リーリエロスでカントー行ったよ   作:バケットモンスター、縮めてバケモン

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たまにはこんな朝があってもいい

「クロウくん、クロウくん」

「んが。おはようございます」

「おはようさん。突然なんやけど、装置の材料の採集のためにちょっと遠出したいんや。クロウくんのポケモン、貸してくれへん?」

「……外……出るんですね」

「朝で良かった。真昼に外に出てたら溶けてたとこやったわ」

トリトドン(なめくじ)なんですか?」

「あるあるなんよ」

 

そんなあるあるがあってたまるか。

とはいえ、せっかく引き篭りが外に出ようと言うのだからそれを引き止めるわけにもいかない。

ボールから出て寝こけているイーブイ以外の四匹が元気そうだったので、彼らの了承の元マサキに一度預けることにした。

 

窓の外に昇る太陽を見ると……エッ、早く無い? 5時くらいじゃない? なんであんたそんな早起きなの?

 

「ほな行くわ! 夕方には帰ってくる!」

「あ、うぃーっす……」

 

足早に出ていってしまったマサキを見送り、朝食を用意する。

 

冷蔵庫は……え? フレンチトーストの仕込みが三人前、用意されてる……。

後は焼くだけで美味しい朝食が作れちゃう……。これをマサキが……?

 

「本当に頭でも打ったんじゃないか……?」

 

なんか昨日『これならイケるでええええ!』と何かを思いつき、狂ったように笑ってたけどそれと関係があるんだろうか。あるんだろうな。だってほら、残暑なのにもう雪が降ってる。そりゃマサキが料理したら雪だってあられになるわ、というコトで。

 

マサキお手製簡易コンロキット。これならリーリエのキャンピングカーに行かずとも簡単な料理ができる。煮込みとかは鍋の重さに機械が耐えられないのでNG。

 

ミルクと卵の焼ける甘い匂い。

じゅうじゅうとパンの焦げる耳触りの良い音が朝特有の眠気を誘う。

がちゃり、とドアが回される音に振り返れば、瞼を擦るリーリエがいた。

リーリエも起きるの早いな。……いや、この匂いで起きた感じか……?

 

「おはようございます……」

「おはようリーリエ」

 

エッッッ!!! 薄着エッッッ!!!

夏だから生地が薄いパジャマにしているのだろうけど白いワンピースだから肌色が透けるよ! ……ちゃんと透けてる? 肌白すぎて同化してない?

いやいやその前に髪の毛のツヤやばく無い? セット無しでこれ? うるつやとかのレベルじゃないんだけど全世界の女性の理想として君臨する髪質じゃない? はえー美人。かわいいわぁ。

 

「いいにおいがします」

 

リーリエは俺の前で結構気を抜くようになったよね。

寝ぼけていたり、疲れていたりで結構な頻度でふにゃふにゃする。可愛い。

信頼の証ということか。ふふふ、このまま襲っても良いんだぞ。

……まて。この薄着でキャンピングカーからこっちに来たの? ちょっと不用心が過ぎますよリーリエさん。誘拐されたらどうすんの? 罰として今夜は寝かさないぞ♡

 

「マサキ博士が昨晩仕込みをしたらしいフレンチトーストだよ」

「はぇ。はかせが……。博士が!?

「あ、おはようリーリエ」

「おはようございます。えっ、本当に博士が……?」

「俺もびっくり」

 

衝撃で完全に目が覚めたらしい。

と同時に自分の今の姿に気がついたようで、恥ずかしそうに席についた。

体を隠すように縮こまる姿は、これこそまさに恥じらう乙女。絵画にできるね。

ずっと眺めていても良いけど、流石に朝を薄着で過ごすのはちょっと不安。リーリエが風邪でも引いたら俺は泣いてしまうかもしれない。

 

「へくちっ」

 

。・゜・(ノД`)・゜・。

 

「リーリエ、ブランケット良ければ使って」

「すみません、ありがとうございます」

「俺が布団にしてたやつで悪いけど」

「クロウさんに守られてるみたいで安心します」

 

はい罪作りポイント五兆点。

なぁんでそんな男を誘惑するようなこと言えちゃうんですかね。天然なの? 人たらしの才能あるわよあなた。

 

「お待たせどうぞ」

「ありがとうございます……クロウさんの分は?」

「今から焼くよ?」

「え、じゃあもしかしてこれ、元々クロウさんの……ありがとうございます」

「気にしないで。それよりも冷める前に」

「はい。いただきます!」

 

フレンチトーストは少し焦げ目ができるくらいが一番美味しい。などと料理を語れるほどの腕でも無いが、基本()()()()()な気がする。

だってホラ、チャーハンだって多少のおこげがあった方が美味しく感じるし……他に例が思い浮かばないけど。

とはいえ、

 

「〜♪」

 

彼女があんなに美味しそうに頬張ってくれているのだから、焦げ目があったかなんてどうでもいいだろう。

うん。やっぱりリーリエの笑顔が好きだ。

 

「クロウさん、その、先ほどのお話もそうなんですけど博士は? 昨晩、ものすごい大声で何かを叫んでいたような……」

「なんか朝早くから俺のポケモン借りてどっか行っちゃった。なんかの発明でも思いついたんだと思うけど、なんなんだろうね」

「次こそ、母様を治す手掛かりになれば良いのですが」

 

ここのところ、本当にそれだけが気がかりだ。

ルザミーネの容態があれから一向に良くならない。

悪くなっていない、と考えればまだ良いものの、娘であるリーリエからすれば気が気では無いだろう。シオン旅行でもそんなようなこと言ってたしね。

ここらでもう一個、稲色のモモンの実みたいに俺が採取できる何か特効薬があれば良いんだけど……それも難しいか。だからマサキも俺も苦労しているわけだし。クロウだけに。殺すぞ。

 

「よし焼けた。いただきます」

「クロウさん、ミルクです」

「ありがとう」

 

この良妻っぷりよね。良き妻になるし良き母にもなるでしょうね。

 

「洗い物はキャンピングカーで私がします」

「わかった、お願いするね。ルザミーネさんの朝ごはんは俺が作るから」

 

───推しと喋るって、【幸】───

 

そんな至福の時間もあっという間に過ぎ去り、一般的に朝ごはんが終わる時間ごろ……大体8時か9時か、と言った具合か。

俺が焼いたルザミーネ分の朝ごはんと洗い物を抱えてリーリエがキャンピングカーへ向かって行った。

 

俺は自分のスペースへ。

棚の上に飾ってあるウルトラボール。うん、今日も埃一つ被ってない。

対してイーブイのボールは随分泥だらけだな? これも長い間使ってたしなぁ……。

本人はまだ寝ていることだし、ここらで一つ磨いてみるか。

 

ウルトラボールを磨くのに使っていたツヤ入れと汚れ取りができるスプレー。マサキが機材メンテナンスに使っているものを一本もらった。

そして巷の宝石店でも使われているらしい柔らかい生地のクロス。こちらはルザミーネさんがダースで取り寄せてくれた。まとめ買いの方が安いって言ってたけど……後で調べたら普通にエグくてワロタ。

 

そうして俺がボール、スプレー、クロスを持ってソファベッドに腰掛けたのと同時に、みさきのこやの扉が開けられる。

 

「クロウさん、今何をされてます?」

「ボールを磨こうかなって」

「お隣失礼してもよろしいですか?」

「良いよ?」

 

何をするのかと身構えていると取り出したのはクシ。

そのまま俺の隣で、上機嫌に髪を梳きはじめた。

うわ……女の子してる……可愛い……。

 

「……?」

 

やべ視線に気づかれる。ストーカーがバレる。

慌てて視線をボールに落とし、研磨液を染み込ませたクロスを揉む。

それでボールの汚れを拭いていって……。

 

「…………」

「……〜♪」

 

窓から差し込む光が、ボールを照らす。

リーリエの髪が揺れるたび、カーテンがなびくように地面に光の波紋を映し出す。

櫛と髪が擦れる音。

クロスがボールを撫でた時に鳴る甲高い音。

リーリエの穏やかな息遣い。

 

なんだか落ち着く。

 

心の底から安心する。

ここが俺の居場所なんだと、俺の居場所にして良いんだと、ホッとする。

 

「……好きだなぁ」

「んぇ? 何か言いましたか?」

「なんにも?」

「気になりますよ」

「趣味が出来るのって良いなぁって思っただけだよ」

「ボールですか? それはとても……よかったです」

 

チラリとウルトラボールに目を向けるリーリエ。

 

「次はドリームボール辺りでしょうか?」

「手に入れる機会があったらコレクションしたいね。カントーで手に入るのかなぁ」

「ゲームセンターの景品になる時もあるそうで……あ、いえ、なんでも無いです。ゲームセンターには行かないでくださいね」

「ええ……」

 

苦笑するリーリエに、俺も笑って返す。

うん。幸せだ。この居場所を守りたい。失いたく無い。

ずっと忙しかったから、たまにはこんな朝があっても良い。

こうしてのんびり、何をするって目的もなく、陽の光を浴びて過ごす時があっても良い。

それだって一つのアローラ(平和の意)だ。

 

 

 

 

 

そんな平和に波乱をもたらしたのは、それから数日後の宅配便だった。

 

 

 

 

 

 

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