リーリエロスでカントー行ったよ   作:バケットモンスター、縮めてバケモン

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まさかの添い寝! リーリエ、がんばる!

「…………」

「…………」

「……美味いな」

「……はむ。そう、ですね……」

 

献立はシチュー。

カレーとシチューって最後に入れるルウを変えるだけで全く違うものになるんだからすごいよね。ポケモンの進化分岐みたい。

 

静かな夜にことこととシチューが煮込まれる音。食器が擦れる音や薪が燃える音が辺りに響き、声と呼べるものはポケモンたちのものだけだった。

お互いにお互いを見つめては、気まずそうに目を逸らす。

なぜなら、今晩入るテントが二人とも同じだからだ。

 

誤魔化すように水を飲んでは、シチューを口に運ぶ。

まろやかでいて甘い。誰もが虜になるようなシチューを味わいつつも、先ほど食べたシチューはどんな味?と聞かれたら思い出すことはできなかった。

 

「カメ」「ザァー!」

「え、あ! ど、どうした!」

「お、お、お湯、ですか!? ありがとうございます!」

 

カメールとリザードがお湯を沸かしてくれたらしい。今日の風呂である。

贅沢なことに、俺の手持ちにはみずポケモンとほのおポケモンがいるので旅に出ていようと毎晩お風呂に入れる。

今日は服のまま海にも飛び込んだし、リーリエとしては風呂に入りたくて仕方がないはずだ。

 

男の俺は使うお湯も少量で良いし、安全を確保するために風呂周りの設営をするために先に入る。旅先だと何があるかわからないし、とりあえず汚れを落として、あとは……そうだ。テントが壊れているならカーテンが作れる。

前回は近くにあるポケモントレーナーを端から全員目潰しして回っていたが、カーテンを作れば問題はない。

 

「フシギダネ。あの枝からあの枝までの長さのツルをくれ」

「ダナダー」

「……これでよし、と」

 

水を入れ替え、リザードの炎にかける。

湯気があがりはじめたのを確認してからカーテンを開けた。

 

「お風呂あがったよ」

「じゃあ、私もお風呂いただきますね……」

「うん……」

 

まだ皿にシチューが残っているというのに、リーリエは慌てて風呂の方へ向かった。

そんな報告されたら意識しちゃうじゃん!!!!

初日もお風呂のくだりはあったけどね!? そんな報告なかったよ!?

ァ!! 皿にもうシチューがねえ!! 今まで空気を食べてたのか俺は!!

 

「はぁ〜…………(クソデカため息)」

「えぼ?」

「ため息も出るわ。どうすりゃいいんだよー……」

 

思えば前にもこうやってイーブイに何かを訴えられていた気がする。

リーリエとデパートに行って試着を待っている時か。

 

「えぼ」

「……リーリエの使っていたスプーン……」

 

頭の中がリーリエでいっぱいだ。

後のことなんて考えずに、リーリエに溺れていたい。

だってあんなに綺麗で可憐で美しく、優しくお淑やかで優雅なんだ。

好きにならずしてなにになる? 愛さずして何ができようか。

 

「ぶも〜」

「おうおう、リーリエ乗せてぶっ飛んでくれてありがとな」

「ぶももも」

 

褒めつつ撫でると嬉しそうに体を振るわせるケンタロス。

海水のせいで毛が固まって荒れている。あとでブラッシングしてやらねば。

……というかお前たまにリーリエにブラッシングしてもらってない? お前のブラッシングツールをリーリエが持ってるの、何回か見てるぞ。

 

「ぶふんっ」

「あ! お前笑いやがったな!? やっぱりリーリエにブラッシングしてもらってんなお前!!!!」

「カメカメ」

「んぉ、なんだカメール」

 

よちよちと近づいてきて存在をアピールし、地面にハートの絵を描くカメール。

隣に人の形をした絵を描き、リーリエが風呂に入っている方向を指差した。

リーリエにラブラブ?

……じゃないな。なんだろう。リーリエの心? 考え方? が好き?

 

「かめー!」

「……お前もリーリエのことが大好きなんだな。いいことだ」

「リーリエの騎士団としてお前たち以上に頼れる存在はいないぞ。これからもよろしくな」

「かめー!」

 

そして温度調節のためリーリエの元へ向かうカメール。俺も手から水を出せたらリーリエのお風呂に合法的に居合わせられるだろうか。煩悩。

 

どうにも考えが纏まらない。

ポケモン達はまだシチューに夢中なようだし、食器は埋めれば土に還るので洗う必要もない。鍋も、ポケモン達が食べ終わった後にカメールが水につけてくれるだろう。どちらにせよ今やれることはない。

 

のそのそとテントに潜り、寝袋を探す。

流石に同じ屋根の下とはいえ、リーリエに手を出すことは許されない。

ミノムッチ状態になれば俺でも理性を保てるだろう。

そう。寝袋さえあれば、俺は理性を保てる。

寝袋さえあれば……。

 

あれ?

 

おっかしいな、ここに詰めたと思うんだけど。

防水性高いやつだから海水でダメになるとかも無いと思うんだけどなぁ……。

んん〜? いや、マジでないぞ?

……ふう。寝袋無しは流石に寒いよなぁ。

リーリエの方は自身の寝袋を広げて敷布団にし、上から毛布をかけて寝ているようだ。チルタリス毛布だっけ? 畳むのも楽ちんで軽いのに、広げた瞬間空気を含んでふわふわになる。高級毛布だ。さすがお嬢様!

 

と、寝袋探しを忘れてもふもふとチルタリス毛布を楽しんでいると、テントのジッパーが開かれた。

 

「クロウさん……」

「あ……リーリエ」

「カーテン、ありがとうございました。とっても安心できました」

「あれは……まぁ、そのまま捨てるよりは最後にって思って」

「それでもありがとうございます」

 

息を呑む。

旅に似合わない、白のワンピースパジャマ。

優しく身体を包み込むそれを着こなし、リーリエが素足を自身の寝袋の上に乗せた。

そのまま膝を折って座り、三つ編みにして短くなった金髪を肩にかけた。

お風呂から上がったために頬は赤く、それが妙な色気を出す。

眼差しが少し柔らかいのは、温まって眠くなっているからだろうか。

 

「何を探していたんですか?」

「俺の寝袋をね。どこかに無くしちゃったかな」

「……寝袋なら……ありませんよ?」

「え」

「隠しちゃいました」

 

困るよ!?!?!?

なんでそんな聖母みたいなとろんと柔らかい笑みでイタズラ宣言したの!?

 

「無くても良いじゃないですか」

「そういうわけにもいかないよ。俺寝れなくなっちゃうし」

「……一緒には寝てくれないのですか?」

 

毛布をめくり、リーリエがこちらを見つめる。

何かがおかしい。どうしちゃったのリーリエ。

そういうのは好きな人にやるもんだよ!! モブにすることじゃないよ!!

 

「鍋を洗わないと」

「カメールさんが洗ってくれましたよ」

「ぽ、ポケモンを戻さないと……」

「ポケモンさん達は私がボールに戻しました」

「ひ、火を消さなきゃ!」

「火が……どこかにありますか?」

 

纏められた荷物。手渡されたボール。

いつの間にか消えていた火の音と灯り。

薄暗いテントで、リーリエが俺にもたれかかる。

え!? もたれかかる!? ちょっ!? どういうサービス!? いくらですか!?

 

「もうやることは……寝ることだけですよ」

「いやいやいや、でも流石に同じ布団で寝るってのは……」

「何か問題なんですか?」

「け、警戒心が無さすぎる!! 襲われたらどうすんの!?」

「……私を、襲うんですか?」

 

ゥ……。

それは……するぞ! しちゃうぞ!

そんな勇気ないけど!!!!!!!!!!

 

服が擦れ合う音がやけに大きく聞こえる。

背後はもうテントの壁。

今俺の胸に頭をこてんと預け息をしている、この小さくて可愛い女の子。

彼女から信頼を寄せられていることが、とてつもなく嬉しい。この上なく幸せだ。

 

「クロウさん。このテント、天窓があるんですよ」

「えっ何それゴージャス」

「開けてみますか?」

 

立ち上がったリーリエが天井部のファスナーを開ける。

布地が取り払われたそこには、ビニール越しの星空が広がっていた。

 

「行きの時もしばらく眺めていました。とっても綺麗ですよね」

 

暗闇に目が慣れたからか、星空が青く光り輝いているように見える。

ほっ、とリーリエが小さく一息つき、俺の隣に座った。

 

「私、ときどき不安になるんです」

 

そのまま、頭を傾けて俺の身にもたれかかった。

 

「このまま母様が良くならないんじゃないか。旅はずっと続くんじゃないか。……みんなに、会えないままなんじゃないか、と」

「……みんなっていうのは、アローラのこと?」

「はい。いろんな人に助けてもらいました。また、みなさんとお話がしたいです……」

「きっと会えるよ。ルザミーネさんも良くなる」

「クロウさんは、何度もそうやって励ましてくれましたね。いつもありがとうございます」

 

手繰り寄せた毛布を膝にかけるリーリエ。

横向きに広げたので俺まで包まれてしまった。擬似同衾。ゆうべはおたのしみでしたね。

 

「クロウさんと出会って……とても良かったと思います」

「俺も、リーリエに会えて……リーリエと旅ができてる今が幸せだよ」

「もうっ。どうしてそういう言葉がすらすらと出てくるんですか?」

「お手本があるからね。……なんでもできてかっこよくて、リーリエなんかすぐにコロッと落ちちゃうようなお手本(主人公)が」

「お手本……ですか」

 

それから、たくさんのことを話した。

イーブイが泳げなくてびっくりした話。

行きのカレーが美味しかったからまた食べたい話。

ナツメがなんだか温かい目をしてリーリエを見守っている気がする話。

バトルカフェのマスターが死ぬほど強かった話。

あの時のゲンガーが元々は人間だった話。

……アローラから泳いで来た時の話。

 

「───お腹も空くし、海は冷たいしで散々だったよ。寝ることもできないしね」

「さいしょは……どこに……ついたんでしゅか……」

「確かセキチクシティだったかな。サファリゾーンってところが有名だよ」

「こんど……いきましょ……うね……」

「そうだねえ。……もう寝た方が良いな。ちょっとごめん」

 

お行儀よく体育座りで船を漕いでいたリーリエの膝下に腕を回し、抱え上げる。

そのまま広げられた寝袋の上において毛布をかけた。

 

……まぁ、今回は流石に野宿でいっかあ。

 

「おやすみ、リーリえ゛……ッ!?」

 

立ちあがろうとしたところに腕を掴まれ、引き摺り込まれる。

背中からふんわりと優しい甘い香りが俺を包み込み、そこでようやくリーリエに抱き止められているのだと知った。

 

「ちょっ、ちょちょちょ……」

「いっしょにねるんですー」

「ええ…………」

「かんねんして、こっちをむいてください」

 

しかも対面!?

心臓が!! 心臓が保ちません!! メーデー!!

とはいえ埒が明かないので姿勢を正す(欲望に正直)

 

「んやっ……。くすぐったいです」

 

ごめんなさい!!! ほんっとうにごめんなさい!!!

どうか命だけはお許s 顔近ッ! 顔良ッ! うっわーキレー! 整ってるぅ……! 天使のキス待ちみたいな微笑みしてるぅ! かわいいー!

 

「クロウさん」

「な、なに……」

「クロウ……しゃん……」

「……え……」

 

リーリエの手が頬に添えられる。

とろんとした目が俺を捉えた。

小さく呼吸を繰り返すたびに動く唇が(つや)っぽく(なまめ)かしく(あで)やかで、それが近づいてきていることも気づかないほど、俺の視線は唇に釘付けだった。

あと少し、拳一つほどの距離。一つの毛布の下で、リーリエがそのまま俺に近づき……。

 

 

 

 

 

「……すや……」

 

 

……寝てる……。

そりゃ、ありがちだけどさ……。

すっっっげえドキドキしたよ……。

 

しかしまぁ、いやぁ寝顔かわいいなぁ。ほっぺ食べちゃいたい。ずじゅるるるべろべろぽぷぽぷじゅぷるるりん。

 

……寝るか。寝れるかわからないけど。

なるべくリーリエに触れないように頑張ろうと意気込んで目を瞑ったその時。

 

───ちゅっ

 

……? 頬に違和感が。

リーリエは……

 

「す、すや……すや……」

 

寝てるな。ぐっすりだ。寝息まで立ててる。

寝息まで可愛いとは恐れ入った。

……それじゃあ、頬のさっきのは本当にただの違和感か。

まあ寝よ。リーリエの腕の中で寝れる時なんて今後一生無いぞ。

 

おやすみリーリエ。

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