表情から笑顔が消えた成瀬万理亜に見送られた千子恵、成瀬澪、野中柚希は三人で登校する。
「なんでこいつが姫達を……」
「いつ……埋める?」
「やめろ、形を残したらサツにバレる……コンクリに詰めて下流に」
同じ服を着た駒王学園の生徒達から視線に居心地の悪さを感じる千子恵。
というより小声で物騒な話をするんじゃないっ!!と心の中で千子恵はツッコミを入れ、チラリと隣にいる野中柚希を見た。
背筋をピンと伸ばし綺麗に歩くその姿はまさに姫と言われても過言ではない。
「ねえ、恵はどうして歩く度に顔が青くなっていくの……」
成瀬澪は千子恵に尋ねた、嫉妬と殺気が混じった視線に千子恵は察した。
「い、いや!!大丈夫だよ!!ほら、早く行こうっ!!」
でなければいつ背中を刺されてもおかしくないと危惧した千子恵は足早に歩く。
ー○●○ー
足早に歩いた為に少し余裕を持てた千子恵は小テストの予習が出来ると心の中でガッツポーズした。
「な、なんとか間に合った………」
「何がよ……それじゃあまた家で……」
成瀬澪はそのまま一年生の下駄箱へと向かい、同じクラスなのか女子高生と楽しそうに話していた。
野中柚希はジーッと千子恵を見つめて微動もしなかった。
「え、えーと……行かないの?」
「
その言葉聞いた直後、ズキリと胸が痛むのを千子恵は感じた。野中柚希はそれだけを言い残し立ち去った。
「……とにかく俺も行くか」
千子恵はどこか違和感を感じながらも自身の教室へと向かった。
千子恵は自身の教室に近づいた時だった。
バンッ!!と扉が強く開かれ二つの影が飛び出した。それは同じクラスの友である松田と元浜だった。二人の表情は何かを羨むように涙を流していた。
「「イッセーの馬鹿野郎っっ!!」」
二人はそれだけを言い残し、どこかへ去っていった。それを千子恵は呆然と二人を見送った。
「あいつら………いつも変だけど今日は一段と変だな」
千子恵は教室の中に入ると教室が騒がしかった。クラスの生徒たちがひそひそと話しながらもとある人に視線を送っていた。
その人物は兵藤一誠だった、兵藤一誠の表情はどこか自信ありげであり晴れやかな表情だった。
兵藤一誠は千子恵に気づき和やかな表情で千子恵を出迎えた。千子恵は普段見ない兵藤一誠にぞわりと背筋が凍り、一歩後ろに下がっていた。
「おいおい、何ドン引きしているんだよ………」
「いや、本当にちょっと………勘弁して」
兵藤一誠はやれやれと肩をすくめ、ポケットから何かを取り出した。
それはラブレターだった、ピンクの封筒に便箋はハートのフォルムをしていてどこか乙女チックな手紙に千子恵は首を傾げた。
「俺にもついに青春を楽しむ権利がやってきたぜ…………ラブレター貰ったっ!!」
「ああ……なるほど、おめでとう」
ぱちぱちと兵藤一誠に向けて拍手を送る。彼女のかのじもない彼もついに彼女ができたことに素直に祝福した。
「よ、よせやい………早速会って公園でお話がしたいって………」
「へぇ、誰からなんだよ……」
千子恵の質問に兵藤一誠が悩んだ。
「それがさ……名前書いてないんだよ…………きっとシャイなんだろうなぁ」
それ、逆に怪しくないか?と疑問に思ったが千子恵は友の初ラブレターに横槍を入れるのは失礼だと思い何も聞かずに数学の小テストの予習を行った。
ー○●○ー
数学のテストも終わり、昼休み。
「終わった………何もかも」
千子恵は何もかもが終わった表情で呟き、瞳から一筋の涙を流した。
「まあ、終わったものはしょうがない……飯食おうぜ」
「……そうだな、結局元浜と松田も一時間目戻って来なかったし……」
千子恵は弁当から取り出した時だった、放送のチャイム音が教室に響く。
『二年の千子恵さん、至急生徒会長室までお越しください』
「………なんで?」
心当たりがないことに千子恵は傾げた。以前起きた出来事もその日のうちに生徒会長に怒られたからである。
「今度は何をしたんだよ……」
「いや、今回は本当に心当たりない、むしろ俺が怒られる時はいっつもお前たちも怒られているから………もしかして部活サボりすぎたとか………でも、それなら顧問とかだし」
本当になんなんだと……深く考えるが答えが纏まらずため息を吐きながら立ち上がる。
「わるい、先に飯食っといてくれ……そろそろ元浜と松田も戻ってくるころだし」
「OK、わかったぜ……」
そして千子恵は立ち上がり、生徒会長室へと向かった。
ー○●○ー
生徒会長室前にたどり着いた千子恵は目の前の扉にたどり着いた。手を出し小さく扉にノックをした。
「失礼します、二年の千子恵です」
「……どうぞ」
扉の中から声が聞こえ、千子恵は扉を開き周りを眺めた。豪華な調度品の数々……下を見れば日本語ではない何かの文字が綴られ円が彩られた絨毯が惹かれた。
「ようこそ、来てくれました……千子恵くん」
声を出したのは大きな机に座る、スレンダーな体型で眼鏡をかけており、日本人離れした美貌を持つ黒髪の少女。彼女が駒王学園現生徒会長支取蒼那である。
その後ろには生徒会役員たちがおり、それをみた千子恵はまるで王様とその従者たちようだと感じた。
以前こっぴどく怒られた千子恵はぶるりと震え出した
「はい………あの、支取会長……本日はどのようなご用件で」
「ええ……実は先程聞きまして、千子恵くん……あなたまた数学で赤点を取ったと……」
ああ、やっぱりダメだったんだと千子恵は心の中で絶望した。
「俺なり頑張ったつもりなのですが………来週は補講か………」
がくりと肩を落として落ち込んだ。
「どうにか赤点を回避するように数学の勉強を教えるように数学の先生に言われました……無論千子恵くんの時間に合わせます」
「えっ!?………いや、それは嬉しいんですが………いいんですか?その、業務とかあるのでは?」
千子恵にとっては願ったり叶ったりであるが、それ以上に生徒会長である支取会長に対して申し訳なさしかなかった。
その問いに支取会長はフフと優しく微笑んだ。
「問題ありません……むしろ、私自身の復習にもなるので………」
「えっと………よろしくお願いします」
千子恵は深々と支取会長に頭を下げた。
そして千子恵が生徒会長室に出た時であった……その時ふと生徒会長室にある本棚に視線が入り、とある本を見つけた。
「……この本……うわぁ……懐かしい」
表紙が古ぼけた絵本……その表紙には小さな羽を生やした六人の小人たち、その中央には剣が描かれていた。
『アヴァロン・ル・フェ〜星海の炉〜』とタイトルがつけられていた。
「その本をご存知なのですか?」
支取会長の隣にいた眼鏡をかけた黒髪ロングの女子生徒、駒王学園生徒副会長真羅 椿姫が千子恵に語りかける。
「俺が小学生の頃、叔母さんの書斎にあって、よく読んでいたのですよ……懐かしい。でも気づいたらどこかで無くして……」
懐かしむようにその本を見つめる。
「……その本をお貸ししましょうか?」
「え?いやいや………これってもうほとんど売ってないものですし…………」
「大丈夫ですよ……次の勉強会の頃に返していただければ、それに椿姫も一緒に語りたいのでしょう」
「か、会長………」
真羅 椿姫は頬を少し赤くして何か言いにくそうな表情で支取会長を見つめた。
千子恵は本と会長を交互に見て考え込んだ。
「えーと、それじゃあ…………お借りします。来週には絶対返しますので」
「では、明日から始めましょう」
「はい、よろしくお願いします!!」
千子恵は会長にお辞儀をして、生徒会長室から出ていきそのまま教室へと戻り昼飯を食べたのであった。
ー○●○ー
「いやぁ、恵くんの話はどこか甘酸っぱい……青春していますねぇ」
学校が終わった千子恵は、アルバイトをしていた。
人気を感じさせないカフェであった。静かな音楽がカフェの室内を包み込む。そして1人の青年が笑う。
「笑い事じゃないっすよ、公望さん……」
常ににこやかな笑顔と涼しげな振る舞いのうさんくさい糸目の青年が店に出すお茶を用意していた。
「これは失敬…………その生徒会長室にあった本ですか……私もいささか本を嗜みますが、聞いたことはありませんね」
点心とよばれる中華の軽食を楽しむをコンセプトにしたカフェであり、今皿を洗う男が店長である公望が営んでいる。
「え?………そういえばこの本、よく見たら著者とかも出版社とかも書いてない」
「試しに朗読してみてくださいよ………人はほとんど来ないので」
それは店としてどうなんだと疑問に残るが、記憶を無くした後の小さな頃に読んだために千子恵は懐かしみ、本を開いた。
───おしまいで海になった。
───はじまりに海があったあと、ながれぼしがすぎたあと、大地は河になり
、ながれぼしがすぎたあとにでてきた小さなほしがあった。
───これいじょうむかしはないほどの、それはむかしのおはなし。
───ろくにんの妖精が外に出ると、せかいは海になっていました。
───岩もなければ土もない。
───魚もいないし鳥もいない。
───もちろんろくにんが好きだった山も森も、もうありません。
───ろくにんはとほうにくれてもうかえろうかとかなしみました。
『かわいそうなことを』
『こんな世界になってしまって』
───そんな時、おおきなうみから、かけがたちあがりました。
───ふわふわ、ふさふさのおおきなからだ。
───そのかたには、いなくなったはずの『動物』ひとり。
───その肩にのっていた動物は、このふさふさを『けるぬんのす』とよんでいました。
───『けるぬんのす』と『動物』は『ろくにん』と友達になりました。
───なにもない海はつまらなくて、すみづらくて、たいへんなものでしたが『けるぬんのす』が波をせきとめてくれるので、『ろくにん』はらくちんでしたが……
───海から『わるい動物』たちがあらわれました。
───『わるい動物』は『ろくにん』をいじめました。
───『けるぬんのす』は『かみさま』なので『わるい動物』をなんどもおいはらうが『わるい動物』たちは何度もきました。
───『けるぬんのす』の肩に乗っていた『動物』は『ろくにん』に空にあるちいさな星に祈るようにいいました。
───『ろくにん』は空に浮かぶ星に祈りをささげました、愛を捧げました、希望を捧げました。
───すると小さな星から『剣を持つ動物』がおちてきました。『動物』は『剣をもつ動物』を『さいごのおう』とよびました
───『さいごのおう』は『わるい動物』を追い払うと、『わるい動物』は来なくなりました。
───これで『ろくにん』はあんしんして、『かみさま』である『けるぬんのす』におねがいをささげました。
───『ろくにん』は『けるぬんのす』によろこびを捧げました。
『波のない海もいいけれど』
『ぼくたちやっぱり 大地が恋しい!』
───『ねがい』はかなえられました。
───『おまつり』はおわりました。
───『かみさま』はつかれてねむりました。
───『ろくにん』は『けるぬんのす』をたいせつにまつりました。
───『ろくにん』は『さいごのおう』にやくそくをわたして、船にのせて、うみのむこうがわへとたびをさせました。
───のこったものも たいせつに つかいました。
───こうして世界はできたのです。
───『はじまりのろくにん』にすくいあれ。
───『さいごのおう』にねがいあれ。
絵本を読み終えた千子恵は本を閉じた。
「まあ、こんな感じですね………どうでした?」
「うーん、色々と考察しがいありますが………多分、これをあなたと話すと仕事どころではないと思うので………仕事をしましょうか」
頷いた千子恵は本をカバンの中にいれて、仕事を始めのであった。
ー○●○ー
「はい、恵さん……仕事お疲れさまでした。また明日もよろしくお願いします」
店の締め作業終えた公望は、千子恵を労うが、千子恵は苦笑いを浮かべていた
「お疲れ様です………といっても、ほとんど人こなかったですけどね………」
「まあ、ほとんど趣味でやっていようなものなので売上はそこまで気にしないでください」
本当に趣味で店をはじめる人がいたことに驚きつつも、千子恵は帰る準備をした。
「まあ俺としてはアルバイト代稼げるならそれでいいですけど、じゃあ、おつかれさまです」
「ええ、お疲れさまです………ああ、そうだ恵くんちょっと待ってください」
公望は何かを思い出したかのように、レジ下の引き出しを開けて一枚の紙を千子恵に手渡した。
その紙には『あなたの願いを叶えます』と書かれたチラシ、どこか胡散臭いと千子恵は感じた。
千子恵は裏口から出ていき、店の中には公望1人だけだった。
「そろそろ出てきてもいいんじゃないですか?
『出てくるもなにも、お前がスマホの電源を落としているから何もできなかったんだが……』
公望のポケットに持つスマホが光だし、そこから声が聞こえる。
「これは失敬………ですが、これで良かったのですか?」
『問題ない、今ここで口出しをすれば………』
スマホの中の声ば少し溜めて………
『
ー○●○ー
暗闇の住宅街、明かりはたった一つの満月の光と土地勘を頼りにして千子恵は走る。
「なんとなく、このチラシ受け取ったけど…………これ、澪ちゃんや真里亜ちゃんに見られると間違いなく精神科に連れていかれそう」
そう思うと、千子恵の走るスピードが速くなり、近道するために公園へと向かう。
「うん………あれは?」
噴水の近場に座り込む影が見えた。ひとりの男がゴホッゴホッと咳をしていた。
「あの、大丈夫ですか?」
「ええ…………大丈夫です……だって」
「今ここにメインディッシュが届いたのですからっ!!」
その男が千子恵に顔を向けた時、男の顔は赤い液体がべっとりとついていた。
千子恵は視界よりも先に鉄の匂いが鼻腔に溜まり、すぐにその正体がわかった。
それは血だった、月の光でギラギラと光、赤い血………そして男の手に持っていたのは誰かの手であった。
男の顔についている赤い血を見る限り、偽物ではなく本物だと千子恵の脳が認識していた。
千子恵は男が何故人を食しているのか理解できず、恐怖のあまりに後ろに下がり、逆に男の顔は狂気の笑顔を浮かべていた。
「いいですね、その恐怖………そしてあなたから鼻腔をくすぐる甘美な匂い」
男は自身の腰に手を回し、そこから取り出したのは大きな菜切包丁だった。
逃げて警察に通報しようとした時だった、数メートル離れていた男が消え…………千子恵の目の前に現れ、千子恵の首を片手掴み持ち上げた。
「かはっ!!……その……薄気味悪い笑顔……あのときのっ!!」
「ええ……あの時から………ずっとずっとずっと我慢していたのですよ」
男は千子恵の首を万力のようにゆっくりと、確実に殺そうしていた。
「でも、もういいのです………だって、今ここであなたを食べればこの飢餓だって………」
男は片手に持った菜切包丁を振り上げ……………
千子恵の腹を切り裂いた。
腹から止めどなく血が公園の地面に流れ落ち、血が出るたびに千子恵の視界が霞んでいく。
男は千子恵の首にかじりつこうとした瞬間だった。男は何かに気づいたのか、千子恵をゴミのように投げ捨て、足早にどこかに去っていく。
ただぽつんと千子恵は残され、ゆっくりと死が近づいていた。
痛い、痛い……………怖い。
ただ痛みと恐怖の感情が千子恵の脳内に響く。目を瞑れば意識が飛び簡単に終わるかもしれないと死を受け入れていく。
ああ、でもそれなのに…………頭の中に何かが聞こえてくる。
目を覚ませ
生きろ、生きろ
死ぬなんて許さない
あんなに殺したくせに
それは千子恵の死を受け入れない何か、知らない声のはずなのに千子恵は懐かしさを感じるのと同時にその声に煩わしいと感じていた。
「あっ……あっ!」
ズキリと腹が痛む、血がほとんど抜け、力が入らないその肉体に千子恵は歯を食い縛る。
生きろ、生きろ!!
「うるっさいっ!!どう生きようが死のうが俺の勝手なんだっ!!」
目の前に赤い液体を見て、自身の家に住む真っ赤な髪を持つ義妹を思い出した。
「俺は………澪ちゃんが幸せになるまで守るって決めたんだっ!!」
たとえそれが誰にも許されない罪であろうと地獄であろうとっ!!そう覚悟を決めたときだった、ポケットの中に入っていたチラシが光り出した。
紙が崩れるのと同時に、淡い光りを放つ魔法陣が展開された。
「あなたが…………ちょっとこれはどういうことよっ!!」
視界が霞む中、女性の声が聞こえ慌ててるのを聞こえると同時に千子恵の意識はなくなった。
うおおん!!お待たせした上に前編と後編に分けてしまい申し訳ありませんっ!!
次回からカンピオーネ!キャラ登場します!!本当です!!信じてください!!