リーリエロスでカントー行ったよ 作:バケットモンスター、縮めてバケモン
「はい、これが注文の品です。大丈夫ですか?」
「大丈夫です。ケンタロスに持ってもらうので」
「それなら大丈夫ですね」
あのケンタロスは、キャラバンのものだったらしい。
モンスターボールの管理が大変なことから野生のケンタロスを手懐けてケンタロスカー的なやつを引かせていたらしいが、今回俺がゲットしたケンタロスは俺にくれるらしい。
晴れて移動手段ができた。
ハナダのびっくり事件を納めたトレーナーとして周りから賞賛された俺になにか礼をしたいとジュンサーさんが言っていたのでモンスターボールをたくさんくださいと言っておいた。どうせ一個200円。たくさんって言ったって20個かそこらだろう。俺は政府のお財布事情も考える男なのだ。
「ケンタロス、出ておいで」
「ぶむぅ……」
「混乱は治ったな? 今日から、俺がお前のおやだ。知ってるか? トレーナーは捕まえたポケモンのおやと呼ばれるんだ」
リーリエがラストのあたりで言っていたセリフ。
アレは感動しちゃったなぁ。思わずメルカリで、アニポケリーリエが親の配信ロコンが入ってるデータ買おうとしちゃったもん。
「ぶもう」
「大丈夫だ気にすんな。これから働きで返してくれればそれでいいよ」
「ぶもう!!」
「よし、それじゃあこれ持ってくれ! 背中に乗せていいか?」
「ぶむぅ!」
ふふ、ポケモン楽しい。
表情豊かでかわゆいのう。たとえ命の危険を感じるタックルをしてくるポケモンでも、ポケリフレすれば可愛く見えちゃうもんだね。
「クロウさん」
「おろ、リーリエ。先に帰ったんじゃ?」
「クロウさんを置いて先に帰るわけないじゃないですか。えと、少し用事がありまして」
「ふーん? まぁいいけど。あ、リーリエその荷物ケンタロスに乗せなよ。持ってくれるってさ」
「ぶむ!」
リーリエは新しく紙袋を持っていた。
他にもいろんな袋を手に持っていて重そうだ。リーリエが持つのはいささか大変じゃなかろうか。
「大丈夫です。これは私が持つんです」
「ケンタロス、まだ持てるよな?」
「ぶもう」
「ほらケンタロスも良いって言ってる。乗せてかないの?」
「良いんですっ!」
フラれちゃったね、ケンタロス。
しょんもり俺の横を歩くケンタロスを撫でつつ、俺は先頭を歩くリーリエを追った。
太陽ももうすぐ落ちる。角度によっては建築物に隠れるくらいの高さだ。
涼しい風が木々を揺らし、リーリエの髪が大きく揺れた。
「風が強いですね。春一番……と言うわけではなく、中旬ほどですが」
どうやら今は春らしい。春と言えばBWにおいてシキジカがピンク色になる季節だ。
吹きゆく風が少し肌寒い。
日が落ちれば風も相まって結構寒いんだな、カントーって。リーリエの上着はその辺を考慮してなのかもしれない。
というか、俺の服が寒い。熱帯のアローラでの活動を想定されている主人公(に似た)服は生地が薄い。あと風を良く取り込む。ちょっと上着とか買った方が良いかもしれない。
ヒトカゲに暖めてもらおうか。いや、こうも風が強いと尻尾の炎が消えそうだな。ヒトカゲは尻尾の炎が消える時その命も消えるとか言われてるらしいし、後でで良いや。
「ッくしゅん」
「大丈夫ですか?」
「あー、まぁ大丈夫。ちょっと体がおどろいただけだろ」
「この季節はまだ少し寒いですよ。これを使ってください」
そうリーリエが言うと、俺の体はリーリエの香りで包まれた。
!?!?!?!?!?
上っ、上着俺にっ、かけっ!?
「これを使ってください」
「い、いや、それじゃリーリエの体が冷えちゃう」
「これくらい大丈夫です。慣れてますから」
…………。
リーリエは……カントーにきて二年くらい経ってるんだよな。
よく見たら、ゲームやアニメよりも少し日に焼けていて……背も、さすがはルザミーネさんの血を受け継いでいるんだなってくらいに伸びてる。
目線は同じくらいだけれど……随分と、最初に会った時よりも大人びている。
「今日はクロウさんにたくさん助けて貰いましたし、私がそうしたいんです」
だけど笑顔は昔からずっと一緒だ。柔らかくて、落ち着いていて、それでいて無邪気。
上着を貸すことも、一度決めたら引くことがない。ゲーム終盤のがんばリーリエの面影を感じる。相変わらずで、良い。
「……ありがとう。少し貸してもらうね」
「はいっ」
今目の前にいるリーリエは、俺を知っているリーリエではない。
ほぼ初対面の男に上着を貸してしまうリーリエはやはり、人が良いのだろう。
だけど……少し、その優しさが辛い。
今更贅沢を言うつもりもないけど、どうしてヨウになれなかったんだ。
圧倒的な力で彼女を守れる、ケンタロスごときに死にかけたりしない
「……っ」
ダメだ。泣くな俺。
「まだ、痛みますか? ……ってそうですよね。まだ湿布は貼ってないのですから。湿布を貼るの、お手伝いさせてください」
「……うん。頼むよ」
ゲームシナリオクリア時から二年。二年前といえど、彼女のヨウへの信頼はそうそう薄れる物ではない。
創作ではヨウリエってタグでヨウとリーリエがイチャイチャするイラストや漫画がたくさんあったが、それも「所詮は創作」と切れないのが難点だ。
ゲーム内でナッシーアイランドという場所に行く時がある。そこで雨宿りをしている時、リーリエは主人公に対して、島めぐりを終えたらなにをするのか、と問う。
主人公の答えを聞いた後、私は、と続くのだが、このセリフは主人公が男か女かで内容が違う。
女の場合は、『トレーナーになって主人公にいろいろ教わりたい』。
男の場合は……『トレーナーになって主人公と旅がしたい』。
なぜ、性別によってセリフに違いが?
女二人旅でも良いじゃないか。
……どうして、ヨウにだけ、一緒に旅がしたいなどと言い出すんだ?
「……どうかされましたか、クロウさん?」
君は、過去に
それは……どんな感情から言った物なんだ?
「ううん、なんでもない。行こう」
「……? はい」
君は、俺に振り向いてくれるのか?
教えてくれ。
リーリエ。
◇
「おお! なんやえらい荷物やな! どないしたん」
「ちょっと色々あって、荷物が増えちゃいました。すぐ、夕ご飯作りますね」
リーリエが荷物を持ってキャンピングカーへと入って行った。
俺はマサキの機材があるのでこっちで待機。
ケンタロスをボールに戻し、機械がごちゃごちゃ入っている箱を差し出した。
「これ、ポケセンから受け取った荷物です」
「おお! 助かったわ! じゃあ、そこに置いといてくれへん」
「わかりました」
マサキが指差した方へ視線を移す時、部屋の一角が見えた。
天井に埋め込まれたレールに沿った、カーテンで仕切られた空間。
あれってもしかして……。
「あぁ、ちゃーんと作っといたで。仮設置やけど、ここがあんさんの部屋や。もうちょい時間があったら、新しい部屋を作ったるで」
「ありがとうございます。嬉しいです」
ふふんと鼻を高くするマサキ。
これは……ここまでお世話になる以上、貢献せねばなるまい。
荷物を指さされた場所に置き、俺はマサキに向き直った。
「これからよろしくお願いします。ちゃんと働くので、何かあったらすぐに言ってください」
「おう! 期待しとるで! なんせロケット団を追い払ったやつやからな!」
「……え?」
「? いや、ロケット団。今日はこおへんかったから、あんさんが追い払ってくれたんかとおもて。ちゃうんか?」
「あ、いや、それはあってますけど」
「ほんなら、これくらいはせんとな。いやあ、あいつら毎日きおって騒がしいねんな」
ま、毎日来るの?
それは……追い払うのが大変そうだな。
マサキはポケモントレーナーじゃないし、リーリエも……あれ? リーリエってトレーナーになれたのか?
ポケモンカードゲームだとピッピを使っていて、無事トレーナーになれていたけど……。
「あの、リーリエは……?」
「リーリエちゃんは一時的に手持ちのポケモンこそおるけど、バトルはしたことあらへんな。どうも、ポケモンを戦わせるのが苦手みたいやで」
はえ〜。
一時的にってどう言うことですかね。貸し出しポケモン?
「じゃあトレーナーってよりかはポケモン持ってる人って感じなんすね」
「そ。せやから、あんさんがここ守ってくれるんなら安心やで。守ってくれるんやろ?」
「マサキさんはリーリエの副産物ってことで」
「また辛口やなぁ! ここはあんさんの家でもあるんやで」
「そうですね。精一杯守らせてもらいます」
もちろん、マサキがいないとルザミーネさんの体に入った毒をどうにかできる人物がいない。ゼンリョクで守らせていただきますとも。
「カレーができましたよ! 今日は野菜チーズカレーです!」
「おお! ええ匂いやなぁ!」
マサキが手慣れた様子でテーブルを取り出し中央に引きずっていく。
俺もそばにあった椅子を三つテーブルの周りに並べると、リーリエが皿を並べながら「ありがとうございます」と俺に笑顔を向けた。
今の笑顔だけでご飯三杯はいける。割と真面目に。
「ほな、いただきます」
「いただきます」
「……あ、いただきます」
リーリエを拝んで、スプーンをカレーに差し込む。カレーといえば落ちない汚れから高い服を着ていたりする人は嫌うのが常の悲しい食べ物だが……リーリエをちらり。
あっ、お上品。出来栄えを確認するかのように味わうその姿、これこそが尊く護るべきものなのだ。
もはや母性すら感じる顔に惚けていると、リーリエが気づいた。そっと目を逸らす。
「どや、うちのリーリエちゃんはこんなんもつくれんねんで」
「感服です」
「そんな、まだまだ修行中です。ふふ」
はぁっ!!!!
上機嫌でいらっしゃる!
リーリエが!!!!!! リーリエが、微笑んでいらっしゃる!!!!!
「あむ……」
その口にスプーンが運ばれるのを目で追いながら俺もカレーを食べる。
これがマジで美味いんだ。スパイスの風味とチーズの旨味はまさに定番。野菜と一緒にきのみが入っているが、なんの加工なのかカリカリしてる。ナッツとかと同じだろうか?
それがカレーをさらにまろやかにしている。……ような気がする。
「いや……ほんとに美味しいなこれ」
「そ、そうですか? ありがとうございます」
褒められ慣れてないような笑顔がマジ尊い。リーリエスマイルは既にガン治療に使われているしいずれ万病に効く。リーリエが死んでしまったら世界は滅ぶ。
あっというまにカレーは少なくなり、一人前ほどを残してリーリエはキャンピングカーへと鍋を持って行った。
「ふぃー、やっぱ飯は幸せやな」
「……マサキさん、今リーリエが持って行ったのって……」
「あぁ、キャンピングカーの二階にはリーリエちゃんのお母さんがおんねん。ちょっとした病気みたいなモンなんやけど、これが厄介でな。そんで、ポケモンの研究をしているわいのところに来たっちゅうわけや!」
「……ポケモンと病気になんの関係が?」
「あっ、いや、なんでもあらへん。……そんで、リーリエちゃんにはその病気を治す方法を見つける間だけ、ちょっぴりお手伝いをしてもろててん。助手っちゅうことやな」
マサキはいい人だなあ。プライバシーってのをわかってらっしゃる。
そんでもってここでも助手してんのかリーリエ。助手っ子体質なのかも。
整えられた書類の中から一枚の紙を引っ張り出したマサキ。
それを眺めながらあごを撫で、難しい顔をしはじめた。
「詰まっているなら、俺も手伝います」
「……んお? ああ、まあ……ふむ。せやな。ちょいとだけ、素材を集めんのを手伝ってもらうかもしれへん。あんさんのバイトの業務内容は大まかに分けて『ポケモンの捕獲』、『ロケット団を追い払うこと』、『素材集め』って感じにしようと思っとる。よろしゅうたのむで」
「はい!」
ええ返事や、とマサキが笑ったところで、またリーリエが入ってきた。鍋の代わりに、さっきの紙袋を持っている。
「く、クロウさん」
「あ、俺?」
「えと、その……これを、受け取ってください!」
ずい、と出された紙袋。
受け取って中身を見てみると、そこには服が入っていた。
「守っていただき、ありがとうございました。その、服をだめにしてしまったので、代わりに、と……。ダメ、ですか?」
うわめがちにこちらを伺うリーリエ。可愛い。
……ふむ。そういえば俺の今の服は腹部が真っ赤でいろんなところが擦り切れている。このまま活動できないこともないが、街とかは歩きづらいよな。
「ありがとうリーリエ。使わせてもらう」
「ほ、本当ですか……?」
「うん」
わぁいリーリエからプレゼントだ! ビバ・フレンドライフ!!!!
リーリエだよ!? リーリエがくれたんだよ!? 俺のために!! 申し訳ないなぁとか思って俺のために服を選んで自分の財布から出してくれたんだよ!?
うっわあマジ嬉しい!! これだけでもう死んでもいい!!!! 命かけてよかった!!!!
……なんて思いは微塵も表に出さないでごわす。
「あんさん、着てみたらどや。ほら、カーテンあるんやから」
「そうですね。着てみます」
部屋の隅、そこでカーテンを閉じて着替える。
再びカーテンを開けた俺は、フィールドワークを早退してから動きやすい素材で、かつデザイン性の良い衣服を見に纏っていた。
普段使いとしてのリザードンモチーフのパーカーとベージュのズボン。底の厚いスニーカーとブーツが合わさったなんか知らん靴。それと、帽子だけは着替えずそのままだった。
「似合ってます?」
「おお。結構ええんとちゃうか?」
「クロウさん。今着替えた服と、もう一つプレゼントがあります」
「え。まだあるの?」
「はい。こちらをどうぞ」
リーリエが手渡してきたのは、ズボンのベルトにつける装飾品だった。それが二つ。
「ボールホルダーです。左右の腰に一つずつつけてください」
「い、いいの? こんなもの」
「はい。クロウさんのために買ったので」
ズキュウウウウウン!!!!
俺明日死ぬかも。いや、死ぬ。これは確定。
いや待ってよリーリエさんちょっとあざとすぎませんか!?
本人から俺のためにって明言されちゃったらそりゃもう責任とって結婚ルートまっしぐらなんですが? え? おこがましい? それは確かに。
「ありがとうリーリエ!」
「喜んでもらえたのでしたら何よりです!」
ハグ!? ハグできる!?
あっ、できない……すみません調子乗りました……(・ω・`)。
でもリーリエが俺のために買ってくれたのマジで嬉しいな。生きて行けそう。
「俺、頑張るよ」
「……? はい! よろしくお願いしますねっ」
ああんもうかわいいなあ!
俺ちょっとポケモンマスター目指してくるわ!!!!!