リーリエロスでカントー行ったよ   作:バケットモンスター、縮めてバケモン

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同じ鍋のカレー食べたらもうこの命を捧げるしか無い

8番道路は凸の字のような道の作りをしている。

別にそこまで短いと言うわけでも、逆に長すぎると言うわけでも無い、単なる普通の道。

その途中にある草むらにテントを貼り、とっぷりと静かな夜を過ごしていた。

 

「火打石って難しいな……ああもういいや。リザード、『ひのこ』」

「ざぁ」

 

集めた枯れ木や枯れ草に火をつけ、一人と一匹で空気を送り込む。

風にも負けないほど火力が強まったら、たっぷり水を入れた鍋をかけ、発達するまで待つ。

辺りに散布した虫よけスプレーの匂いが落ち着いた頃には水も沸騰し、野菜を煮るにはいい頃合いだ。

 

「クロウさん、そちらはどうですか? 野菜を切れたのですが」

「ちょうど、もうそろそろ煮始めていいと思う」

 

アッ!!!!

エプロンだ!!!!

あーまってやばいわ。キャンプで夜のテントを背景に火に照らされるリーリエやばいわ。マジで俺でも死んでる。死んだわ。

後ろから抱きついて「きゃっ♡ 危ないですよ♡」みたいなやつやりたい! クンカクンカスーハーペロペロペロwww

 

はい。(賢者タイム)

 

お手頃なサイズにカットした野菜を投入し、柔らかくなるまで待つ。

その間俺は飯盒と行くわけだが、鍋の方はリーリエが見てくれるらしい。

時折おたまで鍋を回して様子を確認する姿がなんとも可愛らしい。

アレ……もしかしてポニーテールにしてますか……?

そうですよねぇ!! カレーを作る時におさげのままだと邪魔ですもんね!! 僕はリーリエの髪の毛が入っていたら100万出して食べますけど、本人としては邪魔だよね!!

ワンピース姿のままポニーテール……元気なイメージの頑張リーリエがしっとりと夜を過ごしている……しゅき……。

 

え? 米を炊くのに使うカマド? さっきリーリエが鍋回してる間に作ったよ何言ってんの。リーリエが好きなら5秒でカマド作れないとダメだろ。

 

「焦げる心配はなさそうなので、少し待ちましょうか」

「あ、椅子あるよ」

「ありがとうございます……こんな椅子ありましたっけ?」

「今作った」

「作っ………………??? ごめんなさい、まだズガドーンの『さいみんじゅつ』が残っているのかも……」

 

許せねえなズガドーン! この片手に持った木屑だらけのナイフで心臓抉り出してやるぜ!

ほな、椅子を作る時に出た廃材は燃料にしちゃいましょうね。ネジとか作るの難しかったな。

 

「まだ少し暑いですけど、夜になるとだいぶ涼しくなってきますよね。んーっ、月が綺麗……」

 

俺も月が綺麗だよ(自由律)

 

「たまにはこうして、外でご飯を食べるのも良いかもね。みさきのこやの前の方ってポケモンバトルできるくらいスペースあるし、机とか置いてさ」

「それ良いですね。お母様も少しなら動けますし、外で椅子に座っているだけでも……。あ、でも途中で眠ってしまったらベッドへ運ぶのが大変ですね」

「ご飯の途中で寝ちゃうのは困るなー。カレーとかだったら顔面が悲惨なことになる」

「カレーを顔のあちこちにつけたまま寝てしまうお母様……ふふっ、少し見てみたいです」

「えぇ……親にそれは少し性格悪いよリーリエ」

「ええっ!? そうでしょうか……。は、反抗期というヤツ、です!」

 

反抗期で「カレー顔面からいけ!」って思う娘はなかなかにコミカルだと思うな。

しかし、もしもそんなことがあったらそれはとってもたのしいことなんだろう。

起きていつのまにかベッドにいて混乱するルザミーネも、笑いを堪えきれなくて不振がられるマサキも、ごまかそうとするリーリエも、側から見ている俺も。

やろうと思えばいつでも実現できる、幸せな未来だ。

 

「いつか……急に寝てしまわないお母様と食事がしたいです。同じものを食べて、同じものを見て、同じように笑って……」

「リーリエなら、きっと実現できるよ」

「そうでしょうか? 時々、不安になるのですが……」

「誰かと一緒にいたいって願いは、いつか実現されると思うよ」

 

俺が君を追ってカントーに来たように、誰かを想う力は不可能を可能に変える。

リーリエがみんなで仲良くしたいと願うなら、きっとそれは叶うはず。

 

「大丈夫! リーリエの夢は俺が守るよ」

「クロウさん……。ありがとうございます。私、がんばりますね!」

「これからもずっと一緒だ、リーリエ……(きゅううう)って、誰だこの腹の音」

「わ、私ではありませんよ!?」

「えぼい! えぼぼ、えぼいぼぼ!!!!」

「お前かぁ! 腹ペコかイーブイ! なぁイーブイ! うりうり!」

 

おーし任せとけ、野菜も煮えてるし今ルー入れてやるからもう少し待てよ!

カレーが出来上がるまでモフらせろ! おーもふもふもふ。ポケモンあったかいナリ。

 

「もふぉふぉふぉふふふ」「えぼぼぼぼふふふ」

「ふふっ、ふふふっ! 何言ってるのか分かりませんよ。……そういえば、クロウさんはイーブイちゃんを進化させないのですね」

「もふ。……進化させないって言うか、しないってのが正しいけどね。ここまで俺になついてれば、エーフィでもブラッキーでもニンフィアでも何にでも進化しそうなモンだけど」

「何か理由があるのでしょうか? 不思議ですね……」

「……もしかして懐かれてない!?」

「そ、そんな事はないと思います! ……たぶん……!」

 

オメェ……人懐こそうな態度しておいてまだ俺に心を許してねえって言うのか……! とんだ役者だぜコイツは……!

お、なんだその手は。ハイタッチか。うぇーい。

お、なんだその手は。こっちもハイタッチか。うぇーい。

お、なんか微妙に角度変えてきやがったな。そんなんじゃ俺のハイタッチからは逃げられんぞ。うぇーい。

 

「えぼぼい♪」

「心底嬉しそうにハイタッチするなお前は」

 

そうしてイーブイに構っている横で、リーリエがしれっと鍋を回す。

まーたそうやってリーリエは妻力(つまぢから)を発揮するんだから、ヒロインとして適正が高すぎるんよ。そんなんだからカードの値段が高騰するんだぞ。反省してずっと幸せでいてね。

 

リーリエが鍋を回すごとにルーが溶け、辺りに香ばしいお腹の減る香りが漂う。……おい。何だリーリエ、その鍋を見つめる愛おしそうな目は。愛情入れてんの?

マジでリーリエって女神の生まれ変わりだよな、うん。いや、ヒロインとかじゃ無くてさ? 存在っていうの? なんかさ、魂の底からこの人に恋してる感覚がもう根付いてるよね。

 

「味見をお願いします」

 

おたまでカレーのルーとじゃがいもを少し掬い、リーリエが小皿に盛る。

俺の腕から抜け出たイーブイが、小皿のじゃがいもを平らげ……。

 

「えぼぉ〜……♪」

「大丈夫そうですね」

「お米も……うん、炊けてる。じゃあ食べよっか」

 

モンスターボールからポケモンを全てだす。

リザード、ケンタロス、カメール、フシギダネ。

 

「ダネェアアアア!」

「必殺四肢封じ!!」

「ダネッ……!?」

 

はっはっは、かかったなフシギダネ!

ボールから出した瞬間に暴れることは学習済みよ!

どうだ! 博士お手製の包帯で四肢を巻かれては身動きがとれまい! え? 高級品でレアだからあんまり無駄に使ったらダメ?

ウッ! 『クロウくん! こういうものには 使いどきってもんが あるんやで』って声が聞こえる……。

しるかそんなもの! 使うタイミングなんか自分で決めらぁ!

 

「はーい、みなさん、ご飯ですよ〜」

「えぼ〜!」「ぶむぶむ」

「リッザァ?」「カメゥ!!!!!!」

「順番にですよ〜、たくさんありますから」

 

ハァッ……聖母……!!

あれ、何だか拝みたくなってきたぞ!

 

「はい、クロウさん」

「ありがとうリーリエ。それと……」

「はい、こちらに用意してありますよ」

 

そうしてリーリエが差し出してきた、カレーのプレートがもう一皿。

さすがリーリエ。俺の心を読むことにおいて他の追随を許さない。

 

「ほら、カレーだ」

「……ダネダネッ」

「意地張るのは良いからさ、食えよ」

「ダネっ! だ〜ネッ!」

「腹減って無いのか? 食えよ」

「ダネ!! ダネダネ!!」

「とりあえずさ、食えよ」

「……ダネ?」

「食えよ」

「ダネ…………???」

「食え」

 

まさかリーリエが愛情と丹精を込めに込めて作ってくれたカレーが食べられないって言うのか……?

はぁ。お前には失望したよ。俺に怪我を負わせるくらいなんだから、さぞ実力のあるガードマンになれると思ったんだけどな。

この世でリーリエのご飯が食べられない者がいるなんて、そしてそれが少しの間でも俺の手持ちにいたなんて、がっかりだよ。

心底、心の底からため息が出るね。

 

「フシギダネの干物って高く売れるのかなぁ」

「だ、だだだ、だねだね? ダネ……?」

「リーリエを守れないポケモンなんて……いる意味ないもんなぁ」

「だね……」

「生きたきゃ食えよ」

 

俺に見つめられたフシギダネはなぜかカタカタと震えながらツルで容器を傾け、カレーを頬張った。

やがて目の色が変わり、ばくばくとがっつき始める。

 

「食えるじゃん」

「…………」

「そのカレー、世界一美味いだろ。あそこにいる女の子が作ったんだぞ」

「ダネ……?」

 

顔を上げたフシギダネの視線の先には、イーブイにおかわりを提供して笑っているリーリエの姿があった。

背中に月明かりを浴び、前から焚き火で照らされている彼女は、その両方よりも美しく輝いている。

どんな星も、どんな宝石も、彼女に勝るものはない。

そんなリーリエの笑顔を見て、惚れない奴はいない。

人間もポケモンも、彼女を愛すべくしてここにいるのだ。

 

「リーリエって言うんだぞ」

「ダー……ダネ……」

「? 何か呼びましたか、クロウさん?」

「コイツがカレー美味いってさ!」

「……!! 本当ですか!?」

 

おお……エプロンリーリエがこちらに走ってくる……!

心臓が! 心臓が破裂する!! 誰か俺に心臓の替えを!!!

うっわどこから見ても顔のバランス良すぎるな? 産み落としてくれたルザミーネに深く感謝───。

 

リーリエは少し興奮した様子で、自身を見つめるフシギダネに手を伸ばす。

その手がフシギダネの頭に触れ、ゆっくり、優しく撫で始めた。

 

「たくさん食べてくださいね? おかわり、ありますから」

「ダネ……」

「ふふ。口の周りについてますよ」

「えぼー!」「ぶもぉー!」

「はーい、おかわりですねー? 今行きますー!」

 

哀れ、フシギダネに訪れた幸せと幸福な時間はすぐに過ぎ去り、イーブイとケンタロスの呼び声によって再び鍋の前へ行ってしまった。

 

「いやもう、ほんとリーリエって可愛いよな」

「ダネ……」

 

今「だね」って返事した???

 

「ダネダネ……ダネ、ダネ」

「ん? なんだ、リーリエが作るご飯? ああ、どれも全部美味いぞ。パンケーキとか、今日みたいなカレーとか、絶品ばかりだ」

「ダネ…………!」

「リーリエの愛情たっぷりご飯が好きなのか? わかる、おおいにわかるぞ。一ヶ月に一回はリーリエのご飯じゃないともう生きられないんだ俺。もうお前も俺の手持ちに入れ」

「…………ダネ!!!!」

「よし。拘束を解いてやろう」

 

四肢の拘束を解くが、フシギダネが暴れる様な事はなかった。

フシギダネの視線はリーリエのみに注がれ、その瞳には決意が宿っている。

 

「またリーリエのカレーを、リーリエのご飯を食べるために」

「ダネ……」

「よろしくな、フシギダネ」

「……ダネ!」

 

リーリエ絶対守るぞチームに、フシギダネが入ることになった。

なにぶんサカキから貰ったポケモンだし、何か癖があるのかと思ったが……気性が荒いだけで話がわかる奴じゃないか。

 

「ほら、行ってこいフシギダネ。おかわり無くなっちまうぞ」

「ダネェ!? だねっ、ダネダネ!」

「うお、足速えー……。……ん? なんだこれ」

 

先ほどまでフシギダネがいた場所に紙切れが落ちている。

今までフシギダネの体のどこかに挟まってたのか? どれどれ……。

 

 

坊主へ。

そのフシギダネは『ふしぎなアメ』の開発研究のために実験台になったポケモンだ。体の中にエネルギーを溜め込みすぎて凶暴だから気をつけろ。

覚えている技は……───。

 

 

ふむふむなるほど。そう言うことか。

フシギダネが凶暴な理由も、俺を傷つけることができた理由もわかったぞ。アメの研究で経験値をたくさん得たから、レベルが上がっていたんだな。

ご丁寧に技構成まで書きやがって、親切この上ないな。

 

 

PS.俺は一度ジムリーダーとしてそのフシギダネに負けている

 

 

強くない????????

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