リーリエロスでカントー行ったよ   作:バケットモンスター、縮めてバケモン

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この回はタグをつけるなら「アンチ・ヘイト」を含みます。
暴言、発狂描写、微グロ表現が苦手な方はこの回を飛ばしてお読みください。


無知でムチムチなミノムッチをスルー。ミノムッチムチ無知無視。

「ルザミーネさん、状態異常に効く漢方……になる薬草を集めてスムージーにしました。甘く味付けしてあるつもりですけど、隠しきれてない苦味があるかもしれません」

「ありがとうクロウくん。……ねぇあの、変なことを聞くようだけれど、何か……雰囲気が変わった?」

 

キャンピングカーの窓を開け、新鮮な空気を取り入れる。

外はすでに一面秋模様。大きな入道雲が高いところを飛んでいる。

少し前まで夏とか季節外れの梅雨とか言ってたのが嘘みたいだ。時の流れって早いね。

 

「……いえ、何も変わってませんよ? 俺は俺です」

「なら……良いのだけれど……」

「スムージー、ぬるくならないうちにどうぞ。ぬるいヤツほどこの世に要らないモノ、無いですから」

「……ええ……」

 

階段を降りると、落ち着かない様子でそわそわ座っていたリーリエが慌てて立ち上がる。

視線が右往左往しているところを見るに、ルザミーネの様子が気になるが何から聞けば良いのかわからないってとこだろう。

 

朝ごはん(バナナ)はちゃんと食べてたし別段熱があったりするわけでもない。昨日のスープに馬鹿みたいに玉ねぎ溶かしまくったおかげで脈も問題なさそう。多少、水分不足なことは気になるけどこの辺りはお茶とかジュースで補おう。1日に冷蔵庫のボトルをまるまる一本飲めれば上出来かな。あとはこんな感じの食事を続けていれば体力が戻ると思うよ」

「母様がどんどんオーガニックになっていきます……!」

 

健康志向と言っていただきたい。

 

「あとは市販サプリで足りない栄養を補っておけば大丈夫。今朝、市場の薬屋さんで買ったものがあるからここに置いておくね」

「サプリメント……ですか」

「何かダメだった?」

「あの、その……できればサプリメントは使いたくないです。その、昔の母様を見ているような気がして……」

 

……なるほど。

あれほど美に執着していたルザミーネなら、サプリメントの一つや二つ使っていてもおかしくない。

リーリエからすればトラウマなんだろう。サプリメントって存在そのものが。

 

「昔……母様の言いつけを破った時に、食事を抜かれて代わりにサプリメントを……」

「ひっでえ!!!!」

「そ、そうですよね!? あんまりです!!」

 

そこまで度がいきすぎてるのならウツロイドに鬱ロイドを打つロイドされてた時かなぁ。流石に異常と言いざるを得ない。

……とはいえ、ウツロイドの毒って豹変させるってよりかは元々あったもう一つの自分を曝け出すみたいな感じだから……そのルザミーネも、一概に全てウツロイドのせいともいえない。

ま、本人は自分が覚えていないことも謝りたい〜みたいなことを日常的に言ってるし反省の意思があるならね。うん。

蒸し返すようじゃないんだけどなぁ??????

まぁちょっと酷いよなぁ??????

蒸し返すようではないんだけどねぇ!!!!!!!!

 

「わかった。サプリは博士にでもあげておく。じゃあ代わりにもう少し栄養あるメニューにしないとね」

「すみません……」

「良いの良いの、リーリエは気にしないで」

「…………」

 

おっと、もうこんな時間か。

そろそろカビゴンに餌をやりにいかないと。

 

「じゃあ俺は森に行ってくるから」

「えっ……」

「ルザミーネさんがスムージー飲み切ったら、お腹に溜まるものあげておいてね」

「ま、待ってください!」

 

キャンピングカーの玄関ノブにかけた手が掴まれる。

ふにふにで柔らかい、小さくて可愛らしいリーリエの手。

 

そのまま視線をリーリエの方にやると、少女はただ震え、怯えていた。

……そんな目で見ないでよ。俺、何か悪いことしたのかな。

普段通りに接しているつもりだったのだけれど。

 

「私のせいですか?」

「せいって……なにが?」

「クロウさん、怖いです」

「そんなことは無いでしょ……。別に何か不機嫌ってわけでもないし、体調も良いよ」

「でもっ……言葉に棘が……言葉が、冷たい気がします」

 

そんなこと言われても……そんなに変わってるかな。

俺は大丈夫。……うん、俺は大丈夫だ。

 

「ごめんね。疲れてるのかも」

「だったら尚更、行っちゃダメです……。クロウさん、また倒れちゃいますよ」

「……野生のポケモンに負けるって言いたいの?」

「…………!」

 

言って、失言に気づく。

 

「……ごめん。もう行くね」

「待ってッ、クロウさん、そういう意味じゃないんです! 話を───」

 

言い切られる前に、扉を閉じた。

俺は今、許されないことをしている。

大切な人にひどいことを言い放ち、あまつさえ拒絶し、会話を放棄した。

リーリエはすごく傷ついただろう。

その証拠に、追ってこない。

たった一枚のドアすら開けてこない。

 

「来い、ケンタロス」

「ぶも……」

「森へ」

「ぶもっ、んぶぅ……」

「いいから森へ」

 

ケンタロスだって困惑している。

そりゃそうだ。主が怒ってるっぽいんだから。

でも違うんだ。怒ってるわけじゃないんだ。

いや、怒っているのかもしれない。

悲しいとも、腹立たしいとも違う。

罪悪感か? それとも劣等感?

わからない。

わからないんだ。

 

自分がどんな顔をしているかさえ、わからない。

 

「ぶも……!!」

「ッ、もう着いたのか。ごめんケンタロス、ありがと」

「ぶも」

「戻れ」

「っ……ぶもぉ」

 

ケンタロスをボールに収納する。

カビゴンが寝ている枕元に、きのみの入ったカゴを置こうとして……気づいた。

カゴが無い。

どこかで落としたか?

いや、背負っていたカゴごと落とすなんてそんなことあるわけないだろ。

……じゃあ最初から背負ってなかったのか?

 

「……嘘だろ……」

 

きのみを渡しにきてきのみを忘れたのか?

じゃあ一体、何しにここに来たんだよ俺は。

ほんと使えないな。

 

だから負けるんだよ。

だから増長して調子に乗って、リーリエを危険に晒すんだよ。

フェローチェがリーリエを気に入らなかったらどうするつもりだった? 戦ったのがフェローチェじゃなくて他のウルトラビーストでもリーリエに危害が加えられてたんだぞ?

だからお前はダメなんだ。

 

フェローチェがリーリエを気に入らないわけがないだろ。リーリエは誰もが魅入る存在だぞ。

 

そうやって現実逃避してきたから、リーリエを傷つけることになったんじゃないか。

現実を見なかったから、一人で戦えるって思ったんだろ。

 

じゃあどうすればよかったんだ?

ルザミーネさんにでも助けを求めて、一緒に戦ってもらうのか?

それとも『えんまく』でも使って逃げるか? ピッピ人形でも持ってるのか? あれ以外に最善なんてないだろう?

 

リーリエのために命を投げ出す覚悟があるんだろ。だったら、情けない声でリーリエを呼ぶ前に、死ぬ気で動けばよかったんじゃないか。

動け体、なんてカッコつけて、本当は怖かったんだろ。

リーリエなら大丈夫だと。なんとかなると。そう思い込んでたんだろ。

そうやって思考停止してるからお前は主人公じゃないんだ。何度言ったらわかるんだ。

 

「わかってるよ!」

 

ぐわん、と俺の声がこだまする。

驚いた鳥ポケモンが一斉に羽ばたき、動物のポケモンは草むらに逃げ込み、虫ポケモンは怪訝そうにこちらを向いた。

 

「わかってんだようっせえな! 俺は弱いよ! カッコつけてるよ! リーリエファンならそうしなきゃって思ったからそうしたんだよ! 死ぬのなんか誰だって怖いだろ! 今までの傷が痛むから動けないって言い訳してることぐらい俺だってわかってんだよ! 大体、こっちにくる前は普通の人間だったんだぞ! そう簡単に人が変われるもんか! 俺は臆病で泣き虫で嘘つきのただのモブなんだよ! いちいち正論言ってくんじゃねえよカス! 夢くらい見たっていいだろ!? 俺だって! 俺だって……!」

 

喉まで出かかった言葉。

飲み込まずに吐き出す。

 

「主人公に……なりたいよ……なってもいいじゃんか……」

 

いつの間に俺は膝をついていたんだろう。

手元の土を握りしめ、どこへ狙うともなく撒き散らす。

 

「ッ!!!!!!」

 

バサッ、という音。土くれが当たった草むらが揺れる。

 

「せっかくこっちに来たんだぞ! リーリエに好きって言ってもらいたいよ! 心配して貰いたかったよ! 怪我して怪我して怪我しまくって、俺がいなきゃダメなんだって思って欲しかったよ!」

 

ああそうだよ!

 

「俺はリーリエを下に見てんだよ!!」

 

違う! 下に見てなんかない!

 

「気持ちを利用してんだ! たかだかゲームのキャラクターだろうが! 俺の思い通りに動けよこの野郎!!」

 

リーリエは生きてる! ただのゲームキャラなんかじゃない!

 

「じゃあ俺は!! 異世界から来た俺は!!」

 

二次元と三次元、どっちの人間なんだよ!!!!

 

「俺はゲームの中のキャラなのか!? 二次元の存在になったのか!? それとも、ゲームの世界が三次元になったのか!? 俺がわかるわけねえだろバカにしてんのかよ!!」

 

ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!

体が痛い! 頭が痛い! 全身がふやけて消えそうだ! 何者なのかがわからなくなる! 死ぬ! 俺は死ぬんだ!

 

首を掻きむしり、のけ反る。

さっきまで握りしめていた土が首元で広がったことで服の中に入り込む。

それが気持ち悪くてまた叫ぶ。

癇癪を起こして暴れ回る。

木々を降り、ポケモンを素手で捕まえ放り投げ、触れた感触にまた嫌気がさす。

 

胃の中のものを全部ぶちまける。

何も出てこない。そういえば朝は食べていなかった。

そうして吐き気と頭痛で目の前がまっくらになり、ぬかるみで転んで大岩に頭を打つ。

弾ける視界の中ずるずると倒れ込んで、何が起きたかもわからないままぼーっと自身の体を見つめた。

 

「どろ、だらけ、だ」

 

服の下は包帯まみれ、その下は見るのも嫌なくらい悲惨な傷がある。

自業自得。俺のエゴが産んだ、リーリエに心配されるための傷。

気味悪くて、臭くて、触れるのも嫌ならくらいおぞましい傷。

 

「………………」

 

俺は気が触れちまったんだ。

たかだか一回負けたくらいで全部嫌になって、反抗期になって、飛び出して、大好きな人に何も伝えることなく死ぬんだ。

お似合いの最期だよ。

 

体力が回復すれば、ルザミーネはいずれ治る。

博士が作り上げた機械のチャージはもう終わっている。

あとは、ルザミーネに向けて照射し、ルザミーネの体を『ウツロイドに侵される前』に巻き戻せばいい。

今はそれに耐えうる体力が必要ってだけで、もう治る目処は立っているんだ。

 

俺はもう、この世界にいらない。

だから死んでも良い。

なのに。

 

なのにリリー。

 

「なんで俺を死なせてくれない!」

 

なんで俺を生かす! なんで俺を癒す!?

俺はお前が気に入るような男じゃないんだぞ!

リーリエを愛するって名目で気持ちよくなりたかっただけの最低男だ!

だから早く俺の体から出ていけよ! 生きるための力なんて要らない!

俺を殺せ!! 早く!!

 

「っおいおい君、大丈夫か!?」

「……大丈夫です」

「傷だらけだ!! 大丈夫じゃないでしょ!! 今すぐ助けられそうなところへ連れていくから!」

 

あーあ。

バカリリー。

お前のせいで助け来ちゃったじゃんか。

 

「ムーランド! この人の匂いを辿って! 多分向こうの方角から来てるから、そっちメインで!」

「バウワウ!!」

「……なんで、そんなことわかる……」

「大体の場所、バーネット博士から聞いてたから!」

 

言われて顔を上げる。

そこには、見慣れた初対面の顔があった。

 

「もう大丈夫!」

 

常に笑顔を絶やさず、無窮の才能で悪を打つ。

少女の心を救うついでに世界を救った、アローラ地方最強のトレーナー。

 

「君を助けに来た!」

 

アローラチャンピオン、ヨウ。

俺が最も憧れて、最も恨んだ主人公がいた。




クロウくん壊れちゃった(´・ω・)
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