アサルトリリィ -RED THISTLE- 作:ブリガンディ
想像してたよりはマシで安心です。
戦技競技会の当日の朝──。由美はとあるメモ書き程度の資料と睨めっこしていた。
「(現場に着いた時は何もいなかった──。それなのに、いきなりその子が現れた、ね……)」
結梨を発見した時の状況と、そのエリアに入った時の状況を隼人から口頭で聞いた内容だが、これに違和感を感じている。
見落としかも知れないと隼人は言っていたが、これは当事者側の意見であり、俯瞰的に見れる由美はそれを参考程度にもう少し深く見ていく。
「(何か別のモノがあって、そこから
そして、由美はこの結論を出した。いきなり迷い込んだにしても、裸体で来るのはどうかと思うし、泳いで来たのなら、そんな偶然にも全員の目を盗んで移動できるだろうか?その疑問が強い。
故に、いきなり出てきたと考えるのだが、今度はどこから出てきたかが説明できない。隼人はその瞬間を見ていない為、参考資料が無いのだ。
しかしながら、この結論に関しては正直永久の闇になってしまっても構わない事案であり、問題はもう一つの方である。
「こんな状況……
彼らに都合よく連行されれば、結梨は間違い無く体のいい研究対象にされてしまう。それを見つけた本人や、隼人は望まないだろう。
そもそもの話、研究狂いが何らかのミスをして彼女が迷い込んでしまった可能性もあるが、そうであるならそうで、あのバカたちは何らかの方法で連れ込もうとするだろう。
「アリス、準備の方は終わったかしら?」
「ええ。家具の用意も終わっているし、予備の布団も一式あるわ」
「ありがとう。最悪明日には必要になるかも知れないから、準備しておいて頂戴」
「……何か問題が?」
アリスに事情を説明すれば、急ぐ必要があることを理解した彼女が了解の旨を返した。
彼女が再び準備に入ったのを見届けて、再び由美は睨めっこに戻る──前に、一度時計で時間を確認する。
「(隼人君に連絡が通るのは夕方以降……)」
──そこで、連絡の全てを済ませるしかないわね。罪なき少女の命を救うべく、良識ある科学者は決意を固めた。
* * *
* * *
「(こんなイベント行事みたいなのは三年ぶり……いや、四年ぶりか?)」
──随分と久しぶりな気がするな。隼人は校舎の外に出て、グラウンドに向かいながらそんなことを思った。実際、この様な祭りごとに参加するのは小学生時代以来であり、相当時間が経っている。
隼人は今回交代要員としての立ち位置が近いが、正直言って昔のように上手くやって目立ちたいと言う感情が無い為、この方が楽でいいし、見ているだけでも久しぶりなんだから楽しめるだろうと思っていた。
今回、まずはクラス対抗戦から始めるらしく、隼人は梨璃や二水、楓らが仲間になる。
「二人組を組んで技を競い合いますよっ」
「(二人組か……)」
──楓が梨璃を狙ってそうだな。隼人の予想は的中していた。
「ふふ……これならばお邪魔虫もいませんし、無防備な梨璃さんを独り占めですわ~っ!……あら?結梨さん?」
「私、梨璃と一緒に出るから……」
「……何ですってぇ!?」
残念無念。既に先約がいたようだ。変えるのは間に合うかも知れないが、恐らく梨璃も結梨と出るつもりだったのだろうから、無理だろう。
「あはは……楓さん、また今度ね?」
「お邪魔虫二号~……」
一号は言うまでもなく夢結のことを指すが、本人らの気持ちを考えると──な状況が何とも言えないところである。
まあ、こればっかりはタイミングがタイミングだろう。
クラス対抗戦は、数メートルの高さをしたポールの上に置かれている円状の布を最も早く取れたクラスの勝ちである。
取り方としては、片方がCHARMで円を描き、空中へ飛び立つジャンプ台を形成──もう一人がその中に入り、足でマギを制御して昇っていき、そのまま置かれてある布を取る形になる。
「あっ……俺、目、瞑ってた方がいい?」
「目を……?……!その、すみませんが、少し我慢して貰いますわ」
観戦の立ち位置にいた隼人が何が起こるか察しが付き、意図に気づいた楓もやむ得ず隼人の目を両手で防ぐことにした。これは彼が不埒な行為できませんとアピールする目的が強い。
もう本当に、ただただ時の運と言うか整理が追い付いていないと言うか、諸々の事情に隼人が合わせなければならないのは少し可哀想になる。
隼人はうっかり見てしまったところでああだこうだ騒ぎはしないのだが、問題は相手側であり、相手側がダメなら諦めるしかない。
「コイツ本当に運悪いな……」
「せ、せめてこの競技だけ我慢してくださいな……」
間近にいた鶴紗と神琳も、そんな隼人の現状を哀れんだ。これでは純粋に楽しめないだろう。
もちろん、こんな面倒をかけさせてしまった楓もかも知れないが、そもそも彼女の場合は梨璃を結梨に取られてしまっているので、どっちにしろだろう。
「(まあ、何も反応がないならそれはそれで楽なのですが……)」
「(とは言え、こうなってる状況……どう返すのが正解なんだ?どれも不正解な気はするが……)」
それぞれ同じ状況のことを考えているが、内容は全く別であった。しかもお互い口にするのも難しい内容である。
「何て言うか……良くも悪くも、俺がイレギュラーだって改めて実感するよ」
「こればっかりは仕方ありませんわ……」
隼人が嘆いてしまうのは無理もない。ただでさえ価値観にズレがあるのに、一人だけ異質故に合わせねばならないのだ。
──てかコイツ、アリスの比じゃないな……。三度目の正直なのか分からないが、明確に比較対象ができてしまった隼人は、数舜とは言え、ついぞやそちらに意識が回ってしまった。
そして、試合が始まってからは早く、勝負はもの一分もせずに終わった。
「終わったみたいですわ」
「結果は……?」
どうやら梨璃と結梨のペアが勝てる──と思ったら、あと一歩のところで別のクラスの少女に先を越されてしまったようだ。
紫色の髪をツインテールにし、同じ色の瞳を持った少女曰く「初心者にしてはセンスいい」とのことで、その才覚を認めている。
とは言え、センスがあるない関わらず、負けは負け。結梨は悔しかったのか、膨れっ面を見せた。
「結梨ちゃんっ、凄かったよ!」
「でも出来なかった!」
やっぱり悔しかったらしく、表情を変えてそれを表し、それを見た梨璃は「そんなことないよ」と励ます。
これだけ見ていると非常に微笑ましい光景だが、隣では楓が嫉妬にまみれた様子を見せており、もう少し抑えられないかと隼人は思った。
「なんだかあの二人、シュッツエンゲルみたいだナ」
クラスが違う為、遠くで見ていた梅の感想に夢結も返事こそしないもののその光景を暖かい目で見ていた。
「如月君……その、大丈夫だよね?」
「ああ。それならわたくしが目を塞いでおきましたので」
「俺が合わせる立場だからね……」
もう一度だけ楓がその状態を再現して証明を取る。一応、開始前にそうやっていたのは確認していたが、本人たちは分かりづらい。
これ自体は隼人も納得していたからまあいい。こればっかりは仕方ないのだ。
「もう遅いかも知れないけど……アンタたち、男女で密着してるけどいいの?」
「「……えっ?」」
緑色の髪を持つ少女に聞かれ、二人は数舜間をおいた。
だが、ここで隼人はかなり頭を悩ませる事態になる。
「(ヤバい。無茶苦茶回答に困る)」
そう。異性への頓着が薄いままだった故に、どう返せばいいのかが全く分からないのだ。
ただ、幸いもう一人問われた相手は楓であり、隼人の状態を読んでアクションを起こす。
「状況が状況だから仕方ありませんわ。ただ……この男、全く反応を見せないから、押し付け甲斐が無いと言いますか……もっとこう、せめて眉の一つでも動かしてくれれば」
「待て待て。それを安売りしようとするな……まあ、正直言えばこんな役回りさせて申し訳無いよ」
まあそうなるだろうな──と、殆どの人が思った。強いて言えば、楓に触れた時の反応が何も無いのは嘘だろと思う人がいた。
実際、隼人のそっちに関する頓着が余りにも薄く、それもヴァイパーによって歪められたのだから仕方ないと楓は割り切ろうとした──。
「(でも、実際アリスより凄いのは確かだよ)」
「……!」
──が、耳打ちとは言え彼からは想像つかない回答が来た。言葉こそ少ないが、楓からすればそれだけでも十分だった。言って見るとどうなるんだと言う思いつきではあるが、余り聞かれたくなかったので、耳打ちを選択した次第である。
と言うよりも、正直嬉しかった。例え隼人が咄嗟に思いついたその場凌ぎだとしても、始めてまともな回答が得られたのだから。
少しの沈黙が走って辺りを見渡した隼人は、楓がとても嬉しそうにしているのが目に入った。
「……どうした?」
「それですわ、それっ!そう言った反応が欲しかったんですわっ!もう、最初からそう言う反応を下さればいいのに♪」
こんなこと言いながら、楓は胸元をわざとらしく抑えて見せる。
だが、今までと比べて明らかに表情が明るいのと同時に、意識させたい感じが伝わり、顔に熱が入ると同時、今自分の周りが何かを思い出して物凄く焦りを感じた。
「お、おい!?ちょっとは体勢を考えろ!俺に関して要らない誤解ができるかもしれないだろ!?」
「あら、すみません。珍しい反応だったのでつい……」
実際にはもう、椿組には「男子って楓さんみたいな人がいいんじゃ……?」と言う考えが何人か出てきている。
これに関しては後でコッソリ聞かれた際、隼人が「みんながみんなそうって訳じゃない」と回答して弁明をして事無き得た。
ただし、これは
「(分かってはいたけど、気をつけなきゃいけない事が多過ぎる……!いやでも、あれはマジで……ダメだ、ダメだ!一旦意識から切り捨てろ!)」
「(少しは改善の兆しが見えて安心ですわ……ただ、ちょっとタイミングがダメでしたわね)」
完全に自分の方に意識が向いてしまった隼人を見て自省しつつも、今までの仕返しが出来たとして楓は一満足した。
この後、個人部門を行い、隼人もここで参加し、名目は遠くの距離から正確な射撃を複数の的全てに素早く当てる勝負なのだが──。
「は、速さで勝って精度で負けた……」
「狙撃なら、まだ負けないよ……?」
普段の戦闘なら、まずは距離を詰めると考えるくらいの距離であった為、隼人は雨嘉に敗北を喫する。ちなみにこの勝負、隼人はノーミスであれば間違いなく勝てていたので、今後は射撃精度を己の課題として見出した。
また、雨嘉は距離が近ければ速度で負けていたので、狙撃で早撃ちへ挑戦するのもいい機会と考えていた。そう言う意味では、お互いに有意義な勝負だったと言える。
工廠科の研究の成果として、存分に弄り倒したCHARMの披露会があったが、隼人の反応は全てイマイチだった。
「(いや、全部使いづらそうだな……)」
何しろそのCHARM、殆ど全てが実用性度外視だったのである。これでは隼人もいい反応を返せない。
技術の進歩や結晶──と言えば聞こえはいいのだが、どうもこの男はそれだけだと納得できないようだ。
とは言え、その頑張り自体は否定するつもりは無く、寧ろ自分にできないことをバンバンやってるのは素直に称賛できる。
「(明日とかでもいいから、楓にCHARMの話持ち掛けとくか……)」
これを見て思い出した隼人は、具体的な内容を考えながらその他のものを見ていくことにした。
その結果、今回のCHARMからは欲しそうな要素を余り見つけられなかったが、大まかな指標は決める事ができ、一歩前進と言える。
披露会の次はレギオン対抗戦になり、選抜メンバーがそこに参加する。ちなみに隼人や梨璃は見学である。
やることとしては、各レギオンが守るべき的があり、それを撃たれないようにしながら他レギオンの的を撃ち抜くものらしい。
「あれ……何かあったの?」
「もしかしたら、この前の挑発が続いてるかも知れません」
ミリアムが緑髪の少女にわざとらしいファイティングポーズを見せられて憤っていた理由を、二水が簡単に答える。
ちなみに、その時の話も浴場での話なので、隼人は現場にいない。
なお、その緑髪の少女、どうやらアールヴヘイムのメンバーであるらしく、その挑発ができるだけの腕前はあることは疑いようもない。
「結梨、梅と代わるか?習うより慣れろって言うしな」
「ダメですよっ!結梨ちゃんはまだCHARMにも慣れていないんですから、怪我したらどうするんですか!?」
やりたそうにしている結梨を誘ってみたが、梨璃に阻まれたので梅は断念した。そんな様子を「梨璃が母親みたいだ」と思いながら隼人は見ていた。
この会話の後に始まった一柳隊とアールヴヘイムのレギオン対抗戦だが、アールヴヘイムは夢結とやり合ってもいいことが無いのでスルーを考えていたらしいが、滅多に戦える機会が無いから三人程彼女の方に向かっていき──。
「さて、次は誰かしら?」
──あっさりと返り討ちになり、その夢結は自信たっぷりな笑みでこんな問いをしていた。
隼人は知らないが、彼女も元アールヴヘイム所属であり、その実力は非常に高い。百合ヶ丘でも屈指のレベルである。
「お姉さま、凄い……」
当然、彼女に憧れてガーデンに入った梨璃が魅了されない訳も無く、暫しの間その姿が焼き付いていた。
無論彼女だけで無く、他の人たちも結構な数が見入っていた。
「なっ……!?後ろに……!」
「避けてくれてありがとうなのじゃ……」
一方で、緑髪の少女とミリアムの対決は、ミリアムが最後の一撃に見せかけたフェイズトランセンデンスの一撃を避けさせ、的を撃ち抜くクレバーな戦法で一矢報いていた。
ただ、その後はフェイズトランセンデンスの反動で倒れてしまい、彼女は医務室コースになった。
ここまでで午前の部は終了となり、昼休憩をしてから午後の部に移ることになる。
* * *
昼食を取って、午後の部開始数分前──隼人は一先ず外に出て一柳隊の皆と合流するべく移動をしている。
昼食中は個人部門やレギオン部門での話で持ちきりになり、そこで隼人と雨嘉はお互いの持っている射撃技術の講習会を約束している。
この他にも、レギオン部門による夢結の複数人一蹴や、ミリアムの一発逆転攻撃は非常に注目されたものであり、ここでも話題になった。
なお、午後の部は百由が作ったメカヒュージとミリアムが対決するデモンストレーションと、コスプレ部門等……やることはアフタータイムのお楽しみに近い。
「(あれ?待てよ……。さっき倒れてたよな?)」
──代わりは誰がやるんだ?自分には話が来ていないので、隼人はこれが疑問になった。
「あっ……隼人くん。結梨ちゃん見なかった?」
「いや、見てないけど……先に夢結様と行ったとか?」
移動中に梨璃に問われたので、隼人は正直に答えて共に移動する。
そして、一柳隊のメンバーを見つけるもそこに結梨はおらず、どこにいるのかと言うと──。
「えぇっ!?結梨ちゃんどうしてそこにいるのっ!?」
──何と、CHARMを手に持って百由製のヒュージロイドの前に立っていた。
どういうことかと聞いてみたら、ミリアムの代理として結梨を登録していたらしい。
「相手は百由が作ったのだから大丈夫だろ?」
「百由様が作ったから、心配なのでは……?」
楓のツッコミには、梨璃も隼人も二人揃って首を縦に二回振って肯定を返した。
どうにかして登録をやり直せないか──と考えるも遅く、地面から無数の鉄が飛び出して、網目あるドームを作り出してしまう。
「あっ、遅かった」
「あわわわわ……!」
──これどうやって開けるの?そんな疑問が浮かび上がった直後、現場に到着した百由が間に合わなかったことに反応する旨をこぼす。
早速聞いて見たところ、どうやら勝負がつくまで開かないように設計されているらしく、開ける手段に関しては諦めることにした。
「エキシビションだし、リリィが勝てるように設定して……ありますよね!?」
百由が作って設定したのだから、もしかしたら──と不安になりながら問いかけた雨嘉だが、次の回答で全員がビックリすることになる。
「いいえその逆よっ!
「百由様わしをどうする気だったんじゃ!?って、慌てるのは遅いわっ!」
この後、二人で口論が始まるが、そんなことは些細に過ぎない。悪い意味で期待を裏切らなかったので、何してんだこの人と思った。
なお、ぐろっぴとは百由が最近になってミリアムをそう呼ぶようにしたあだ名であるが、いつからこうなったのかは他の人は詳しく知らない。
「技術屋も研究狂いも、何でか頭のネジ飛ばしちゃう人っているんだよな……」
「どこかのアホンダラみたいに、命に執着しすぎている人も……ではなくて?最近は落ち着いているみたいですが」
「お前……もうちょっとこう、隠したりとかしないの?」
「隠すつもりもありませんでしたし、これでいいんですのよ。ゆっくり考えてくれているなら、問題ありませんわ」
実際、隼人は食事関連に意識が強くなり始めているが、そこから先へはまだ進んでいない。故に、ここからは時間が経過してどうなるかである。
「それはさておき、こっちだな……」
「ええ。百由様の設定がやりすぎなのが少々不安ですわ……」
結梨は大丈夫か?それが共通の考えだった。確かに訓練はしている。だがそれでも、その訓練期間は一週間にも満たない。隼人ですら、治療した腕を慣らすところまで入れて半年間は訓練してからの実戦なのだ。明らかに準備時間が足りていない。
碌に訓練もせずに実践に赴いた梨璃の一例もあるが、あれは余りにも例外が過ぎるので、今回は除外する。
なお、結梨がこんな無茶をやっていることに関しては「時代が変わった」と神琳が、「今や百合ヶ丘のゴシップは結梨に向いている」と二水が証言しており、思いっきり結梨に注目が集まっている空気が明かされた。
「梨璃、私、やるよ!」
結梨はリリィになり、皆のことをもっと知りたいと告げた。記憶が失くしたならと、新しく作る道を選んだのだろう。
──だから、見ててっ!そう言って結梨は百由製のヒュージロイドと対峙する。
「結梨ちゃん……」
そこまで言われたらもう止められないし、夢結からも信じてあげなさいと言われ、梨璃も見守ることにした。
「あ、あの構え……」
「夢結様がやってる構えだな」
最初に取った構えが夢結もやる構えだったので、数名が驚く。
皆が見守る中、暫しの間静かな睨み合いが始まる。その睨み合いの後、先に動いたのはヒュージロイドだった。
「……!?」
いきなり高速回転しながらの体当たりを前に、結梨は反射的にCHARMで防ぎ、数歩後ろに下がる。本来は受け流しが理想ではあるのだが、初見でこの防御をやっただけでもかなりのものである。
ヒュージロイドの足の内一つの打撃にCHARMを振り下ろしてぶつかり合うも、パワーの差が災いして押し負ける。
そして、こうなるとヒュージロイドの攻勢になり、そこからくる連撃を、結梨は体制を崩しつつもどうにか避けてやり過ごしていく。
「押された時は間合いを取りなさい!」
「そう、相手のペースは崩す為にあるのよ!」
結梨は始めて戦っている──。そんなこともあり、彼女に聞こえることを祈ってか、戦いに関するアドバイスの声がちらほらと聞こえてくる。
そこから起きた流れの変化はすさまじく、力勝負には一切付き合わないと言わんばかりに結梨は走ったり飛んだりを繰り返しながらヒュージロイドへ攻撃していき、時々自分の移動先に合わせて置かれる攻撃は大丈夫ならそのまま、ダメなら受け流しながら通り抜けて行く。
打って変わって初心者とは思えない動きを見せた結梨を前に、会場が沸き上がった。
「(行ける……やれる!)」
そして最後は、マギを込めた全力の攻撃により、ヒュージロイドを十文字に切り裂いて勝利して見せた。
「みんな、出来たよっ!」
綺麗に着地した後、CHARMを頭上に掲げながら発したその声は、皆の歓声に迎えられた。
この後、コスプレ部門も残っているが、この時点で結梨が最優秀リリィになるのはもう確定していた。
* * *
「(やっぱり、雨嘉の受けはよかったな……)」
全ての部門が終了した放課後──。隼人はラウンジで夕食を取りながら今日の事を振り返っていた。
結梨が全ての注目をかっさらった後のコスプレ部門は、雨嘉が見事に優勝しており、この前背を押した意味はあったと言える。
ちなみに、最優秀リリィには結梨が選ばれており、後日工廠科の技術を持ってCHARMにオプションを装備できるらしい。
「(いや、初心者のCHARMをいきなり魔改造したりはしない……よな?)」
少なくとも、自分が結梨の立場だったらお断りである。まあ、自分が実用性重視で物を選ぶからではあるが。
それでも、全体を通せば非常に充足した一日であり、満足出来たのも事実である。来年もきっと、こうして過ごせるのだろうと思えた。
「(……由美さんから連絡?)」
部屋に戻れば、由美から連絡が来ていることを知らせる為に準備しておいたライトが点滅していることに気づき、素早くイヤホンを耳に付ける。
「遅くなりました。何かあったんですか?」
『やっと繋がったわね……一つ連絡しなければならない事項が出来たの。落ち着いて聞いて頂戴』
そして、今日の朝に判明した内容を隼人に告げられることになる。
今回の連絡により、緊急事態に陥る可能性が高いと隼人も判断できた。
「じゃあ……万が一のことがあれば、その子と保護者の位置にいる子の二人に暗証番号と場所は伝えます」
『ええ。そうすれば、事が収まるまではこちらに匿うわ』
この決定に、隼人はありがとうございますと返し、連絡を終了した。
「(まさか、こんなことになるなんて……けど、なっちゃったのは仕方ない。後は対象するだけだ)」
割り切った後、隼人は彼女らの避難を助ける為に思考を回し始めた。
Q1.あのヒュージロイドを、CHARMの扱う訓練してから一週間の隼人が戦ったらどうなるの?
A1.隼人には結梨のように高過ぎる吸収力がありません。なので死にます。
Q2.あの狙撃対決は何ぞ?
A2.個人部門あるとか聞いたのに何も無かったので、独自に追加して見た。
これでアニメ8話まで終わりました。
ここから解説入ります。
・如月隼人
三度目の正直と、命に関わる状況じゃないからと言う二点が重なり、等々異性への意識が回ってしまった。ここから変わるか?
早撃ちができるのは対ヴァイパー技術の一環。逃げ切られてしまうので、三発目を超えると精度が落ちてしまうのが課題。
楓が好みかもと疑われているが、己の反応故にやむなし。
・一柳梨璃
最早結梨ちゃんのオカン。基本は原作と同じ。
アニメでは次が山場になるが、果たして……?
・楓・J・ヌーベル
三度目の正直が通じて満足。改善の兆しも見えて一石二鳥。
結梨ちゃんがヒュージロイドとの対決を終えた後、梨璃に抱きつかれる彼女へ嫉妬しているのは相変わらず。
・王雨嘉
個人部門でも勝利。勝因は射撃精度。
狙撃の照準を定めるまでを早めたい為、隼人の早撃ち技術を欲している。
・真島百由
何でこの人トンデモチューンをヒュージロイドに施したんだ……。
ミリアムへのズレた想いなのだろうが、隼人には技術屋の悪い癖が出たと評されている。
・ミリアム・ヒルデガルド・v・グロピウス
本小説ではようやく渾名が公開された。
何気にフェイズトランセンデンスのぶっ倒れ芸は、アニメ本編でもここが初だったり。
・緑髪の少女
次回以降、アニメ9話分に入ります。
今後アニメ版準拠の展開はどのようにしてほしい?
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今みたいな感じで大丈夫
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もうちょい細かめが嬉しい
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サクサク気味がいい