リーリエロスでカントー行ったよ   作:バケットモンスター、縮めてバケモン

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不法投棄すな

カラッとしたよく晴れた朝だった。

そろそろ森の木の実を収穫せねば、と思い立ちカゴを片手にキャンピングカーへ。

ヨウは……まだテントで寝てるのか? 起きてるかはわかんないけどテントにいるみたいだ。

ノックノックノック。

 

……おろ。一階にはいないのかしら。

ノブは回るし入っても良さそう。

 

「リーリエ、そろそろカビゴンのところに───」

「わったったった!?!?!?」

 

……む。

机の上に覆い被さるリーリエ。

何かの途中だったんだろうか。

 

「今なに隠したの?」

「えっとあの、日記を」

 

こんな朝早くから? 妙だな。

とはいえ乙女の秘密を暴きはすまいよ。デキる紳士は受け入れるのです。

机の上のヨウとハウとの集合写真はそのままであることから、写真よりかは隠したいレベルが高いことがわかる。つまりヨウとの集合写真は俺に見られても良いと言うこと。すなわちリーリエからの信頼の証。AED救命完了ってな。

 

「カビゴンのとこに木の実を届けに行こうかと思ったんだけど……ソレに集中してるなら一人で行ってくるよ」

「ああ待ってください行きます行きます」

「無理しないでも……」

「一緒に行きたいんです!!」

 

むー、と膨れるリーリエ。デートのお誘い? あらやだ大胆なのね。

このままここにいてもリーリエは机と一体化したままだと思うので一度キャンピングカーを出る。

しばらくしてごたごたと音がしたかと思えば、いつものワンピースと鍔広帽子、ドラムバッグという家出お嬢様スタイルで出てきた。

 

「行きましょう、クロウさん」

「俺カゴ持ってるよね? 今手に持ってるよね?」

「も、持ってます。なんでそんなことを聞くんですか?」

「この前忘れちゃってさ」

「おーいリーリエー」

 

あっ出てきた。

雨風しのげるお家で寝れないの惨めだねえ。自分からテント張ったんだから今更家に入れてくれとも言えないねえ! どうだい? 前作主人公ヅラしてカッコつけてテント張って腰を痛めた気分は?

 

「どこに行くの?」

「クロウさんと森へ、ポケモンさんに会いに行きます」

「俺も行くよ。って言うか、クロウの代わりに俺が行くよ」

 

何をぬかすか。

 

「いえ、そもそも誘っていただいたのがクロウさんですし……ヨウさんはこの先の森に詳しくないですから」

「……そう」

 

フられてやんのざまあ!!!!

とはいえ、リーリエが言わなければ俺が全力で拒否していた。

だってリーリエとヨウ二人にするの怖いもん。なんか逃げられなくされてたっぽいし。

 

「じゃあ行ってくるから留守番よろしく」

「行ってきます」

「あ、うん……はーい……」

 

ケンタロス……は急ぎの用事でもないし良いか。のんびりいこうや。

 

季節はすっかり秋模様……なんて少し前からわかっていたことではあるんだが、やっぱりこうやって直で見ると季節の移り変わりが目に見えてわかる。

赤や黄、茶色の葉が森一面のカーペットになり、踏むたびにざくざくと音が鳴る。

腰くらいの高さにある木も同じことで、褐色を浴びながら風に揺れていた。

 

「ありましたありました、オレンの実です。この辺りはオレンの実が群生しているので少しもらっていきましょう」

「オボンの実もあるね」

「実りの秋とはまさに」

 

全狩りはしない程度にきのみをもぎって行く。

そもそもカビゴン1体で森食い尽くすほどなんだからここで多少きのみを取って言ったところでカビゴンの腹八分目にもならないと思うが、無いよりマシ!!!!

えーとクラボの実もある。……まぁ無いよりマシか。(から)いんだよねこれ。

 

「クロウさん、カゴを……」

「はい」

 

おやおやそんなにこんもり抱えちゃって。

大収穫じゃないですか。

 

「……ちょっと服が汚れてしまいました」

「少し汚れてるくらいな方が元気なリーリエらしくていいと思うよ」

「それ褒めてるんですか……?」

 

褒めてる褒めてる。

とはいえ、一切の汚れを纏わない神秘のリーリエというのもまたオツである。女神感、天使感増すね。

そう、そうなんだよ。普段綺麗な格好しているコがペンキとか服に飛ばしてたらめちゃくちゃ興奮するだろ? そういう特殊衣装というか、特殊スチルというかさ。

解釈不一致かな。その辺、どんなゲームでもあるよね。

 

「気になるようならハンカチいる?」

「……そうですね。少しそこで拭いてきます」

 

俺からハンカチと水入りボトルを受け取り、傍の方に逸れるリーリエ。

(ぬぐ)って取れる汚れなら良いか。マトマの実みたいにシミになるわけでもないだろうし。

 

しばらくしてリーリエが戻ってきた。

胸の辺りにあった汚れは綺麗さっぱり無くなっている。濡らしたのか濡らしてないのかわからんけどそこも乾いてる。すげー。

 

「どうでしょう。他に汚れているところなどはありませんか?」

「…………」

「? クロウさん?」

 

その手を広げるポーズ、ハグを思い出すからやめてほしいなぁ……。

ハグ待ちポーズに見えて刺さる……。えぐい……。

 

「どこかに汚れ、付いていますか?」

「ああいや、そうじゃなくて、その……」

「……?」

「…………髪、触りたいなって

 

うわああああ! ヘタレ! この大馬鹿野郎!

恥ずかしがって言うから気持ち悪くなるんだぞ!

胸を張って「抱きついて良いですか!!」って言うんだ! 何言ってんだお前気持ち悪いな馬鹿!

 

「……! どうぞ!」

 

お、おおおおおお!?

さらに腕を広げた!

なんだそのウェルカムの姿勢は! かわいいなおい!

 

えっあ…………え?

 

「……良いんですか?」

「外でするのは少し、緊張しますけど」

 

手をこちらに広げたままリーリエがはにかむ。

 

「クロウさんがしたいのでしたら」

「……手、拭くから待ってて……」

「はい……」

 

手を服の裾とハンカチで二重に拭う。

その間もリーリエはハグ待ちポーズをやめず、俺が手を綺麗にするのを見つめていた。

 

「……できましたか?」

「う、うん」

「では、どうぞ……!」

 

そっと、リーリエの肩に触れた。

 

「ん……」

 

風で木々が枝を揺らす中、リーリエが俺の背中に手を回す。

このまま抱き寄せれば、リーリエと俺は密着できる。

密着できる……んだが……。

 

「……?」

「ご、ごめんちょっと緊張がアレでヤバくて」

「……ふふっ。2回目なのに、緊張しているんですか?」

 

いじらしく上目でこちらを見つめるリーリエ。

エメラルドに澄んだ海を宿したような瞳に、俺の顔が映っている。

そんな距離に、俺たちはいる。

ダメだ。魅了される。リーリエが好きって気持ちが膨れて破裂しそうになる。

 

「しょうがないですね、クロウさんは」

「……ごめ───」

「えいっ」

 

とん、とリーリエが自身の肩に置かれていた手を取り、俺の胸に跳んでくる。

ふんわりと、ぬくもりに包まれる。

リーリエの服の肌触りや、リーリエの髪の手触りを一気に感じた。

海外では、ドキドキして止まらないことを「腹の中で蝶が暴れている」と表現するらしい。

もし今俺の腹を見たら、きっと無数の蝶で埋まっているのだろう。

白百合に群がろうと、俺の中で暴れる。

自分にも聞こえるくらいに、心臓がドクドクと脈打つのを感じるのだ。

 

「……どうですか?」

「リーリエ、あったかいね」

「そうですか? 私はそんなに緊張していないのですが……」

「そうなの?」

「クロウさんに安心しているからかもしれませんね」

 

マジかよ。

意識してるの俺だけってこと?

なんかちょっと悔しいな……っと、うん?

 

「…………」

 

金色の髪に紛れて真っ赤な何かが見える。

なんだろ。なんかの木の実がリーリエの髪の毛に絡まってるんだろうか。色的にクラボとか?

ここはさりげなく取ってあげるのがオタクの務めよな。

どれ、慎重にそっと。

 

「ひやっ!?!?!?」

 

お? セックスか?

 

「くっくくクロウさんっ、何を!?」

「え? ……あこれ耳か」

 

わ〜ふにふに可愛い〜☆

 

「あっ、んふっ、ひゃう……やめてください……」

 

わ〜リーリエえっち〜☆

 

……ハッ!?

俺今メタクソに最低なことしてたな!?

 

「ごっごごごめんリーリエ!! 真っ赤だったから木の実が絡まってるのかと思ってつい!」

「木の実が絡まってたら流石に気付きますよ!! もう!!」

 

バッ、と離れて額を地面に擦り付ける。

推しに認められたとはいえ流石に耳を触るなんて不遜な事をしでかした罪はいかようにでも受けますどうかこの首を切り落とし城への土産としてください!!!!

……でも待てよ?

 

「……耳が真っ赤……?」

「……っ……」

「リーリエ?」

「知りません!! ケンタロスさん!!」

「待って置いてかないでリーリエ! あとケンタロスのボールいつの間にッ……早え! おいケンタロス! なんだそのスピード! 止まれよ! 止まっ……全然止まんねえなおい! おーい! ぉーぃ!!!!!!」

 

 

 

 

ゼェッ……!!

ハァッ……!!

 

「し、死ぬかと思った……!!」

「お疲れ様ですクロウさん、水です」

 

冷たい! おいしい!

五臓六腑に染み渡る!!!

 

「ところでなんで追いかけてたんだっけ」

「忘れちゃったんですか?」

「なんかもう酸欠で頭がぼーっとして……ハグしたとこまでは覚えてるんだけど……えーと」

「さあクロウさん! カビゴンさんに木の実を!」

「おっとっと忘れてた」

 

最近忘れっぽくていけねえな。

 

森の奥にある小さくひらけた空間。そこにカビゴンは住んでいる。

いつものんびり優しく空を眺めているカビゴンを慕って……もしくは天敵ポケモンから身を守るためか、いつもカビゴンの側にはたくさんのポケモンがいる。

虫ポケモンや小動物系のポケモン。他の地方のポケモンもいるな。鳥ポケモンと近くの池に魚ポケモンも。……待て、鳥ポケモンと虫ポケモンは天敵じゃないのか。

 

「クエーッ!!」

「キシーッ!!」

 

あ、仲良いのね。

 

「カビゴンさん、木の実を持ってきましたよ」

「……………………モ゛ア?」

「いつも通り、他のポケモンさんと分けるんですね?」

「……………………モ゛ア」

 

やる気ねえカビゴン、レスポンス遅え……。

 

リーリエがカゴをひっくり返すと、周りで様子を見ていたポケモンたちがカビゴンの足元に集まり出した。

そうして全員がカビゴンを見上げ、何かを請うように視線を送る。

カビゴンがゆっくり10秒ほどかけて頷いたのを見て、ポケモンたちは木の実を分け合い、頬張り始めた。

 

「わっわっ! ポケモンさんたちがいっぱいです!」

「へえー。パチリスとかもいるんだな。……おお、ニョロトノが魚系ポケモンたちに木の実を持って行ってる。えっ嘘ガマゲロゲもいる!」

「持ってきたフーズもありますから、どんどん食べてくださいね〜!」

 

リーリエの声に反応したポケモン達が、我先にとリーリエに群がる。

普段のリーリエなら驚き後退りでもしていようものだが、もう何回もここに来てるし正直慣れっこである。

 

「おお、見てみてリーリエ。鳥ポケモンがカビゴンの口に木の実運んでる」

「すっかりカビゴンさんも、この森のヌシポケモンさんですねー」

 

にしたって動かなさすぎではなかろうか。ちょっと苔生えてるし。

岩などがついていないのは他のポケモンが手入れでもしているからか? こんなに慕われている姿を見ると、アクジキングに追い出されて気が立っていたのが嘘みたいだな。貫禄あるよ君。

 

「みんな、出ておいで」

「えぼっ!!」「ざあー!」

「メェルァ!」「シギッソ」

「ぶまー」

「お前は最初からいただろケンタロス。……さてみんな、メシだメシ。フーズだが我慢してくれー」

「ギッシャ!! シャギシギソー!」

「いやごめんて。だってリーリエにここで料理させるわけにもいかんだろ」

「ギシャー!」

 

たしかに、フシギソウがリーリエの料理食べたの屋外じゃん。

あの時だって外だったじゃん!という声もごもっともである。

だがすまない。ああいうのは事前準備が必要なんだ。グルメなフシギソウには悪いが市販フーズで我慢してくれ。

 

「……モアぁん」

「ん? どうしたカビゴン」

「もあーん」

「もあんじゃわからん。……ちょっと登るぞカビゴン」

「もあー」

「リーリエ、ちょっと行ってくる」

「はい、お気をつけて」

 

カビゴンのふさふさの体毛を掴みよじ登って行く。

マジでお前、どうやったらこんなアトラクションみてえな体躯になれるんだよ。山だよお前。

いや、ほんとに。へそのところに木でも生やしてやろうか。ドダイトスかよ。

 

「ふいー。話ってなんぞ、カビゴン」

「モア゛ン」

「もあんと言われてもな。……ん? 手? 指? お前の指か?」

 

ずごごごご、という音と共にカビゴンが己の手を上げる。

そこに握られていたのは1匹のポケモン。

イワパレスであった。

イワパレスはカビゴンの手から降りてこちらへやってくると、すぐに横を向く。

はて。なんじゃろ。

……ん? これは……?

 

「メガリング?」

「もあーん」「パレッシャア」

「ははーん。良い岩を見つけたと思ったら変な腕輪が化石みたいに埋まってて邪魔! ってとこだろ」

「もあ?」

「ぱしゃあ!!!!」

「当たりか。カビゴンはヌシとしてその悩みを聞いて俺になんとかできないか聞いてきたってことね。立派なヌシだよお前は」

 

さて。

メガリング。メガリングなあ。

かろうじて一部が岩場から出てるからそれがメガリングとわかるものの、大半が埋まっていては力づくで掘り出すというわけにもいかない。

ここは周りの岩場を削って取り出しす方が最善か。

 

「イワーッ!」

「は!? なに急に!?」

「パスパレパラパラ!」

「なん……えー……? バランスが崩れるからなるべく削らずに掘り出して欲しいみたいなこと言ってる?」

「パレ!」

「無理ゲーすぎる……」

 

これ実は半分が消えたメガリングで上表面だけが埋まってる説とかない?

グッ。

ダメだ。完全に8割が埋まってやがる。びくともしねえ。

て言うかこのリング、キーストーンが埋まってない。地層として埋まってるってことは石だけ外してリング捨てたやついる? 不法投棄すな。

 

「カビゴンこれ無理だ。エスパーポケモンにテレポートみたいなの頼むしかないって。もしくはドリュウズとか近くにいないの? 俺じゃ無理かもこれ」

「パレ……」

「もあーん……」

「すまんな……」

 

ちょっと手に負えないわ。一旦リーリエのとこに戻りましょ。

ひゅっ(カビゴンの腹からジャンプする音)

バゴンッ(衝撃を殺しきれず骨が砕ける音)

パキ!(治す音)

 

「いってぇ〜」

「ぶっ、無事なんですか!? すごい高さから落ちましたけど!?」

「骨は折れるたび強くなるって言うし、いつかはカビゴンから飛び降りても大丈夫になるのかなぁ」

「折れたんですか!?」

「治ったよ」

「治ったんですか!?!?!?」

 

ほっほっほ、今更何を言うか。

これくらい治るって。リーリエ推しなら骨くらい再生できないとな。

おーどうしたイーブイ。上に何があったかって?

なんかなー、変な腕輪が岩場に挟まってるポケモンおってなー、どうにか削り出したいんやけどおっちゃんには無理やってん。世知辛いわぁ。

 

「えぼ?」

「……お前には分からないよなぁ」

 

さて。

そろそろ見回りにでも行きますか。

なんか困ってるポケモンとかいたら助けなきゃ。

 

「リーリエ、見回り行ってくるよ。ここのことは頼むね」

「わかりました。お気をつけて」

「イーブイ! 行くぞー!」

「…………」

「イーブイ!! 探してるポケモンがいるんだってば! 今朝散々説明したろー! 協力してくれよー!」

「……ぼっ!? えぼ、えぼー!」

 

なにボーっとしてんだコイツめ。いつも何も考えてなさそうなアホ面さらして生きてるくせに。

アッ痛! ひっかいたなお前!

はーい再生ーwww リーリエ推しである俺にはお前の『みだれひっかき』ごとき効きませーんwww

痛っ。

ごめんて。痛いのは痛いねん。

 

「よし、行くかイーブイ。探しに行こう」

「……えぼ、えぼぼ」

「……マジでお前、何が気になってるの? ねえ? 教えて?」

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