アサルトリリィ -RED THISTLE-   作:ブリガンディ

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第26話 振替

時は遡って一日前──隼人が意識を失って倒れている状態の時である。この日から梨璃の一週間の収監が始まり、隼人が起きるのを待つ時間となっていた。

事態が事態だったので、今週の授業は臨時休業となり、リリィたちは梨璃が出てくる日と、隼人が目覚める時を待ちながら退屈と友達になっている。その為、暇でしょうがないリリィの一部は自主的に訓練をしていたりもする。

 

「具合はどうかしら?」

 

「もう平気。それよりも、お腹空いちゃった」

 

実は、結梨も昨日はガーデンに戻ってから寝込んでしまっており、夕食は取れていない。マギの枯渇による疲労困憊が原因だった。

ただ、それ以外はどこも支障は無く、寧ろここまで元気にいられる姿を見て夢結たち一柳隊のメンバーは安堵する。

一応、梨璃のところには夢結と結梨の二人で顔を出しており、梨璃は少しの間我慢して待つ旨を、ちょっと疲れが残っている笑みと共に返していた。

 

「でしたら、用意しますね。少し待っていて下さい」

 

今この中で料理ができるのは神琳だけである為、彼女はレギオンに宛がわれた部屋を後にし、準備を始める。

 

「後は、あやつがどれくらい寝込んでるかじゃの」

 

「梨璃が帰って来る前に起きればいいね」

 

これには当然、皆で梨璃を迎えたいからがあり、それに反対する人はいない。

そして、問題は何日で起きるかになるが、こればっかりは本人ですら分からないだろう。

 

「私、隼人にお礼言えてない……」

 

「ならそれは、起きた時忘れずに言いましょう」

 

隼人の独断専行に近い救助行動への文句は、結梨と梨璃以外の一柳隊メンバーが考えていることであり、結梨としてはこっちである。

大事なことが言えないまま終わるのは嫌であり、これが理由で結梨は落ち込んだ様子を見せていた。

 

「あれ?そう言えば、楓さんはどちらに?」

 

「隼人のところに、行くって言ってた……だから、いるなら病室だと思う」

 

実は、収監されている梨璃と寝込んでいる隼人を省き、楓だけはこの部屋に来ていない。昨日の段階で相当お怒りだったので、恐らくはなるはやで言いたいのかも知れない。

 

「お待たせしました。こちらをどうぞ」

 

「ありがとうっ!いただきます」

 

「(隼人君。結梨のこと、本当にありがとう……)」

 

──お礼と文句を言いたいから、早く起きて頂戴ね?結梨も一緒にいる何気ない日常は、隼人の手によって守られたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「……」

 

「(昨日からずっと、この顔をしていますわね……)」

 

同じ頃──楓は病室で隼人の傍にいた。まるでやり切ったかのように満足した表情で眠る彼は今、ちょっとつついたり、ゆすったりしても起きる気配はない。

ヴァイパーを討った直後とかだったらきっと好意的に受け止められたのだろうが、今は心境が心境でそうもいかなかった。

 

「全く……何が無謀なことはしないなんですの?」

 

昨日も自室で呟いてしまったが、これを聞きたくてしょうがない。

確かに、あんなことをしなければ結梨は助けられなかったし、その結果梅と他のリリィが続いてくれたので結果大団円に終わったのだが、それとこれとは話が別だ。

また、何も聞きたい話はこれだけにはとどまらない。楓は聞きたい話がまだまだ山ほど残っている。

 

「ヴァイパーを討ったら何をしたいか……それは決まりまして?」

 

初めて一緒にヴァイパーを撃退した帰りで聞いたこと──。その答えはまだ明確に聞けていない。

強いて言えば候補が上がったとは教えてもらえたが、残念ながら今回求める答えとしては不足している。

 

「わたくしの方での注文はしますの?するなら内容はまだ聞けてませんのよ?」

 

これも結局、最終的な回答は聞けていない。大体予想は着くが、それでも要望に沿わないのなら意味がないのである。

実際、誘って見たらかなり反応が良かったのは正直言って嬉しかったので、少し楽しみにしていた。

 

「そりゃ、わたくしだってすぐに決めろとは言ってませんわ?けれど、その答えが聞けないのは……っ……嫌でしてよ?」

 

戦場に赴く前に口約束したり、当人の想いを聞いた後、その答えを聞けぬまま別れてしまったり、その先の未来を一緒に見れない悲劇と言うのはよくある話だ。

今目の前にいる隼人のように、不幸な出来事からどうにか真っ当に戻ろうとして、その途中で散ってしまうリリィも当然いたりする。普段であれば、その不幸の一つとして片づけられた筈だ。実際、人前では努めて冷静に振る舞うことで、無理矢理取り繕うことが出来ている。それでも少々怒りの様子は出ていたが。

ただ、今回は何故かダメだった。彼以外誰もいないので実質的一人っきりなのもあるが、今意識を失っているだけで、死んでいないにも関わらずだ。

 

「あなたの好きな……コーヒーを飲みながらでいいですから……っ……聞かせてくださいな……」

 

──ダメ。今日のわたくし、止まれませんわ。気がつけば涙が止まらなくなり、すすり泣いていた。こうやって問いかけては涙を流すのを、明日まで繰り返すのであった。

そして翌日、彼も目覚め、安堵すると同時に怒りと悲しみが同時に出て、あの口約束まで漕ぎ着けたのである。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「わざわざみんなで来てくれたのか……ありがとうございます」

 

そして現在──。隼人が目覚めたことを楓が一柳隊に連絡し、全員が病室へ赴いたところである。

隼人は今日一日どうするんだと聞かれれば、一日安静を言い渡されているので、退院後ガーデンのリリィたちに顔を出した後、部屋で大人しくするつもりらしい。

 

「しかしまあ、大体二日も寝てたとは……通りで腹が減ってたわけだ」

 

「普段より多めの食事にされているのに、あっさりと完食しちゃいましたね……」

 

起きてすぐに貰った食事を普段以上の速度で完食し、その理由に納得する。

ここから夜までは我慢するが、満腹感は無かったので、恐らく今日は多めに食事を取ることになるだろう。空腹は命の敵である。

なお、二水が呟いたので聞いてみると、どうやらこの食事、男子である自分に合わせて栄養バランスを維持したまま増量されているらしい。それでもあっさりと平らげたのは、余程空腹だったのだろう。

 

「(部屋に戻ったらコーヒー飲むか)」

 

真っ先に飲みたいものと言えばこれだ。これを機に、誰かに勧めてみるのもアリかも知れない。

──誰からがいいだろう?そんなことを考えてると、結梨から声をかけられた。

 

「ありがとう、隼人」

 

「……結梨?」

 

「私がこうしていられるの、隼人のおかげだから」

 

「……ああ。どういたしまして」

 

──だから、ありがとう。ニッコリと満面の笑みを浮かべる結梨を見て、隼人はその頭を撫でながら礼の言葉を受け取る。

この時若干目元が潤んでいたのは、自らの歩んできた道を肯定され、嬉しかったのが大きい。

──香織、改めて……俺が爺さんになるまでさよならだ。心の中で、隼人は挨拶を送った。

 

「梅様、俺の無茶をフォローしてくれてありがとうございます。おかげで、こうして結梨を助けられました」

 

「お礼を言いたいのはこっちもだ。隼人が迷わなかったから、梅も行けたんだからな」

 

恐らく、どちらか片方でも欠けていたら結梨と共々水面にサヨナラだっただろう。

両方があったからこそ、始めて結梨を救うことができたのである。

一先ずお疲れ様──と言うことで、この話は終わりとなった。

 

「そう言えば、俺が梨璃に顔を出せるのって……いつからだ?」

 

「来週に収監が終わるから、早くてもそこからじゃ」

 

暫く梨璃に会うのが無理なら、それは仕方ないと隼人は割り切った。ただ、何もしないで待つのもそれはそれで退屈であるし、時間が勿体ないとも思う。

 

「何かできそうなことを考えるか……」

 

──何がいいだろうな?後で考えて見ようと隼人は思った。

 

「それなら……明日とかでもいいから、みんなで考えるのは……?」

 

「あら、いいですね。でしたら、午前中に話してしまいましょうか」

 

雨嘉の妙案に神琳が乗っかり、それなら明日の午前はレギオンの部屋に集合だと梅が提案し、それも全員が賛成し、夢結が締めくくる形で決定する。

そして、隼人の着替えを持って来てもらえたので、他のメンバーは先に部屋を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

{ 第 26 話 }

 

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激動を終えて

──×──

something that can be done during a short rest

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「さて、これから何をするか決める前に……隼人君。あなたに、私たちから伝えておくことがあります」

 

「……?伝えておくこと?」

 

──一体何ですか?と、問おうとした隼人だが、その言葉は喉から出そうで出なかった。

何しろ、結梨、楓を省いた七人が顔は笑っている、しかし目が笑っていないと言うとんでもない状態で彼を見ていたからである。

──いやいや、何がどういうこと?説明を求めようと全員に目線を送るが、結梨は何のことか分からずに首を傾げた。

 

「要するに、言いたいことがあるのはわたくしだけではなくてよ?」

 

楓の答えはこれと言いたげな言葉に、隼人は概ね事情を察した。大体自業自得のようなものである。

 

「取り敢えず、一人で何でもやろうとするな」

 

「ああいうのをやるのはいいけれど、戻る為のケアはしておきなさい」

 

「それが無いなら、今度は私たちで止めるから」

 

「ひやひやしたんですから、お願いしますよ?」

 

「他の人と一緒に解決する──と言うことを覚えてください」

 

「必要なら、いつでも手伝うから……ちゃんと言って?」

 

「目の前で死なれるのを、ここの者らにばら撒かんようにせい」

 

梅、夢結、鶴紗、二水、神琳、雨嘉、ミリアムの順にそれぞれ言いたいことを言っていき、思わず隼人は気圧された。

こればかりは自分が原因である為、素直に詫びて了承することにする。これ以上面倒ごとにしないための措置である。

 

「(しかしまあ、暫くは大事にした方がいいな)」

 

退院したばかりだし、この前結梨を助ける為の実質無計画(ノープラン)突撃もしたしで己を戒めておく。

しかしながら、あの施設では無力から鍛えあがった姿を見ていることから信頼──。こちらでは自らの方針による無茶を見ていることから心配──。読み仮名にして一文字しか違わないが、意味合いは大きく違う。

実際、百合ヶ丘のリリィたちも自分が退院した際に、喜びと心配の情を覗かせていたので、きっとそういうことだろう。

 

「さて……言いたいことも言ったし、そろそろ決めましょうか」

 

こうして話合いが始まり、あれよコレよと色々案が出てきて、一人でできるもの。複数人でできるものとそれぞれを用意する方針はすぐに固まる。

 

「(何がいいかな……場所が場所だし、大きめなものはナシ。となれば軽いなものだな)」

 

そうして、一人でできそうなもので自分にできるものを早速見つけた隼人は、その手のカタログを読み漁り始める。

ちなみに、場所の配慮等もしっかりしており、持って行っても大丈夫そうなものをメモに残して候補を絞っていく。

 

「よし。この辺だな」

 

候補を絞り込み切ったので、後はどれがいいかを選択することになる。

それさえ選べば材料の買い出しと、余裕があれば練習に時間を割けるので、後が楽だ。

 

「そう言えば、隼人。外出許可は控えるように言われて無かった?」

 

「それはそうだけど……一ヶ月経ったしもういいと思う。後、あの無茶をしたから由美さんのところに顔を出しておきたい」

 

いざという時、右腕の不調でCHARMが動かせなくなったらそれはそれで困るのだ。そう言う意味でも、隼人は外に出ておきたかった。

そんなこともあって早速外出許可を取りに言ったら、それは見事に通り、明日で自分のやることを全て済ませる算段を立てることにした。

 

「(そう言えば、結梨のCHARMがダメになったんだよな……)」

 

昨日の段階で、結梨のCHARMは修復不能なレベルで壊れてしまっており、新しく取り寄せた方が楽だと言う話が出ているのを思い出し、後で百由のところに顔を出しに行くことにした。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「ええ。この苦さなら問題ありませんわ」

 

「やっぱりあれ苦い方だよな……」

 

その日の夜──。数日ぶりに、隼人は楓と自室でコーヒーを飲んでいた。

一番苦みの弱いものを選択したのだが、以前も問題なかったように、楓は無糖で口に付けている。

 

「今は、特に問題なしですの?」

 

「うん。最大許容量が増えてるのもあるかもしれないけど、何ともないよ」

 

一応、動かす分には何も問題はない。右腕のナノマシンを入れ替えた恩恵が出ているかはさておきとして、それは確かなのだ。

後はマギを込める分に問題ないかが気になるところで、それだけは忘れずにやっておきたいことである。

 

「何事もないといいですわね……」

 

「ああ。そう思いたい」

 

右手にそっと触れながら呟く言葉に隼人も同意する。そうすれば由美たちも楽できるし、何なら自分含めて多くの人が安心できる。

そう願いながら、右手に触れる楓の手に、自分の左手を無意識に乗せる。

 

「「あっ……」」

 

少しして二人揃って我に帰り、互いに頬を朱に染めて見合わせながら暫し沈黙する。

両者共にいきなりやったことなので、お互いを水に流すことでこの件は終了とした。

 

「ああ、そうだった……一つ、お前に伝えておくことがあるんだ」

 

「あら、どうしましたの?」

 

内容としては、自分がこの先何をやりたいかであり、楓は思ったよりも早かったなと思った。

ただ、それはそれで気になっているのは事実である為、先を促すことにする。

 

「俺、飯を作る仕事をやるつもりなんだ……だからまあ、リリィとしての戦いが終わったら修行と勉強だな」

 

「なるほど……何か、決めになるものはありまして?」

 

理由は自分が復讐者となる前に抱いた夢の欠片を思い出したからであり、今度こそそこに向かって走ろうと思ったからである。

もう一つは、仮に香織の夢を──。と言って医者を目指したとしても、きっと彼女は喜ばないと確信したからだ。

過去と他人に囚われている訳では無く、在りし日のことを思い出して自分で決めたのなら、何も反対する理由は無かった。

 

「でしたら、その資格を得られることを祈りますわ」

 

「あっさりと肯定されたな……でも、ありがとう」

 

恐らくは今までが彼女の基準でストップをかけたい事柄だったのは理解できた。

それでも、人に肯定されると言う嬉しさはやはりあり、隼人はリリィとしての戦いが終わった後にやることを固めた。




Q.リリィの戦いを終えた後、隼人の選択は何故?

A.過去と香織の死を乗り越え、自分の道を選ぶ決心がついた。

以下、解説入ります。

・如月隼人
流石に全員に言われれば反省もする。
これからは、取り決めした通りの行動していく。恐らく、必要なら手伝ってくれる人と一緒に行動するだろう。(ただし、緊急時は別)
結梨のCHARMに関して何か対応策アリ……?


・一柳結梨
ようやくお礼を言え、これにて自分の胸の内は解決。
CHARMに関しては百由達を信じるしかない状態。


・一柳梨璃
現在、原作通り収監中。ただし、原作と違って一人狭い場所で一人悔いながら過ごす──何て地獄のような環境ではない。
疲れていたような笑みは、気が気じゃない逃亡状態と、先日のヒュージとの戦闘が原因。


・楓・J・ヌーベル
隼人と飲むなら、紅茶よりコーヒーの方がいいんじゃないかと思いだしている。
彼の今後やりたいことに関しては、復讐者になる前の状態に起因しており、その辺の心配が必要なくなって安心した。


・その他一柳隊の皆さん
楓以外にも、この子らも隼人の無茶ぶりに文句があった。
それでも、結梨は隼人の無茶が無ければ救えなかったので、そんなに多くは言っていない。次やったらもっと言い分が増える。

今後アニメ版準拠の展開はどのようにしてほしい?

  • 今みたいな感じで大丈夫
  • もうちょい細かめが嬉しい
  • サクサク気味がいい
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