リーリエロスでカントー行ったよ 作:バケットモンスター、縮めてバケモン
「今日の晩ご飯はちゃんぽんです」
「ちゃんぽん」
置かれた鍋はぐつぐつと煮え美味しそうな匂いを放っている。
ちゃんぽんってあれか。お相撲さんが食べる。それはちゃんこってな。
……。
ちゃんぽんのぽんってなんだ……?
「母様はたくさん食べてくださいね」
「ちょっと待ってリーリエ、一気にこの量は食べられないわ。こんなに食べたら太っちゃうわよ」
「こちらが博士の分です」
「うい」
「リーリエ聞いて? 人間は自分の肘から指先の長さより高くつまれたお野菜とお肉を一度には食べられないの」
「ヨウさんどうぞ」
「ありがと」
「リーリエ、レンゲはないかしら。人間は自分の肘から指先の長さより高くつまれたお野菜とお肉を箸では食べられないの」
「ウルトラビーストと合体した後である今の母様って本当に純人間なんですか?」
「アッ! 今言ってはダメなこと言った! 娘がグレたわクロウくん!」
「ちゃんと食べなきゃダメですからねルザミーネさん」
酷いわ!と悔しがるルザミーネに苦笑しつつ、席に着く。
まるまる一本、大きな木からDo It yorSelfした俺専用の椅子。
元々俺が座っていた椅子はヨウの寝取りキザクソ種付け野郎に取られてしまったので、代わりの椅子を作ったわけだ。
まあそれぞれ座る場所が決まりきっているわけではないけど。ルザミーネさんとかいる時といないときあるし。
とはいえ今まで4人集まっている時はマサキとルザミーネが隣で、マサキの対面に俺が、その隣にリーリエがいた。
今はそのマサキの対面を取られてしまっているのでお誕生日席を作っているわけだ。
ちなみにそのお誕生日席はリーリエ・ルザミーネ側ではない。
「あ、リーリエ」
「お水です、どうぞ」
「ありがとう」
マサキ、ヨウ側のお誕生日席である。
なぜかって言うと、
「……ん、ちょっと味が……?」
「はいリーリエ、ポン酢」
「ありがとうございます!」
「…………。ん、ん、ごほん。随分仲がいいんだね」
ヨウの前でリーリエとイチャイチャするためだよバカが!!
目の前でボトルや瓶がうろちょろしてウザいよねえええ!? かわいそうだねえええ!!
俺はリーリエが何を欲しているか本能でわかるんだよねえ!!
リーリエはその溢れ出る嫁力から俺及びマサキとルザミーネが欲しがっているものがわかるんだよねえ!!
「……リーリエ」
「あ、はい、なんでしょうか」
「…………。水とってくれる?」
「どうぞ!」
そうだよ!! リーリエと無言のやり取りできないのお前だけだよ!!
浅! アッッッサいねえ! 君とリーリエの絆あっさいんだよ!! 本当に一つ屋根の下洞窟の中で雨宿りした仲なんですかあ!?
ざーまーあー!! これに懲りたらその席よこせ! 特注の椅子作ってやるよ! お前だけ誕生日席で疎外感を感じやがれ!
「リーリエちゃん」
「博士もポン酢ですか? これ美味しいですよね」
「ちゃんぽんにポン酢ってどうなん?って思ったったけどイケるもんやな。……ってかこんなポン酢うちに置いとったかな」
「ナツメさんがCMに出たそうで、消費しきれないからと試供品をいただいたんです」
へぇ、あのナツメがCMね。
このポン酢を? ナツメが?
想像できね〜〜〜!!!!
「さっぱり旨味で、あなたも今日からグルメよ!」とか言ってるんだろうか。クソワロタ。
「ナツメと言ったら、ポケウッド女優でしょう? 彼女がポン酢のCMを……?」
「母様は寝ている時間の方が多いので知らないかもしれませんね。今は女優よりタレント寄りの活動をしていると聞きましたよ」
「そうなのねえ……」
「うおすっげえルザミーネさんもう半分食べたんすか」
「イケたわ」
「すげー! 人間じゃねー!」
「やっぱり人間じゃないの私!? ……うう、自己紹介するとき半ウルトラビーストって言った方が良いのかしら……」
よそわれたちゃんぽんをもりもりと食べ進めるルザミーネ。
たぱたぱとかけているポン酢の力で飽きも来ず食べれているらしい。
いやなんだよそのポン酢。すげえな。
…………。
ポン酢のぽんってなんだ……?
「うまうま。ぷはー! 食った食った! ごっそっさん!」
「博士、もう終わりですか?」
「んー、もうぽんぽんいっぱいやねん。それよか早くこのウルトラカプセルの完成をやな……」
「もう!! 絶対お腹いっぱいじゃないじゃないですか!! 取っておきますから後で食べてくださいね」
「おおきに」
ぽんぽんいっぱいのぽんってなんだ……?
うおお、やべえ。頭がこんがらがりそうだ。ちゃんぽん、ポン酢、ぽんぽん。狂気か?
「あーまたやらかした! リーリエちゃん、ワイまたポンやらかしたから出かけてくるわ! 必要な部品足らへん!」
「もう暗いですから気を付けてくださいね……」
「ぽ……ぽん……」
ポンやらかしたのぽんってなんだ……?
「? クロウさん、どうかされましたか?」
「ぽ……あ、いや、なんでもない」
「ぽ?」
首を傾げるリーリエの口に野菜が放り込まれる。
おおなんと蠱惑的な動き。咀嚼の一回にも品がある。
上品すぎて鍋がフルコースに見えてきたな。
どれ、俺も食べます。
「ん〜、うまいな……もぐもぐ」
「まだ秋も始まったばかりと言うのに寒くなってきましたよね」
「アローラの方でも異常気象があったって、梅雨前にも言ってたわね。……最も、その梅雨自体が異常気象で、夏の終わりに来たわけだけど」
なんとかよそわれた分のちゃんぽんを食べ切り青い顔をしていたルザミーネが、無惨にも積み上げられていく
なんの仕打ちだよこれ。ワンチャン復讐入ってるだろ。小さい頃満足に食べさせてもらえなかった時の復讐。
もう一杯食べれる
顎に指を添え、まさしく名探偵みたいなポーズだ。
「それは多分、ウルトラホールが関係していると思う。バーネット博士も言ってたし」
「「ウルトラホール……?」 でも、カントーではクロウさんしかウルトラホールを見ていませんよね? 今更アローラのウルトラホールが何か関係するとは思えませんし……」
「そうそう、俺もそれ言おうと思ってた。ウルトラホールから出てきたウルトラビーストこそが、異常気象に関係あるんじゃないの?」
事実、ウルトラビーストは理論上まだ他にもたくさんいるはずだ。
が、それはそうであるらしいがそこを踏まえた上で、ヨウは話す。
「確かに新しいウルトラビーストである可能性も無くは無い。けど、バーネット博士が考えるのは本当にウルトラホール単体の話なんだ」
「……というと?」
ヨウは鍋を箸で弄り、肉と野菜に分ける。はしたないですわよ。
「
「3日……」
「………………」
そのジト目やめて。かわいいから。
「で、このアローラにあるのがこのお玉……『原初のウルトラホール』」
「げんしょの……」
「ウルトラホール?」
「ルザミーネさんが最初に呼び寄せた本当に第一個目のウルトラホール。本来なら閉じたはずだけど、何かしらのきっかけでまた開いてしまったって可能性。で、ここにあったアローラの肉……ウルトラビーストが」
ぐるりとお鍋を一回転するお玉。
簡単に肉と野菜が入り混じり、元のちゃんぽんに戻った。
「熱やら大気やらを巻き込んで、それがカントーの異常気象の理由。ってバーネット博士は考えてるよ。実際のところがどうなのかは知らないけど、その『原初のウルトラホール』ってのは実在するみたい」
「……研究所の機械で存在が確認された、ってことですか?」
「そうみたいだね」
「質問です。その原始の……」
「原初の」
「原初のウルトラホールをどうにかしたら、異常気象は
「時間はかかるだろうけど、時空を捻じ曲げていた原因を断つわけだし、どうにかなるとは思うけどね」
そうしてお玉一杯分、
「でも必ずどこかしらに皺寄せがくる」
「!?」
どぽんとお玉がひっくり返されたのはルザミーネの杯の上。
「ただでさえ今も異常気象という形でアローラ、カントーともに影響が出てるんだ。長らく開いている原初のウルトラホールを通っただけでも、どこかしら、誰かしらにその分の負担が来るだろうね」
今の例だと、その皺寄せはルザミーネに行ったわけだ。
そしてヨウはお玉を鍋に戻して、
「たとえば……ウルトラホールからやってきた人間が近くにいれば、時空の歪みを通じてその人に優先的に皺寄せが来ると思うよ」
そう言って、理解したかと促すようにコチラを見た。
ウルトラホール……ねえ。
「……待ってください。じゃあ、ウルトラビーストが私を狙っていたのは……」
「ウルトラビーストは、ウルトラホールに帰ろうとする性質があるんだ。だからウルトラホールを通った人間は、そのウルトラホールの残滓を辿られてウルトラビーストに狙われやすくなる」
「そのあたりはなんとなくわかります」
「この場でウルトラホールを通ったのはリーリエとルザミーネさん……それと後から来た俺だけ。ルザミーネさんはちょっとだけウルトラビーストと合体してたから仲間と思われたのか……そのあたりは不明だけど、優先的にリーリエが狙われているのは確かだね」
うおおおお! すっげえわかりやすい!!
はえー、じゃあワンチャン俺も狙われてたんだ。アローラにはカントー行きウルトラホールに入る前のウルトラビーストもいるわけだろ? あのままアローラにいたらヤバかったかもなぁ……。そうしたら狙われるのはリーリエじゃなくて、近くにいた俺になってたのかも。
「さっきの説明は通常のウルトラホールの場合。原初ともなると、開いた、もしくは何かが通った……その
「でも、ウルトラホールを開くようなこと、誰にできるんでしょう? それこそほしぐもちゃ……」
がしゃん!
音がしてその方向を見ると、ルザミーネが
ちゃんぽんチャレンジの結果はルザミーネの肘から先一本分とその半分。結構行ったな。もくもくと食べ進めた結果、血糖値でも上がりまくって気絶しちゃったんだろうか。
「……ふう。講義は中断かな」
「母様は私が運びます」
「んや、俺が運ぶよ。リーリエはベッドの準備をして」
「本当ですか? ありがとうございます」
てきぱきとルザミーネを運ぶ準備を進める俺たちに、先ほどまでぺちゃくちゃ喋っていたヨウは慌て始める。
大方、自分だけ働けてないみたいで居心地が悪いんだろう。
「あのリーリエ、俺は……」
「後のことはクロウさんと私でやるので大丈夫です!」
「……そう」
でも残念!!!!
お前の仕事! ねえから!!
一生ソコで鍋の底でも突いてろ! ばーか! あ、今のこれソコと底をかけたジョークね。
いやー、しかしだいぶ進展したな。
色々謎だった部分がようやくわかり始めた感じ。
ポケモンって奥ぶけー!
……ポケモン。ポケットモンスター。
「クロウさんありがとうございます。母様を寝かせてください」
「……ポケモン」
「? ポケモンがどうかされましたか?」
ポケ……モン。
ポ……ケモ……ン。
「ポン」
「ぽん?」
ポケモンのぽんってなんだ……?
いや、流石にこれはこじつけが過ぎる。
寝よ。