アサルトリリィ -RED THISTLE-   作:ブリガンディ

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どうしても長期連載になりがちな私の小説ですが、本小説は短期決戦プロットを組んだのでもう間もなく前半が終わりそうです。


第11話 希望

《──》

 

「遅いっ!」

 

ヴァイパーの刃による一閃を躱し、隼人はCHARMを横一線に振るってヴァイパーに当てる。これによって傷ができる訳ではないが、彼奴を苛立たせる布石になる。

そのまま気を抜かずに縮地で後に回り込み、今度はCHARMを縦に振って攻撃を当てる。それによって苛ついたヴァイパーが隼人に狙いを定め、刃による連続攻撃を始めたので、隼人は後に下がりながら攻撃を弾いていく。

 

「まさかだけど……彼、意図的に私たちからヴァイパーを引き離してる?」

 

レギオンリーダーである金髪の少女が隼人の動向を見て、それに察しをつける。

彼女の予想通り、隼人は意図的にヴァイパーが自分以外攻撃対象に入れられないよう、少しずつ誘導しているのである。

少しでもクソ外道蛇(ヴァイパー)から被害を減らすべく、隼人は接近戦を長時間できるように修練し、更にはこちら意外意識できないような戦い方も身につけた。

これが功を奏して、今までヴァイパーの被害を大幅に減らせたのである。

 

「(そう。もっとだ、もっと……もっと来い!)」

 

ちょっとでも意識を逸らさせない為、大丈夫そうな場面なら思いっきり当てに行く攻撃をし、ヴァイパーに注視させ続ける。

そして、ある程度アールヴヘイムのメンバーと距離が離れていき、もうじきヴァイパーが視界に捉えられない距離まで離れようとしてきている。

この現状に気づいたヴァイパーが隼人を無視して移動をしようとした瞬間、ヴァイパーの後頭部にバスターキャノンが直撃する。

 

《──!?──……!》

 

「お前の目には俺以外を映させない……お前には!俺の声と戦闘音以外届かせない!俺を見ろ!」

 

余りにも邪魔すぎることをされたヴァイパーが怒りを見せるものの、隼人は構わずにバスターキャノンをもう一発撃ってヴァイパーの注意を完全に引き付ける。

こうなったらヴァイパーはこちらを潰すべく、二つの刃を連続で振り回して隼人の体のどこかを切り裂いてやろうと試みる。

──が、この攻撃は隼人に一発も直撃させることは叶わず、何なら途中で体の一部を何度も切り付けられ、ヴァイパーの怒りは次第に焦りへ変化する。

 

《──……!?》

 

「無駄だぁっ!」

 

動揺が影響して動きが固まってしまったヴァイパーに、マギを多量に込めた一撃をぶつける。

それは体前面に直撃するも、これでは全く傷を与えられない。

 

《──!?──!?》

 

「これで分かっただろう!?俺がいる限り、手出しはさせないって!」

 

だが、体をのけぞらせること自体は可能で、ヴァイパーの思考が完全に止まってしまう。

また、これを好都合と捉えた隼人はバスターキャノンの銃口をヴァイパーの鼻っ面に突き付け、こう宣言する。

 

「見ろ!お前を追い続け!お前を殺す男だ!」

 

隼人がそれと同時に至近距離でヴァイパーにバスターキャノンを放ち、堪らなくなったヴァイパーは被弾した時に巻き起こった煙を利用して逃げる。

流石にこの状態ではアールヴヘイムのメンバーに奇襲を掛けることなぞ、頭から離れているのは確信できる為、隼人はそれ以上追うことはしない。

 

「(ヴァイパー……どんな手段や力を身につけようとも、必ずそれを踏み越えて殺してやるからな……!)」

 

──逃がしはしない、必ずだ。今できることの全てをやり、落ち着いた隼人は縮地で急ぎ戦場への合流を目指す。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

{ 第 11 話 }

 

希 望

preference

 

 

決まるは必殺の一撃

──×──

The avenger finds a way out.

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「……ダインスレイフを取り返す?」

 

「ああ。ありゃ夢結の二年前の忘れ物でな……。今まで全く見つからなかったけど、ヒュージに使われてるってなると放置できないし、回収できるまたとない機会が来たからな」

 

時間は遡り隼人が離脱して移動中、梨璃がルナティックトランサーを発動して暴走した夢結を引き連れ、皆に戦線死守を頼んで離脱した直後になる。

自分の提案を鶴紗がオウム返しに聞き返したので、梅が簡単に説明する。

二年前に起きた出来事である甲州撤退戦──。この戦いまで夢結が使用していたCHARMがそのダインスレイフであり、その戦いを最後に行方不明──推定紛失となっていた。

今までは仕方ないと諦めていたが、見つかったとなれば話は別であり、ヒュージに利用されないように取り返すことを考えたのである。

 

「そう言うことなら了解」

 

鶴紗も納得したところで、やることを簡単に説明する。

まず、ヒュージが持っている四つの刃にもなる触手をかいくぐって回収することになり、突入できる状況になった瞬間、梅が縮地で一気に飛び込み、ダインスレイフを回収して離脱の流れになる。

ヒュージが体の内側からマギのレーザー攻撃をする可能性も考えられるので、取り付いた後はほぼ一瞬で決着を付ける必要があるのが懸念点か。

その為、少しでも攻撃対象を絞られないように、残りのメンバーは援護射撃と攻撃の迎撃を行う算段である。

 

「ちょっと面倒を掛けるけど、よろしく頼むぞ」

 

ヒュージからCHARMを取り返す──。それに反対する者はいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「(とにかく急いで戻るんだ……夢結様のこともある、俺が遅れて惨事が起きたらシャレにならない!)」

 

時間は進み、ヴァイパー撃退直後の隼人は縮地で全力移動していた。

予想外の奇襲からアールヴヘイムのメンバーを守れたのはいいが、それでも戦線を離れて行動している為、自分のせいで誰かに危害が及んだら不味い。それはヴァイパーに右腕を斬られた時よりもよろしくない。

そんなこともあり、隼人は大急ぎですっ飛んで行っているのである。普段であれば梨璃と二水も訓練のおかげで怪我無く戦えているのは間違いない。

ただ、今回は夢結の暴走もあり、ここが最も大きな不安要素である為、隼人の足を急かしていた。

 

「(レストアは、健在……戦況は?みんな無事か?)」

 

どうやら荒々しい戦いが無くなっている為、夢結は離脱したか、落ち着いたかになるが、それを細かく確認する余裕は無い。

移動しながら見えるのは、ヒュージの触手らしき部分を斬り落とそうとしている様子で、恐らく自分がなにかすれば確実性が上がるだろう。

そうと決まれば行動は早く、手っ取り早く援護ができる狙撃を敢行することにした。

流石に雨嘉のように1キロ離れた相手を撃ち抜く事はないが、2、300メートル程度なら狙撃できる。

 

「(当たるか……いや、当てる……!)」

 

確かな意思と共に、隼人はヒュージの胴体に当たるようバスターキャノンを撃ち込む。

それは寸分の狂いも無く裂けた胴体の内側に飛んでいき、命中して爆発を起こす。

 

「あの射撃……ブリューナクのですわ!」

 

「はいっ!たった今隼人さんが戦線に復帰、ヒュージに狙撃しました!」

 

「なら、飛び込める要員二人に増やせるね」

 

縮地持ちが戻って来ると言うことは、取り付ける確率の上昇を意味している。

 

「……?梨璃と夢結様は?」

 

「梨璃が、夢結様を連れて戦線を離れたの……私たちは二人が戻って来るまでの間、『戦線の死守』。これ、梨璃からの命令だよ」

 

「それと、あのCHARMが見えますか?あれは以前まで夢結様が使用していたCHARMの可能性があり、梅様の提案であれの奪還を狙っています」

 

雨嘉、そして神琳の話を聞かせて貰った隼人は了解の旨を返し、戦線に改めて合流する。

梅からも戻ってきたところ悪いが、手を貸して欲しいとのことだったので、二人掛かりの縮地による翻弄でダインスレイフの奪還を狙うことに決める。

 

「隼人と梅様は丁度反対の位置……いい条件が揃ったようじゃ。わしらでタイミング作るから、行って来い!」

 

迫りくる触手の内、片方を神琳と雨嘉、もう片方をミリアムと楓が迎撃した瞬間に、隼人と梅はそれぞれの位置から触手に飛び乗り、縮地で攻撃を避ける気満々であることをアピールしつつ接近していく。

 

「よし!お互い取り付いたな……早いとこ引き抜いて離脱するぞ!」

 

「はい!」

 

二人でダインスレイフを手に取り、そこから力を入れるも、中々引き抜けない。

 

「な……引っ掛かりが!?」

 

「けど、これを逃したら次は無い……!悪いけど踏ん張ってくれ!」

 

楽に引き抜けるかと思えばそんなことは無く、ヒュージ体内の食い込み具合と、隼人と梅の腕っぷしによる勝負になってしまった。

今攻撃が来ると、自分たちはダインスレイフを引き抜く為にも対応できない。その為迎撃を残りの皆に任せるしかない。

 

「っ……!ヒュージの触手による攻撃が二人に!皆さん、守ってあげて下さいっ!」

 

二水は今回、自らのレアスキルである『鷹の目』を使った索敵、情報収取要員として後方に待機している状態となっている。

鷹の目は空から地上を見下ろすように状況を把握が可能になる程の異常視力を得る、俯瞰、異常空間把握系のスキルであり、これで把握した膨大な情報をまるでチェスや将棋のように理解できるようになっている。

ただし、視界の変化によって戦闘行動が非常に難しくなる為、不要または使用していると危険な状況の場合は使用中断等が推奨される。

 

「まだ引き抜けない?」

 

上手いこと取り付くことの出来た鶴紗が協力してくれ、ここからは四人掛かりで引き抜くことになる。

とは言え、ヒュージの体の体積や、CHARMのサイズ、ヒュージ自身の攻撃からこれ以上のサポートは厳しく、この三人でやるしかない。

 

「二水さん、わたくしたちでヒュージに射撃。衝撃を与えて引き抜きのサポートをしますわよっ!」

 

「は、はいっ!分かりましたっ!」

 

二人そろって狙われたらすぐ回避ができるような距離で射撃を行い、ヒュージの体中に弾丸を連続で浴びせていく。

ダメージは薄くとも、その衝撃がヒュージの体に影響を与え、三人がダインスレイフを引き抜くことに成功した。

 

「よし、抜けた……!」

 

喜ぶのも束の間、ヒュージが足搔きとして三人に向けて至近距離レーザー攻撃を行う予兆が見えたので、三人は咄嗟に離脱する。

三人が離脱したタイミングでレーザー攻撃が通り抜けていき、向かう先が体内なので、ヒュージは盛大に自爆し、小さくないダメージを負う。

 

「こいつが、用のあるやつですね?」

 

「ああ。これで一個目的達成だ」

 

この金色の剣がダインスレイフであり、隼人は持ち主の所(夢結の手元)に帰らせて上げられるのはいいんだろうと思った。

また、このCHARMを見て、隼人は一つ思うところがあった。

 

「(あいつや両親を夢結様だとするなら、俺はこのCHARM(ダインスレイフ)なんだろうな……)」

 

知らぬ間に知人のところを離れ、一人行方不明扱いになっている隼人の状況はまさにそうだ。そう考えると、夢結のところに返してやれるだけダインスレイフはまだ幸せかもしれない。

 

「後はあのヒュージですけど、このままだとパワーが足りませんね……」

 

「手があるとすれば、ノインヴェルト戦術ね……」

 

二水の声に聞き覚えのある声が帰って来たと思えば、夢結と梨璃が共に戻ってきていた。

戻って来たことに全員が歓喜すると同時、今度はそれをやるために必要となる特殊弾が必要と言う結論が出る。

 

「それならありますわよ?これを使って、全員分のマギを込め、最後の人があのヒュージに向けて攻撃……」

 

──動きながらのパス回しをいきなりできるとは思えませんので、パス回しをした人から前進。牽制に回る方向で行きましょう。用意のいい楓の提案は即刻採用される。

それが決まるや否、梅が特殊弾を拝借。隼人の方に向き直る。

 

「よし。練習も兼ねて、今日はお前が始動役だ」

 

「……俺ですか?」

 

「だ、大丈夫だよ隼人くんっ!初めてなのは私もだから……うぅ、急に不安になってきた」

 

励ますつもりが自身の不安を煽ってしまった梨璃を見て、確かに緊張の糸がほぐれるのを感じた。

覚悟が決まったところで、装填準備の手筈通りに特殊弾装填時にスライドするカバーを動かし、いつでも行けるようにする。

 

「じゃあ、そのままじっとしてろよ?」

 

「(……マジかよ)」

 

コイントスの要領で特殊弾を親指で弾き、隼人のCHARMに装填される。

ここから隼人のマギを込めたマギスフィアが発射されるのだが、最初の狙いは梅を指定された。

──俺が言えたことじゃないけど、結構無茶する人だな。隼人に取って、梅のイメージがこうなった瞬間である。

 

「じゃあ、行きます!」

 

「おう!遠慮するな!」

 

「(アリス……お前の力を借りるぞ!)」

 

自らの恩人に心の中で告げ、梅に向けてマギスフィアが発射される。

その後隼人は即座に前線に出て、無理ない範囲で牽制を始める。

ただし、今回は普段戦う距離よりある程度遠くを保ち、回避が容易な状態を維持している。

 

「(アレを撃った後から、マギの残量がカツカツに感じる……そんだけ持っていかれるんだな)」

 

隼人は彼女らが撤退した理由にこれもあることを理解し、本当に必殺の一撃かつ最後の切り札なんだなと認識する。

彼の後ろから、パス回しを終えた仲間たちが次々と前線に来て、これにより隼人の負担が少しずつ軽くなっていく。

そのパスは楓まで回っていき、後は梨璃と夢結の二人に回すだけになった。

 

「……!」

 

「……楓さん?」

 

なお、梨璃にパスを回せる(愛を届ける)と分かった楓が凄い勢いで走っていき、梨璃がビックリしたことを記しておく。

 

「……!?CHARMが……!」

 

「わたくしの愛が重すぎましたわ!」

 

この時、梨璃が夢結に声を届ける為にやった無茶が祟ってしまい、CHARMの刃の途中から先が欠損。マギスフィアが空に飛んでいく事態があったものの、夢結がそれを捉えたことで事無きを得る。

今回夢結が代わりにパスを受け取れなかった場合はロストと呼ばれる、マギスフィアが彼方に飛んでパスが失敗を表す状況が起きる。これが避けられただけでも儲けものである。

パスを受け止めた後、梨璃が夢結に呼ばれて彼女のところにいき、二人でフィニッシュショットを放ち、それが直撃したヒュージは耐えきれずに爆散し、無事撃破となる。

 

「(こいつがノインヴェルト戦術か……これだけの威力があれば流石にヴァイパーも討てそうだな)」

 

──ヴァイパー……お前との戦い、蹴りを付けよう。その凄まじき威力の後に見えている、無数の光となって空を漂うマギの残滓は隼人に取って希望の光景となった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「(この様子じゃ風呂の許可は降りなそうだな……まあ、俺一人の為にそうするわけにもいかないし、我慢するか)」

 

その日の夜──。二ヶ月近く経っても風呂の許可が降りない事実にショックを受けるが、割り切った隼人がいた。

ただし、ノインヴェルト戦術によって希望は見え、後は如何にしてヴァイパーを逃がさない状況に持っていくかの勝負になったことは大きい。

このままだと六年間戦うだけ戦い続けるのではないかと思い始めていたが、そんな日々の終わりが見えて来ただけでも前向きになれる一日だったと言える。

 

「とまあ、それはいいんだが……俺の体のこともそろそろ考えないとな……」

 

──いきなり話しても、色々大変かも知れないけど……。とにかく自身のことに関しては話さねばならないことが多く、一度に話そうものなら長くなる。

とは言え、百由は自分の血液サンプル検査でいつ気づいてもおかしくないし、自分の言葉を誰かが捉えて探りを入れている可能性も考えられる。

最悪なのはこちらの情報だけ一方的に引き抜かれ、自由やヴァイパー撃破手段が奪われることだが、そっちの手合いに反対派のこのガーデンがそこまでやるとは思えない。

 

「(なら、百由様が検査結果を元に聞いてきた時か、俺が誰かの探りに気づいたタイミングのどっちかだな)」

 

──慰霊碑に行く時はともかく、向こうに戻る時は慎重になった方がいいな。整理を付けた隼人は、まだ済ませていなかった日課の筋トレを始めるのだった。




これでアニメ前半が終わりになりました。

以下、再び解説です。


・如月隼人
縮地のおかげでヴァイパー撃退からすっ飛んで戻って来れた。
二水に代わって今回はノインヴェルト始動役。


・一柳梨璃、白井夢結
隼人らが先にダインスレイフを引き抜くことに成功した為、援護射撃の必要が無くなった。
そこ以外は原作と同じ。


・楓・J・ヌーベル、二川二水
今回はこちらの二人が援護射撃要員として抜擢。
人が一人増えたおかげで可能となった要素。


・吉村・The・梅
基本的には原作と同じだが、ヴァイパーのこともあり、始動役を隼人に定めた。



来週仕事が多忙になってしまうので、次回の投稿が遅れてしまうことを申し上げます。

今後アニメ版準拠の展開はどのようにしてほしい?

  • 今みたいな感じで大丈夫
  • もうちょい細かめが嬉しい
  • サクサク気味がいい
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