●サンケイスポーツ
『Gallop臨時増刊 週刊100名馬 Vol.36 マチカネタンホイザ』2000年 産業経済新聞社
●やまさき拓味
『スーパーホース列伝 優駿たちの蹄跡 第3巻』ヤングジャンプコミックスBJ
史実のマチカネタンホイザ号を調べるさいに参考にさせていただきました。
ウマ娘だって引退したら当然結婚して家庭を持つ元選手もいるだろうと思い、誰がいちばん可もなく不可もなくお母さんやってるかなと考えた結果、マチカネタンホイザが思い浮かびました。ゲーム本編で普通普通いっとるし。
そこから史実馬を調べてみると、父はいわずと知れた大種牡馬ノーザンテースト、母父は70年代~80年代半ばに種牡馬として実績をあげたアローエクスプレス、母の母の母はオークスと有馬記念を制したスターロツチ*1と、かなりの良血が入ってるんですよね。この血統で普通は無理でしょ。
というわけで本話を書くにあたって「現役引退後、母親となったマチカネタンホイザが育児を通じて自らの普通観が揺さぶられるとしたら?」というプロットが浮かび上がりました。
ゲームのマチタンはゆるふわな雰囲気とは裏腹に競技に臨む姿勢は非常にストイックであることがわかりますが、史実馬も真面目で一所懸命に走る馬だったそうです。その裏返しとして息をつけさせるのが難しかったとか。
そのあたりの性格を、母親としての責務を果たそうとして抱え込んでしまい自らを苦しめてしまうという本話のマチタンの行動に反映させました。
ところで史実馬はノーザンテースト産駒でもっとも賞金を稼いだ馬であり(5億1752万7400円)、種牡馬としても期待されていたのですが、悲しいかな、そのころはサンデーサイレンスが種牡馬として台頭した時期でした。
結局、45頭の僅かな産駒を残すのみで種牡馬生活は終了。現役時代の成績といい、種牡馬成績といい、あと数年早く生まれていればまた違う結果があったのではと思わされます。晩年は功労馬としてのんびり余生を送れたようで、苦労が報われたと思いたいですね。
余談ですが種牡馬時代のマチカネタンホイザ号は、普段はおっとりしているが種付けのときになれば馬が変わったかのように気合満点の種付けをみせてくれたそうです。
普段はおっとりしているのに種付けのときには激しいマチタン……ありだと思います! いえ、史実馬のことですよ?(すっとぼけ)
『NHK広報局による第26回NHKマイルカップについてのつぶやき』2021年5月10日16時12分
NHKの中の人にまで「えい、えい、むん!」が侵食した事例。
●原作:七海仁 漫画:月子
『Shrink ~精神科医ヨワイ~ 第6巻~第7巻』ヤングジャンプコミックス
グランドジャンプ連載の精神科医療を題材にした医療漫画。患者さんの生活を丁寧に描写していて、患者さんの困り事や人の弱さに寄り添う姿勢で描かれているのが好感触です。
扱っている病状はうつ病、アルコール依存症、PTSD、パニック障害、双極性障害、発達障害、パーソナリティ障害など幅広く、産後うつについてもこの作品で知りました。本話の中編~後編の流れはこの作品を下敷きにしています。
●尚桜子
『マンガ 妊娠・出産リアル体感BOOK 助産師さん呼びましょうか? 全5巻合板版』2016年 CLAP
妊娠初期からはじまって出産、産院での入院生活、退院するまでを事細かに描写した資料性の高いエッセイ漫画です。出産時の様子を描写するうえで非常に参考にさせていただきました。
当初は産院を退院した時点から書きはじめるつもりだったのですが、本書を読み進めるうちに出産時や周産期の出来事を盛り込まないと"産みの苦しみ"が伝わりきらないと判断しました。
分娩時の様子など、苦しかっただろうに当時の気持ちをよくここまで克明に覚えているなと敬服します。なにがなんでもネタにしてやるんじゃという声が聞こえてきそうな尚桜子先生のプロ根性が表れていますね。
日本赤十字医療センターの産後入院生活がおっぱい合宿とか呼ばれてるのは本作で知りました。
●Yahoo知恵袋
展開の都合上、マチタンが容易に他者に助けを求められない状況を作り出す必要があり、そのために夫の転勤を盛り込みました。
夫の会社クソブラックだなと感じた方いらっしゃるかもしれませんが、Yahoo知恵袋を覗く限りでも身重の妻がいる旦那に転勤を命じるところは普通にあるっぽいんですよね。くわばらくわばら。
●WHO
『Ten steps to successful breastfeeding』
●日本ユニセフ
●日本母乳の会
『「赤ちゃんにやさしい病院・BFH」認定推薦規則 改定2019』
1989年にWHOとUNICEFから母乳育児を成功させるための10か条が提唱され、1991年より10か条を満たす病院の認定が開始されました。日本では日本母乳の会が認定に関わる一切の業務を委託されています。
背景には発展途上国の乳児死亡における下痢や感染症の割合の高さがありました。WHOとUNICEFが母乳育児を推進するのは、子どもの健康悪化を防ぎ、母子の愛着を育む狙いがあります(ヒトに限らず哺乳類の母乳には免疫グロブリンや白血球などの免疫にかかわる物質が含まれています)。
日本では70年代にもっとも母乳育児率が低下し、その後母乳育児が啓発されるようになり、WHOとUNICEFの運動とも合流して今日に至っているのですが、日本は衛生状態がよく粉ミルクも高品質なので完母にこだわらなくてもじゅうぶん子どもは育ちます。
実際、母乳育児推進運動が起こる前の日本ではむしろ粉ミルクのほうが母乳より優れていると考えている人も少なくありませんでした。
こういう背景があって、現代のお母さん方は、母乳を推進する現代の価値観と粉ミルク全盛の自分の親世代の価値観との板挟みになることがあります。
たしかに母乳は免疫機能や神経の発達、特別な器具がいらないなどのメリットはありますが、軌道に乗るまでは試行錯誤の連続です。母体の健康あってのものだと思いますし、粉ミルクを使えば父親が育児に参加できるというメリットもあります。おっぱいにスパルタになるよりはお母さんの健康状態をみて粉ミルクもうまく使っていってほしいと思います。
●宋美玄、森戸やすみ
『新装版 母乳でも粉ミルクでも混合でも! 産婦人科医ママと小児科医ママのらくちん授乳BOOK』2018年 内外出版社
母乳育児に関して調べるうえでもっとも読みやすくかつきちんとした根拠を示していると思った本です。母乳の出る仕組みやさまざまなトラブル、母乳育児と粉ミルクをめぐる対立なども解説されています。
一口に母乳を出すといってもいろんなトラブルに悩まされます。母乳がでない、あるいは出すぎる、乳首が切れる、乳腺炎で痛い、哺乳量が足りているかわからない、何歳まであげていいのかわからないなど尽きることはありません。
本話でもおっぱいトラブルについて言及しようかと思ったんですが、あまり深く立ち入ると収拾がつかなくなりそうなのでやめました。
●ミィ
『脱 産後うつ 私はこうして克服した』2018年 講談社
産後うつを発症した作者さんが自殺未遂を起こすまでに追い詰められ、うつ病治療のために入院するにまで至った経験を綴った壮絶なエッセイ本。
作者さんによると産後の入院生活で受けたスパルタ指導により十分に身体を休められなかったのがうつの発症につながったのではないかと分析しています。本話前編の産後入院時の描写はこの本によるところが大きいです。やっぱ睡眠の重要性よ。
親や夫との意識の違いやうつが寛解したと思ったら躁に転移するなど、周囲との関係に大きな影響を受ける産後医療の難しさを感じます。
心ある病院は産まれた子どもを新生児室に預けてお母さんはゆっくり身体を休められるところもあります。産院選びのさいは子どもだけでなくお母さんにもやさしい病院であるか注視したいものですね。
●MSDマニュアル プロフェッショナル版
字義的な産後うつ病については上記がシンプルにまとまっていると思います。罹患率は10~15%とのこと。
●作:ショシャナ・S・ベネット、ペック・インドマン 訳:小川眞、小川朝子 監修:宮崎弘美
『ママブルーを乗り越えるために 産前産後のうつと不安の理解とケア』2021年 星和書店
アメリカの産後うつ病の事例について載っています。男性パートナーはどのような影響を受けるかといった情報も。
●豪田トモ
『オネエ産婦人科』2019年 サンマーク出版
胎児の声が聞こえる特殊能力を持つ産婦人科医の主人公はかつて担当患者が産後うつで自殺したことがきっかけでドロップアウトするが、マイノリティの属性をもつスタッフが多く在籍する人情味あふれるクリニックでやり直すうちにトラウマを乗り越え成長していく小説。産後うつになった母親の心理面を調べるさいに参考にさせていただきました。
設定は奇抜で文体も軽めの小説ですが、内容そのものはしっかりとした取材にもとづいており、勉強させていただきました。特に、過去に子育てでしんどい思いをしてもう産みたくないと考えている妻と、家族が増えるのを待ち望んでいる夫がカウンセラーを間に挟んで話し合うシーンは、子育てにおける男女の意識差がよく表れていて読み応えがありました。
●企画・監督・撮影:豪田トモ 製作・配給:インディゴ・フィルムズ
『ママをやめてもいいですか!?』2020年
子育て中のお母さんの本音に迫ったドキュメンタリー映画。オネエ産婦人科の作者が監督しています(というか豪田監督は映画のほうが本業)。
子どもは好きだし愛しいが離れたいときもあるというお母さん方の赤裸々な本音が語られています。
また男性側の考え、すなわち具体的にはなにをしたらいいのかわからない、やりかたが拙かったからといって叱責するのではなく教えて欲しい、もっと早く帰るのともっと稼ぐのを両立するのは厳しいといった意見も映しており、妻も夫も育児への関わり方に悩んでいる現状を示しています。
特筆すべきは、産後うつで自殺してしまった方のご親族が出演し、支えてあげられなかった後悔を語る場面です。うつは性格が陽気か否かに関係なく罹患する可能性があり、時として死に至る病であることが嫌でも意識されます。
●監督:ジェイソン・ライトマン 配給:フォーカス・フィーチャーズ
『タリーと私の秘密の時間』2018年
図らずも3人めの子を産んだ母親が、2人の子どもを育てつつ新生児の世話を日々こなすうちに疲弊し、みかねた兄が手配した若い女性の夜間シッターとの交流で母親は前向きになっていく。イマドキの子なのに仕事は完璧なこのシッターはいったい何者なのか? といった感じのストーリーの映画。主演はシャーリーズ・セロンさん。
とにかく育児のしんどさが詰まった映画です。3人めを産んだときの母親の表情に新しい命が誕生した喜びはなく、しんどい仕事がようやく片付いた or これからまた厄介な仕事がはじまるのねって感じの困憊した表情が象徴的です。
夜間のおむつ替え・授乳・寝かしつけに疲弊してるのに、その間旦那は熟睡してるかヘッドホンをかぶってFPSをやっていたり、家事がおっつかなくて夕飯は冷凍ピザ、子どもたちはスマホをいじりながら食べてるのに注意する気力もわかないというくだりは、もはやリアリティを通り越してリアルでしかありません。脚本家の育児に対する解像度が高すぎる。
実をいうとロン・リビングストンさんが演じる夫は仕事もするし、子どもの宿題もみるし、ランチも作るしで、彼なりに子どもに愛情を寄せており、まるでダメな夫略してマダオというほどでもありません。ですが中途半端に良い夫・良い父であるために夫を責めることもできず、妻が抱え込んでしまうという構図ができあがっています。
本話はその構図をオマージュして、旦那が家族思いの誠実な男であるがゆえにマチタンが夫を悪くいえず溜め込んでしまうという状況を描写しました*2。
ちなみに主演のシャーリーズ・セロンさんはこの映画の撮影にあたって3ヶ月半で約22kgの増量をして臨んだとか。妊娠しているシーンがあり、主人公の母親の心理を理解するためだそうです。
通常われわれは体を張るというとアクション俳優がスタントマンなしで危険なアクションシーンに臨む姿を想像しますが、セロンさんの取り組みもまたアクション俳優とは違う方向の体を張った演技であり、称賛されるべきものではないでしょうか。
●日本周産期メンタルヘルス学会
『周産期メンタルヘルス コンセンサスガイド2017 CQ7.向精神薬の母乳育児への影響は?(薬物の影響と授乳のメリット)』
医療者向けのガイドラインです。最終的には母親自身の決定を尊重するべきだが、向精神薬の多くは授乳中でも服用可能であり、その後の乳児への明らかな副作用はみられず、その後の発達の経過も正常な場合が多いと解説されています。
●母と子のメンタルヘルスケア(日本産婦人医科会)
中編で保健師がマチタンに書いてもらっていた質問票がこれです。産後うつ病のスクリーニングのために開発された10項目の質問票で、1987年に発表されて以来、世界各国で使用されています。
産後ケア施設とそのサービスの例を調べるさいに参考にさせていただきました。
●東京都文京区
保育園の選考システムを確認するさいに参考にさせていただきました。
●著:ジャレド・ダイアモンド 訳:長谷川寿一
『人間の性はなぜ奇妙に進化したのか』2013年 草思社
●著:マット・リドレー 訳:長谷川眞理子
『赤の女王 性とヒトの進化』2014年 早川書房
●山極寿一
『家族進化論』2012年 東京大学出版会
どうして現代になっても子育てはしんどいままなんだろう、他者からのサポートが少ないとつらく感じてしまうのはなぜなのかという疑問が湧き、進化生物学的な観点から考察を試みたさいに参考にさせていただきました。
本話の趣旨に合ったかどうかは微妙なところなんですが、進化論にまつわる話が好きなので趣味をゴリ押しました。ガチ勢からみればお前の考察ガバガバじゃねぇかよとお思いでしょうがお兄さんゆるして。
●岡野禎治
『周産期のこころの医療の課題』2016年 三重大学保健管理センター
上記報告によると、2005年~2014年の東京23区における妊産婦の死亡例89件のうち63件が自殺だったそうです。
亡くなられた方々の苦しみに比べれば非常に些末なものではありますが僕自身もうつを患っていた時期がありまして(隙自語。現在は寛解しています)、状況が好転する兆しがみえず支援も望めないと感じる状況・心境においては、死がとても身近なものに感じてしまうんですよね。
僕自身がいまも生と死のはざまを越えずにいられているのは単に運が良かった(あるいは悪かった)だけであって、亡くなられた方々がとった行動が他人事であるとはとても思えません。
亡くなられた方々へのご冥福と残されたご家族のご安寧をお祈りいたします。
●厚生労働省
『平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告 2 ひとり親世帯になった時の親及び末子の年齢』
●James F. Paulson、Sharnail D. Bazemore
『Prenatal and Postpartum Depression in Fathers and Its Association With Maternal Depression:A Meta-analysis』2010年 Journal of Medical Association
後編で医師がさらっと言及していた離婚や男性の産後うつに関するソースです。
前者によれば離婚は全体の38.4%が末子の年齢が0~2歳のときに発生しており、後者のConclusions(結論)によれば、男性の10%が産前産後にうつになるという結果が認められたそうです。
出産が夫婦にとって生活が一変するインパクトをもったイベントであることがよくわかります。
●フクチマミ
『マンガで読む 育児のお悩み解決BOOK』2014年 主婦の友社
子育てについて調べるさいに参考にさせていただきました。
特に寝かしつけの方法について後編執筆にあたってたいへん助かりました。
●作:不明 訳:伊藤比呂美 画:下田昌克
『今日』2013年 福音館書店
後編ラストに並べられた詩の元ネタはこれです。
もともとはニュージーランドの子育て支援施設に貼られていた詠み人知らずの詩だそうです。とてもいい詩なので丸々引用させてもらいました。
子育てでも日々の生活でも介護でもだいたいなんでもそうだと思いますが、できなかったことを嘆くよりもできたことを寿ぐのが大事なのではないかと思います。自分も。周りの人も。