リーリエロスでカントー行ったよ   作:バケットモンスター、縮めてバケモン

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7/15記 誤字報告、本当に助かってます。ありがとう。


最終話 ぼくも もういかなきゃ!

 

太陽と月が沈み、空には何も浮かばなくなった。

あたりは静かさに包まれて、俺とイーブイが繰り返す呼吸だけが聞こえる。

身体中の全てを出し切ったZワザ。

寒気と熱でぐるぐると周り変わる景色が、意識を置き去りにした。

 

どさり、とイーブイが倒れた。

意識は既に無く、ただ深く息を吸っている。

震える手で構えたボールにイーブイを戻す。

 

安堵からか、それとも疲れか。

棒のように固まった足には力が入らず、少しでも身体の角度が変われば倒れてしまいそうだ。

けどもう良いんだ。

倒れて、良いんだ……。

 

「クロウさん!」

「……少しくらい、寝させてよ……」

「こんなとこで寝たら、風邪を引いてしまいます」

「それもそうだね」

 

ざんねん。

冷たい地面、気持ちよさそうなのにな。

リーリエが俺を支えてくれているから、倒れることすら叶わない。

全身から力が抜けて、イーブイのボールが手から滑り落ちる。

地面に落ちる前に、リーリエがキャッチしてくれた。

 

「もう心配はありませんよ。私が、隣にいますから」

 

そのまま、笑いかけてくる。

 

「ありがとう」

「帰りましょう。私たちの家に」

 

ゆっくりと、俺に言い聞かせるように話すリーリエ。

……震えてる。自分だって怖い思いしただろうに、どうしてそこまでしてくれるかな。

 

朦朧とする意識の中で、リーリエの声だけが鮮明に聞こえる。

愛おしくて、優しい声。

君を見てから、君と話してから、ずっとこうしたいと思っていた。

でも君は画面の向こうの存在で……それでも、俺の大切な人だったんだ。

ようやく。

ようやく、平和が訪れたんだ。

リーリエを脅かす脅威を、排除できたんだ。

 

ヨウも助けなきゃ。

死ぬほど憎いけど、それでもガードマンとしては十分以上の実力だ。

だからもう一度、ヨウに手を差し伸べようとした。

そのために振り返って、そこで初めてヨウを見た。

 

「……ふふ」

「ヨウ……?」

 

倒れているから、表情が見えない。

でも何か、笑ったような。

 

───守れ───

 

心の底から発せられた、もう一人の俺の声。

 

───リーリエを、守れ───

 

ガンガンと鳴らされる警鐘が、それを知覚させた。

 

───リーリエに危機が迫っている───

 

「リーリエッ!!」

 

ドン、とリーリエを突き飛ばした。

大きく手を広げて、迫り来るソレを受け止める。

 

じゅぐ、と何かが俺の中に入ってくる。

息ができない。

心臓が止まりそうになる。

これが紛れもない生命の危機なのだと、嫌でもわかった。

 

「あ、ああ、あああ……!」

「ぶじ……? リーリエ……」

 

俺の体は、半透明の触手に刺されていた。

 

「じぇるるっぷ……」

「嫌……! イヤ! クロウさん! ああ! ああああ!」

 

視界が暗くなり、地面に倒れ臥す。

意識がぼんやりするせいで、リーリエの声すらも膨らんで聞こえてきた。

 

「あは!! あはははは!! ははは!!」

 

ヨウが寝転がった体勢のまま、狂ったように笑い声を上げる。

その声が、ぐわんぐわんと俺の耳を潰すように響き、脳が弾けて切り刻まれるような感覚に陥る。

 

「ひゃは!! ひゃはははははははははは!!」

「……こふ……」

 

あれ。俺今なんか吐いたぞ。

……これ血だ。血吐いてる。血って本当に吐けるものなんだ。

 

「ニセモノ!!!! つかまえる!!!! どんな手を使っても!!!!」

「ヨウさん!! どうか、どうか目を覚ましてください!! クロウさんが!!」

「アローラの!!!! ひゃはは!!!! 脅威が!!!! 俺が!!!!」

 

ヨウの向こうに、ウルトラホールが開く。

その中から出て来たのは、無数のウルトラビーストだった。

おそらくあれが、『原初のウルトラホール』。

アローラでヨウが開いたカントー行きホールの出入り口だ。

 

「ひゃは!!!! はは!!!! はっ、はは!! ひゃは、は、は、ぁぁ、あああ!!」

 

ズガドーンとツンデツンデと、それからテッカグヤにカミツルギ。

マッシブーンにフェローチェに、ウツロイドもたくさん。

ぱっと見で数えても20体以上はいる。

 

「ああああ!! たすけて!! たすけてくれ!! アローラが消えちゃうよお!! ひゃは!! ひゃはははは!!」

 

喉の奥から叫び声を上げるヨウ。

ウツロイドの毒が回りきっていないのか、それとも毒が切れかけているのか。

両目からぽろぽろと涙をこぼし、それでも笑い声をあげている。

 

「チャンピオンだから!! 俺、チャンピオンだから!! ウルトラビーストを倒さなきゃ!! アローラを救わなきゃ!! 怖い!! 怖いよ!! 助けてよお!!!!」

 

……ウツロイドは、人間の抱えている不安やストレスを敏感に察知し、その人間に寄生する。

寄生された人間は自我の解放や極度の興奮状態になる毒を……簡単に言えば、『しあわせになるどく』を打ち込まれてしまう。

肉体や精神の潜在能力を底上げする神経毒は、呪いのように身体を蝕み、侵す。

 

「ウルトラビーストと戦いたくないよ!! こわいよお!!」

 

そんな生物と戦うことになってしまった少年に、どれほどのプレッシャーが与えられていただろうか。

されど、逃げることは許されない。

少年はアローラの英雄……チャンピオンなのだから。

 

きっとその隙に付け入られて、寄生されてしまったのだろう。

不安はおそらく、『もう戦いたくない』。

与えられた幸福は……アローラを救っている『実感』か。

カントーに渡ったウルトラビーストを倒せば、きっとみんなが笑顔になる。そう信じて……そう信じ込まされて、彼はカントーにやってきたのだ。

そんな小さく謙虚なエゴが……今の彼を生んでしまったのだろう。

 

「やれ!! こわせ!! アローラを救うんだ!!」

 

ウルトラビーストが、全員リーリエに向いた。

そのままじりじりと迫り来るウルトラビーストに恐怖で支配され、リーリエは立つことすらままならないようだった。

 

そのすぐそばに、俺のリュックが落ちている。

口を開けたままだったからか、中身が全て散乱していた。

 

「嫌……やめてください……」

 

震える声で呟くリーリエ。

小さく縮こまるその背中に、手を伸ばした。

届かない。

 

届いてくれよ。

 

泣き顔なんか見たくないんだ。

 

あと少しだけ。

 

あと少しだけ、俺に時間をくれ。

 

悔しくて、涙が溢れそうになって、無我夢中で、土を掴んだ。

 

手のひらに収まった、ひときわ大きな石。

 

闇の中でもきらきらとほのかな光を放つそれは、

 

 

『これは……?』

『あなたにあげる。リーリエの用心棒のお駄賃と思ってくれて良いわ』

 

 

あの時ルザミーネから受け取った、模様の描かれていない石。

 

 

『でもこれ、模様が無いですよ』

『お楽しみよ』

 

銀河の、Zクリスタルだった。

 

 

 

 

随分と、思考がクリアだ。

 

先ほどまで霧がかかったように鈍く動いていた頭がスッキリしている。

身体が鉛でできているんじゃないかと思うほどの倦怠感も、いつのまにかなくなっていた。

これなら助けに行ける。

そう思って手を伸ばした頃にはもう、リーリエの目の前に一匹のポケモンがいた。

 

……カプ神だ。でも見たことがない。

細身な本体とか、浮いてるところとか……その辺は他のカプ神と一緒なんだけど……。

こんな……こんな黒鉄色の殻、見たことがない。

 

両足についている殻から伸びた大きな穴から炎を吹き出し空を飛んでいる。

今し方盾にしていた大きな殻にも、カメックスが背負うような筒がついている。さながら大砲か。

その殻から手を外すと両腕を通って肩に装着された。これがこのポケモンの待機状態なのか。肩のキャノンってなんかかっこいいな。

 

「オリォ……!」

 

小さく鳴いたそのポケモン───カプ・オリオは、襲って来たマッシブーンの剛腕を軽く避ける。

肩から腕を通って滑り降りて来た大砲殻をマッシブーンの腹部に当て、思い切り撃ち放った。

 

───『ラスターカノン』!───

 

心の奥底から声が響く。

強く、重くあれと、もう一人の俺が指示を飛ばす。

 

……左にいる! カミツルギだ!

そう声を出そうとした瞬間に、カプ・オリオが動き出した。

 

───『しぜんのいかり』!───

 

赤く目を光らせたカプ・オリオの念能力で、カミツルギの周りの空間が歪み、捻れる。

傷ついてなおも突進をやめないカミツルギに、カプ・オリオは無慈悲に砲台を向けて……。

 

───『ラスターカノン』!───

 

カミツルギへ、渾身の一撃を放った。

 

その後も怒り狂うようにウルトラビーストを撃ち抜いていくカプ・オリオ。

足のブースターで空を舞い、両腕の砲台で敵を撃ち抜く。

いつまでも、いつまでも。

『原初のウルトラホール』から這い出てくるウルトラビーストたちを、何度も何度も。

 

……っ後ろ!!

 

「ひっ……!!」

 

───ッ───

 

オリオの砲台が、後ろに立ったリーリエに向けられる。

見境があるのかないのか、オリオの目はリーリエを見つめたままだ。

リーリエは砂埃にまみれた殻を見て覚悟を決めたようにカプ・オリオを見上げると、こう言った。

 

「クロウさん……なんですよね?」

 

『ポケモンと一つになるためには、心を一つにする石を取り込む必要があるらしい』

『心を一つにする石ってなんやねん。メガストーン? はたまたZクリスタル? うさんくせえ!』

 

───人間からポケモンになる魔法───

 

心の中の声……カプ・オリオが、呟いた。

リーリエを守れ、と。

 

「俺は……」

「……っ……!? その声……!?」

「俺は君を守るために、やって来たんだ」

 

その瞬間、俺は身体を手に入れた。

いや、今手に入れたんじゃなくて……この身体が……カプ・オリオが俺だと、自覚できた。

 

チカラが欲しいか?

 

お前(魔導書)は、そう言ったな。

最初は幻聴だと思っていたよ。

でも違った。

あの時から既に……カプ・オリオは、俺に語りかけていたんだ。

 

さあ、飛べ。

リーリエを救うんだ。

 

俺の名前はカプ・オリオ!!!!

 

アローラにそびえ立つ五つ目の島!!!!

 

エーテルパラダイスを護る、守り神だ!!!!

 

「ラスターカノンッ!!!!」

 

アクジキングに向けた砲塔から、質量を通り越した光線が放たれる。

着弾の確認はしない。

まだ、倒さなきゃいけない敵が残ってるんだ。

 

……次はお前だ!

 

「メガトンキックッ!!!!」

 

吹かせたブースターの火の跡が、螺旋を描いて宙を舞う。

全体重を乗せたキックをフェローチェに放った。

 

「ロチェ!!」

 

フェローチェが俺に向けて飛び蹴りを放つ。

拮抗していると見たフェローチェが、勝ち誇るように笑った。

……本当に、ウルトラビーストというのは。

残忍で、狡猾で、小賢しい。

 

吐き気がする。

 

「どけええええええ!!!!」

 

肩のキャノンをバーニア代わりに、俺の背中側に向けて全力噴射。

 

お前のキックが2段階で勢いつけられるのは、もう見たんだよ!!

 

「ッ……ロチェ……!?」

「ラスターカノン!!!! ……次!!!!」

 

吹き飛ばしたフェローチェにラスターカノンを放ってから、次の標的を見定める。

お前だ! ズガドーン!

 

「ずがどん!」

「3匹……まとめてその頭飛ばしてやる!!!!」

 

ヒュン、と飛ばされる花火玉。

一つをラスターカノンで撃ち落とした。

顔を上げると、もう一つ。

これは撃ち落とす距離じゃない! 弾いて突っ込む!

 

「ずがどん!」

 

殻を盾にして花火玉を後方まで弾いた。

背中に熱を感じながら再び肉薄しようと見上げる。

 

目の前に、三つ目のズガドーンの花火玉があった。

 

炸裂する花火。

白煙が吹き上がり、俺の体を爆発が蝕む。

削られる体力。だが微々たるもの。

 

「しゃらくせえんだよッ!!!!」

 

たかだかちょっと痛いくらい!!

人間の時にさんざん我慢した!!

そんなんで俺が……!!

 

エーテルパラダイスのしまクイーン・リーリエを護るこの俺が!!

 

(ひる)むワケねえだろうがよ!!!!

 

「ラスターカノン!!!!」

「ずがど……ッ」

「しぜんのいかり!! ラスターカノン!!」

「ずどがぁ!!」「どがぁん!?」

 

次!!

顔をあげて、標的を探る。

何かが変だ。いるはずのウルトラビーストがいない。

 

「きゃっ……!?」

 

頭の奥で警鐘が鳴る。

リーリエが危ない。今すぐに守れ。

 

……脚部ブースター、肩部キャノン、共に噴射!!

舞い降りろ!! リーリエの元に!!

 

「じぇるるっぷ……」「べのめのん」

「いや……こないで……!」

 

ウツロイドがワザを使った。

あれは『どくどく』か。

この期に及んで、まだリーリエを狙っているらしい。

 

どうする?

このまま割り込めば、リーリエにどくどくはかけられない。

だが、お前が……俺がどくどくを浴びることになるぞ。

 

……覚悟なんか、とうにできてる!!

 

「リーリエ、下がって!!」

「ッ、クロウさん!?」

 

風圧で一歩下がったリーリエとウツロイドの間に割り込む。

放たれた『どくどく』は俺の身体へ降り注ぎ、ウツロイドの毒液が全身を覆った。

 

「クロウさん……! また、私を庇って……!」

「大丈夫だよ、リーリエ」

「……え……?」

 

毒を払い落としてウツロイドに砲台を向ける。

光が砲口に集まり、光線となって貫いた。

 

「俺はお前を倒すために……!」

 

 カプ・オリオには            

 効果が ないようだ…          

 

「はがねタイプになったんだッ!!!!」

「べの……!?」

「はがね……タイプに……!? っ、そうだ、図鑑……!」

 

リーリエが俺のリュックから図鑑を取り出し、俺を映す。

ピースでもしたいところだが、今の俺には指が無い。ここは一つ、ウツロイドでも倒しておこうか。

 

「ラスターカノン!!!!」

「べのめの……っ!?」

 

『【カプ・オリオ】

たかさ:2.5m おもさ:28.2kg

タイプ:はがね・フェアリー 分類:とちがみポケモン

とくせい:スチールメイカー』

 

へえ。

俺、そんな身長高い?

……いや、多分この主砲……待機状態で肩についてる時の身長だ、これ。

となると体重も主砲込みかな。カプにしては高くて重いと思った。

 

『もともと 島ぐにだった孤島たちを 守っていた 神。 今は 存在しないとされる。』

 

……そうだ。

カプ・オリオはもともと、バラバラの島を守っていた、無名のカプ神だったんだ。

エーテル財団がやって来てメガフロート化が進み、守るべきポケモンがいなくなって、次第にカプ・オリオも力を無くしていった!

それを俺が呼び起こした!! そして、(オリオ)は帰って来た!!

新しい一つの島! エーテルパラダイスの守護者として!

 

だから……だから!!!!

 

「べのっ……!」

「ベノムショックが効くワケねえだろ!!」

 

 カプ・オリオには            

 効果が ないようだ…          

 

「ラスターカノンッ!!!!」

 

この技も!!

 

「トリプルキックッ!!!!」

 

 こうかは ばつぐんだ!         

 

この技も!!

 

「エーテルパラダイスに迫った脅威を!! ウツロイドを!! 退けるために得た力だ!!」

「クロウさん……!!」

「リーリエがそこにいるかぎり!! 俺は負けない!!」

 

かかってこい脅威共(ウルトラビースト)!!

 

「じぇるるっぷ」「マッシ!!」

「ずがどん」「ドカグイィ!」「ロチェ!」

 

全員まとめて相手してやるよ!!

 

「ッ……あれは……あの時の……?」

 

リーリエの持つ俺のリュックから、黄色いZクリスタルが浮き、俺めがけて飛んでくる。

 

『俺の肩から飛び降りたイーブイは、地面に落ちていた何かを拾い、こちらに差し出してきた』

『これは……Zクリスタル? なんだこの模様』

 

思い出したよ。全然使ってなかったから、あの時は分からなかったんだ。

雫のような絵の刻まれたZクリスタル。

名をカプZ。

 

今……(クロウ)(オリオ)で発動させる。

 

肩部のメインキャノンを滑らせて腕に装着し、脚部に装着したブースターと一体化させる。

四つの角が合わさり一つの兜となったそれに誘発する様に、大地からカプZと同じ色の巨体が君臨した。

 

これが……()が放つゼンリョクのZワザ!!!!

 

「『ガーディアン───!!」

 

大きく拳を握る大地の巨人。

さながら地を穿つ戦士の如く。

 

「───デ!!───」

 

俺の腰についているもちもの。

リーリエの使ってくれた、まだ未完成のおまもりが光った。

安心して。

君の帰る場所は、俺が守るから。

 

「───アローラ』ァァァァァァアアアアアア!!!!」

 

空気を震わし、大地が、空が、星が揺れる。

そこにある全ての存在を打ち砕く拳が、巨大な隕石となって薙ぎ払う。

 

「───じぇるるっぷ……!!」

 

わかってる。

『ガーディアン・デ・アローラ』は相手の残り体力の4分の3を減らす技だ。これだけでは、弱らせることはできても、倒すことなどできやしない。

 

……でも。

 

このお守りが。

 

「クロウさん…………っ!!」

 

リーリエが俺に、力をくれる!!!!

 

───『未完成のおまもり』───

効果:このアイテムを持ったポケモンがZワザを使って相手の最大HPの半分以上のダメージを与えた時、ワザ終了後に相手の最大HPの4分の1のダメージを与える。

効果適用範囲:おやが『リーリエ』のポケモン

 

「お゛お゛お゛お゛お゛ッ!!!!」

「じぇるっ……!!」「ロッチェ……!!」

 

振り抜いた拳が、光の粒となって消える。

地面を叩き殴った影響で風が吹き遊び、リーリエが煽られて体勢を崩す。

 

「リーリエ!」

「あっ……! ありがとうございます」

「大丈夫。えっと、リュックはどこに?」

 

兜の状態を解いた俺はリーリエの体を支え、辺りを見渡した。

気絶したウルトラビーストがそこかしこに散らばっている。

 

俺は『しぜんのいかり』のパワーで浮かせたウルトラビーストたちを原初のウルトラホールに放り込みながら先ほどまでリーリエが持っていた俺のリュックの所在を聞いた。

 

「あっ、あそこに飛んでいってしまってます! ……あの、クロウさん。あのリュック、すごく重かったんですけど、何が入っていたんですか?」

「まあ……ね。見ればわかるよ」

「あっ」

 

寂しげな顔をするリーリエを置いてリュックまで飛ぶ。

リュックを掴もう、と考えた時には俺の体は光に包まれ、もとの人間のものになっていた。

地面に足が付く。指も動く。しっくりくるな。

 

そのままの勢いでリュックを掴み、気絶しているヨウの隣をすり抜け原初のウルトラホールの前に立つ。

振り返ると、不思議そうな顔をしているリーリエが遠くでぽつんと立っていた。

 

……この距離なら、すぐには追ってこれないだろう。

 

俺はリュックの中身を取り出し、ウルトラホールの間に差し込む。

少し詰まっている。ウルトラビーストをぽんぽん放り込みすぎたからだろうか。

 

「……!? クロウさん、それって!!!!」

 

 

 

 

「おはよう……ってもう夜だけれど。……あら? 二人ともいないのね。出掛けてるのかしら」

 

ルザミーネさん、ごめん。ご飯用意できなかったよ。

 

「ただいまー……お? 二人ともおらんのけ。なんや出掛けてるんかいな」

「あら。マサキさんも何も聞いてないの?」

 

マサキ。ごめんね。

 

ごめん。

 

「いや、なにも……。ん? ……っ、ルザミーネさん!! ここにあったこんくらいの機械、知らんですか!!」

「い、いえ、なにも」

「……ああ、アカン! これは……あかん!!」

「だ、ダメって何が?」

「あかんねん……!! あれは……あかんねん!!」

 

ごめん。

勝手に持ち出したりして。

頭のいいマサキなら、もう察してたりしてね。

 

「まだ……ウルトラカプセルは遠隔で操作できへんねん!!」

 

本当に、ごめん。

 

 

 

 

「『原初のウルトラホール』を破壊すれば……全て丸くおさまる」

「……クロウ……さん……?」

「誰かがわざと開けたりでもしないかぎり、ウルトラビーストがこちらの世界にやってくることもなくなるんだ」

「何を……言っているのですか?」

 

ウルトラビーストの脅威も、ウルトラホールの影響も、全て()()()()()()にすればいい。

『原初のウルトラホール』が開く前。

アローラでヨウが開く前まで、空間の時間を戻してしまえばいい。

ヨウはこちら(カントー)にいる。

『アローラ』で『ソルガレオかルナアーラ』が『原初のウルトラホール』を『こじ開ける』ことをしない限りは、同じことは起こり得ない。

 

そして、たった今ウルトラホールを通ったウルトラビーストも。

『カントー』と『アローラ』を繋ぐウルトラホールの『カントー出入り口』が無かったことになったら、中にいるウルトラビーストたちもただでは済まないだろう。

入口と出口は表裏一体。『表』が壊れれば、新しい『表』が必要になる。

……再びウルトラホールを開くためのソルガレオ、ルナアーラは共に気絶中。表裏一体であるはずの『表』が無くなり、矛盾が生まれたウルトラホールは……。

 

……いや、難しいことは俺にはわからない。

でもきっとうまくいくはずだ。

俺の……(オリオ)の勘が、そう言っている。

 

「リーリエ」

「……!! 待ってください!! クロウさんは今から何を……」

「動かないで!!」

「ッ……」

 

ウルトラカプセルの出力を最大にして、俺は叫ぶ。

少しでも近づけば、きっと爆風が当たってしまう。

俺がいなくなった後だとしても、リーリエが怪我するのは見たくない。

 

「……リーリエ」

「…………」

「俺、きっと最初から人間じゃなかったんだと思う」

「何を……」

「ウルトラホールを通ってアローラに来たあの時から、おかしな気はしてたんだ」

「ウルトラホールを……!?」

 

異世界からこの世界にやって来て……それが、来る前の身体であるという保証は無い。

きっと俺は、人の形をした何か。けつばんに肉体を借りたリリーと同じだったんだろう。

 

「……だから、これでいいんだ」

 

俺がカプ・オリオになれる、その力を引き出せると自覚した今、いつリーリエに危害を加えるかわからない。

さっきも、オリオが俺であると自覚しなければ、リーリエに砲を向けていたわけだし。

 

「リーリエ」

「……はい」

 

だから最後に、これだけは言っておきたいな。

 

「君が好きだ」

「…………!」

「君の声が、仕草が、その全てが好きだ。できることなら、ずっと一緒にいたい」

「…………! なら、どうして……!!」

 

リーリエが俺に向けて走り出した。

それ以上は近づくなって、言ったはずなんだけど。

 

ウルトラカプセルを蹴り押し込み、ウルトラホールに背を向ける。

ああ、ようやく。

これでようやく、俺の『リーリエロス』が終わる。

リーリエを助けたいという俺の歯痒い思いも、これで終わるんだ。

 

その手が俺を掴む前に。

 

 

 

「僕も……もう行かなきゃ!」

「待っ───」

 

 

 

俺は精一杯笑って、ウルトラホールに身体を預けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リーリエの瞳みたいに綺麗な緑の閃光が、俺を包んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





リーリエの ものらしい 日記……
がんじょうな カギが ついている!

キラキラ ひかる カギは
あけっぱなしに なっている……


(先にアンケートを答えてください)
https://syosetu.org/novel/345397/


日記を 読みますか?

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