アサルトリリィ -RED THISTLE-   作:ブリガンディ

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書きたいところ入れたら2話で終わらせられませんでした


第24話 定義

その日の夜──とある場所に足を運びながら、隼人は今日起きたことを整理していた。

運悪く見つかったら──何てことも考えていたが、そもそも施設へ辿り着かれたところで彼女らは逃走プランを組み立て済みであり、開けられるよりも前に実行完了が可能にしているので全く問題なかった。

その為、隼人はその不安は切り捨て、他の方を整理し始める。一先ず、迎えに行くのは結梨の安全を保障できてからは確定である。

ちなみに、結梨の安全を保障できるよりも前に攻撃されそうになった場合、隼人は己の身を投げ売って百合ヶ丘のリリィ全員を守ろうと画策したが、速攻で見抜かれて全員に怒られながら却下された。故に、これは没案になる。

 

「(一葉と連絡は取れなかったけど、流石に見つかる訳はないか……)」

 

懸念点は一葉と連絡が取れず、そのまま見逃すように頼めなかった点ではあるが、寧ろ彼女らが怪しまれてしまい、そこからドミノ倒しの如く大混乱を招いてしまう可能性がある。

最悪、都内と鎌倉の全ガーデンを百合ヶ丘と同じくヒュージを匿った敵として攻撃されてしまうかもしれないので、連絡できない方が良かったまである。

いや、そんなバカな──と思うかもしれないが、G.E.H.E.N.A.の横暴を許容してしまう今の政府(麻痺状態)では本当にやってしまいかねない。なので、現状はこれが最善手だ。

 

「(で、俺が今からやるのは百由様への差し入れ準備だ)」

 

現在、結梨が人だと証明する為の資料を超特急で百由様だが、朝からずっと部屋でモニターと睨めっこしながら資料を作成しており、食事の時間すら忘れてしまう程必死にやっていた。

しかしながら、そんな風に丸一日何も食事を取らずにこれをやっていくのは流石に限度があったらしく、偶々彼女のラボに顔を出そうと思っていた隼人を偶然見つけて食事とコーヒーを依頼。承諾した隼人が移動を開始して今に至る。

実際、体力面だけなら全国のリリィでもぶっちぎりで一位になれる可能性が見込める隼人は、自分が引き受けて他者の負担を負わせないようにしようと考えて引き受けており、頼まれたこと自体は何の文句も無い。寧ろ、結梨を助けられるならエンヤコラの精神だった。

 

「さてと……リクエストは肉料理だったな。栄養バランスも考えて野菜増しにするか?」

 

──聞いてから来れば良かったな……。当人が集中してもらう為にも、彼女の望みに近づける努力を一つ怠ってしまったのはミスだったと自省する。

行動自体は早い方がいいのは確かなのだが、それとこれとは話が別である。しかしながら、今回は時間が無いので許して貰うしか無い。

楽に持っていけるのは丼にしてしまう事だと結論付け、肉の残りを確認。すると牛がかなり残っているので、今回は牛丼を手早く野菜増しで作っていく。

 

「(よし。じゃあまずはこっちを持って行こう)」

 

そうしたらささっと手早く牛丼を運び、また部屋に戻って次はコーヒーの豆を挽いた後、マグカップや砂糖等、必要な物を持って百由のラボに足を運んで入室する。

 

「コーヒーはまだ時間かかるんで、ちょっと待っててください」

 

「ええ。わざわざありがとうね」

 

その間に、百由は自分が喉に詰まらせず、腹も下さないで済むギリギリの速度で食事を進めていく。

本当なら味わって欲しいとも思う隼人だが、今回は人の命が掛かっているので、そう言うことは言わない。寧ろ、わざわざありがとうとも思っている。

百由が牛丼を平らげる頃にはコーヒーも準備が終わり、それぞれのマグカップに注ぐ。

 

「じゃあ、これも貰っちゃうわね?結構な量だけど……」

 

「どうぞ。そこら辺は個人の裁量ですから」

 

隼人は無糖。百由は今回、少しでも多くの糖分が欲しいので緊急手段として多量の砂糖を使用した。

 

「うーん……これだけやると流石に砂糖ね。ごめんなさいね?今度またちゃんとした砂糖の量で頂くわ」

 

「ええ。豆も今回以外に後二種類あるんで、そちらも好みがあれば言ってください」

 

今回は百由の好みが分からなかったので、三つの中で最も標準的な苦みをしたものを淹れている。

そうして一息ついたところで、百由の方から隼人に声がかかった。

 

「今日は本っ当にありがとうございましたっ!」

 

「……俺ですか?」

 

聞いてみると、どうやら夢結の方が隼人の迅速な対応で結梨が無事逃げ出せたと言う話を聞いていたらしい。

そして、この資料はこれによって時間ができたからこそ作成しているものであり、結梨の安全を確保できる絶好のチャンスとなったようだ。

 

「ところで、その資料ってのはできそうなんですか?」

 

「正直結構危なかったわ……でも、楓さんがお家元に電話して技術資料の公開の約束を漕ぎつけてくれたから、日が昇るまでには出来上がるわ」

 

「あいつが……そうだったんですね」

 

──やっぱり、あいつはそんなことするやつじゃないよな。百由の話を聞いて、隼人は心から安堵する。

堂々とした戦いを好み、良くも悪くも正直なところの多い彼女がそんなことをするなら、今まで自分に接してきたアレは何だと問い詰めるところだった。

これで疑問が解決した──と、満足して終わろうと思ったが、もう一つ新しい問題が出てきた。

 

「って、ちょっと待って下さい。今、日が昇るまでに……って言いませんでした?」

 

「言ったけど、それがどうかしたの?」

 

「……寝不足で倒れたりしないでくださいよ?」

 

「大丈夫よ。仮眠だけでも取れれば十分だから」

 

──それ十分って言わないでしょ……。百由がけろっと言ってのけたそれに隼人は絶句した。同時に、これだけは絶対に真似してはいけないと心に誓う。

無論、百由も無理に真似しろとは思わない。仮眠だけで十分になるのは、本来人としてよろしくは無いのだ。故に、彼女も急ピッチでやらねば行けない場合の緊急措置としている。

 

「はぁー……。ごちそうさまでした。それじゃあ、私はまた資料作りに戻るから、結梨ちゃんたちのことよろしくね?」

 

「了解です。こっちは任せてください」

 

コーヒーも飲み終わり、簡単に約束をした後、隼人は部屋を後にした。

 

「(さて、俺も忘れ物確認だけしたらさっさと寝た方がいいな)」

 

もう一時間とちょっとすれば日が回る時間であり、明日以降のことも考えると少しでも睡眠は稼いだ方がよさそうだと考え、移動を始めようとする。

幸い、使用している食器等は自前のものである為、一々返しに行ったりする必要もないので気が楽だ。

 

「……隼人さん?この時間に何をしてますの?」

 

「百由様に頼まれて差し入れ。そう言うお前こそ……って、そうだったな。一先ずお疲れ様」

 

移動中に楓と遭遇したので、一応一つ確認をしておく。それは食事を取り損ねて無いかだ。

何しろずっと席を外していたし、百由とは別の意味で休息ができていなかったのでは無いかと考えている。

 

「えっ?ああ。それなら別に……」

 

──大丈夫ですわ。と、答えるよりも前に腹の虫が咄嗟に誤魔化そうとしていたことを教えてくれ、それを聞いた隼人は一回盛大にため息をつく。

 

「よし。お前の分も何か作るか……コーヒーも用意するから、一旦来なよ。あっ、言っとくけど『ダイエット中だから』とかって言い訳は聞かないぞ?飯抜きって逆効果だし、寧ろ栄養不足の悪影響が出る。それで倒れてからじゃ遅いんだからな?」

 

「(確かに空腹は命に関わることですが……逃げの手段を全部潰して来ましたわね)」

 

空腹は最悪餓死──。つまり、命に関わる重大な事なので隼人は楓の言い訳を予め全部封殺しに行った。

本当は百由の徹夜も咎めたいところだが、彼女は自分の仕事が他人の命に関わるので、止めることはできない。精々リフレッシュ等ができるように差し入れを送るくらいである。

そんなことで部屋に半ば強制連行になった楓だが、今日は浴場に行けて無いので、着替えと洗面用具を持って来ることだけは許してもらい、持ってきた後にそちらへ合流した。

 

「来たか。湯は出るようになってるから、遠慮せず浴びちゃいな。飯もそれが終わる頃にはできるよ」

 

用意の速さに礼を言いながら、楓はシャワールームに向かう。

それを目で確認した後、隼人はそのまま調理の続きに戻り、手早く盛り付けとコーヒーの出来状況を確認する。

もう完成しており、後は注ぐだけだったので、二人分のマグカップを用意し、それを注ぐことにした。

 

「時間も時間だし、胃もたれしない献立にしておいた」

 

「配慮に感謝しますわ」

 

普段は見られない部屋着姿の楓は礼を告げてから、早速その食事を貰うことにした。

 

「どちらの豆にしましたの?」

 

「一番苦みが少ないやつ。砂糖は必要なら使っていいよ」

 

楓が微妙そうな反応をしていたのを思い出し、隼人はこれを選択していた。

飲んで見たところ、これならまだ大丈夫で、今回は無糖で飲んでみることにする。

 

「(あぁ……あの苦みに慣れ過ぎたな。ちょっと足りなく感じる)」

 

苦みが強いのに慣れ過ぎると、苦みが弱いと物足りなさを感じてしまう。正にその状況だった。

自分がコレなのだから、もっと早くから飲んでいるアリスや由美は顕著だろうなと隼人には予測できる。

 

「結梨さんのこと、助かりましたわ。おかげでお父様に直接聞き出せましたもの」

 

「お礼を言いたいのはこっちもだよ。俺には、ああやって逃がすことしかできなかったから……」

 

「ですが、あれが無ければわたくしは行動すら出来ませんでしたのよ?」

 

隼人が動かねばそもそも時間すら無い。隼人はその先が出来ず他人を信じるしかない。

なら、これは自分たち全員で力を合わせた結果として受け止め、残りは百由の資料と説明が通ることを祈るだけだった。

 

「ところで、その気になった自分で結梨さんを連れて行こうと聞いていますが……?」

 

「えっと……夢結様から?」

 

実質的に肯定の意を返すと、もう少し自分のことを大事にしろと案の定お怒りを受けたので、もうこの発想はしないからと約束し、これで許しを得る。

この後は明日以降、自分たちがどうするかも連携しておき、万全の状態で迎えられるようにした。

 

「ごちそうさまでした。では、また明日」

 

「ああ。またな」

 

無事間食した後、楓は退室し、時間も日が回る直前になっていた。

その為、隼人は忘れ物確認だけ済ませて寝てしまうことにする。

 

「(百由様を信じよう……)」

 

確認を終えた隼人は成功を祈りながら眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

翌日の朝──。百由は理事長代理の同伴で政府の方へ結梨の結果を伝えに行った。

その結果を述べてしまえば、無事に成功で、結梨は人であり、リリィであると認められることになる。

これによって皆で堂々と結梨を迎えに行くことができるようになり、由美たちがいる施設には早速連絡が入ってきた。

 

「隼人君?結果は出たかしら?」

 

『はい、結果は成功です。結梨は人であり、リリィであることが認められたんで、ガーデンに迎え入れることができます』

 

「それは良かった……なら、私からあの二人には伝えておくわ。後は事前に伝えた通りにお願いね?」

 

『了解です。それじゃあ、また』

 

連絡を送って来たのは隼人で、それは紛れもない朗報だった。連絡を終了した後、一度後ろを振り向く。

そこには軽めの食事とコーヒーによる朝食を楽しんでいる梨璃と結梨、アリスの三人がいた。玲は二人から預かったCHARMの点検中である為、今は部屋にいない。

アリスはいつも通りなので気にしないが、残り二人は流石に二度目の食事となれば安心できているのだろう。昨日と比べて幾分か明るい顔を見せていた。

 

「お義母さま。どうだったかしら?」

 

「朗報よ。二人とも、結梨さんがヒュージでは無く人として認定されたから、これから隼人君たちが迎えに来るわ」

 

「……梨璃!」

 

「うんっ!良かったぁ……」

 

今度こそ二人とも安堵することができ、特に梨璃はホッと胸をなでおろす。

その後は二人とも帰って何をしようかだったり、今度はこんなこと知りたいだったりと明るい話に切り替わり、一日ぶりに楽しんで食事に手を付けられた。

 

「到着したわね。ついてきたリリィも事前に聞いた通りで、他は誰も来ていない……」

 

──上首尾ね。個人裁量でも安定感のある隼人に関心する。

隼人が電子ロックを解き、ドアを開けて先に全員に入ってもらい、後ろをしっかり警戒しながらドアを閉めたのがカメラに映る。

 

「二人ともお待たせ。確認は終わったよ」

 

「ありがとうございます」

 

「ありがとう。玲」

 

二人でCHARMを受け取った直後、一柳隊全員が中に入ってきた。

 

「あなたたちが隼人君の所属しているレギオンメンバーね?」

 

「はい。百合ヶ丘女学院、一柳隊──一柳梨璃、一柳結梨の二名を迎えに来ました」

 

この場では夢結が代表して答える。これに関しては予め決めておいたことである。

夢結の言葉を聞いた後、由美は隼人に嘘はないかを確認を取り、本当であると答えた。

隼人に問いかける方法で確認したのは、元から決めていたことであり、もし、隼人が聞いた話と相違する場合は閃光玉を使い、梨璃と結梨を連れて施設移動を始めるつもりであった。

 

「了解よ。では、二人を連れて行きなさい。それと、この場所は口外無用でお願いするわ。隼人君の帰る場所が変わってしまうから」

 

「分かりました。約束します」

 

承諾を得たことで、今度こそ二人は一柳隊のところに送られ、後はガーデンに帰るだけになった。

 

「結梨。昨日も言ったけど、己の道を貫きなさい。それが、生きる意思に変わるわ」

 

「うん。アリスもありがとう」

 

昨日の夜、最後に決めた後どうするかのアドバイスを受けており、結梨はそれをしてくれたアリスに感謝していた。

 

「隼人、あの子をお願いね」

 

「ああ。こっちは任せて」

 

アリスと約束を交わし、今度こそ一柳隊は施設を後にする。

帰ったら何をするか。そもそも授業とかどうするんだとか、そんな話をしながら戻っていると、一つの通知が誰かの端末に舞い込んで来た。

その内容は、ヒュージが百合ヶ丘前方の海に出現と言う、緊急の情報だった──。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「な、何だよアレ……戦艦か!?」

 

現場に到着し、開口一番に呟いた隼人の言葉だった。海を悠々と渡って、百合ヶ丘を真正面に見据えられるように浜辺から10キロ程離れた所に停滞する巨大なヒュージを見た時出た表現が、戦艦である。

しかも最悪なのが、あのヒュージはそのまま接近してくることもなく、遠距離から自分の周囲に浮かせている砲台のようなものを複数使い、それから発するエネルギーを圧縮──細いながらも一本の超火力を誇る熱線として撃ち出すのが見えた。

その一射は幸いにも被害は出ていなかったものの、余波で射線上の上にある雲を真っ二つに焼き払い、その威力をまざまざと見せつけられた。

 

「(しかもあの距離じゃ、こっちの攻撃が届かないから接近するしかない……)」

 

隼人は対象するならの結論は即座に浮かんだが、問題がいくつも出てくる。

まずは接近方法──。リリィは元々水上で戦うことなど想定しておらず、マギを足に集中させて、某忍者漫画のように移動することはできるにしても、動きは非常に緩慢となってしまう。その為、あの次の一射が来るまでに間に合わない危険がある。

次に接近までの道のり──。普段のリリィからすれば超が付いてしまう程の低機動力で接近しようとしても、途中の迎撃があればそれを避けられない危険が高い。おまけに移動にマギを使う為、防御にも回したところで大して防げないか、移動すらままならない可能性が出てくる。

最後に、接近してから──。あれ程の大きさでは単独で撃破することは困難で、ノインヴェルト戦術を使おうにもここからでは遠すぎて撃てない。

そもそも準備する前にあの熱線が来てしまえばそこで終わりだ──。自分たち諸共百合ヶ丘がサヨナラするはずだ。

 

「(八方塞がりだって言うのかよ……!?)」

 

──冗談じゃない!内心で毒づきながらも、自らができる手段の内、一人でも多くを引き連れて逃走が真っ先に出ている辺り相当相手の力があることを示している。

だが、隼人自身の力では何も手出しできないのは明白で、誰かの協力を得ようにも、そもそも遠すぎて誰も何も手出しできないのが問題だ。

確かにヒュージから人を守る決意をしてCHARMを取ったが、死ぬつもりは更々ない。これがジレンマを引き起こしていた。

 

「あれ、ヒュージだよね?」

 

「うん。そうだけど……」

 

──どうすればいいんだろう?結梨の問いに答えながら、梨璃も方法を模索していた。

隼人と同じく、あの距離に対して自分たちで何ができるかの想像もつかないのだ。強いて言えば、そこから逃げるしかないのかと言う疑問である。

 

「……結梨ちゃん?何をしようとしてるの?」

 

「倒しに行くの」

 

「結梨ちゃんっ!?」

 

結梨が少し前に出ていったのが見えたので、聞いてみればとんでもないことを言い出して梨璃のみならず、一柳隊全員が驚いた。

もう撤退するしかないのではないかと言う疑問すら出ている中で、結梨はただ一人、倒すことを前提に動こうとしていた。

 

「どうして……?」

 

「だって私、()だから」

 

どうやって倒すとかどうこうでは無く、結梨は自らの在り方に従うことを選んだ。

この決定打をくれたのはアリスの参考であり、それを表すかのように結梨は「アリスが教えてくれたの」と、言葉を紡ぐ。

 

「(アリスが……?)」

 

「私の生まれがどうだって関係ない……。ガーデンで過ごして、戦技競技会やって。一緒にコーヒー飲んで……今からヒュージと戦う私は、人」

 

これが自分の答えだと、結梨はブレる事無く、曇りの無い表情で己の定義を告げた。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

{ 第 24 話 }

 

定 義

definition

 

 

私は人だから

──×──

of a determined person, to go to his or her place of death

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「だから私、行ってくるね」

 

「待って、結梨ちゃんっ!」

 

走り出した結梨を止めようとした梨璃だが、一歩遅く、伸ばした手が空を掴む。

今からなら走って追い付けるかと思えばそうでもなく、結梨は物凄い速度で水上を走り抜けていく。

通常のリリィではあんな速度を叩き出せないのだが、一つだけ手段はある。

 

「あれ、縮地か……?」

 

自らがそのレアスキルを所有している梅は、彼女の速度に理由を見つけた。

目の前で水上における問題点を解決した速度で結梨は突っ走り、更には迎撃の弾丸を全て裁きながら少しずつ距離を詰めていく。

 

「あれは、フェイズトランセンデンスも混ざり混んでる様子が見えるの……じゃが」

 

──あれでは打てるかどうかはさておきとして、こっちに戻って来れんぞ?ミリアムが示した問題点は大きく、このままでは結梨が確実に死んでしまう未来が見え始める。

だが、結梨が高速で動いている理由さえ分かれば、成功するかはさておきとして、手段が用意できると一人確信できる存在が一人いた。

 

「……なら、結梨はまだ助けられるんだな?」

 

それは隼人であり、少しずつ海の方へ歩を進めて行ってる。

 

「ああ、縮地持ちなら可能じゃが……。待て、お主まさか!?」

 

「そのまさかだよ。俺が迎えに行ってくる」

 

方法があるならやる──。一刻を争うとは言え、何の迷いもない言動に全員が驚いた。

 

「ち、ちょっと待て。お前ぶっつけ本番だろ!?」

 

「ぶっつけ本番ですけど……()()()()()()()()()()()()()()()よね?」

 

──コイツ不安とか無いのか!?余りにも迷いが無いそれをみて、同じ縮地持ちの梅が驚愕した。

誤解無きように言うなら、隼人は別に不安が無いわけではない。ただ、諦めることへの拒絶感が()()()()()()()()()()()勝っているのだ。

 

「でも……隼人くん、どうして?」

 

「アリスが俺を見つけた時と比べて、助けるのが難しく無いからだよ」

 

隼人が助かったのは、それこそ奇跡に近しいものであり、どれか一つでも欠けたらその時点でアウトだった。だが、結梨の場合はタイミングさえ間違え無ければいいので、それがこの答えを出していた。

ただ、一つ間違えては行けないのはタイミングで、早すぎず、遅すぎず。最良のタイミングで飛び出す必要がある。

 

「隼人さん、あなた……!」

 

「アリス。お前への恩返しをするよ……今日、ここで!」

 

楓が制止しようとするもその時は来てしまい、一言呟いた隼人はそのまま走り出していった。

彼女の手が空を掴む直後、隼人は縮地で加速しており、自分が走った道に水しぶきをあげさせながら一気にヒュージの所へ接近していく。

 

「……何が無謀なことはしないですの?」

 

「……楓さん?」

 

「今そのやっている行動の……どこが無謀じゃないんですの!?」

 

──自分のやっていることを振り返りなさいな、このアホンダラっ!以前の反省はどこに行ったんだと言う、楓の怒りだった。




結梨の生死は次回です。


以下、解説入ります。


・如月隼人
まあ、コイツが命の危機に陥った人を放っておく訳ないよね。そんな訳で縮地発動して突撃。
まさかの一日で数人分の飯を提供。味自体は比較的好評だった様子。


・一柳梨璃、一柳結梨
二人とも野宿では無く、しっかりとした寝床で寝れたので、コンディションは良好。特に結梨は、この一日でコーヒーが気に入った。
アリスのおかげで、結梨は人の意識がより強固になっていた。


・白井夢結
今回は『隼人とその仲間・知人』では無く、『百合ヶ丘のレギオン』として迎えにきている為、代表はこの人。二人が逃げ切り確定で最も安堵してたりする。


・吉村・Thi・梅
隼人の行動力にビビったお人。
恐らく、やる意思があれば彼女も隼人のような無茶はできるだろうけど、今回は隼人が迷わな過ぎた。


・楓・J・ヌーベル
飯云々は特に言及されて無かったけど、アニメ8話考えると絶対食う暇無かったよな……と思いながら今回の展開に。
以前の反省云々の意味が隼人とずれており、お怒りに。

今後アニメ版準拠の展開はどのようにしてほしい?

  • 今みたいな感じで大丈夫
  • もうちょい細かめが嬉しい
  • サクサク気味がいい
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