リーリエロスでカントー行ったよ 作:バケットモンスター、縮めてバケモン
あたし、マサラタウン・ノ・クロウ!
どこにでもいる一回死にかけたことのある(身体は)中学1〜3年生! 多分!
今日はだ〜いすきなリーリエちゃんと一緒にデパートに来ることになってるんだけど、なんだかリーリエのお着替えがいつもよりも時間がかかってるみたい!
この前のお掃除のときに午前午後共に思わせぶりなことを行っちゃったから意識させちゃってるのかも! 普段よりも可愛いリーリエがやってきたら尊死確定!? あたし、一体どうなっちゃうの〜〜〜!?
閑話休題。
みさきのこやから少し離れた場所で、俺はリーリエを待っていた。
向こうにその気が無いとはいえ、俺からすればデートなのだ。気合いも入ると言うもの。
お掃除の不祥事のマジ卍の事件の後、俺たちはなんとなくよそよそしくなってしまってぎこちなくご飯を食べぎこちなくおやすみを交わした。
が、ソファに身体を預けて眠りにつこうと言う時に、リーリエの日記を選ぶ約束、それを果たす日を決めてなかったことを思い出したんだ。
それで、ポケモン図鑑につけてもらった通話機能のお試しも兼ねて、リーリエに電話をかけたんだけど───。
『……もしもし……?』
「あー……もしもしリーリエ? 聞こえてる?」
『はっ、はい……。聞こえて……います……』
電話越しに聞こえてくるリーリエの衣擦れの音。
ときおり、こちらを伺うような『えっと……』という小さくか細い声が聞こえる。かわいい。
「その、リーリエの日記を……買いに行く日を決めない?」
『は、はい……! …………明日じゃダメだったんですか?』
「明日? 明日行くの?」
『あっ、いえ、そうではなく。いや、そうでなくもないのですが、えっとあの、その……』
もにょもにょと声をしょもらせて、小さな声で喋るリーリエ。
生憎だがその声は電話越しでは聞こえない。クロウイヤーは地獄耳(リーリエ限定)なのだが、さすがに電話の拾った音を拾い直すことは無理なのだった。
『あし、た……。予定を決めるのではだめだったのですか……?』
「あぁ……いや、なんかリーリエ、今日元気なさそうだったから」
もしかして俺のこと意識してる?とか聞けるわけなくなぁい???
自意識過剰オタクにはなれないんだよねえ!!!!
「だから電話で、って思って」
『そ、そうですか……』
「ルザミーネさん、様子どう?」
『あっはい。えっと……特になにか変わったことはありません。食欲も……たぶん、あります』
「よかった」
ぎし、と電話の向こうで何かが軋む音。ソファベッドから起き上がったのか、椅子から離れたのか。
その後で冷蔵庫を開ける音が聞こえたので、どちらにせよキッチン付近にいることは確かだ。
『……ふふ。今日は特別食欲があるみたいです。プリンがなくなってます』
「プリン? そんなの買ってたんだ」
『いえ、私が作ったものですよ。試作品なのでまだあまり人にお出しできるものではないのですが……。まさかそれまで食べてしまうとは』
ふぅむ。この様子からして、ルザミーネはキャンピングカー内は割と頻繁に動いているらしい。
リハビリにもなるしいいことだ。そんなことよりもプリン食べたい。
「プリン食べたい」
しまった、声に出ていた。
『もう少し待ってくださいね。それに、もともとこのプリンはいつもお疲れのクロウさんに……』
「俺?」
『クロウさんと! クロウさんと博士のために作り始めたものですから!」
「そう。期待してもいい?」
『そう言われるとプレッシャーなのですけどね……』
推しの作るプリンとかもしそれが炭だったとしても食うが? リーリエはそういうのわかってないよね。いい加減自分が魔性の女だと理解して欲しい。反省しろ。
「……それで、どうする? レポートノート買いに行くの。リーリエの好きな時で良いからさ」
『えっとじゃあ……明日……で……!』
ンなわけで俺はここで待っているわけだ。
はわわわ……やはりこれはデートなのでわ???
2人でショッピングにお出かけ……待ち合わせして、
なんなら手を繋いじゃったりして!!
……待てよ。そういえば俺、リーリエに抱きついたり抱き止められたりしてたな。……あ!? この身体を!? リーリエが!? 抱き!? マジ!?
ワァ……ァ……! だいちゃった……!
そう考えると今更リーリエがどれだけ可愛かろうがもうあまり関係ないな。デートだろうとなんだろうと、ちゃぁんとリードしてみせるとも。今の俺は負ける気がしない。
「お、お待たせしました……!」
ふっ。リーリエが来たようだな。
このクロウ、いつもいつでもリーリエにぞっこんとは言え、そう何度も同じように惚気ているわけではない!
「大丈夫だよ、全然待ってなピッ」
ほげぇぇぇえええ! かわぇぇぇえええ!
紺色のプリーツワンピースを白のリボンで留めてゆったりしたシルエットにすることで、普段の少女らしい清楚さではなく少し大人びた印象を受ける高級な仕様。
キュートな革のミニバッグを肩にかけ、同じく革の紐を使ったサンダルをチョイス。細くしなやかな彼女の足に巻き付いた紐がより脚のラインを意識させるが、その先はワンピースの中なので後はご想像にお任せしますという夢中になってしまうトラップゾーン。
髪型も、普段肩にかけていた三つ編みを巧みに使って煌びやかなミルキーウェイをまとめ上げ、いわゆる三つ編みハーフアップで上品に仕上げている。……アッ! ハーフアップにワンピースの同じ色のリボンがついてる! しかもリボンの余りが長いから金髪の中でより目立つ! 前から見ても後ろから見ても美味しいなんて! 前はエンジェルで後ろはヴィーナス!? 美のリバーシブルって……コト……!?
しかもノースリーブワンピースじゃなく、今回は二の腕カバーのあるガチ清楚系で来た!! エロいのか清楚なのか小悪魔なのかわからん! もっとわかりやすくしてくれ! いや違う! エロい清楚な小悪魔なんだ! 清楚系ビッチ(褒め言葉)。 共に幸せな家庭を築こうね♡ 気分上場、ボルテージはマックス。
「ぴ……?」
やめろ、首を傾げるな。
もう細かいことはどうでもいいからこの子に告白しちゃおっかなァ!?
待て早まるな。せめてもう少しこの時間を堪能しよう。わざマシン『メロメロ』使った? あかいいと持ってないけど2人の小指には赤い糸が付いています。
クロウ は こんらんしている!
「ごめんね、リーリエ。ちょっと正気にもどるね」
「は、はい……? 正気……?」
「あーもうクッソかわいいなヒロイン選挙一位だなこりゃ」
わけもわからず自分を攻撃した!!!!
右頬が痛え。
「クロウさん!? なぜ自分の頬を!?」
ほっぺたと言えばリーリエのほっぺってすべすべしてて触ると気持ちよさそうだよね。でも自分の荒れた手で触って痛みを与えたりでもしたら生きていけない。リーリエのほっぺマウスパッド発売決定しろ。
「大丈夫大丈夫。それより行こっか。今ケンタロスを出すよ」
「は、はい……いえ、ちょっと待ってください!」
モンボを投げようとした俺の左手をリーリエが掴む。急に手を掴むのやめろよ、心臓が潰れるだろ。
ふんわり優しく、俺の手首を包んだままリーリエは不安そうにこちらを見つめて……。急に見つめるのやめろよ、死ぬだろ。
「その……ハナダシティまでは、歩いて、行きませんか?」
「歩いて? 結構遠いよ?」
ハナダシティにあるRR団特製ワープ装置を使ってタマムシまで行くのは確定なのだが、まさかライドポケモンを拒否されるとは。ケンタロス、お前何した? ことの次第によってはお前のツノをアクセサリーとして売り捌くことになる。
「クロウさんと……お話、したくて」
「じゃあ歩いていこうか」
リーリエが歩いて行きたいらしいからケンタロスはクビな。これからはライドポケモンではなくただの火力担当だ。
それじゃあ、ケンタロスはボールホルダーにしまって……。
「…………リーリエ?
「いや……ですか……?」
「ぜんッぜん」
うるる、と瞳を潤ませるリーリエにそんなことを言われて「あとでね」って言える人がいるのだとしたら俺はそいつの目をアクセサリーとして売り捌くことになる。
とはいえボールは邪魔なので一旦ボールホルダーにセットするのだが、その間もリーリエは俺の手首を掴んだままだった。
そしてフリーになった時。
「…………えいっ」
するりと、俺の手に彼女の手が絡まった。
一気に蘇る、初めてリーリエと会った日の記憶。
友達になってくださいと差し出した手に、困惑しながらも触れてくれたリーリエ。
女の子にしては少し硬い指が、俺の手のひらを滑る感触。
「……いきましょう……か……」
「う、うん」
ガチガチに固まった俺たち2人、ブリキ人形組の出発である。
季節は夏の始まり……いや、春の終わりと言ったところ。
川は日の光を反射し俺たちを照らす。花びらは風に舞い、小鳥は棲家を変えるべくあちこちを飛び回る。
「風が気持ちいいですね」
「ソウダネ……」
しっとりすべすべ。
「最近キャンピングカーの前に鳥ポケモンさんが集まってくるんです。ポケマメをあげるととても喜ぶんですよ」
「ソウナンダ……」
つややかふんわり。
「えっと……今朝のチラシなのですが、グレンタウンでモンスターボールの安売りをしているみたいですよ。みさきのこや からは一番遠い場所にありますが……」
「ソウカモネ……」
ぷるぷるふにふに話に集中できん!!!!
ダメでしょ男の子と手を繋いだら! 相手が正気じゃいられなくなるんだから!
あと定期的に俺の手をにぎにぎしてくるのも可愛いからやめなさい! やめないで! やめなさい!
「あの……やっぱり、手を繋ぐのはダメでしたか……?」
「エェ!? イヤゼンゼン!? マジサイコー!? ザギンノシースー!?」
「そ、そうですか……良かった……」
終始不安そうにしていたリーリエが胸を撫で下ろす。
「クロウさん、前にレインボーロケット団と戦った時……私の手を取ってくださいましたよね」
「あぁ……あのフードの野郎を蹴飛ばした時ね。それが?」
「私、嬉しかったのです。クロウさん、私と話す時にいつも一歩分距離を置いていらっしゃるので……なにか、嫌われるようなことをしてしまったのではと」
「そんなことは……」
「私、クロウさんを試しちゃいました」
「……ズルいね、リーリエは」
「ふふ。ごめんなさい」
悪びれもせずに、穏やかな顔で笑うリーリエ。
小さな手はひんやりしていて、少し力を込めれば握り返してくる。
そこに推しが存在していることを、自ら証明してくれていて……。
「なんだか安心します」
「安心?」
「クロウさんが、ちゃんとここにいるんだなぁって、感じられるので」
きゅ、と俺よりも力を込めて、手を握ってきた。
「たまにはこうして、手を繋いでもいいですか?」
「……良いよ。好きなところに連れてってあげる。どんなとこにでも引っ張ってあげるよ」
「じゃあ私は、クロウさんを押してあげます。クロウさん、いろんなものを背負い込もうとしてますから」
押してあげるよ、引っ張ってあげる。……とはどこかで聞いたフレーズ。
そんな対等なパートナー、ライバルのような関係になるにはもっと努力が必要だ。リーリエが押すに相応しい男にならなければ。
「クロウさん、本当に無茶ばかりするんですから」
「うっ……その節はほんとゴメンって」
「あ! なんだか面倒くさそうな顔をしています! 本当に反省しているんですか!」
「してる! 反省してる! 絶対! マジで! ずっとリーリエのそばにいる!」
「ふぇ───」
あれ。
なんか、俺、今、やばいこと……?
「聞きましたからね……?」
「え? あの、リーリエ?」
「そばにいて、くれるんですよね?」
「いやッ、今のは言葉の綾というか、えっと別に綾でもないんだけど本人に言うべき言葉じゃないと言うか」
「問答無用です! えいっ!」
─────────。
う で ご と ! ? ! ?
こここここっコレはこれはコレコレコレ、これはここここここ恋っ恋人っここここここ。
小さな身体に寄せられた我が左腕。
密着したことによりよりダイレクトに伝わる、遺伝子レベルで好きになった香り。
リーリエ過多によってオーバーフローした俺の頭は思考を止め、ただリーリエを見ることしかできなかった。
「はばっ、ばばばっ。ぱっ。ほぽぽぷぇ???」
「今日1日は離しませんからね!!!!」
「ぽぴょ〜〜〜??????」
いや!? いやいやいや!?
夢だ! 俺は夢を見ている! 寝ているんだ!!!!
でなければこんなことあって良いはずがない!!
あああマズイ! 俺死ぬ! しんぢゃう! 心臓が! 心臓が!!
「ん〜っ!」
頭を……すりすり……しておられる……。
此処は楽園か……俺はもう死んでいたのか……。
いちげきひっさつ。クロウは死にました。
「あ……。オ……アアオ……。オアオ……? アオ……。」
「嫌です! ワープ装置に入る時もこのままです!」
「オア…………ワァ……。ホヒョ……?」
「そうです! デパートでもこのままですからね!」
聞こえますか? ルザミーネさん。
この子たぶん、愛嬌だけで人生食べていけるよ。