兵藤一誠のハーレムは健在(一部は除く)ですっ!!
鳩尾の傷みが消え、学生服にきがえた千子恵は階段を降りて、リビングへ入った。
「あ、恵さん、ようやく復活したのですね」
「なんとか……万理亜ちゃん、おはよう」
千子恵に挨拶したのは白のフリル付きのエプロンを着た銀髪の少女であった。成瀬澪の妹である、成瀬万理亜である。訳あって、学園に行くことが出来ないでいるが、家事全般は彼女が補っており、千子恵が頭が上がらない要因であった。
「もっ……もっ……」
「四不相くんもおはよう」
彼の足元を回る一匹の動物、小さなつぶらな瞳、白と黒が特徴あり、鼻が少しだけ垂れている。
マレーバクである。
千子恵が物心ついた時にいつも一緒にいた家族である。名前の意味としては、竜のよう健やかに過ごしてほしいという意味で、かつて太公望が跨っていたという神獣からあやかった。
千子恵が歩けば、マレーバクの四不相は後ろへついていき、千子恵が座れば四不相も床に座った。その姿が可愛かったのか千子恵は四不相の頭を撫で、テーブルに置いていたにんじんを四不相にあたえる。
「もっもっ……」
四不相はにんじんを短い鼻で、掴み口の中に入れて食べた。何かを思い出しように千子恵は成瀬万理亜を見つめた
「そういえば………カテレアおばさんって今どこにいるんだっけ?」
「そうでした、カテレアさんからお手紙届いていましたよ」
成瀬万理亜は自身の小さな胸に手を突っ込んだ、それを見た成瀬澪は小さなため息を吐いた。
「ねえ、万理亜ちゃん、一応目の前に男がいるんだからもうちょいお淑やかに……ね」
千子恵に注意された成瀬万理亜は首を可愛く傾げた。
「あれ?恵さんは嫌いでした?」
「大好きです」
包み隠さず成瀬万理亜に千子恵は手元に置かれた味噌汁をすすりながら言いきった、それをみた千子恵に成瀬澪はさらに深いため息を吐いた。
「ねえ、そういえば……あまり寝付けは良くなかったけど、どうしたのよ?」
成瀬澪は話題を変え、今日の朝の夢の内容を千子恵に聞いた。
「うーん、それが変な夢を見てさ………金髪のイケメンと黄緑のイケメンに見下されていたような………あと、何か、何か大切なことを……だめだ!!」
箸を止め唸りながら千子恵は頭痛をこらえるような苦い表情を浮かべていた。
夢の前半を少し覚えており、後半の内容が白いペンキで塗りつぶされたように何も思い出せなかった。
「小さい頃の記憶もそうだし、思い出せっ!!俺っ!!」
「そう………万里亜、ごちそうさま……私日直があるから先にいくわね」
え!?と千子恵は驚き、視線を下に下ろす彼女の手元に並べられたご飯を見れば全て平らげていた。
「あっ、ちょっと待って俺もっ!!」
「いいわよ、今の時間あなたのクラス行っても意味ないでしょう……」
千子恵はご飯と味噌汁を急いで流し込むように食べるが、成瀬澪はそのまま外へと出てしまった。
成瀬澪を見送った千子恵は首を項垂れて、落ち込んでいた。
「うう、小さい頃は恵お兄ちゃんって後ろをついてきてくれたのに………ここ最近は……どこか他人行儀というか……」
「うーん、でも普通の女の子は異性の腰の上に乗らないと思いますよ………やっぱり記憶はまだ戻らないですか?」
成瀬万理亜はそう言いながら千子恵にカップに入ったブレンドコーヒーを渡した。
「まだ………幼稚園あたりはまだ覚えているんだけど………小学生から中学あたりが本当に記憶ないんだよな………万理亜ちゃん、何か覚えてない?」
「すみません………私もちょっと、あっ、そういえば………澪ちゃん、お弁当忘れてしまっています!!」
成瀬万理亜は慌ててキッチンへと向かった、それを見た千子恵はどこか抜けているところが姉妹だなぁと楽観していた。
千子恵は静かにテレビを見ているオーフィスを眺めていた。朝のニュースの後半で流れる占いを見ていた。
「オーフィスちゃん、占いみるの?」
「ン………」
ただ無言でその占いを眺めるオーフィスに千子恵は思わず苦笑いをしてしまう。ゴスロリ服に艶やかな髪はフランス人形を彷彿させるその姿に恋しない人はいないと千子恵は確信していた。
「あっ、その占いとてもすごいのですよ」
「そんなに!?」
成瀬万理亜も絶賛する占いに千子恵は大きく驚いていた。
『さて、始まりました。今週の運勢を決める花弁占いっ!!』
キャスターの声と同時に画面が変わり、文字が浮かび上がっていた。その文字を見た千子恵は思わず口に出してしまった。
「……
「あれ?知っているのですか……恵さん」
小さく言ったつもりが、意外と聞こえたのか成瀬万理亜は反応し、千子恵の方へと顔を向けた。
「えっ……まあ、数学者だったけ?……悪魔って謳われて、歴史に刻まれた偉人」
「ええ、そうなんです………大体のコンピュータの基礎もこの人が生み出したって言う、この占いはAIが計算してそれを占うらしいんですよ」
成瀬万理亜の説明に感心し、黙って画面を見ていた。画面が揺めき文字が浮かび上がる
── 偶像に翻弄され、虚言で歪められた人生これにて了
──満月の光に狂い血塗られた鬼に小さな光は虫のように潰される
──けど恐れることなかれ、鬼は目覚めた小さな虫の取るに足らない一嚙で崩れるだろう
「「「…………」」」
『え、えーと……これはですね………そう、友達や家族に嘘ついた人は不幸になってしまうというわけです!!』
キャスターのなんとも言えない締めくくられ、別の場面へと変わり三人は静寂の空気に包まれる。
「ねえ、普段ってこんな風なの?」
「え、えーと、いつもなら前世占いで出てくる偉人で運勢が決まるのですけどね……おかしいですね」
「…………」
その場の空気に耐えれず、アハハと乾いた笑いを出しながらテレビから離れた成瀬万理亜は弁当箱を持ち出し、千子恵に手渡した。
「恵さん、お弁当を澪ちゃんに渡してください。ほら、早く行かないと遅刻しますよっ!!」
「うわっ!!ちょっ!!」
成瀬万理亜は親指をグッと立て、千子恵の背中を押し出し玄関まで見送った。成瀬万理亜の後ろに四不相がついていく。
「それじゃあ、今日も頑張ってくださいね」
「もっ……もっ」
頭の中で疑問に持ちながら、千子恵は海外にいる叔母の手紙を見た。そこには写真が一枚と文字だけの手紙だった。
文字の方は一文だけ書かれていた。
───アマゾンのジャングルを調査していた際、金髪の女性が突然現れて『あなたには高さが足りまセーン』と言われて、ルチャ・リブレをされて空に投げ飛ばされたわ。
千子恵は文字の手紙の後ろに写真を見た、そこには謎の仮面をつけた金髪の美女が笑顔で知人をぶん投げていた。
「叔母さん………楽しそうで何よりだ」
全ての思考を捨てた千子恵は空を澄み切った空を見上げた。
ー○●○
私立駒王学園、元々は女子校であってが少子高齢化により共学化を余儀なくされた学園。
それ故に男よりも女性が多く、生徒会長もまた女性であった。
二年生の教室にて千子恵はあたりを見渡せば右も女子生徒、左も女性であるために肩身の狭さを感じ、小さなため息を吐いた。
「………弁当、渡し損ねた」
そんな千子恵に一人の眼鏡をつけた男子生徒が肩を叩いた。
「よお、恵、そんなにため息を吐くと幸せがどこかに飛んでいくぜ」
「元浜………まあ、色々あるんだよ、色々……」
千子恵のどこか上の空に同じクラスメイトである元浜は訝かしんだ
「どした?もしかして、お前が欲しがっていたソフトにNTRものが混じっていたのか?」
「そんなもんが入っていたら、俺は今頃深い心の傷を負って部屋で一ヶ月は引きこもっているよ」
たしかにと頷き、元浜は千子恵を心配そうに見ていた。
「おいおい、元気がないお前なんて、カレーに福神漬けがないくらい味気がないもんだぜ」
それは慰めているのかと疑問に持ちたくなる千子恵だが、元浜は気にせず千子恵の肩に手を置いた。
「……ところで、イッセーと松田は?」
「あいつら、寝坊だぜ……この俺がわざわざ遅刻ギリギリまで待ち合わせしたのによ、おかげで絶景のパンチラスポットを拝めなかったぜ」
「あいつら、深夜から本気出すタイプだしな………まあ、俺もそうなんだけど」
元浜はたしかにと頷きながら何かを思い出したように千子恵を見つめた。
「そんなお前が部活の朝練いっつも遅刻している遅刻ギリギリじゃないなんてな………どうやって起きたんだよ?」
「俺だって朝ぐらいは普通に起きれるわっ!!………まあ、部活は才能ないからほぼ幽霊部員だし………今更行ってもいみないんだよなぁ」
自分で言って悲しくなった千子恵は小さく涙を流し肩を落とした。成瀬澪は駒王学園でも有名であり、一年生ながら全学園の男性生徒から支持を集めていた。もしそれが一つ屋根の下で暮らしていると知られるとこの先平和に過ごせないと察知した千子恵はなりを潜めていた
「まあ、そう落ち込むな、放課後にイッセーと松田を誘って俺の家で紳士の嗜みでも楽しもうぜ」
「元浜……ああ、そうだなっ!!」
千子恵のやる気が復活したのか、気だるげな表情はほとんど消えていた。
ー○●○ー
朝の授業を終え、昼休みへとなった。知人の二人は購買部へと向かい千子恵は成瀬澪がいる一年の教室へと向かった。
「けど、メール送っても反応ないなんて………もしかしてマジで嫌われたっ!?」
心当たりがある千子恵の足取りが重くなるが、それでも渡さないといけない決意し、成瀬澪の教室へ着いた。
突然来た上級生に戸惑いを隠しきれない新年生はヒソヒソと話し、興味の視線を送られる千子恵は居心地が悪く感じる。
そして千子恵は窓際の一番後ろの席に座りどこか上の空の成瀬澪を見つけた。
一歩前へと教室の中に入った瞬間だった、千子恵の目の前に一つの影が現れた。
影はそのまま千子恵の体に抱きついた、突然のことに千子恵は理解出来なかったが鼻腔を擽ぐる甘い匂いとお腹に伝わる柔らかさですぐに理解した、視線をゆっくり下ろせばそこにいたのは一人の青い髪の女子生徒だった。
「えっ………うんっ!?」
何故見知らぬ女子生徒が突然自分に抱きついてきたんだと理解できずにいた千子恵、その光景を見た女子生徒たちは呆然と見ていた。
ああこれは夢なんだと、自分は夢でもモテることに渇望していたとは少し悲しくなって来た千子恵だがさらに締め付けが強くなり、女子生徒の美しく整っている胸が押しつけられ、これが現実だと教えてくる。
「ちょっ!!ちょっとっ!!な、な、何やっているのよっ!!」
呆然と見る生徒たちをおしのけ、顔を真っ赤にしながら千子恵たちに近づく。その眼は軽く血走っているのを見た千子恵はヒエッと小さく悲鳴を出したが、抱きつく女子生徒は平然と成瀬澪を黙って見つめていた。
「え、えーと………俺、何か君に悪いことしたかな?いきなりのことだから俺、びっくりして………もしかして中学は海外で過ごしていたとか……」
空気が重くなり、耐えれなかった千子恵は青髪の女子生徒に問いただし、アハハとと笑ったが青髪の女子生徒は千子恵を見つめて口を開く。
「………覚えていないの?」
「覚えていない?」
その問いに千子恵は彼女とどこかで会ったことないかを思い出そうと、足から頭を見ていたが思い出せなかった。どこかで彼女と出会っているのなら自分は覚えているはず………しかしあったことがないことに困惑でしかなかった。
「………きて」
「───ちょっ!!
女子生徒は千子恵の腕を掴み、教室の外を出ようとする。周囲から視線に耐えれない千子恵にはありがたいと心の中で思う中、一人だけこの状況に納得出来ない人がいた。
「──待ちなさいよっ!!」
成瀬澪だった。
二人のこの状況を千子恵を取り合っているようにしか見えず、千子恵は後ろを振り返るとさらに野次馬が集まり、視線が痛く感じていた。
どうすればこの状況を解決できるのか、考える千子恵だが状況はさらに悪化していった。
「……あなたは成瀬さん……あなたには関係ない」
青い髪の女子生徒は成瀬澪に冷たく言い放ち、手を退かせるように促すが───それが成瀬澪の感情に火をつける。
「か、関係あるわよっ!!」
この後何を言おうとしたのか気づいた千子恵は成瀬澪を止めようとするが、一度感情に火がついた成瀬澪を止めることができず、廊下まで響き渡る声で成瀬澪は叫んだ。
決定的な一言を。
「小さい頃からずっと……わたし……っ!!こいつと一つ屋根の下で暮らしているんだからっ!!」
ああ、平穏な日常が一瞬で消え去ったと静かに千子恵は静かに天井を見上げた。
次回っ!!カンピオーネの登場&原作のストーリーに主人公が絡んでいきますっ!!!