リーリエロスでカントー行ったよ   作:バケットモンスター、縮めてバケモン

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虹色の羽。銀色の風。

時計がないからわかんないけど……眠さからして深夜。

俺はいつものようにソファベッドで寝ている。

マサキはウルトラカプセル(仮)の素材調達のため他の街まで出向き、そのまま外泊するらしい。お金持ちっていいね。

 

つまり今、みさきのこやにいるのは俺一人。

だから、今そこで玄関の扉を開ける人は空き巣か俺に用事がある人だけだ。そして今回は後者。

靴の音が重い。リーリエをはじめとする女性じゃない。

 

カーテンを開け、俺がいることを確認し、懐から銀色に光る刃物を取り出す。

月の光が窓から差し込む静かな部屋の中、フードを被った男は大きくそれを振りかぶり……

 

「イーブイ!」

「えぼぉいっ!!!!」

 

イーブイの放った技によって、動きを阻害された。

 

「身体が……動かない? これは……」

「そうだよね。俺を始末するのなら、このタイミングしかないよね」

 

振り上げた体勢のまま焦った声を出す男をそのままに、俺は起き上がる。

 

「悪いけど嵌めさせてもらったよ」

 

イーブイがきぜつしたポケモンを引きずってくる。

緑のフードと、弓のように進化した翼。

猛禽類を思わせるフォルムはその外貌からでも強さを感じさせる。

 

「……あー……。もしかしてこれ……そっかあ」

「あ、気づいちゃった? そうだよ。お前とおんなじ手を使ったんだ」

 

こいつを探すの、本当に苦労したよ。

だってこいつ、昼間はマジで姿を現さないんだもん。

 

「ジュナイパーの『かげぬい』、まねっこさせて貰ったよ」

 

かげぬい。

ゴーストタイプの物理技。

 

「ずっと森の中に待機させてたんだろ。だから気づかなかったし、倒されたことにお前自身も気づいていなかった。……森の中には行けなかったから」

 

その効果は強大。

 

「やっぱりお前か。───ヨウ」

 

相手を、逃げられなくする。

 

「フェローチェと戦う前……投げ出される前。急に身体が動かなくなったんだ。だから何かしらが潜んでるとは思ってたよ」

「…………」

「リーリエは怖くて逃げられなかったんじゃない。『かげぬい』の効果で、逃げられなかったんだ」

「はっ」

 

目を逸らして笑うヨウ。

口角は上がっているが、笑顔じゃない。

鼻で笑うかなような嘲笑。バレてしまったか、と言わんばかりに目を逸らす。

 

「そうすれば、俺を窓から投げたのはガオガエン。その後の泡の攻撃はアシレーヌ。で、ジュナイパーが森から狙撃してたってわけだ。卑劣だよな」

「そんで、何が言いたいわけ?」

「……なんでウルトラビーストにリーリエを狙わせたんだ」

「ウルトラビーストがリーリエを狙うのは自然なことだって、説明しなかったっけ。」

「とぼけてんじゃねえぞ! 稲色のモモンの実を食い散らかしたアクジキングも! リーリエがいるところすら燃やしかねないテッカグヤも! その後出てきたカミツルギも! あまつさえリーリエに直接被害を出したズガドーンも! 全部お前がけしかけたんだろうが! じゃなきゃ、俺を狙わないのがおかしい! ……偽物を消すなら、俺だけで良かっただろ!」

「どういうこと?」

 

大きく息を吸う。

震えが止まらない。

 

「俺も、ウルトラホールを通ってるからだ!」

「……へえ」

 

鍋を囲みながら説明された時、違和感を感じた。

 

「ウルトラホールを通った人は優先的に狙われるのが自然だって? だったら俺だって狙われなきゃおかしいだろ! それどころか、お前がフードの正体なら……お前はウルトラビーストを操れるはずだ! 自然もなにもあるか!」

「……あー。そっか。そうだよね。そういうことか。そういうことだったんだよ。でもね。俺は君のために行動していたんだよ。少しでも早く楽にしてあげたかったんだ」

 

瞬間、刃物が振り下ろされる。

咄嗟に弾こうとするも体勢が悪く、そのままソファベッドに押し倒された。

しまった……『かげぬい』の効果が切れた……!

 

「イーブイ!」

「起きろジュナイパー! 『かげぬい』!」

「ジュナッ……!」

「!? ……っ、えぼぉ……っ!!」

 

イーブイの動きが封じられた!?

って、コイツ……力強……!!

 

「君は本ッ当に邪魔だった!!!!」

「……イカれてんのかテメェ……!」

 

直接言えよそんなこと!

ポケモンに襲わせて殺そうとして!

そこまでして偽物が憎いかよ!

俺は……生きちゃいけないのかよ!

せっかく……リーリエと仲直りできたのに……!

 

「そうか。そうかもな。なぁ君。偽物の意味が知りたかったら、おつきみやまに来なよ」

「……おつきみやま?」

「俺は全部知ってる。俺は全部救うんだ。そのために君は邪魔なんだよ! リーリエに会いたかったら……来な。……ほしぐもッ!」

 

───ッ!

───ッ!

 

重なる声。

窓の月光が遮られる。

光を放つ太陽のようなタテガミと、夜空を閉じ込めたカーテンのような翼を持つ二匹のポケモン。

 

「教えてやるよ。俺の手持ちの残りの二匹は、コイツらだ!」

 

やがて光が影に遮られて、刃物の反射すら見えなくなる。

暗闇に溶けたヨウはいつの間にか消えていて、そこにはもとあった無人の静寂が残った。

身体は、もう動く。

 

「…………」

 

いない。

 

「…………リーリエ」

 

気配が、しない。

 

「リーリエ!!」

 

キャンピングカーから、リーリエの気配がしない!

 

「……やっぱり……!」

 

リーリエが何かを隠していた机の上に、ぽつんと置かれた小さなそれが月明かりに照らされて光る。

冷たく艶やかで神秘的な、金色の髪を使ったおまもり。

まだ不完全で未完成のおまもりを腰から下げて、俺はキャンピングカーを出た。

 

あんなに純粋で、優しい子を攫うって。

俺殺すために、リーリエを誘拐すんのかよ。

俺殺すために、リーリエを命の危険に晒すのかよ。

 

それが……。

それが……!

 

 

 

「俺が憧れた、ヨウ(主人公)のやることかよ……!」

 

 

 

このままじゃリーリエが危ない。

今すぐにでも後を追いかけて……!

 

「っ、わっ!?」

 

家具に足を引っ掛けた。

リーリエが使っていたソファベッド……。

俺に行くなって言ってるみたいだ。

 

『無茶は』

『厳禁、ね?』

『……はい!』

 

このキッチンで、二人で交わした約束が、ふと頭をよぎる。

リーリエ。俺悔しいよ。

ヨウに対してじゃない。

君に対してだ。

 

君はいつでも先を見据えて、俺に降りかかる災いを避けようとしてくれている。

……もしかして、ソファベッドに足をひっかけて転ばせるのが、このお守りの効果? そんなわけないか。

 

何手先まで読んでいるんだ。

手が届かない存在すぎるよ、リーリエ。

 

わかった。俺の負けだ。

 

「君を、完璧に救ってみせる。無茶せずに」

 

深夜。

月ももう傾きかけている。

みさきのこやにあるリュックを掴む。

助けるためには準備がいる。

 

「……これも。これも、これも」

 

マサキが作った発明品の数々。

なんだっけこの靴。ナマコブシの技術の応用で高所からの落下の衝撃をある程度和らげてくれるんだっけ。とりあえず持っていこう。

これは……メテノの包帯が1ロール。俺が持ってるものじゃない。予備……というよりは追加で発明できたもうもう一個、なのかな。

 

とりあえず手当たり次第に使えそうな装備を持っていこう。何があるのか分からないんだから。

かいふくのくすりは……いや、出し惜しみしている場合じゃない。持っていこう。

それと……。

 

「…………」

 

………………。

 

「これも」

 

さあ、リュックサックは準備OK。

行かなくちゃ。

 

「イーブイ」

「えぼっ!」

「少しの間、ボールに戻っててくれ」

「えぼぼ」

「ケンタロス」

「ぶも」

「……行くよ。リーリエを助けに」

 

最初と比べてケンタロスも逞しくなったものだ。

イーブイだって、比べたら格段に強くなってる。

それに手持ちの御三家たちも。

 

……ごめんな、みんな。

今からレベル上げしてる暇なんか無いんだ。

一緒に負けに行ってくれ。

 

「負けても……勝つから」

 

だから後少しだけ、俺のわがままに付き合ってくれるか。

 

走り出したケンタロスの背に捕まり、野を駆る。

夜空に溶けた月明かりが俺を導いてくれた。

ハナダシティを抜け、4番道路へ向かう道。

 

「ごめんなさーい! そこの人、止まってくださーい!」

「……?」

 

バリケードの前に立つ人の声に足を止める。

ケンタロスから降りると、すぐにジュンサーがやってきた。

 

「ごめんなさい、ここから先でポケモンが暴れているの。少し待っていてもらえないかしら」

「……わかりました」

 

ポケモンではよくある、ご都合な通行止め。

作品やタイミングによって理由はいろいろ違うが、今回はポケモンが暴れている、と。

こういうとき、どんなに待ってもどんなに手を尽くしても、大抵ことは進まない。別の方向に誘導されてるんだ。

 

どこに行けば良い?

どうすればリーリエに会える。

 

「……ぶむ?」

「あっちだ。行こう」

 

耳を澄まして目を凝らす。

風に揺れる木々が、大地に染みる水の一雫が、俺を導いてくれる。

側から見れば、ただの勘かもしれない。

でもそれで良いんだ。

おつきみやまに、行ければ良いんだから。

 

空を雲が埋め始める。嫌な予感がする。

走るケンタロスを止めたのは、今度はジュンサーじゃない。

 

「ゴァァァアアア!!!」

「……ツンデツンデ……。めんどくさいな……」

 

大きな岩の塊だった。

ブロックたちの赤く光る無数の眼孔が気味悪くこちらを見つめている。

 

「ケンタロス! 『じしん』!!」

「モ゛オ゛オ゛オ゛オ゛!!」

 

大地を揺るがす咆哮。

土流がツンデツンデを巻き込み、ツンデツンデが散らばる。

そこに、どこからともなく生まれ出た水が流れ込んだ。

やがてそれは渦となり、ケンタロスの目線の先に大きな水の竜巻があがる。

 

「チェンジだ! 『なみのり』!!」

 

そうしてツンデツンデがまた一つにまとまったところを、

 

「チェンジ!」

 

大きな光が吹き飛ばした。

 

「───『はかいこうせん』」

「……ぶも」

 

今までマサキが集めたわざマシンも全てリュックに入れてきた。

これがある以上、ケンタロスは無数とも呼べる技が使える。

 

「いこう、ケンタロス」

「ぶも」

「たぶん、この先にも敵がいるから」

 

ウルトラビーストでもトレーナーでも、あるだけ連れてこい。

試してみろ。俺だって元主人公なんだ。

 

絶対助けるからね。

リーリエ。




ポケモンの資料買ったので読み切るまで待っていただけるとvery happy
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