引退ウマ娘のセカンドキャリア   作:空洞丸

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中編:森は獣を率いて人を呑む

「今日はシカを獲りに行くよ」

 

 上下明るい色の猟装に身を包んだセイウンスカイは弾んだ声で出猟を告げた。

 

「今回は知り合いの農家さんからの依頼で罠を仕掛ける手筈になったんだ。ニンジンを荒らされたっていうんじゃ黙ってるわけにはいかないよね」

 

 話は先日に遡る。彼女が罠の見回りを終えて帰路に着いた折、知り合いの農家に呼び止められ、窮状を吐露された。山の動物に作物を荒らされたという。

 

 犯行現場となった傾斜畑は一面に野生動物の足跡が乱離していた。

 斜面下り方向に残された足跡はイノシシのそれよりも細く、主蹄がクワガタムシの角のように開き、副蹄の踏ん張った形跡が残されていたことから、ニホンジカの仕業であると彼女は推定した。小さい足跡も含まれていたため親子ジカであると思われる。

 

 現在、日本全国で野生鳥獣による農作物被害が問題になっている。被害総額は約155億円。そのうちシカによる被害は60億円を占める。

 

「しかも被害額は農家の自己申告だから、あの農家さんみたいな零細規模のところは被害を申告しない場合も多いんだ。

 鉢植えで育てた作物とか、庭に植えられた果樹の被害とかも含めたら、もっと額が膨れ上がるだろうね。食害に心折れて離農したって話もよく聞くし」

 

 畑のある斜面の山際には野生動物の侵入防除柵が立てられている。だがお尋ね者は封鎖できない道路や河川から忍者のように忍び入り、畑を囲う電気柵をかいくぐって中に入り、ニンジンの葉をかじっていく。

 シカに一部でも食いちぎられると唾液のせいで破損部から全体に腐食が回ってしまうため、廃棄せざるをえない。収穫直前まで育てた作物を無為にされる農家の無念は察するに余りある。

 

 電気柵を確認すると下草が叢生しており、防除柵としての機能を発揮できていなかった。電線にかかった下草が天然のアースとなり、電流が地面に漏洩していたのである。

 下草刈りに人数が必要だと判断した彼女は、数年前にこの僻地にできたというシェアハウスの手隙の面々──彼らいわく"遁世"をやっている──に応援を依頼し、彼女自身は山に入って見切り*1をおこなう運びとなった。

 

 本来であれば役所に有害鳥獣捕獲を申請したのちに駆除にかかるのが筋*2ではあるが、申請から許可が降りるまでには数日のずれがある。

 そこで農家は彼女に直接依頼を持ち込んだ。いまは猟期であるから、猟師が狩猟動物であるニホンジカを個人的に狙って山に入るぶんには問題がない。

 

 

 見切りに先立って、セイウンスカイは自宅近くにある小さな祠に出向き、祀られている山の神に願を掛けた。

 木彫りの山神は厳粛な表情で静かに佇んでいる。彼女は出猟のさい、必ずここに来て手を合わせるという。

 

「木こりとかマタギとか、その昔、山で仕事をしていた人は入山のときに山の神様に祈ったり捧げ物をしてたらしいよ。だから私も先達にならってお祈りしてるわけ」

 

 山は人智の及ばぬ領域だ。あらゆる生命を懐に抱き、無償の恵みを与えたかと思うと、卒爾豹変して容赦のない猛威を振るう。

 山人たちは、御山の諸現象に通底する計り知れない力を山自身に、あるいは樹に石に、人形(ひとがた)にかたどって畏れ敬い、山に対する戒めを次世代へと語り継いできた。

 

「いまの人たちは迷信だっていうかもしれないけどさ、三女神様から不思議な力をもらった経験のある私としては、案外バカにできないと思うんだよね」

 

 古い口伝が幾星霜を経て変形し、本来の意味と別のものになっている場合もあるかもしれない。儀式の形骸化、思い込みやジンクス、迷信俗信のたぐいもある。

 だがそうした霊山への畏怖が、危険を回避する意識と知識を後継に伝え、その蓄積された山の経験知は、今日の動物行動学や自然科学の基礎にもつながっている。

 

「どういうわけか山の神様は女性で、しかも嫉妬深いって考えられてきたみたいなんだよね*3。だからちゃんとお祈りして、私が猟に出られるのは神様のおかげですよー、あなたには敵いませんよーってご機嫌をとっとかないと。

 ほら、私ってば純情可憐なハンターウマ娘ですから。へりくだっておかないとこわ~い女神様に目をつけられちゃう」

 

 そういって彼女は茶目っ気たっぷりに笑みの眉を開けてみせた。尊神は森厳な表情を崩さなかった。

 

 

 下手人のシカはどの山からやってきたのか。現場周辺の足跡の方向からおおよそのアタリをつけたセイウンスカイは、シカの根城にしている山群に続く山道に軽トラックを向けた。うまぴょい伝説を鼻歌で歌いながら軽快にハンドルを回している。

 

「ふふん、ふふん、ふふふふふ~ん♪」

 

 この村に住みはじめたころペーパードライバーだった彼女は、いまではマニュアルの軽トラで細い山道を軽々と運転できるようになっている。まるでピクニックにでも行くような気軽さだが、彼女の猟装は本格的だ。

 

 ハンターベストの下には、衣擦れがせず高い防水・防湿性のあるポリエステル100%のジャケットとボトムスを着込み、インナーは汗で濡れても乾きやすい速乾性の高いものを採用している。

 足元は林業用のスパイクブーツだ。グローブも防水かつ滑り止めつき、帽子は耳を収めてもフィット感がある。

 色合いは全体的に明るい橙色で、ところどころ黄帯が差し色として入っている。法律で定められてはいないが、狩猟中の服装は「ハンターオレンジ」という赤系統の色を着用するのが望ましいとされている。

 

「ほかのハンターからみえやすいようにして誤射を防ぐ目的があるんだ。イノシシやシカは青色以外の色覚を持たないから派手な色でも問題ない。下手に迷彩柄にして獲物と誤認されるより、獲物に逃げられるほうがずっとマシ。無事に山を降りられるのが一番の猟果ってことだね」

 

 用意する道具も種類が多い。胸ポケットにはナイフ、地形図、防水カバーをつけた狩猟者登録証を入れ、赤色のハンターバッジをつけている。

 リュックサックにはヘッドライト、ロープ、雨具、スコップ、防寒着、モバイルバッテリー、緊急医療(エマージェンシー)キットを。

 ポーチにはポリ袋、タオル、ティッシュ、ライター、非常食、結束バンド。ベルトにつけた腰袋には水筒とクマ撃退スプレーまで準備している。腕時計はスマートフォンのアプリと連動するGPS機能つきだ。

 

「今日は見切りが主目的だからこれでも荷物は少ない方だよ。地元猟師のなかには軽装でふらっと山に入る人もいるけど、私は怖がりのか弱~いウマ娘だから『備えよ常に』の精神でいきたいね。とくにGPSは大事だよ」

 

 狩猟免許を取りたてのころに山に入った折、足元を踏み外して現在位置のわからないところまで斜面を転がるアクシデントを経験した。

 その拍子にスマートフォンを紛失し、地形図を参照しても正確な位置がわからず、何時間も山中を彷徨した。寒さが身に染み、日が暮れる瀬戸際で視界も効かず、藪がざわめくと襲われるのではないかと肝を潰した。

 

「やっとのことで道に出たら、村から徒歩で30分もしない位置だったんだ。近場の入り慣れた山でも遭難はありうる。そう教訓を学んでからは、どんなに短い時間でも山に入るときは相応の準備をするようになったよ」

 

 

 しばらく運転していると、彼女はなにかに気づいて軽トラックを道路の脇に停車し、運転席から降りて地面を確認した。

 

「しめた!『渡り』が残ってる。ほら、これみてよ。泥のついたシカの足跡が道路を横断して村方向に続いてるでしょ。シカがこのあたりから出てきたわかりやすい証拠だよ。これは幸先がいい」

 

 人間用の道路は見通しがよいため、野生動物もしばしば通り道にする。そのためシカやイノシシなどと衝突事故が時折発生する場所でもある。

 山のぬかるんだところを通ってきたのか、泥の乾き具合はまだ浅い。ここを起点に彼女は本格的な見切りを開始した。

 

 シカの足跡をたどってスギとヒノキの密生する急峻を登っていく。

 斜面の緩やかな獣道に出ると足跡らしい足跡は薄くなった。代わりに藪笹の食いちぎられた跡を頼りにした。笹は常緑であるから、ほかの植物が枯れる晩秋から冬にかけてシカの生命線になる。

 シカの口先は下顎にのみ切歯があり、上顎には硬化した歯茎(歯板という)しかないため、シカは上下の顎先で葉を挟み、下顎の歯でスパッと噛みとるように食べる。こうして残った切り口の鋭い葉先を追って追跡を進めていく。

 

 針葉樹が翠蓋を広げる森は陽光をさえぎって陰森としており、人里では考えられないほど静かだ。枯れ葉を踏む乾音、樹間を縫って響く鳥韻がむしろ静謐さを強調する。頭上の枝条が嫋々(じょうじょう)と揺れるときも、地上の通り道は無風が抜ける。

 彼女の歩くペースものんびりしていて、単に山を行楽しているだけのようにすらみえる。猟師の文字から想像される殺気や威圧感はまったく感じられない。

 

「あ! あれをみて!」

 

 やにわにセイウンスカイが声を張った。蔓植物の絡まったスギを指差す。私には視認できないが彼女にはなにかがみえているらしい。未知の存在に私の身体がこわばった。

 

「ヤマブドウが実ってるね。ちょっともらっていこう。甘酸っぱくておやつにちょうどいいんだ。おっ、あっちにはコクワもあるね」

 

 すわ獲物かと思っただけに肩透かしを食らった。彼女は満足そうに山の恵みに舌鼓を打っている。狩猟となにか関係があるのだろうか。

 

「いや、とくにないよ?」

 

 彼女は飄逸としている。肩の力が抜けていて自然体だ。警戒したこちらが間抜けに思えてくる。

 

「罠猟は仕掛けるまでも仕掛けてからも時間がかかるからねー。獲れたとしても狙いと違う動物が掛かるときもあるし、思い通りにいかないのが狩猟なんだから、狩猟以外の部分も楽しめたほうがいいじゃない」

 

 それからも彼女は時おり地形をじっくりと観察したり、空を見上げてみたりと、浮草のように獣道を進んでいった。

 彼女の頭のなかには山々の地図が博物図鑑をともなって組み込まれているのだろう。観察によって新たな情報が次々にインプットされ、リアルタイムに更新された地図はより精緻になっていく。

 山と戯れる彼女の活き活きとした姿は、現役時代さながらのみずみずしさが蘇っている。

 

 

 痕跡をたどって山の中腹に歩を進めると、石垣が組まれた小さな台地の点在する地帯に入った。

 かつては茶畑だったようだ。チャノキは野生化して幹が太く、私たちの身を覆うほどの高さになっている。シカが食い荒らしたのか、口の届く部分は枝だけが残っていた。

 

「このあたりは戦前まで集落があったらしいけど、高度経済成長のころにはもう人がいなくなって耕作放棄地になったんだって。

 ここをみて。樹皮がえぐれてるでしょ。これもシカがやったんだよ。周りの木も同じような被害にあってる」

 

 食害を受けたチャノキはつるりとした幹がむき出しになっている。周囲のスギやヒノキをにいたっては樹皮がズル剥けになっており、あらわになった形成層が林景に枯草色を差していた。

 

 シカは食欲が旺盛で1日に2~5㎏の植物を食べるという。餌が減る冬季には草だけでなく植林の新芽、樹皮なども食べるため、林業において大きな問題となっている。

 そして、チャノキが広がり身を隠すのに好適なこの耕作放棄地は、人里へ侵入するにあたって恰好の橋頭堡となっていた。

 

「この耕作放棄地は日本の山の縮図だよ。シカが侵出してきて食害って形で表れるけど、より大きな視点で考えると、シカが食べてもなお森林資源が余ってるともいえるんだ。

 実をいうと、日本の森林はいまだかつてないほど繁栄してる。人里を、森が、飲み込もうとしているんだよ」

 

 

 近年、農村部のみならず市街地にもシカ、クマ、イノシシなどの大型野生動物が侵入し、人々に危害を加えるといった事件が社会問題になっている。

 人間が生き物の棲み家を奪ったからだ、山に食べ物がないからだ、里山が荒れたからだなどと、人獣の領域侵犯に心を痛める人々が鳩首論議しているが、その前提には自然環境の破壊が進んでいるという漠然としたイメージが基盤となっている。毎日ニュースで世界中の環境問題が報道されているからかもしれない。

 

 しかしこと日本においては近世以来の400~500年間を通じて現在が森林蓄積の最高潮にある。

 

 本邦で稲作の定着以降、農地開墾、建築資材、燃料確保などあらゆる目的で森林乱伐が続き、禽獣が奥山へと追いやられた歴史があるのは確かだ。しかし高度成長期以降は潮目が変わった。

 

 木材の輸入自由化により安価で良質な外国産材が大量に流入し、国産材の生産量は下落した。化石燃料が一般家庭に普及し、薪炭材需要も激減した。同時期に都市経済の発展による農山村の人口流出も加速する。

 それらの結果、国内林業は衰退し、管理放棄地が拡大し、間伐も枝打ちもされない荒廃した森林が残された。

 それでも森は秘めた生命力を発揮して人のいなくなった里山で着実に勢力を回復し、勢いそのまま都市部を併呑しようとしている。

 

 里山の人の衰微は野生動物の捲土重来をも招いた。戦後の野生動物政策が「保護」に重きを置くようになったのも追い風だった。

 

「戦後間もない時期にメスジカは狩猟対象から外されたんだ。当時の生息状況を鑑みると妥当な判断ではあったと思うけど、その後がいけなかった」

 

 メスジカは栄養状態が良好であれば1歳から毎年妊娠可能で、しかも繁殖期にはオスジカがハーレムを作る。

 山から人が減り、積雪量が減少し、天敵のオオカミも明治時代に絶滅していたため、シカは徐々に生息数を回復し、30~40年前から感染爆発のごとく加速度的に増大した。

 

 シカによる各地の農業・林業・生態系被害が深刻化するにいたり、15年ほど前にようやく、メスジカの狩猟が約60年ぶりに解禁になった。

 その間、政府はそれまでの保護政策に加えて「管理」も重視する姿勢に変化し、10年でシカ・イノシシの生息数を半減させようと個体数調整に息巻くようになった。

 確かに捕獲頭数は右肩上がりに推移しているが、シカやイノシシの旺盛な繁殖力には追いつかず、目標達成は困難なまま今日にいたっている。

 

 いっぽうで実際に捕獲・捕殺に従事する狩猟免許取得者は減少傾向が続き、高齢化は深刻だ。

 

「猟師のあいだではよくこんなジョークが交わされるんだ。『クマが保護されんといけんてよういわれとるけんど、猟師のほうが先にうさりよん(いなくなるんじゃないか)?』。

 私の感覚でも同感。私に猟を教えてくれた人たちもずいぶん引退しちゃったし、私より若い人は入ってこない」

 

 猟師社会は高齢者男性ばかりで独自の世界ができあがっている。そのため若者や女性が定着しにくい。

 だがより根本的な原因がはっきりしている。現代において猟師という職業は基本的に専業では食べていけないのだ。

 

「狩れば狩るほど地域の獲物は少なくなるし、山菜やキノコ、養蚕、炭焼き、毛皮なんかの現金化は現代じゃほとんど期待できない。ダム建設や林道工事みたいな日当仕事とかも。

 山間の経済を潤していたあらゆる生業が成り立たなくなったんだ。私も現役時代の賞金がなかったらここまでのんべんだらりとはできなかったと思う」

 

 新天地で生活基盤を築いた若人たちは故郷に返ってこなかった。その親世代もすでに川を渡った。わずかに残った者たちも高齢化し、かろうじて里山の過疎地域が存続している。

 

 里山はかつて都市部と奥山を隔てる緩衝地帯として成立していた。それがいまや奥山化し、膨張した森は都市部の辺縁と直に接するようになり、毛皮鎧の尖兵を住宅地に送り込んでいる。

 

「地方都市の空中写真をみると、宅地と森林の二極化が顕著なんだよね。民家の隣で鬱蒼とした森林が広がってて、野生動物はそこを通って人里に降りてくる。シカもクマもイノシシも、森を都市へのハイウェイとして利用できるようになったんだ」

 

 生ゴミや庭先の果樹、商品にならない放置作物など、人里は山よりも格段に栄養豊富で美味な食物をたらふく貪れる環境がある。

 野生動物は人間よりもよほど合理主義者だ。山中で何時間もかけて草や木の実を探してさまようよりも、エネルギー収得効率のよい"行きつけ"の食事処があれば、衆目に身を晒すリスクを犯してでも優先する。それが野獣にとっての自然な選択だ。

 いっぽうその環境を構築した人間は不自然にも問題だ問題だと騒ぎ、慌て、彼らと衝突する。その問題現場の最前線にあたるのはたいてい地元猟友会だ。

 

「あまり猟友会に期待しすぎないでほしいんだけどねー。猟友会って、狩猟の愛好家団体であって職業団体じゃないから。べつに駆除のプロってわけじゃないんだよね。ほかに担当できる組織がないだけ。ほとんどボランティア。

 駆除すれば行政から報奨金が支払われるけど、アルバイトしたほうが安全かつ楽に稼げるよ。いまは多少マシになったけど昔は弾代にもならなかったみたい」

 

 最近はハンターを駆除作業員として雇用する企業・自治体も出てきてはいるが、報酬はその労働環境の苛酷さに対して驚くほど薄給だ。

 しかも生息状況・被害状況によっては雇用契約が継続しない可能性もある。野生動物相手の仕事に"安定"は存在しない。

 

「私も麓の町の捕り物に何度も駆り出されたなー。夏の出動のときなんか暑いし虫は湧くし、獲物に近づくと汲取式トイレみたいな臭いがして鼻がもげそうだった。

 私なんて下手に脚力と腕力があるもんだから、半矢*4の獲物を追いかけてふんじばった機会も数知れない」

 

 勤め人ならば仕事を中断し、同僚上司に頭を下げて駆けつけなければならない。勤め先が狩猟に理解のある職場でなければ続けるのは難しいだろう。

 

「そこまでして駆除に協力しても、不注意で安全を怠ったとみなされれば免許取消になるリスクがあるし、そうでなくとも駆除が遅くなれば苦情をいわれる。正直にいって割には合わない」

 

 野生動物に怯えずにすむ時代はとうに過去のものとなっている。

 しかし産業構造の変化により山を生活の場とみなさなくなったわれわれ都市住民は、ここ50年程度の極めて短い時間で劇的に回復を遂げた自然の変化速度についていけておらず、「動物は山奥に棲むもの」という都合のいい常識にいまだ囚われている。

 

「むしろ野生動物の姿が日常から消え失せていた百何十年間のほうが特殊だったんじゃないかな。人間がシカやイノシシを徹底的に減らしたからこそ成立していた一時的な状態だったってだけで、そのパワーバランスが崩れれば逆襲を受けるのはそれこそ"自然"だと思うよ」

 

 世間では「自然との共生」がスローガンとして礼賛される。されど共生の実際は、土地資源やお互いの存在を利用しあった末にたどり着く均衡状態であることを、どれだけの人が意識しているだろうか。

 

「押し合いへし合いを嫌って都市部にみんなが集まればこれ幸いと辺縁部から侵食してくるんだよね。レース場の芝が常に人の手を入れないと適切な状態を保てないのと一緒」

 

 空き家に這うツタや鉢からはみ出て跋扈するローズマリーのように、自然はひとたび利用圧がなくなれば確実に触手を伸ばしてくる。自然と人間との関係は、本来は闘争関係なのだ。

 地震・雷・火事・おやじなどの自然現象を考えれば、自然が本来、生物に無償の愛を注ぐだけの慈母ではないことは明白である。むしろ無視と無関心を許さない後妻嫉妬(うわなりねたみ)の性格が強いといえよう。

 

「ひょっとしたら将来的にはほとんどの人が都市以外では生活できなくなるのかもしれないね。過疎地の生活インフラなんていつまで保たれるのかわからないし。都市のほうが文化・娯楽施設も充実してて、お金も稼ぎやすい。都市に集まる人を責めることはできないよ。

 逆にいえば、狩猟はできるうちに楽しんでおいたほうがいいってことですねー、あっはっは」

 

 呵々と笑う彼女からは諦念を通り越して悟りの境地すら感じられた。彼女はいま、世の中の潮流から離れた岸に立っている。大勢を追わず、風変わりな生き方を貫く意味を熟慮してきた末の結論なのだろう。

 

 とはいえ、ほかの選択もとれたはずだ。猟友会への加入は任意であるから本意でなければ加入しない選択肢もある。てらいなく割に合わないと評する実入りの少ない活動をなぜ続けているのだろうか。

 

「一言でいえば義理かなあ。猟友会の人たちにしろ、村の人たちにしろ、郷土愛が強くてね。お世話になっている私としては無碍にできない。

 面倒は面倒なんだけどねー。でも農家さんの悲痛な訴えを無視したら夢見が悪くなりそうじゃない? 子供はもう町で新しい家庭を築いてて、土いじりだけが生きがいだって人もいるわけで。つらいでしょ。生きがいを奪われるのは。

 いやはや難儀な商売ですねー猟師ってやつは。しがらみばっかり増えちゃってさ。昔だったらそういう拘束のきつい面倒な仕事なんて絶対やらないって誓ってたのにね。これも大人になったっていえるのかな?」

 

 ものぐさな態度とは裏腹に、彼女の声色はどこか誇らしげにも聞こえる。

 

「それに、狩猟は都会にいたら絶対味わえない経験ができるからね。一番の目的はそれかな。ま、これについてはおいおいわかってくると思うよ」

 

 含みをもたせた言葉を口にして彼女は耕作放棄地を後にし、新たな獣道に足を踏み入れていった。

 

 

 痕跡をたどって斜面を登っていくと、獣道が二手に分かれていた。

 

「Y字の交差点だね。両方向に道が伸びてる」

 

 どちらも特徴や交通量としては同じようなものだった。

 

「こういうときは相手の気持ちになって考えてみよう。ここまで草を食み食み移動し続けて、そろそろゆっくりしたいなー、いいところはないかなー。おっ、右手側に行けば谷川の日当たりのいいところに続いてる。よーし、そっちに行ってみよー」

 

 Y字路を右手に進んで小尾根に出ると、道行きに糞が散乱していた。茶褐色の粒状の糞と、少し乾いて亀裂の入った細い黒糞だ。消化しきれなかったドングリの殻が混じっている。

 

「つぶつぶした糞はシカのやつだね。まだつやがあるから1日も経っていないと思う。細いほうは……イノシシかな? ちょっと変わった形してるけど。

 ずいぶんグルメなイノシシだなあ。ドングリばっかり食べてる。乾燥して黒ずんでるから2、3日は経ってそうだね。こっちの道を通ってるのは間違いなさそうだ」

 

 糞の状態からシカとイノシシの共有道路だと判断したセイウンスカイは続けて進んでいく。

 途中合流した登山道をさらに横切って谷川のある山の鞍部*5を目指す。斜度がきつく、木や笹の茎をつかみながらおそるおそる下りていく。

 

 登山道周辺は集落と比べて標高が高く、あまり人手が入ってこなかったため、ミズナラやクヌギなどの落葉高木が百枝を広げている。

 これまでたどってきた針葉樹の森よりは陽気に満ちた空間ではあったが、林床に跳梁する腰高のミヤコザサや降り積もった落ち葉が地面を覆い隠し、周囲の見通しはこれまでとさほど変わらなかった。思わぬ窪みにはまらないよう注意しながら進む。

 

 傾斜がゆるくなり、滝つ瀬のざんざめく流音を聞き取れる余裕が出てきたころ、落ち葉の薄い蛇行した獣道を先に行っていた彼女が足を止めた。怪訝な表情で思案投げ首している。

 

「おかしい。さっきからシカの足跡がぜんぜんみえない。これだけ笹が生えているのに食痕が少なすぎる。でもたどってきた形跡からするとこっちの方向で間違いないはず……」

 

 顎に手を当てながらこれまでの状況証拠を頭の中で再走査していた彼女がふと顔を上げると、ミズナラの周りの笹薮や落ち葉がかき分けられた跡を発見した。ところどころ腐葉土が露出し、枝が散乱している。そして木につけられた傷跡が目に入ると、彼女の表情はたちまち気色ばんだ。

 

「ここはまずい! いったん下山しよう」

 

 彼女が危殆を察して帰還の意思を示したとき、背後から笹薮のガサガサと鳴る音がして反射的に振り返った。

 ひっつき虫を身体じゅうにつけた黒い塊がのそりと這い出てきた。その四つ足がこちらを視界に捉えた。一瞬の驚愕。すぐにこちらに正対し、深山幽谷に響きわたる慟哭をあげて私たちを威嚇した。

 状況を把握した彼女が息漏れ声で鋭く叫んだ。

 

「クマだッ」

 

 

 急転直下の事態に一気に心臓が跳ね上がり、天辺から爪先まで身の毛がよだった。感知する景色が一変した。谷川や小鳥の音は耳から消失し、周囲の木々や藪は霞み、黒々としたクマの姿形だけが視界にはっきりと浮かび上がってくる。ごま粒の瞳、豚っ鼻、マスコットの円耳。そして、足先からみえる鋭い鉤爪。

 

 クマの体長は小学校低学年児童くらいで、体格のよい黒犬のようにもみえる。胸元の三日月模様の白斑からするとツキノワグマだろう。

 彼我の距離は約10メートル。低い姿勢で毛を逆立て、耳を伏せて上目づかいにこちらを睨みつけている。

 ただちに襲いかかってこないのは、向こうも突然の事態にとまどっているのかもしれない。

 

 熊口を逃れるためにセイウンスカイが対応策を指示した。努めて冷静を保ち、クマを刺激しないよう声を殺しながら。

 

「ゆっくり後ずさりして。距離をとって木の陰に隠れるんだ。絶対に背中をみせないで。背中を向けたら本能的に追ってくる」

 

 彼女の進言にうなずき、足を後ろに出してクマから離れようとした。

 ところがそのときの私は降って湧いた焦眉の急に頭が真っ白になり、後背が下り斜面であることをいっさい失念していた。

 平地と同じ感覚で足をつこうとしたため、たたらを踏んでバランスを崩し、尻餅をついた。地面に臀部をぶつけた衝撃で地面の枯れ葉が騒々しく音を立てた。

 

 この音が一触即発の空気を破り、クマを矢も盾もたまらず私への急襲に駆り立てた。

 太く締まった四肢で膂力を爆発させ、半弧を描くようなすり足で声も出さずに突進してくる。その加速力たるやウマ娘のスパートにも劣らない。

 またたく間に数メートルの距離にまで接近し、振り上げた右前足の、五指の凶爪が私の頭に差し迫った。

 

 やられる! とっさに顔を腕で庇おうとしたとき、彼女がクマと私とのあいだに敢然と割って入った。

 さきほどまで腰袋に入れていたスプレー缶を構え、もはや目睫(もくしょう)(かん)に迫っていたクマの顔面に向けて引き金を引いた。

 

「ウオオーン!!」。辛子色の霧を真正面から浴びたクマは面食らって哭声をあげ、二本足で立って目元を押さえた。カプサイシンの強烈な刺激がクマの目、鼻、口のあらゆる粘膜をつんざいたのだ。

 

 想定外の反撃に苦悶にあえぐクマは、こちらを正体不明の危険因子とみなしたのか、生存のための最善手に全精力を傾けた。すなわち逃走。逃走。逃走。

 尻を向けてめくらめっぽうに走り去っていったクマは、落ち葉を巻き上げながら藪に突っ込み、緑の暗幕の奥へと姿を消していった。

 

 クマ嵐の吹き抜けたあとには、いまだ起き上がれないでいる私と、両手でスプレー缶を構えたままのセイウンスカイが残された。

 クマが視界から去ってから数分後──体感的には何時間にも感ぜられた──クマが戻ってこないことに安堵した彼女はようやく構えを解き、膝から崩れて地面にへたり込んだ。

 彼女が私のほうに振り向き、安否をうかがう。なかば放心状態の彼女と目が合った。

 

「はは、ははははは……!」

 

 どちらともなく哄笑がこみ上げた。極限まで圧縮された緊張が一気に解放され、あらゆる感情がないまぜになった。笑って発散させるよりほかに手立てがなかった。

 いまなお漂う唐辛子のにおいに刺激された目が、鼻が、皮膚が、痛いほどの生の実感を満腔にみなぎらせた。

 

「クマ撃退(よけ)スプレー、持ってきてよかったぁ……」

 

 

 クマ撃退スプレーのカプサイシン臭が全身に残り、そうでなくともクマに襲われて狩猟どころではなくなった私たちは、登山道に引き返して彼女の軽トラックの停車場所まで道なりに戻り、彼女の家に引き上げた。

 

 シャワーと着替えを済ませた彼女は、役所の鳥獣被害対策課に連絡を入れ、クマとのやりとりの一部始終を報告し、できれば駆除はしないでほしい旨を伝えて電話を切った。

 

「私たちが出先でクマに襲われたっていうより、クマの生活圏に勝手に闖入したのが私たちだったっていうのが正確だと思う。クマは本来、人間との無用の軋轢を避けようとする動物だから」

 

 アケビの茶葉に湯をくぐらせながらセイウンスカイはクマの生態について説明する。

 軽く炒った茶葉の香ばしさと甘みが部屋を満たし、ようやく人心地がついた。

 

 野生動物は人間と遭遇した場合の臨界距離をもっている。接近する人間から逃げるか、攻撃に転じて排除しようとするかの境界となる距離だ。

 ツキノワグマは臆病で警戒心が強く、人間を避ける傾向をもつ。臨界距離を保ったまま先に人間の接近に気がつけば、ひっそりとその場から立ち去る場合がほとんどだ。

 

「現場が谷川のそばだったのがお互いの不幸を後押ししてしまったね」

 

 クマは嗅覚と聴覚に長けた動物だが、谷川の急流の轟きと水気とがクマと私たち双方の足音と臭いをかき消した。好物のドングリの採食に夢中で周りの音が耳に入っていなかった可能性もある。また、互いが笹薮を挟んで対置していたため、視覚的にも認知が遅れた。

 結果としてお互いが超至近距離で邂逅するにいたった。つまり、クマの臨界距離の内側に大きく踏み込んでしまっていたのである。

 

 あるNGOのクマ被害に関する報告書によれば、至近距離で遭遇してもたいていはクマのほうから逃げ出していくらしい。

 しかし私たちは襲われた。食事を邪魔されて気が立ったのか、もともと攻撃的な個体だったのか。それとも怯懦の裏返しで、私の転んだ音に辛抱たまらず、掛かったウマ娘が不用意に前に出てしまうがごとく遮二無二突っ込んできただけなのか。確たる理由は(よう)として知れない。

 

「いずれにせよ、クマからすれば私たちは招かれざる客で、攻撃は正当防衛だったわけだ。あのクマには悪いことしちゃったな」

 

 彼女は当然のように自分を害そうとしてきたクマの肩を持つ。むしろ自分の判断ミスを悔やんでいる。

 

「いまから考えると、小尾根でみつけたフンをイノシシのものだと判断したのが間違いだった。あれはクマの糞だ」

 

 小柄なツキノワグマの糞とイノシシの糞は似た形をするときがある。しかし、クマの糞は1本糞、イノシシの糞はダンゴがいくつもくっついた形をしており、明確な違いがある。

 本来はクマの糞であったのに、乾いてひび割れていたためにイノシシの糞だと誤認してしまった。その誤認のもと、シカの糞もその場にあったためにイノシシとシカの共有路だと思い込み、シカの代わりに入り込んだクマのテリトリーに進んでしまった。それが彼女の推論であった。

 

「もう何年も目撃情報がなかったから油断してた。それだけならまだしも、獣道(した)ばかりみて、周りに気を払っていなかった。

 現場の周辺、帰りによくみたらクマ棚*6があったよ。クマがいるのは明白だったんだ。私の判断ミスで危険にさらして、ごめんなさい」

 

 彼女はしおらしく頭を下げた。耳と尻尾も垂れ下がっている。危険に巻き込んだ責任を感じているようだ。

 私は気にしていないと答えた。九死に一生を得たのもまた彼女のお陰だ。寿命が縮まる思いがしたのは確かだが、それよりも彼女の活動を間近で体験できた喜びのほうがまさっている。

 

 私の返答は予想外だったらしく、彼女は瞠目して開いた口が塞がらないようだった。呆れたような苦笑で私に言葉を向けた。

 

「そういってもらえると助かるよ。猟師は変わり者が多いけど、あなたも大概だなぁ」

 

 それよりも、どうして何年も目撃情報がなかったクマがあの場に出現したのだろうか。

 疑問を彼女に尋ねると、推測にすぎないけれどと前置きして、自身の考えを開陳してくれた。

 

「たぶん、あのクマは他県から越境してきたんだと思う。もともといたところのドングリが凶作だったんじゃないかな」

 

 詳述すると以下の説明になる。

 

 ツキノワグマは普段、限られた一定の行動圏で生活しているが、秋になると行動範囲を飛躍的に広げる。冬籠もりに備えて食料を大量に探すためだ。とくにメスグマの場合、秋に蓄えた栄養が出産の成功をも左右する*7

 秋に好んで食べるのはブナやナラなどのドングリ、あるいはクリだ*8。脂質と炭水化物に富んだドングリを求めて秋のクマは寸暇を惜しんで森をさまよう。今回のクマのもともとの生息圏でどの樹種のドングリも凶作になり*9、近年(いや)増すイノシシとの採餌競争もあって、常秋よりも広い範囲を移動した結果、結実周期の短いミズナラやクヌギのあるさきほどの現場にたどり着いたのではないか。

 

 研究によれば、ドングリ凶作年の秋のツキノワグマの行動圏は、オスメスともに通常年を大きく越えて拡大する。

 その範囲は数十~数百平方キロメートルにものぼり、一日で一気に数十キロメートル移動する個体さえいるという。隣県の山脈をたどって移動してきたとしてもなんら不思議ではない。人間の決めた恣意的な行政区分など野生に生きるクマには関係ないのだ。

 

 現場での出来事と併せて考えると、食料事情の悪化にともなうクマの大移動、痕跡の読み間違え、お互いを察知しにくい現場環境などいくつもの巡り合せが重なり、今回の事態が発生したのではないかと彼女は見当をつけた。

 

「いまのうちに追い払えたのは不幸中の幸いだったかもしれない。あそこにはなんか怖いヤツがいるぞって学習しただろうから、少なくともしばらくはあのクマが人里に出ることもないんじゃないかな。人里で被害が発生したら、行政も手を下さざるをえない。それは忍びないよ」

 

 彼女は自身の身を脅かした存在をあくまで気遣う。どうしてそこまで肩入れできるのだろうか。

 

「こういうトラブルやアクシデントも含めて狩猟だと私は思ってるから。

 さっきもいったけど今回の事故の直接的な原因は私の判断ミス。環境的な要因のほうは山の神さまの気まぐれだからあまり気にしても仕方がない。自分の力の及ぶところ、そうでないところがはっきりしてる。だからクマへの怒りとかはないんだよ」

 

 相手がどうこうというより自分に焦点を合わせて活動できるのが狩猟の気に入っているところだと彼女はいう。

 

「良いことも悪いことも誰の責任にもできない。逆にいえば誰かを恨むこともない。とくに単独猟はね。その気楽さが好きなんだ」

 

 彼女は自身の狩猟に対する所感をそのように総括した。

 彼女はぬるくなったお茶を飲み干すと、あらためて明日、山の見切りに入る旨を告げた。

 

「クマも追っ払ったし、明日こそシカの根城を突き止めるよ。ひょっとするとまた間違えちゃうかもしれないけど、それでも来る?」

 

 彼女は答えの分かっている質問をあえて寄こしてきた。答えはもちろんイエスだ。

*1
野生動物のいそうな山に入って痕跡を探し、獲物の生息状況や猟に都合の良いポイントなどの下見をおこなうこと。

*2
鳥獣保護管理法ではたとえ人の社会に害をなした野生鳥獣であっても勝手に捕獲・殺傷することは原則としてできない。そこで鳥獣被害防止特措法にもとづき、環境大臣または都道府県知事(多くは市町村長に委託されている)の許可を受けたうえで捕獲が可能になる「捕獲許可制度」を設定している。許可捕獲であれば猟期外でも捕獲が可能。他者に委託する場合は地元の猟友会が担当する場合が多い。

*3
ただし山神の御神体は必ずしも女体ではない。

*4
銃弾が命中しても致死状態になっていない手負いの状態。

*5
山と山とのあいだの鞍のようにくぼんでいる地形。

*6
木に登ったクマが実を手にするために枝を折って手元にたぐり寄せた結果できるヤドリギ状の枝敷き。

*7
クマの交尾時期は夏季であるが、受精卵は初冬を迎えるまで着床しない(着床遅延という)。母親が冬眠前にどの程度の体脂肪を蓄積できたかによって生理的判断に猶予を与えていると考えられている。たとえば着床と出産を進めるか、その分のエネルギーを冬眠中の自己保全にあてるか。

*8
サルナシやヤマブドウといった漿果類も食べる。秋はとくに植物食に偏る。

*9
ドングリは毎年落ちているようにみえるが実は周期がある。野生動物による大量採食は生息範囲の拡大を阻害するため、ドングリのなる木は結実タイミングをずらす戦略をとっている。樹種ごとに結実周期が異なり、凶豊の波もそれぞれ違う。

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