
「それを数回繰り返したら、森にいるポケモンはその笛の音を聞いただけでカビゴンが暴れるって怖がるわけや。その場にカビゴンがいなくてもな」
なるほど?
つまり、あの笛の音は本来は他のポケモンを操るためのもので、そのポケモンはウルトラビーストよりも遥かに強いポケモン。……で、ウルトラビースト達はそのポケモンと、そいつを呼び出す笛の音がトラウマになってる、と。
かなり理に適ってるんじゃないか?
「相手もポケモンの笛を持っとる可能性が高いっちゅうことやな。もしもカビゴンに目ぇつけられたら……やばいで」
「アクジキングとほぼ同等の強さをもつカビゴンを操られたら……。今の俺たちで勝てるかどうか……」
「今のクロウくんじゃ無理やろ。家から出られへんし」
「そうだった……」
「こりゃしばらくの間、治療薬集めは延期やな! さすがのクロウくんでも、縄で縛られちゃあお終いか! なはは!」
「何笑ってんすか……」
と、奇妙なコンビで談笑していると。
───キャーッ!?!?!?
甲高い悲鳴が聞こえた。
「リーリエ!?」
縄をちぎり、ドアノブを掴む。
「はぁ!?!?!? 縄ァ!?!?!?」
今行くぞリーリエ!!!!
意気揚々と飛び出すと、リーリエはすぐそこにいた。
どうやらこちらに戻って来ようとしていた最中のようだ。
だが、そこにいたのはリーリエだけじゃなかった。
「やーいガキンチョ! お前んとこのお嬢ちゃんは私たちがいただいたわ!」
「殺す」
「ちょっ待っ、話を聞きなさいよ! いいこと? この娘を解放して欲しかったら、まずはイーブイをこちらによこしなさい!」
「あ? イーブイを?」
「クロウさん、ダメです! この人たちは……きゃっ!」
「大人しくしてれば怪我しないっすよ。大人しくしてればね」
「離して! 離してください……!」
ぐぬぬ……。
敵の目的は最初からリーリエだったのか……。
確かにリーリエは誘拐したくなるくらい可愛いから仕方がないとしてもこれは迂闊だった……。
「イーブイ、頼んでいいか」
「えぼ! ぼぼぼ!」
堂々と胸を張り、イーブイがRR団の下っ端二人に近づいていく。
「マルマイン、行きなさい! 『じばく』!」
「ぶぉあっ!?」
「イーブイちゃん!!!!」
「お前ら……! こっちが手出しできないからって!」
「卑怯で結構、こちとら天下のレインボーロケット団よ! さぁ、イーブイは無力化したし、次はどのポケモンにしようかしら!」
「上からの圧力なんで、勘弁してほしいっす。ここはどうか、降参してもらえないっすか」
「クロウさん……」
どうする。
どうする、俺?
「なんで急に……」
「ンなもん私たちにもわかんないわよ! 優しかったボスが急に早く成果出せって言うんだから!」
「あんなに焦ってるの初めてみたっす。だから気は進まないっすけど、やるしかないんす」
「『ウルトラビーストに対する調査のデータの奪取』って何よ!」
「ウルトラビーストについて知っているのですか!?」
「アンタは黙ってなさいよ!」
リーリエが小さく悲鳴を上げる。
ゴルバットをくり出したRR団の女の方はリーリエを抱えたまま頭をガリガリとかいた。
「知らないからこうやってクソガキ脅してるんじゃない! いいこと!? このコの無事を願うなら、今日はもう諦めて負けなさい! さもなくば───」
「あ、電話っすよ」
「え、あ、ホント? ……ハイ! あ、今……ですね、ハイ。クソガ……あ、いえ、あのぉ〜……例の人物の……あ、はい、マサキ博士の……はい、用心棒とバトル中でして、人質でそこにいた女の子を………………え? え? ホントですか? それ犯罪では……アッいえ! まったく! 全く問題ありません! はい、失礼します! では……!」
電話相手にぺこぺこしながら猫撫で声で喋る女。
電話を切った彼女は俺とリーリエを交互に見比べ、冷や汗を垂らしながら隣の男を見た。
「え? なんすか?」
「……よ」
「んえ?」
「この女の子を誘拐しろって言われたのよ!」
「「はぁ!?!?!?」」
「わけわかんないわよまったく!」
「お前! そんなこと俺の前でしてみろ! 絶対に許さないぞ!」
いつでも相手を攻撃できるよう、機動力に優れたリザードのモンスターボールを構える。その次はケンタロスで相手の逃げ道を塞ぎ、ゼニガメと三匹でとどめを刺す。
リーリエが誘拐されるなんてことはあってはならない。
リーリエが傷でも負ったら、地獄に落ちても償いきれないだろう。
「クロウさん……」
「今助ける」
「良いんです。私、行ってきます」
「……なん、で?」
「クロウさんはいつも無茶ばかりする、優しい人じゃないですか。だか。私もちょっと無茶をしてみようかと」
ここからで見えるほどに青ざめ震えながら、リーリエが笑いかけてくる。
「私は、大丈夫ですから」
大丈夫なわけないだろう……!
どうする? 俺はどうしたら?
「……見せつけてくれちゃって。行くわよ。アンタも、行く気があるなら離してあげるから自分の足で歩いてついてきなさい」
「……え? 良いのですか?」
「ずっと捕まえてるの疲れるじゃない」
大きなあくびをわざとらしく見せながら、リーリエについてくるようにと促す女。
「アタシ達誘拐はするけど誰が着いてきてるとかわかるほど器用じゃないもんねえ!」
「……アレ、見逃してやるから着いてこいって言ってるんすよ」
「お前ら…………」
「さ! 誘拐誘拐! その前にクソガキ、ちゃんとあのマニアのオッサンに行ってきますって言ってきなさい。待っててあげるから」
「お、おう……。わかった!」
RR団のボスは何を考えてるんだ?
「博士! リーリエ誘拐されたからそいつらに着いていって暴れて来ようと思う! 行ってきます!」
「へぁ!?!?!? 何がなんやって!?!?!? ちょ待っ、クロウくん!?!?!? 説明くれ!?!?!?」