リーリエロスでカントー行ったよ   作:バケットモンスター、縮めてバケモン

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VSライバル 前編

 

洞窟の中を進む。

気配でわかる。リーリエはこの奥にいる。

ところどころで、露出した宝石のようなものが光っている。

これが光源になっているから、かろうじて暗闇でも目が見える。……と思う。俺が暗視を会得したわけじゃないよね?

 

しかし……めちゃくちゃ暑い……!

ゴタゴタして足場が安定しない岩肌を歩いているせいか、疲れて汗が出る。

その熱が洞窟の通路内にこもって、とてもじゃないけど暑すぎる……!

 

リザードンの羽で風を起こしてもらうことも考えたんだけど、あいつそもそもとして尻尾燃えてるんだよね。燃え燃えジュッ♡(肌が焼ける音)

 

何か使えそうな道具ないかな……うちわとか……。

……はあ? 何これ。瓶? 薄緑の液体がちゃぷちゃぷしてる。

馬鹿だろ、旅に行くのにこんなでかい瓶に液体入れて持っていくやつがどこにいるんだよ。俺でした。

っていうかうわ、これがリュックの重さの大半締めてるじゃん!

ポンしてるわー……。もう中に道具なんてほとんど入ってないぞ。ここから先、発明品の恩恵は期待できそうにないな……。

 

「はぁ……はぁ……しんどい……」

 

ちくしょう! イーブイたちめ、俺のボールケースの中で自慢げに動きやがって!

お前らはいいな! ボールの中にいれば暑くないんだから! ばーか! 全員ここで出しておしくらまんじゅう状態にしてやってもいいんだぞ!

 

……あ、静かになった。それでよろしい。

やれやれ、戦場なんだから騒がないの。

 

───ッ!

 

「ほらね? お前らが騒ぐから俺が闇討ちされちゃったじゃん。美容師いるよココ」

 

黒い影が俺の髪を一房切り、また闇に消えていく。

ピリ、と首筋に走った()()()()()()()()()に振り向けば、真っ白い刀のようなものが今まさに俺の首を刎ね飛ばさんとしているところだった。

半歩引いて避ける。あっぶね。心臓バクバクなんだけど。

 

「キイ、キイ」

 

うわコウモリおる。

めちゃくちゃ俺に牙立てようとしてる。あぶないね。

 

……お。後ろからすんごい気配。

狭い洞窟でお前と遭遇したら多分死んじゃうなぁ……。

 

ゴッッッ

 

「キイッ!?!?!?」

 

お。

なんか白い塊みたいなやつがクロバットを蹴り飛ばした。

白い塊はそのまま俺の周りを縦横無尽に跳ね回り、襲いくる白い刀を持ったポケモン……マニューラを吹き飛ばす。

俺の歩みに合わせてシャシャシャッと跳ね回る白いやつは一切俺の前に姿を現さない。嫌われてるのかな。

 

進行方向からゆっくり進んでくる青く光る波動弾をバチンと弾いた白いやつ。

襲ってきたルカリオを蹴り飛ばした。

最初こそすわっ新手かと身構えたけど、どうにもそうではないらしい。

その証拠に、洞窟内を跳ね回りはするものの、俺の周りを移動するだけで俺に危害が及んでいないのだ。

……まさか。

 

「……『けたぐり』」

「クロッ!?!?!?」

 

はは……なるほどな。

多分俺だけだったら、ここで詰んでたな。

イーブイは万能型だけど素早い移動ができないし。

その他ケンタロス、リザードン、カメックスにフシギバナはバカみてえにでけえし。

 

「『にどげり』」

「ルカォンッ……!?」

 

お前がいると心強いよ。

未だその動きを止めることなく、床から壁へ、壁から天井へと俺の周囲を跳ね回る。

少しでもマニューラやルカリオ、クロバットが迫るようなことがあれば、

 

「『トリプルキック』!!」

「───ロチェ」

「ニュ、ウラァ……!」

 

ウルトラビースト、フェローチェが障害を蹴飛ばしてくれる。

俺の仲間になってくれるのかな。

ほら、ボールだ。

 

───ぺしん!

 

いった!!!!

コイツ!! 仲間になってくれるんじゃないのかよ!! 空気読めや!!

ボールか!? モンスターボールだから不満なの!?

ウルトラボール持ってくればよかったよ!!

 

「……ロチェ」

「いってえ!!」

 

めちゃくちゃ頭蹴られた! 吹き飛んでるとこだったわ! 斬首刑かよ。

 

「ロチェ! ルゥチェ!!」

 

……残像(本体は速すぎて目が追いつかない)のフェローチェが身につけてるあの花……。

リーリエに渡していたやつだ。

どうやらこの世には、俺以外のリーリエ推しがいるらしい。

 

「あいにくと俺も、お前にやられた傷が痛むんだよね。業腹だけど、共同戦線と行こうか」

「……ロッチェ」

 

しかも、厄介なことに同担拒否。

ただ……。

 

「また大きな空洞があるみたいだな」

「ロチェ」

「行け!! シルヴァディ!! 『シザークロス』!!」

「『とびひざげり』で迎え打て!!」

「ロウチェッ!!!!」

「グゴッ……」

 

推しのための共通の敵がいる時は、何よりも心強い。

 

「会いたかったよぉ、グラジオォ!!!!」

「オレはお前と知り合った覚えはない!!」

 

 

 

 

至る所にファスナーが付いている服を纏い、香ばしいポーズで立ち塞がるグラジオ。

ハウの言い方からして、なんかいそうだなとは思ってたよ。

 

「来い! ポリゴンZ! 『10まんボルト』!」

「躱せ!!」

 

放たれた雷撃の数々を、華麗に避けるフェローチェ。未だ速すぎて、動いてる時の姿が見えないが……風圧で大体どこにいるのかわかるのが救いか。

 

「フェローチェにそんなチンケなビリビリが当たるかよ!」

「……ウルトラビーストを使役しているとは……。やはりヨウの敵……!」

「厳密には違うけどまぁ使役してるで良いよ。敵ってことも間違いない」

 

悪いけど、今の俺は()()なんだ。

負ける気しないんだよね。

 

「頼むぞ! イーブイ!」

「……ダブルバトルか……良いだろう!」

「フェローチェ! 『にどげり』!」

 

シルヴァディに瞬時に肉薄したフェローチェ。

寸分の狂いもなく足を振り上げた姿勢のままビタリと動きを止め、一拍遅れて凄まじい速度の蹴りを放つ。

 

「『シザークロス』!」

「ヴォンッ!!」

「ロチェ……!?」

 

ぶつかり合った技の余波で衝撃が生まれ、心臓が危機感を感じてびくつく。

仰け反りそうになる身体を押さえ込んでなんとか立ったままの姿勢を維持する。

 

「押し込め!」

 

『にどげり』はその名の通り、2回蹴るわざ。

この技の名前だけから推測すると、大体の人は2撃、蹴る技だと思うだろう。俺もそう思ってたし。

例えば、一度蹴った後膝を曲げて同じ足で蹴り突いたり。

例えば、蹴った脚を地面につけ軸にして、回転の勢いをつけてもう片方の脚で蹴ったり。

護身術の一つも学んでいない俺でも、考えるだけでいろんな通りの『にどげり』がある。

ただ、フェローチェってウルトラビーストなんだよ。

人間の常識って通用しないよね。

 

「ロ……チェッッッ!!!!」

 

伸ばされ切った脚が再び勢いを得る。

一度は止まったその蹴り。雷すら避ける瞬足に力が込められ、正真正銘の二度目の蹴り……『にどげり』を放つ。

 

「イーブイ、フェローチェをサポート!」

「エボッ!!」

 

シザークロスは前足の爪で放たれた。

その前足が二度目の蹴りで弾かれたのなら、背中から倒れるのは当たり前である。

 

「まねっこ!! 『にどげり』!!」

 

だがそれは許さない。

もう片方から、イーブイがオーラで硬くなった尻尾で蹴りを放つ。

サッカーアニメのボールのように双方から蹴り込まれ、シルヴァディが苦しそうな呻き声をあげる。

 

「ッ……ポリゴンZ! 『トライアタック』だ!」

「シルヴァディから離れて『トリプルキック』!」

 

蹴りを入れた方の脚と尻尾で、シルヴァディを踏み台にして飛び上がるイーブイとフェローチェ。

ポリゴンZから放たれた三つの光が一つずつ、背中合わせで空中にいる2匹を襲う。

その六つの光が今まさに当たると言う時に、

 

「ロッ」

「ボオイ!」

 

一撃。光がはたき落とされる。

一撃。お互いを引っ張り合い、背中に迫ったお互いの光を打ち消す。

一撃。お互いを蹴り合って勢いをつけ、最後に迫る光を破壊した。

 

降り注ぐ爆炎と熱波が洞窟内で膨れ地響きとなり、それがさらに心臓を跳ねさせる。

ばくん、ばくんと、俺の全身に血をたぎらせる。

 

「シルヴァディ! 動けるか!」

「ウォン……!」

「ポリゴンZは戻れ! マニューラ!」

「ニュアッ!」

「おっと」

 

シャッ、と俺の背後から黒い影。

フェローチェに慣れてしまった俺が突き立てられようとした爪を避けると、マニューラは小さく舌打ちをした。なんやねん。

 

「『つじぎり!』」

「避けろ! イーブイは『でんこうせっか』!」

 

放たれた斬撃は当たる事なく、高速で移動した2匹が俺の元へ戻ってくる。

なるほど。マニューラが使ってきていたのは技の『つじぎり』か。

だからあんなに危機感感じたわけね。

 

……さて。

今イーブイが使えるのはシルヴァディ、ポリゴンZ、マニューラの技。残りのPPを把握できていない以上、連発は厳しい。

それに、マニューラがグラジオの元へ……この洞窟へ辿り着いているということは……

 

「グオンッ」

「キキーッ!」

 

必然的にこの2匹も戻ってくるわけで。

 

「グラジオがどれだけ優れたトレーナーかなんて、俺が1番わかってるよ」

「……何を言っている」

「クロバットもルカリオもマニューラも、トレーナーに懐いていないと進化しないんだ」

「…………」

「その服についてるファスナーも、シルヴァディ……タイプ:ヌルが暴れた時についた傷を自分で縫合したからそうなってるだけで、最初からあるものじゃない」

 

だからわかる。

グラジオがどれだけ妹を……リーリエを大切にしてるかも、わかる。

俺は……見てきたのだから。

 

「そんな君が……グラジオが!! どうしてこんなこと(リーリエ誘拐)の手助けをしてるのか、俺にはわからないよ!!」

「……こんなこと……?」

「俺は……俺は認められたかった!! あなたに……強くて、気高くて、誰よりも優しいあなたに!!」

 

わかってる。

これはエゴだ。

 

「答えろグラジオ!! どうして……どうして!!」

 

君は俺を知らない。

だから、必然的にこう言うしかない。

 

 

 

 

 

「……お前は……()()なんだ?」

「……俺が1番……わかんねえよ……!」

 

 

 

 

 

ヨウと同じ記憶を持って。

ヨウが知らないことも知っている。

わかったように語られて、縋られて、それほどまでに気持ち悪いことはないだろう。

 

わかってるよ。

 

俺がゲームに抱いた夢が、叶わないことくらい。

仲間と共に夢を追って。

白熱するバトルをして。

友達と、好敵手と、好きな人と、ずっと旅を続けたい。

それが夢物語だって、わかってるんだ。画面の中の話だって、割り切ってたんだ。

だけど。

目の前に幻想を差し出されたら、飛びつきたくもなるじゃないか。

 

「……泣い……ているのか……?」

「知らん!!」

「なっ……」

 

もう追いかけたりも諦めたりもしないって決めたんだ。

お前が……お前たちが。

実在するポケモンの世界が、俺の燻った夢に薪を焚べた。

もう戻れないぞ。

 

「グラジオ!!!!」

「っ……」

「俺のわがままに付き合えよ!! 全力で……いや、ゼンリョクでかかってこい!!」

「……ッ……言われなくても!!」

 

マニューラが地面を蹴った。

黒い影と白い稲妻がぶつかり合う。

対して、全てのタイプに適性を持つ獣2匹はお互いの間合いを調べつつ警戒も怠らず、一歩も動かない。

こちらを静とするなら、亜光速のぶつかり合いは動か。

 

「『けたぐり』ッ!!」

「『シャドークロー』だ!」

「させるか! イーブイ、『シャドーボール』!」

「『ブレイククロー』ッ!!!!」

 

一歩進めば、一歩退かされる。

向こうの気持ちが……譲れないって気持ちが伝わってくる。

 

「シルヴァディは振り切れ! 『でんこうせっか』!」

「……ッ! マニューラ……!」

「『けたぐり』で挟み撃ちだ!」

「えぼ!」「ルゥチェ……!」

「ギニャッ……カハッ……!」

「……よくも……!」

「まだまだ!」

 

くり出たルカリオが放つ波動弾。

イーブイが避けたそれは俺の真横に炸裂し、瓦礫が飛び散って頬に傷ができた。

 

「えぼっ!?」

「大丈夫だ! それより!」

「シルヴァディ!!!!」

「フェローチェっ、後ろだ!!」

 

フェローチェのフォローが間に合わない。

 

「『シザークロス』!!!!」

 

背後から放たれた一撃に、フェローチェの細い身体が吹き飛んだ。

まだ動けるはずだ。フェローチェはウルトラビーストだぞ。

規格外のパワー。規格外のスピード。規格外のタフネス。その全てが未知なんだ。

ここで止まるようなリーリエファンじゃないだろ───

 

「………………」

「はぁっ……はぁ……っ。やったな、シルヴァディ」

「ヴォンッ」

「……ははっ!! やっぱり強いな!!」

「えぼ……えぶぶい……!」

「楽しい! 楽しくなってきたな! イーブイ!」

 

瓦礫に埋まって土だらけになるフェローチェに心から感謝する。

後で全部汚れ落としてやるから、少しだけ待ってくれ。

ここからは、俺たちでやる。

 

「いくぜ、イーブイ!!」

「えぼっ!!!!」

 

俺は、手のひらにエネルギーを集めた。

 

 

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