インフィニット・ストラトス 運命の剣   作:如月/Kisaragi

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ありふれ二次創作で私を知った方は、おひさしぶりです。
この小説からって人は、はじめまして。(´・ω・`)と申します。

暇な時にこの小説を読んで頂けると幸いです。読んでくださると、とても喜びます。

では、本編をどうぞ。



Prologue1/?

目を閉じて、ベッドに寝転がる。

とめどなく襲いかかってくる疲れ。ここ数日間の、自分に襲いかかってきていたてんやわんやで濃密な時間を思い出していけば、それにも納得がいくというものだった。

 

寝返りを打ち、はあ、と溜息を吐く青年——織斑一夏——は、これまでの日々をゆっくりと回想する。

 

自らの人生を。

周りの人たちとの運命を変え、世界の常識を変えた、あの日のことを。

 

 

 


 

 

 

最初の転機は、彼が13歳となる中学1年の時になんの前触れもなく襲いかかってきた。

 

——モンド・グロッソ。

それこそが、彼の第一の運命の岐路だった。

 

モンド・グロッソとは、織斑一夏が5歳の時に、突然として科学者の『篠ノ之束』によって発表された宇宙開発用パワードスーツ——インフィニット・ストラトスを用いて行われる、操縦能力、射撃能力、格闘能力などの力を競う競技大会である。

各部門から1人ずつ、その分野に長けた優秀者——つまりは優勝者に、戦乙女(ヴァルキリー)の称号を授け、総合部門で優勝したものには世界最強(ブリュンビルデ)の称号を授ける大会。

それこそが、このISを用いて行われる大会の最大の栄誉として送られるものであった。

 

そして一夏は、とある人物の応援のために大会の開催地であるドイツに来ていた。

 

——織斑千冬。

初代『ブリュンビルデ』であり、日本が誇る最高のIS乗り。一夏の姉であり、彼はいつしか『姉のようになりたい』だとか、『姉を支えたい』だとか思うようになっていた。

 

閑話休題。

 

姉が二連覇する瞬間を見届けるべく、一夏は単身ドイツに来ていた。

初めてのドイツ——否、海外旅行。

誰しもが浮かれた気分になるもの。

 

しかし、彼の双眸は、どこまでも冷たいものになっていた。

 

(——)

 

冷徹に、周囲を見渡す。

すれ違う人が思わず身体を引くレベルの恐ろしい気配を一夏は漂わせていた。

 

織斑一夏は武道を嗜んでいた時期があった。

その武道とは『剣道』である。

 

彼には一級品かそれ以上の『才覚(センス)』があった。

教えられたことのすべてを十全に使いこなし、その上で貪欲に強さを追い求めることのできる強い精神を備えていた。

 

姉と自分が同じ家で生き続けるために武道は辞めたが、その凶暴的なセンスが崩れたことは一度たりともない。

 

そして今、そのセンスは物凄い勢いで警鐘を鳴らしていた。

 

(何だ、この感じは……?)

 

久しぶりに感じる、強い悪意。

時折周りを見渡したり、歩く速度を変えてみても、それは一定の距離から離れずに一夏のことを追ってきていた。

 

手練れだ。それも、このようなことを何回もやったことのある人間。

一夏は一切迷うことなく、そう断じた。

 

手元の腕時計で時間を見ると、すでに決勝戦開始の3時間ほど前であった。

 

焦りが芽生える。それは、一夏のみではなかった。

舌打ちをひとつ。それから息を呑む。雰囲気が変わる。四肢に力を込めて、走り出す。一夏と、悪意の塊。その双方が、突き動かされるように同時に行動した。

 

一夏は、逃走を選んだ。

軽快な動きで駆け出し、追ってくるものを撒こうとする一夏。

しかし場所が悪かった。人気のないところでの追走劇。長い間こうして全力で動いてこなかった一夏と、プロの襲撃犯。

彼我の実力差は歴戦だった。

 

瞬く間に縮んでいく距離。

遠くと、近くから聞こえる怒号。

その全てから逃れるべく、走り続ける。

 

だがその抵抗は、無駄な足掻きとなって一瞬のうちに消えた。

 

間の悪いことに、襲撃犯は武器を隠し持っていた。

パシュン、と音が鳴る。そして、身体に銃弾が当たった。

 

(ぁ、意識、が……)

 

麻酔のめぐる感覚。力を失っていく己の肉体。一気に重くなっていく瞼。

麻酔銃に撃たれたのかと遅れて理解した後、一夏の意識は闇に沈んでいった。

 

 

 

 

 


 

 

 

「————だとしてもよ、こんなことするだけであの世界最強が試合放棄するのかね?」

「ああ、間違いないだろうぜ。あの女は根っからの弟好きだと依頼主からは言われているしな。……にしたって、今回の仕事は簡単だったな。依頼主は用心しろって言ってたけど、簡単に捕まえられたぜ」

 

——声が、聞こえる。

 

「さて!後は棄権の放送が流れるのを待つだけだな、気楽なもんだぜ」

「そうだな。……これで、終わるといいが」

 

——ここは、どこだろうか。

……だめだ。頭がぼうっとして、何も思い出せない。

 

「ん?電話の音?」

「あいつらから渡されたやつから鳴ってるな。いったい何の用があるんだか……」

 

——なぜ、自分はここにいるのだろうか。

 

「はい。……は?おい、そんなのは聞いてねえぞ!……ま、待ってくれ!聞いてないとは言ったが、やらないとは言ってない!やってやるさ、それが命令だっつうならな!」

「……なんて言われたんです?」

 

——ああ、確か。千冬姉の応援に来て、そして。攫われたんだった。

抵抗して追い返そうとしたけど、全然うまくいかなかった。

凶器に一瞬反応して、本気で殺そうとしてしまったから。

 

「こいつを、殺せ、だそうだ」

 

——殺せ、か。

……ああ。

……こんなところで、死にたくない。

 

「はあ!?俺たちは殺しのためにこの依頼を受けたわけじゃ……」

「だが俺たちが拒めば、今も腹を空かせて待っているあいつらはどうなる!?金がなくて、こうして裏仕事も始めたんだ。今収入がなくなりでもしたら、子供たちは……!」

 

——……このまま、ここで死にたくはない。

死ぬなら、せめてしあわせになってからしにたい。

 

「……でも、」

「なら今すぐここから離れろ。……俺が、コイツを殺る」

 

——ああ、近づいてくる。

死が、近づいてくる。

 

「悪りぃな、坊主」

 

——動け、俺の、身体……!

 

「お前さんには、なんの恨みもないが……」

 

——こんなところで、

 

「ここで死んで……何っ?」

「死んで、たまるか!」

 

拘束の存在に気づき、すぐさま破壊する。

火事場のなんとやら。バキン、と小気味のいい音を立てて鎖が割れた。

 

「コイツ……っ!」

 

恐怖に震えながらも、俺を殺そうとしていた男が銃を構える。

至近距離。躱すことはできない。

 

コイツより先に技を出すことができれば俺は勝てる。一発当ててやれば確実に勝てる。

 

一歩を踏み出す。

確実に倒すという強い意志を持って、攻撃を出そうとした。

 

その瞬間。

 

——バァン、と轟音が響いた。

 

 

 


 

 

 

それからの日々は、一夏にとって正しく目まぐるしい日々であった。

日本代表の織斑千冬は、棄権した。弟のことを助けるためである。

現地のドイツ軍に協力を要請し、迅速な情報統制下の中で作戦は敢行された。

 

その結果、一夏は無事助けられた。

無論、世間一般に織斑一夏の誘拐は報じられなかった。しかし裏においては、取るに足りない噂程度に誘拐説が話されていた。

それはさておき。織斑千冬の表向きの棄権理由は、相応の物語(カバーストーリー)が作られそれが大きく報道された。

 

また、当事者となった一夏はこの事実が明らかにならないようにするために、とある家の監視下に置かれることになった。彼自身の口から、真実が明らかになることを恐れたためである。

 

日本政府の人間が表向きの話——一時的な身元預かりという話として——今回の対応を話しているのをきい一夏は半ば達観しながら、ああ、そうだろうな、と思いながらそれを素直に受け入れていた。

今回のことが明るみになれば、それは日本の恥になる。それが恐ろしいのだろうと、賢しい一夏には看破されていた。

 

頼りになる姉は、ドイツに恩返しということで帰国しない。

生き残っていくためには、もっと働く必要がある。

そう判断した彼は、帰国後にどのような仕事をしようか考えながら自らの姉の元に向かっていた。

 

それにしても。

こうして姉と向かい合って話すのはいつぶりだろう。

長い間話していなかったことがあるから、それを話せたらいいな。

 

そんなことを考えながら歩いていると、いつのまにか指定された部屋に来ていた。

部屋のドアを開ける。中には、千冬姉がいた。

 

「来たか、一夏」

 

久しぶりに聞いた千冬姉の声は、いろいろな感情がないまぜになっているように感じた。

呆れ、歓喜、申し訳なさ、悲しさ。そんな色がたくさん混ざっている。

 

なぜそんな顔をするのか。

戸惑いを隠しきれない自分がいた。

 

「まあ座れ。いろいろ話があるからな」

「あ、ああ」

 

思考の海から引き摺り出され、言われるがままに千冬姉の対面に腰掛ける。

 

「さて……まずは、一夏。すまなかった」

「……なんで千冬姉が謝るんだよ」

「馬鹿者。今回の事件は、お前がさらわれる可能性を考えていなかった私の落ち度だ。私自身の名誉の大きさをしっかり考えきれていなかった。だから、すまない」

 

頭を深く下げられる。

返す言葉が、見当たらなかった。

 

「あと、だな。お前、バイトしていたらしいな」

 

身体が震える。

なぜバレた。疑問に心が埋め尽くされる。しかし、それも千冬姉の顔を見れば立ち所に消えていった。

間違いない。あの千冬姉の顔は間違いなく、怒っている時の顔だ。

 

「毎月十分すぎる額を口座に送っていただろう。それが足りなかったというのならいくらでも渡してやったというのに」

 

何も言い返せない。

実際、生きていく為に十分な金額をもらっていたから。

 

「そ、それは……」

 

二の句が告げられない。

喉元まで言葉は上がってきているのに、それを口にできない。

 

「……はあ。まあお前のことだ。タダで金を貰うのが嫌だったんだろう。そのようなことなど、気にする必要すらないというのに」

「……」

 

図星だった。

確かにタダで貰うのが嫌だった。何もできない自分が嫌だった。

だから、働くことにしたのだ。青春に憧れがないわけではない。恋愛だってしてみたい。

 

でも、それを躊躇っていた。

何故なら、自分は、自分達は。

 

————他人と違うことが、わかっているから。




ご読了、ありがとうございます。
また時間ができた時に、パッと新作が上がると思います。
その時まで、どうか私のことを忘れずにいてくださると幸いです。
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