リーリエロスでカントー行ったよ 作:バケットモンスター、縮めてバケモン
おはよう諸君。朝日が昇っているね。
……寝顔をもっと見たかったなァ……。リーリエが熟睡し始めたら髪の毛クンカクンカしたり採取したり絵にしたりしたかった。
普通に寝心地よくて爆睡しちゃった(´・ω・)
だってリーリエの隣で眠れるんだぜ? それだけでエルドラドだろ。楽園だろ。桃源郷だろ。
……ハッ!? 肩凝りが無くなってる!! 体調もすこぶる良い!! これはリーリエのご加護では!? さすがリーリエ、奇跡ってこう言う意味なんだね。
さて。
……とりあえず、目の前にいるはずであるリーリエがいないことについて考えよっか。
リーリエの荷物がテント内にあることからおそらく俺より早く起きてテントを抜け出した。これは当たりだろう。
ただ、今何してるんだ?
無闇に探して、もしもリーリエが朝風呂タイムだったら?
俺はもれなく変態の烙印を押されることになるだろう。否定はしないけどね。いっそ土下座して朝風呂拝ませてもらおうか。落ち着け。
あ、リーリエのパジャマが畳まれてる。着替えたあとなのか。
……ふーん?
リーリエさぁん……年頃の男の子の隣に自分の衣服を置いといちゃあダメだよお……。どんなことになっても知りやせんぜ……? グフフ。
ましてや俺は今リーリエのおかげで絶好調バフがかかってる。天使のヴェールを汚すのは本当に申し訳ないし罪の意識で消え入りそうだけど本能には抗えない。アダムとイブだってそうだ。俺がアダムであの子がイブで。落ち着け。
では、いただきま〜す!
「あっ、クロウさん! おはようございます! 朝ごはんできてますよ」
「うん!!!!!!!!!!!!!!!!!」
っぶね。
普通にリーリエ吸いしかけてたわ。
「おぉ、コーヒーだ」
「淹れてみました」
苦い……。
やっぱりこの身体、ポケモン世界に来る前と違う。
子供舌というか……身体的に、味覚の嗜好が子供寄りになってる。
苦味を楽しむこともできなくは無いけど……やっぱり今の俺はコーヒーが苦手みたいだ。
「クロウさん、寝癖ついてますよ? 直しますね」
「ありがとう」
コーヒーあっめぇ〜〜〜!!
ウッヒョォ、リーリエが俺の頭なでなでしてくれてるぜ!
えぇ何これ!? 絶対『コーヒー飲めてえらいですね』のなでなでじゃん!!*1
こんなん何杯もいけちゃうね! うーん苦い! もう一杯!
「あ、ケンタロスさんも毛がたっちゃってますね。ブラッシングしてあげます」
「ぶむう!」
コーヒーにっげぇ〜〜〜!!
反吐が出るぜ! おめぇなに満足げにブラッシングしてもらってんだよ!! そこは五体投地でリーリエになすがままにされるべきだろうが!! それでも親衛隊かよ!! お前はいつもそうだ!! 誰もお前を愛さない!! リーリエ以外は愛してくれない!! お前を愛してくれるリーリエは天使!! ドゥーユーアンダスタン???
「いやトーストうっま」
「リザードさんに頑張ってもらいました」
「ふーん。やるじゃんリザード」
「ざぁー!!!」
腹ごしらえも済んだのでテントを片付ける。
ちくしょう、やっぱりリーリエ吸いしとけばよかった。
ああ……リーリエのパジャマが片付けられていく……。
北側10ばんどうろを通って9ばんどうろ。
ここまで来ればもはや庭。通った先がいつもお世話になっているハナダシティである。
ともすれば二人とも気が抜けており、夏の陽気も相まって、のんびり歩いていた。
日差しを含んだリーリエの髪の毛がキラキラと輝く。まっこと眼福。芸術作品ですわ。
今日は風がよく吹くので、真夏の今にしては珍しく涼しい。
長髪を揺らす風に目を細めるリーリエは、どんな花よりも美しく、そしてどんな宝石よりも輝いていた。
頬を伝うその汗が、草木をすり抜ける風と共に遠くに飛んでいく。
まさしく夏の1ページであり、俺がアローラで見て、心から望んだ光景だった。
夏のリーリエ、余りにも絵になる。
「ふっ、ふふ」
夢が叶ったことに対してか、笑みが溢れる。
俺は今、炎天下の彼女の隣にいる。
一緒に暑いねと会話ができる。
嗚呼、至福……!!
「? どうしたんですか、クロウさん?」
「いや、涼しくて……嬉しくてね。それよりもリーリエ、帰ったらリーリエと行きたい場所があるんだ」
「行きたい場所……? どこですか?」
「ハナダシティなんだけど……っと、噂をすれば見えてきたな」
ハナダシティでは宿屋やポケモンセンターが多くの人で賑わっており、それを目当てに屋台や出店などもいつもより多く並んでいた。
「わ、わ、わ! なんですかこれ! 何が起こるんですか!?」
「今年はハナダシティで、花火大会をやるつもりらしいよ。急に始めた理由はわからないけど、チラシが配られてたんだ」
「はなび……ですか……」
嬉しいような苦笑いのような、まさに『微妙』といった表情を浮かべるリーリエ。
あれ? なんか反応が悪いな。わりと良いと思ったのに。リーリエと花火見るってのが俺の夢その②なのに。
「花火、苦手だったっけ?」
「いえ、苦手というわけでは無いのですが……直近の記憶で、花火に少し抵抗が」
「……あー」
そういやこの夏、リーリエと花火見たわ。
見た人の生気を吸い取って己の養分にしようと企む花火を。
洗脳されてたこともあり、リーリエとしては苦手意識が生まれてしまったのだろう。
「まぁ……大丈夫だよ。何があっても俺が守るから」
「もう、外に投げ出されたりしませんか?」
「あー……そんなこともあったなぁ」
「忘れてたんですか!? 命の危機だったんですよ!?」
「まぁ、まぁまぁ、はは」
「えっ。ほんとに忘れてたんですか? あの、えっと、クロウさん、そう言った物覚えに関する病気とか……」
「やめて怖い。……で、それはそれとして。花火……見れる?」
「私とですか? ……良いんでしょうか……」
「俺としては、リーリエとみたいなって思ってるけど」
「ん〜。じゃあ、はい。お供します」
そう言ってリーリエははにかんだ。
おっほ♡ 美少女が笑ってる♡ 人間国宝だね。
「まだ花火大会までは日があるから、今日のところは帰ろうか」
「はい! ……いつなんですか?」
「明後日」
「あ、ああ明後日!? 早すぎませんか!? 少し戻ってくるのが遅れていたら間に合わなかったじゃないですか……!?」
「明日は休息。旅の疲れを存分に取ろうねー」
「く、くろうさん!! まってくださいよお!! お、ぉーぃ!?」
リーリエの荷物を奪い取り、ハナダの街を駆ける。
最高だ。
俺は今、生きてる。
ポケモンしか無かった俺の人生そのものが、ポケモンの一つになってるんだ。
これからは、リーリエと生きていく。
いつかリーリエが幸せになるその日まで、リーリエを見守っていくんだ。
◇
いやー、ポケモンってマップ移動多いから、途中途中で考えることとかあんまり無いんだよね。
そりゃリーリエと道中お話したことは覚えてますよ?
後少しですね、とか。
お母様元気でしょうか、とか。
リーリエに好きな人がいるとか。
「ウッ思い出したく無い記憶が……!!」
「クロウさん!? どうしましたか!? おうちは目の前ですよ!?」
頭がッ……めりめりと痛む……ッ!
会話の流れで「ルザミーネさんのお父さんはどんな人なんだろうね」って聞いたら「私の好きな人と似たような人だと思います。ポケモンが好きで、何かのことに熱中すると周りが見えなくなっちゃう人で……。あっ!! 今のは忘れてください!」って。
忘れてくださいって言われたから一旦自分の頭を岩に打ちつけて記憶を無くしていたんだが……なぜ思い出してしまったんだ……。
そっかあ……リーリエ好きな人いるのかぁ。
そりゃそうだよなぁ……。年頃の女の子だもんなぁ……。
出会いはどこなんだろ? やっぱりアローラなのかな。国境を越えた愛なの? うわ、泣きそう。
「た、ただいま戻りました!」
「おお! お帰りリーリエちゃ……っ、クロウくん!? どうした!?」
「急に倒れてしまって……! 疲れが溜まっていたのかも……」
「クロウくん、誰にやられた!」
「リーリエ……」
「私なんですか!?!?!?!?!?!?!?」
「リーリエちゃん……! なんて
「ええっ、あっ、ご、ごめんなさい……?」
「せやってクロウくん」
「しょうがないなぁ、今回だけだぞっ☆」
「ピンピンしてるじゃないですか!」
はー、笑い泣き。
まぁ失恋の末に捻り出した涙もあるけど。
彼女はどんどん、俺の知らない彼女の物語を紡いでいく。
いつか、リーリエのウェディング姿が見たいものだ。いや白無垢もアリだな。いや、アローラに倣って教会で……いやいや、リーリエの出身は判明していないのだからそれこそ和風な都の可能性も……。
その場合、旦那は誰に?
俺に勝てるようなヤツじゃないと認めませんからね!
俺に勝てる奴が出てきたら認めなきゃいけないのかぁ……。
「
「クロウさん!? 口から血が!! 」
「いつものことやんけ」
「そうでしたか!?!?!?」
「まぁそれはそれとして。リーリエちゃん、お母さんとこにも行ったげてな。土産話楽しみにしとるらしいで」
「あっ! 行って参ります!」
俺の口元を拭ったハンカチを掴んだまま、リーリエがキャンピングカーへと向かう。
リーリエに介抱されるのって幸せだよな。
マサキは俺の前にジュースを置き、手近にあったノートを手に取りパラパラと捲る。
空いているページにペンを添え、こちらに促してくる。
「ほんで、シオンはどうだったん?」
「かくかく シキジカ メブキジカって感じです」
「ふむふむなるほどなぁ。……ってわかるかい! 後でレポート書いてな」
「はーい。……後明日のお祭りリーリエと行きます」
ドサッ。ノートが落ちる音。
信じられないようなものを見る目でこちらを見つめるマサキ。
「デートか」
「でぇと、ですねえ」
「よく誘ったな」
「もう心臓バクバクですよ」
「やるやん」
こつん、とグータッチ。
「夏の思い出に、と」
「ええやんええやん! ここで射止めるんか? いやぁ、長かったなぁ……!」
「もちろん、リーリエが欲しがったものは屋台ごと買って貢ぐつもりでいるんで!」
「重」
「金はあるんで」
「生意気やわ〜」
「ところで、そちらの方はいかがです?」
「ルザミーネさんの方か? クロウくんたちがいない間に色々検査したんやけど、体調はあのまま。悪くなったりはしてへん。……せやけど、良くなってもおらんのや。あと一歩、何かの手掛かりが掴めないっちゅうか……パズルのピースだけあってもはめる方法がわからんっちゅう感じやな」
差し出されたノートを受け取る。先ほどマサキが落としていたものだ。
そこには、ここ数日のルザミーネの食などの情報や体温、言動が書かれていた。
言う通り、特に目立ったものは無いか。
「あと、リーリエちゃんには内緒なんやけど」
と新聞を渡して来るマサキ。
「ええと……『無人発電所の怪異』? 『動き出すブロック塀』。『謎の赤い閃光』。写真がついてる。コレ、ウルトラビーストじゃ……」
「そうやと思ったわ。ここ最近で急に、謎のポケモンが多く出るようになっとる。今までにも正体不明のポケモンはおったけど、ここまで目撃情報が多いとどれか一つはウルトラビーストやないか、思うてな」
いや……1つどころじゃ……。
あれだけ苦労して倒したウルトラビーストが、一度にこんなにたくさん……?
しかも、そのほとんどが
「……もし、コイツらがあの男の手持ちポケモンだとしたら……」
『偽物は殺さなきゃ』
「……クロウくん?」
狙いは俺だ。
「いえ、なんでもないです」
「そういうのが一番気になるんやて。教えてな。なーなー」
「なーんでーもありませーん」
俺がいるから、ウルトラビーストをけしかけて来るのだろうか。
だとしたら、リーリエを危険に巻き込んでいるのは俺ということになる。
そんなこと、許されない。
ここを出よう。
リーリエには悪いが、お祭りの約束をドタキャンしよう。
明日のうちに荷物をまとめてすぐにどこかへ行こう。
どこか遠くから、治療に使えそうなものを送っていれば、それでルザミーネさんも良くなる。
変わらずリーリエが狙われるようなら、その時に戻れば良い。
ポケモン達を置いていけば、リーリエを守ってくれるはずだ。
だからもう、俺がいなくても良いんだ。
もう───
「クロウさん! 母様が浴衣を用意してくれているそうです! お祭りは浴衣で行けますよ!」
「明後日が楽しみだね!!」
もう少しここにいてもいっかぁ!!!!!!!!!