リーリエロスでカントー行ったよ   作:バケットモンスター、縮めてバケモン

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VSフレンド 後編

熱い。

全身を流れる血がいきなり熱湯に変わったみたいだ。

急な変化についていけない身体が異常を知らせようと大量の汗を出す。

わかってる。今の俺が異常なくらいわかってるよ。

 

リリーの力で作った特殊なメガストーンだけで、メガシンカ。それを三匹同時に……!

 

「っぐ、ぐああ……!」

「グア……!?」

「大丈夫だリザードン……! こっちは気にするな……ッ、うぐ……!」

 

体の内側からエネルギーが溢れて止まらない……!

三匹全員の意識が混ざり合って頭に響くせいで集中もできない! 立つことすらままならない……!

でも……ッ……!

 

「ライチュウ!」

「ライラーイ!」

「『スパーキングギガボルト』!」

 

俺の本能が告げている!

今ここでメガシンカを止めたら、俺は倒れる!

痛みで気絶しそうになって、けれど痛みが寝ることを許さない。

そんな状態だから、俺は今意識を繋いでいられるんだ。

三匹に任せて寝ても良いんだろう。

けど、三匹とも初めてのメガシンカ。もしかしたら三匹にもダメージがいくかも。

 

……気合いでなんとかなるのかな。

気合いでなんとかなるのなら。

 

「耐える……耐えられる……!」

 

俺は……ッ……!

アローラからカントーまで泳いで来た男!

たかだかメガシンカ三匹分くらい負担できなくてどうするんだよ!

 

立て!

立てる!

俺なら立てる!

 

「……えぼ」

「……イーブイ……?」

 

トン、とイーブイが額を俺のおでこにくっつけた。

大丈夫だ、と言うように、それ以上何かを語ることもなく。

 

 

─────────

 

 

…………。

 

イーブイの考えが流れ込んでくる……。

 

お前がしたいこと、やりたいこと、全部わかる。

 

『えぼぼ!』

『…………』

『えぼぼいぼ!!!! へぽぉい!』

『……はは。そうか、へぽぉいね』

 

アクジキングの時も、止めてくれた。

死ぬなって。まだできることがあるって、教えてくれた。

お前はいつも、冷静で、強くて。

 

『俺の命、お前に預ける!』

『えぼ!!!!』

 

テッカグヤの時だって、お前は俺という足手纏いを背負って戦ってくれた。

結局俺は、お前がいないと何もできないヒト畜生なんだよ。

 

「えぼっ!?」

 

……違うの?

 

「えーぼっ!!」

 

……違うんだ。

 

「えぼぼ。ぽぽいえぶぶいぶぶ」

 

お前意外と口悪いね?

……そう。そんなふうに思われてたんだ。

光栄だよ。

てっきり、一方的に付き合わせてるだけだと思ってたから。

だからそんなふうに言ってもらえるなんて思ってなかった。

 

「えぼーっ」

 

心外って、よくそんな言葉知ってるね。

 

「えーぼっ。えぼぼいぼ。ぷぷい」

 

いやいや馬鹿にしてない! 断じてしてない!

ワタシをシンジテー!

 

「えぼ」

 

うん。ありがとう。

俺たち二人……もしくは二匹。

仲良く揃って、メガ御三家たちをフォローしてやろうぜ!

 

 

─────────

 

 

有り余るエネルギーとそれに耐えきれず壊れゆく身体。

そばにいたイーブイを腕に乗せ、目を合わせた。

 

「えぼっ、ぼっ……ぶぶぅ……!」

「ぐぅ……うっ……おおお……!」

 

イーブイの中で、何かが変わる。

身体の中の『進化させない石』が、『進化させる石』に変化する……!

 

「これが……俺たちが生み出したキーストーン……!」

 

いつしかイーブイの首に、メガリングが巻き付いていた。お前、あのイワパレスの石なしリング取ってきたのかよ。やるやん。

身体を渦巻く重く苦しいエネルギーの奔流は暴走を止め、今、俺たち4匹+1人のシンクロが安定する。

 

えぼっ(『かえんほうしゃ』)!!!!」

「グオォォォォ!!」

 

イーブイの呼びかけに応えるように業火を吹き出すメガリザードン。

何より赤く煌めいた火炎は迸る雷すら飲み込み、ライチュウを吹き飛ばす。

それでも電撃は止まらない。弾け、大地を抉り、突き進んでくる。

 

「メガフシギバナッ! 受け止めろ!!」

「バナァ!!!!」

えぼぼいぼーっ(ハイドロポンプ)!!」

「ガメガッ……ッ!!!!」

 

分厚い皮膚が雷を通さない。これはとくせいじゃなく、フシギバナが元々持っているタフネス。

その背後から放たれた水流は電気を吸収し、辺りに散って電気ごと地面に染み込んだ。

よって、スパーキングギガボルトの無力化。

 

「フシギバナ!!」

えぼぼーぼ(ソーラービーム)!!」

 

メガリザードンYのとくせい『ひでり』!

メガリザードンが放った火花たちが、洞窟内で弾け光る!

その光を吸収した、メガフシギバナのソーラービームは……!

 

「バナァッ!!!!」

「ラッ………………!?」

 

即座に充填を完了し、ライチュウへ放たれる!!

 

「ライチュウ!!」

 

噴き上がる白煙。

全てを出し切った3匹の目の前で、砂煙から出てきた影は……。

 

「……らい」

 

目を回し、気絶していた。

 

「はぁ……はぁ……!! 勝った……!!」

「そんな……」

「ハウに!! 勝った!!」

 

あのハウと対戦して!!

実力で!! 勝った!! 

 

「はは……ははは! 嬉ッ、しっ、ぐっ、うう……!?」

「えぼ、ぼ、ぶ……!! イビィ……!!!!」

「だっ、大丈夫!?」

 

増幅したエネルギーのコントロールが難しい……!!

3匹に与え続けているエネルギーをイーブイを通して……俺に戻さなきゃ……!!

一対一でやりとりをするならまだしも、3匹同時にエネルギーの調整を……!! っ、そうだ、キーストーンを俺の体に戻さなきゃ……!!

 

「あ、あ、ぐあ……!!」

「ちょっと!! ほんとに大丈……痛っ!! 何今の……びりっと来た……」

 

頑張れ! 頑張れ俺!!

 

「……ぃリエを……!!」

「……!?」

「助けなきゃ……!! ヨウと話をしなきゃ……!!」

 

そのためだったらこれくらい!

これくらいやってみせろ!!

 

「……はー。しょうがないなー」

 

土を握りしめていた手が取られる。

いつしか目の前にハウがいて、俺の手を握っていた。

 

途端に、メガシンカで増幅し暴れていたエネルギーがハウに流れ込む。

ハウの手が震える。エネルギーが急に流れているせいだ。

 

「ハウ……だめだ……!!」

「エネルギーは、流れ」

「…………っ流れ……」

「力で押さえ込むんじゃなく、水を手で掬うみたいに」

 

流れ……流れ……!!

っ!! ハウにもエネルギーが流れてるからか、余裕ができた!

これから、まずメガシンカ3匹達にエネルギーを返すことから……!

 

「……ぐお」

「リザードンが戻ったねー」

 

コツが掴めた! エネルギーは流れ!

水を注ぐみたいに、それぞれにゆっくり注いで……!

 

「ックス?」「バナバナ」

「2匹も戻ったね。あとは……」

「ぐ……最後……!」

「えぼ……!! っ、へぽい……!!」

「君たちだけ、だよー」

 

イーブイのキーストーンから、エネルギーを抜き取る……!

固まった繊維をほぐして一本の糸にするみたいに……!

少しずつ……少しずつでいいんだ……!!

 

「……あ、石が消えた」

「ッハア!!!! ……はぁー……はぁー……!」

「えぼ……ぜぇ……ぷひい……」

 

戻ったー……。

反動キツすぎるのよメガシンカ。なんなの?

これ扱える主人公、やっぱりやべー……。

 

「ぐああああ〜!! 頭いたーい!!」

「どうどう、どうどう。水いるー?」

「ありがとう……。なんで俺を助けてくれたの?」

「えー?」

「このまま助けなければ、俺はエネルギーの戻し方がわからずに倒れてたと思う。ヨウの仲間なら、敵の俺を助けるなんて……」

「あー……」

 

ハウがカバンから紙袋を取り出す。

その中に入っているものを二つ取り出し、一つをこちらに差し出した。

 

「バトルをしたなら、友達かなってー」

「……ハウ……!」

「アローラから持ってきたマラサダ、食べるー?」

「ッ……たべる……! たべるよ……!」

 

メガシンカの反動をモロに受け、ろくに動かない体でマラサダを受け取る。

俺が動けないのを知ってやれやれと首を横に振ったハウは、俺のリュックから回復ポシェットを取り出して、リザードン達に薬をかけ始めた。

 

「……ごめん……」

「良いって。バトル楽しかったし。またバトルしよー」

「できるかなぁ……」

「できないの?」

「ヨウが話を聞いてくれなければできないかな」

「……あー」

 

ハウは今、なにやってるの。

しまキング? それとも何か、他の目的があって旅とかしてるの?

リーリエにお手紙、たくさん書いた?

口が動かないや。

それにこれは……俺が知っているべきことじゃない。

 

「人に持病ありだねー」

「……事情あり?」

 

縁起でもねえ。

 

「そうそれー。バトルで、考えが伝わってきたんだ。何かを目指していて……早くそこに向かわなきゃって気持ちが」

「まぁ、ね……」

「よし! 回復終わったよ!」

 

回復ポシェットから使いかけのメテノ包帯を取り出し、痛む腕にぐるぐる巻く。

外傷がすぐに治る包帯だけど……元々はルザミーネの毒を治すために作ったものだ。筋肉の疲労にも効果あるでしょ。なくてもプラシーボプラシーボ。

 

「あ、なんかそれグラジオ好きそう」

「あー……確かに」

「グラジオも知ってるの? 君って何者?」

 

よっこらせ。

そろそろ行かないと。

 

「ただのモブトレーナーだよ。人よりちょっと頑張れるだけの」

「……そういうのも、グラジオ好きだと思うよ!」

 

やめて。

 

 

 

 

彼は行った。

おれを倒して先に進んだ。

その背中がなんだか彼と似ていて、つい見送っちゃった。

 

「はー! 楽しかったー!」

 

その場にばたりと倒れ込んで天井を見上げる。

……うん! 岩だ! 洞窟だもんねー!

 

「……不思議な人だったな……」

 

おれのことを知っているみたいだった。

どこかで会ったことあったかな?

うーん……。

 

わかんないや!

 

それにしても、急にポケモンが進化するなんて。

だいたいポケモンの進化って、なんでもないときにふらっと進化したり、手に汗握る戦いの後で一皮剥けたよ!みたいな感じで進化するもんなんだけどー……。

 

「あのむちゃくちゃ具合、なんだかヨウみたいだったなー」

 

アローラでの日々が懐かしいや。

グラジオとおれとヨウで、オハヨウトリオとか考えてたっけ。口に出したことはなかったと思うけど。

 

あれから何度もヨウに挑んだけど、チャンピオンの座は取れなかったなー。

あ。あとでポケモン、返してもらわなきゃ。

最初に貰ったおれの相棒。

 

…………。

 

ふう。

 

「あー!! 悔しー!!」

 

悔しー!!

 

悔しー!

 

しー!

 

しー……───

 

 

 

 

はっ!!!!

 

洞窟の中で大声出すと、ぐわんぐわんする!!!!

 

楽しい!!!!




資料届いたから今度こそお時間もらうわよ
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