リーリエロスでカントー行ったよ   作:バケットモンスター、縮めてバケモン

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Rロケット団カントー支部

タマムシシティ、ゲームセンター内。

ポスターの裏に隠されたスイッチを押すと扉が開き、地下への道が開かれる。

RR団のしたっぱの女曰く、RR団がまだロケット団だった時に使っていた基地なんだそうな。

実際、店員がRR団の二人を見ると目を逸らすようにコインの洗浄を始めたり、俺たちが客から見えないようにわざとホワイトボードなどを動かして壁を作っていた。

契約か何かを結んでいるのか、はたまたこのゲームセンター自体がRR団のものなのか。

どちらにせよ、思っていたよりも敵の数は多いということだ。

 

「どうした、その女は」

「ボスの指令で誘拐しろってことだったから連れて来たのよ」

「後ろの男は?」

「あー……まぁ、関係者ではあるっす」

「はぁ……? まぁいいか。転送装置は?」

「使うわ」

「行き先」

「シルフカンパニー」

「合言葉」

「『ニャースに小判、バネブーにパールル』」

「よし」

 

ちなみに合言葉は月一で変わるっす、と男が付け足す。

バッチリ部外者に聞かれているが、それで良いのかRR団。

門番をしていたRR団の下っ端がその場から離れると、緑色に光るタイルのようなものが見えた。

 

「先に行ってるっす」

 

ここは手本を、とばかりに男の方がタイルを踏むと、シュンッと言う音と共に男の姿がかき消えた。

SAN値減少100d1案件。俺は正気を失った。

 

「踏めば良いの……か……?」

 

内心では恐怖と葛藤が宇宙外来生物との戦いに興じている中、外面だけはお得意のポーカーフェイスで繕ってタイルに乗る。

瞬間、一瞬の眩暈のような……まるでその場をぐるぐる回った後にふらつくような、そんな気持ちの悪い感覚に襲われ、反射的に目を瞑る。

次に目を開けた時には、目の前に女とリーリエはいなかった。

というよりも、俺が二人の目の前からいなくなったのだろう。

 

「お゛え゛え゛え゛え゛」

 

何故って、さっき俺より先にテレポートした男が目の前で吐いてる。

その辺に未使用バケツが積み上がっていたり水道や食塩が用意してあるところを見るに多分この装置の転移酔いは日常茶飯事なのだろう。早く壊せば良いと思う。

 

「お見苦しいところをお見せしたっす。ぉぇっ」

「無理して喋んなよ。背中さする?」

「お願いしていいっすか……。前からずっとダメなんすよ()()……むしろ初めてなのに、よく酔わないっすね」

「ちょっとくらっとは来たけど……吐くほどじゃなかったな」

「羨ましいっす……ボスも転送で酔ったりはしないみたいなんで、多分体質なんすよ」

 

体質かぁ。

と、男の背中をさすっていると女とリーリエが同時に転送されてきた。

 

「あ゛〜……気分悪りぃわ」

「リーリエに汚物をかけたら殺すからな」

「そこまでじゃないわよクソガキ」

「三半規管、三半規管がぼろぼろです……ぅぅ……」

「リーリエ大丈夫!? ゆっくり横になるんだ! 俺のリュックを枕にして良いからね! あとおいしい水あるから飲んで!」

「ありがとうございます……」

「ちょ待っ、急に背中さするのやめないでほしいっすッ、うっ、うッ!!」

 

そっとリーリエの耳を塞いで、吐瀉の音を聞かせないようにする。

通販で買ったうしおのおこうを炊き、男の臭いもカバー。おいしい水をゆっくりとリーリエの小さく艶やかな唇に当てると、青い顔をしたリーリエはくぴくぴと飲み始めた。飲み方まで可愛い。

そしてリーリエが! リーリエが俺の手から水飲んでる!!

この世に生まれて良かった! 生まれたのこの世じゃないけど!

 

「大丈夫、リーリエ? 何か食べる?」

「ぷは……大丈夫です。ちょっとくらっとしただけなので……」

「君に何かあったら俺はどう償えば良いかわからない。なんでも言って」

「あ…………。じゃあ、少しだけ……側にいてください」

「もちろん」

「これアタシたちは何を見せられてんの? 今生の別れ?」

「知らないっすッ、うッ、うぇっ!」

 

未だ苦悶の声を出す男をよそに、リーリエの看病をし続ける。

しばらくすると顔色も良くなって来たので抱き起こすと、リーリエは俺にしがみついたまま安心したように息を吐いた。

はぁ〜可愛すぎる妖精さんかな???

 

「立てる?」

「はい。ありがとうございます」

「さ、ボスとやらのところに案内してもらおうか?」

「ガラガラガラ……ぺっ。はいっす。と言ってももうすぐそこっすから、覚悟してると良いっす」

 

大理石の廊下を歩いていると、一際大きな扉が目に入る。

社長室かな? とも思ったがどうもそうではないらしい。

重厚感のある木の扉……それを女がノックする。

 

「ボス、失礼します。例の娘を連れて来ました」

「入れ。……ああ、クロウと言ったか、君も入って良いぞ」

 

バレてる。

ここまで来たら、もうどうにもなるまい。

リーリエよりも先に立ち、下っ端を押し除け扉を蹴破る。

質素で物こそ少ないが高級感のある部屋。窓にはシャッターがかかっていて暗い。高級そうな机の上にあるランプだけが唯一の灯り。

そして目的は部屋の奥で椅子に座り、こちらに背を向けている人物!

机の上に立ち、その人物の首にリザードのモンスターボールを突きつけた。

 

「何が目的だ。なんでリーリエを連れてこいなんて命令した。お前は誰だ」

「……フ。このおれを脅すか。()()()脅されるとは、舐められたものだな」

 

出来ることは全てやる、がポリシーなもんでね。

 

「おれはレインボーロケット団のサカキ。ボス、と呼ばれているよ」

「お噂は……かねがね」

「生憎だが、おれは君の脅しには屈しない。残念ながら、君からは気迫を感じないのでな」

「……ウソだろ」

「本当だ。既にボロボロの肉体で、研ぎ澄ましきれない集中力を振り絞っている。だいぶ、疲れているんじゃないのか?」

「知らねえ。俺はリーリエのために戦うだけだ」

 

正直図星だったりする。

リーリエの言うポケモンさんに治してもらったらしいこの身体。病気も傷も治って万々歳……と思っていたのだが、どうやら疲労や失った血液はそうでもないらしい。

俺を縛ったリーリエの判断は正しい。あのまま家でぐうたらしていれば、その時こそ完璧に回復していたはずだ。

 

「そして……何が目的かと聞いたな。実のところ、俺にもわからないんだよ」

「なんだって? お前が指示を出したんじゃ?」

「脅されたのさ。リーリエという娘をレインボーロケット団で囲え、とな」

「誰に」

「ふむ……フードを被っていたからな……男ではあったが」

 

フードの男と言えば、テッカグヤとカミツルギを追払っていた笛のヤツ。

まさかRR団とも繋がりがあるのか?

 

「そこでだ」

 

サカキが手元のボタンを押す。

機械の駆動音が鳴り、シャッターの下から光が漏れ始める。

 

「おれと手を組まないか? このままではレインボーロケット団の名が地に落ちてしまう」

 

ここ、シルフカンパニーの地下でも一階でもなかったのか。

眼下に広がるヤマブキシティの景色。

ここは今何階なんだ?

 

「おれが興味があるのはポケモンを使った金儲け。いたいけな少女の誘拐など、趣味ではないのだ」

「おお……悪の親玉にすっげーこと持ちかけられてるよ俺」

「フハハ! 共同戦線というヤツだ!」

「クロウさん! 大丈夫ですか!?」

 

と良いタイミングでリーリエがやって来た。

その後ろから下っ端二人もてこてことやってくる。

 

「リーリエ、ちょっと話があるんだ」

「……? なんですか?」

「俺、RR団に入るよ」

「!?!?!?」

「アンタね、その前にボスの机から降りなさいよ良い加減」

「どっ、どどどっ、どういうことですかクロウさん!? どうしたんですか突然!!」

「どうしたもこうしたもないよ? ……別に何も。 そろそろ就職しなきゃなって」

 

RR団に入れば、サカキを脅しているというフードの男とも接触できる。

それに従うも反抗するも、俺の意思だ。リーリエに危害が加えられそうな時だけ戦えば良い。

 

「……あの、さ。俺と手を組んだってことは……もう、リーリエを狙う必要はないよな?」

「フン。まあ良いだろう。……話は聞いていたな、二人とも」

「「はい、ボス!!」」

 

伝説のポケモンだろうがウルトラビーストだろうが、儲けに使うなら使えば良い。レアなポケモンはそりゃあ貴重だし高値で取引されるだろう。そんなの、元の世界だってペットの売買があったんだし抵抗は無い。

それに、工事現場でゴーリキーを使ったりミルタンクのミルクを売ったり……よく考えればケンタロスを足がわりにしているのだって、ポケモンの労働だ。彼らにきちんと対価を払っているのだとしたらただのビジネスだろう。

 

……乱獲はいかんけど。

 

「報酬は仕事の出来合い次第。レインボーロケット団が関係している事業の商品は20%オフで購入できるぞ。あと月に一度、健康診断がある」

「福利厚生はしっかりしてるんだな」

 

使用者が酔いまくるテレポーター導入してるのに?

 

「クロウ…………さん…………?」

「そういうわけだから」

 

絶望したような顔で、リーリエがこちらを見つめる。

拳はきゅっと握られ、呼吸は浅い。

 

「母様の治療薬探しは……どうなるんですか……?」

「…………」

 

リーリエからすれば、俺が敵に回ったように見えるのだろう。

当たり前だ、敵と契約して裏切ったんだから。

 

「クロウさんは……ずっと正しいことをしているのだと……思っていました……」

「…………」

「クロウさんにとって私は、一体どういう存在なんですか?」

「大切な存在だよ」

「嘘を言わないでください! だって、だってクロウさんは、私を頼らないでいつも一人で戦って……! ずっと私を騙していたんでしょう!? だから母様を見捨てて、レインボーロケット団に……!!」

「見捨てないよ?」

「……え?」 

 

何を言ってるんだろこのコは。

俺がルザミーネを……リーリエを、見捨てる?

そんなこと俺がするわけないでしょう。

 

「ルザミーネさんの治療薬探しもコイツらに手伝ってもらう」

「え?」「ん?」「……フッ」

「世界に名を轟かせるRR団だし、きっと人脈も情報も揃ってる。博士のところで伝承を調べ続けるのも限界があるし、だったら全員で手を組めば良いじゃんか」

「どうやらとんでもないヤツを雇ってしまったようだな! フハハ!」

「最近はウルトラビーストも多いし人手が足りなかったんだよな……主に囮が

「今囮って聞こえたっす! ボス!」

「……フ」

「ボス!?!?!?」

 

机から降りてリーリエに歩み寄る。

そして、怯えながら俺を見上げるリーリエを、しっかりと抱きしめた。

 

「俺はどこにも行かないよ」

 

せっかく出会えた、何よりも大切な存在を手放す訳がない。

確かにウルトラビーストは危険だし、この先俺の手に負えないことも生えてくる。その度俺は無茶をして、手に負えないことも掴もうとして怪我をする。

だったら。

 

「俺は君を、何より大切な存在だと思ってるから」

 

その手を増やそう。

リーリエをより包めるように。

リーリエをより助けられるように。

 

「俺は、どこにも行かないよ」

「……後でお話がありますから……」

「うん。聞くよ」

「縄だってつけますから」

「今度は引きちぎらないよ」

「それから……それから……」

「リーリエのすることなら全部受け入れるよ」

「その言葉、覚えましたから」

 

ダメだなぁ、俺は。

またリーリエを悲しませた。

何が原因なのかは……まだわからないけど。今後とも、リーリエのために突っ走ろう。死ぬならリーリエを庇って死のう。ウルトラビーストなんかにやられないように、頑張ろう。

 

「……クロウ、話はこちらにもあるんだ。レインボーロケット団の支給品と、与える任務の話なのだが」

「む……ハンコ押すヤツ? ハンコないんだけど」

「では次に来る時でいい。今日は話だけ聞いてくれ」

「えっとじゃあ……リーリエは先に帰ってる? なんか長くなりそうだよ」

「そう……ですね。せっかくヤマブキシティに来ているのですから、食料品の買い物などをして帰ることにします」

 

テレポーターを有効活用するリーリエ可愛すぎるが!?

書類を持って来る下っ端二人を横目にサカキが不適な笑みを浮かべ、部屋から出るリーリエを見る。外見だけはガチで悪の親玉なんだけどな。

 

「それではまず支給品だが、一度の任務で一人五個までキズぐすりとモンスターボールを持っていいことになっている。使用した場合は自分の分を補充するという形で備品を使ってもらいたい。横領などはしないでいてくれれば助かるな」

 

ホワイト企業かな???

 

「制服は「着ない」……フ。そうか」

 

なんかちょっと凹んでる。

でもさぁ、ダサいじゃんアレ。もっとこう、おしゃれなもんならいいんだけどね。マジで着ろとか言われたら着るけど、その時はココがプラズマ団じゃなくて本当に良かったと胸を撫で下ろすことになるだろうな。

 

「では書類契約は後で良いとして、少し聞きたいことがあるのだ」

「うゆ???」

「うわうざっ」「男がやってもキモいだけっすね」

「…………ごほん。聞きたいのは、クロウのイーブイについてだ」

 

イーブイ?

なんだろう……ってやべ、イーブイひんしのままだ。治療しないと。

 

「話によればそのイーブイ、以前から共にしているようだが……進化はさせないのか?」

「進化?」

「進化に必要な石もこちらで用意ができるぞ。20%オフで購入という形になるがな」

「金取るんかい。……とはいえ、いつかは進化も考えてるけど今はあんまり乗り気じゃない。イーブイの意見を尊重したいんだよ」

「ポケモンの意見を尊重だと?」

 

重圧。位置も体勢も変わっていないのに、何千歩も遠くにいるように感じる。

なんだよこれ。虎が俺を食おうとしてるんじゃないか? 今まさに、俺の首に噛みつこうとしているんじゃないか?

この圧を出しておけば俺に脅されることも無かったのに。隠してたって言うのか? 最初から?

 

「トレーナーに懐くことで進化するポケモンだっている。猛獣と猛獣使いだって、互いに敬意は払ってるし」

「レインボーロケット団は曲芸師ではない」

「……だからなんだよ」

 

ならばこちらは、虎を殺す狩人になってやる。

息を深く吐き、サカキの目をまっすぐと見る。睨んでいると言っても良いくらい、1秒たりとも目を離さず。

 

「そのような甘い覚悟で娘を守れるのか」

「守れてるからここにいるんだろうが」

「そのままでは負ける日も来るぞ」

「負けねえからここにいんだよ」

「「………………。」」

 

威嚇しあって数秒。

体感にして数分。

 

「……まぁ良いだろう。おい、アイツをくれてやれ」

「うぇ!? マジっすか!? えっでも、大丈夫すかね!?」

「クロウなら使いこなせるだろう。受け取るといい」

 

下っ端の男がモンスターボールをこちらに投げて来た。

中にポケモンが入っているらしいそれは、鎖で物理的にがんじがらめにされている。

 

「そのポケモンは特に凶暴でな。いざという時にその場に放せば暴れて状況を混乱させるだろうと持たせていたのだ」

「……名前は?」

「出してみればわかるだろう」

「ダメっすよ!? 絶対ここじゃダメっす!! 家で開けてください! あっ家もダメっす! できればジムか何かで許可を得てからにしてください!」

 

何!? 何が入ってるのコレ!?

 

「そいつをくれてやるから、使いこなしてみせろ」

「本当に使いこなせるんすかねえ。麻酔銃でようやく落ち着いた暴れん坊「キャーッ!?」何事っすか!?」

「ッ、リーリエ……!」

 

ああもう、どうしてリーリエはいつもいつもピンチになるんだよ!

 

部屋を出て廊下を走りテレポーターまで一直線。

テレポーター部屋に着いた俺の目に映ったのは、フードの男にはがいじめにされ、じたばたと暴れているリーリエだった。

 

「うっ……ぐ……離して……」

 

今度は本気の本気で暴れている。

差し違えてでもあの男は殺さねばなるまい。

 

「お前! リーリエを離せ! 殺すぞ!」

「……やけに物騒じゃないか。久しぶりの一言くらいないのか?」

「あるわけねえだろクソバカアホカス! 自分がやってること考えてから言えやハゲタコゴミコラァ!」

「えっめっちゃ口悪いじゃん」

「大体お前いちいち言動がイラつくんだよフード被ってんじゃねえぞ根暗陰キャ! そのくせリーリエ苦しめるとか人間の風上におけんぞイキリ野郎が! ドガース鼻につっこんでもがき苦しんで死ねやダボ!」

「……すみませんでした……」

 

ッシャア! 完封勝利ィ!

 

「今だリーリエ! ひじ! エルボー!」

「はいっ!」

「う゛ッ!!」

 

隙をついてリーリエが男から脱出し、俺の背中に隠れる。

頼られてることに感動を覚えながら、不運にも鳩尾に肘をめり込ませてしまい苦しむ男を睨みつける。

 

「うっふっ……はは……強くなったねリーリエ……」

「私を……知っているのですか……?」

「でも、偽物は消さなきゃいけないんだ。いずれその男も君の前から姿を消すさ」

「偽物……?」

 

だからなんなんだよその偽物って。

何が偽物なんだよ。ヤバチャのこと言ってる???

 

「そうだよ。偽物は殺さなきゃ。偽物はこの世に存在してはならない……」

「偽物偽物うるせぇーッ!!」

「ほぐおっ!?」

 

一気に距離を詰めて飛び蹴り。

よろめきタイルを踏んだフードの男は転送されていった。

 

「追い討ちかけよう! 行くぞリーリエ!」

「えっ……」

「何やってんの! 二人で倒そう!」

「……! はいっ!」

 

リーリエが差し出して来た手を掴み、二人で転送タイルを踏む。

一瞬の暗転のような立ちくらみの後に、景色が変わったのを確認し、勢いよくタイルから飛び出し……

 

「おろろろろろ……」

「「………………」」

「コッ、こっ、これで勝ったと思うなよッ、うっ、うええっ!」

「そういえば転移酔い……ありましたね」

「鳩尾に肘をくらって、腹に飛び膝蹴り受けてその後に転送だから……」

「うええっ! うっ、ぐふ!」

 

俺たちは見逃してあげることにした。

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