アサルトリリィ -RED THISTLE- 作:ブリガンディ
今回、無茶苦茶悩んだネタがあります。
追記
どうやらアンケートがしっかり表記されていなかったようなので、修正しておきました。
梨璃の収監が終わってから翌日の放課後──。一柳隊は全員でラウンジに集まっていた。
彼女が今度こそ結梨を守れるように──と言う意思の下に訓練したいと言ったのもあるが、動く前に意識確認も必要だったので、とある内容を筆記試験方式で確認させてもらうことに決める。
「採点が終わったわ。結果はこれね」
「うぅ……あと少しだったのにぃ……」
その内容とは、対ヴァイパーの訓練の時にもやっていた特定の状況下においてどのような行動を取るかの選択であり、これを梨璃の心境に合わせて問題を調整したものである。
梨璃の願いに応じて発案したのが夢結、試験内容の参考を用意したのが隼人。そして試験内容を編集して完成させたのが楓であり、これを一日で完成させた。
今回の試験は90点以上を合格として設定し、ぶっつけ本番でやってもらったのだが、その結果は86点。後二問正解で合格となっていた。
「まだ一回目ですもの……それなのに、これだけ取れているのは流石ですわ♪」
「急ぎで対応したい時ほど落ち着いて動く……それが分かっている証拠だな」
次やれば合格するだろうな──と、思いながら他のメンバーも回答と問題内容を確認する。
そうして見ていると、次は編集元がどうだったかかが気になった人が出てくるので、隼人が元々持っていた問題内容を持って来て貸渡した。
「思ったんだけど……隼人が無鉄砲そうに見えて、その辺の管理しっかりしてたのって……これの影響?」
「だと思います。だからこそ、こちらに来るまで単独行動でも平気だったのでしょう」
鶴紗の疑問に、的確な評価と一緒に神琳が肯定を返す。
実際、楓が最初に見た時もこれは見事な内容だと感心しており、隼人のギリギリながら意外に徹底できてたリスク管理の理由に合点が行った。結梨を助けに行ったアレは緊急事態に想定外が重なったので例外とする。
「それにしてもこの内容……ヴァイパーを意識しているだけあって、接近戦を重要視していますね?」
「二次被害を出さない為……だね。だから、隼人もそうなった……実戦もあるけど」
「確かに。これをやっていたら、狙撃手に適性のあるリリィ以外はそうなりそうじゃの」
ヴァイパーに意識を向けさせる。犠牲者を減らす。なるべく一対一。これらの条件が合わさり、隼人は接近戦を得意とするようになった。一対多もあるが、それもヴァイパーが絡んでいる場合を想定したケースが多い。
遠距離もできないわけではないし、雨嘉との技術交換で腕前も上げてきているが、それまではアリスや玲と比べ大分下手だったのを記述しておく。
理由としては彼女らが遠・近問わずバランス良く戦えるようにしたのに対し、隼人が接近戦重視だったのが大きい。
「……これ、私もやっていい?」
「結梨ちゃんも?」
「構わないわ。なら、次は結梨も受けてもらいます」
先週のこともあり、夢結は即断で対応したが、これに反対する人はいない。
この為、結梨に対してこの試験の目的を簡単に説明し、後日ぶっつけ本番で受けてもらうことになる。
「あっ、そうだ。引っ掛け問題入れてもいいんじゃないか?」
「……免許の筆記試験みたいにですか?」
梅の一言で当時の内容を連想しながら隼人が問いかけると、それに対して肯定が帰ってきた。
確かに引っ掛け問題があれば、それに掛からないことが正しい知識を持っている証明となる為、全然いいと思える。
「そうなりますと……そのままの筆記では無く、引っ掛けの部分は二択問題の方がよろしくて?」
「確かにそうね。問題の文が合っているかの成否を答える方式に変更しましょう」
「楓。免許試験用の問題集残ってるんだけど、使う?」
「是非。お願いしますわ」
免許問題の引っ掛け方は、結構いやらしいものだと隼人は記憶している。実際、試験を受けたことのあるリリィなら全員が頷いてくれるだろう。
そして方針が固まり、楓はその参考資料を用いて新たに問題を作り直す作業を開始することになる。
「(梨璃。あなたを死なせは……いいえ。
──だから、あなたはそのまま進みなさい。楓と隼人が席を立って移動し、その他のメンバーで問題に関してのあれこれを話している姿を見ながら、夢結は心の中で激励する。
恐らく、後二回もしないで梨璃は試験を合格するはず。であれば、次は実戦方式訓練でどうするかを相談するべきだろう。
「そう。それでいいんだ」
「……えっ?」
久しく聞いていない声が聞こえ、夢結はそちらを振り向いてみる。
そこにいる銀色の髪を持ったショートヘアーの少女は、「気づいたかい?」とちょっと嬉しそうに反応してから、話を続ける。
「彼女らをボクたちのようにしない為には、君や、周りの人で支えるのが一番だ」
「お姉……さま?」
振り向いた先には、自らのシュッツエンゲルであり、二年以上前に故人となってしまった川添美鈴の姿があった。
誰か気づいているのかと思えば、誰も気づいている様子は無い。こちらに声を掛けて来た梅の目線を見てみるが、彼女を捉えている様子は無い。
「(……どういうことかしら?)」
詳しいことは分からないが、調べる必要は出てきた。
その為、早速理由をつけて一度席を外し、その後戻ってきて見るが、先ほどいた場所に美鈴の姿は無い。
だが、自身が移動してラウンジを離れるまでは全く同じ場所にいた為、謎が深まる結果になった。
* * *
「よし。これで完成ですわ」
その日の夜──。明日に向けた問題を無事に完成させ、コピーも問題ないことを確認した楓が自室で満足気に頷く。
梨璃に引っ掛け問題の意地悪をするのは、別段迷ってはいなかった。彼女の為として、ここは自らの心を固めて作り上げて見せた。彼女が誰かを守れるように手助けする──。それが、今は必要だからだ。
終わった後は連絡をくれればコーヒーを準備すると隼人が言っていたので、お言葉に甘えて連絡を入れ、移動の準備を始める。
「(いっそのこと、実家の近所に彼の住処を用意できないかしら?)」
今現在、あの施設以外帰る場所を持っていないが、もしかすれば自分が名前と顔を知らない少女と一緒に過ごすかも知れないと言う隼人の話を聞いてから、暫くして思いついた案がこれである。
確かに距離自体は結構あるかも知れないが、家の財力を使えば十分に可能で、彼自身が一人暮らしに挑戦する気があれば呑んでくれるだろう。
勿論、隼人が住みたいと言うこと前提であるし、彼が住める場所を見つけたならそれでいい。ただ、ガーデンを去った後もちょっとだけでいいから、会いやすくできないだろうか?と言う発想から出た考えである。
「(……あら?わたくし、いつの間にか考えの比重が……)」
──梨璃さんより、隼人さんに向き始めてまして?ようやく気づいた楓だが、今までのことを振り返ると想像以上に隼人へ肩入れしていた自分がいた。
具体的にどの辺りから?彼のどんなところに?色々疑問を考えてみる中、後者の理由はしっかりと出てくる。一本筋の通った芯の強さに感心したりもしたが、それ以上に放って置けない部分が勝って意識したのはある。
その最中で人らしい──少年らしい部分を取り戻していく過程等に惹かれて行ったのは事実だ。が、前者の方は全く分からない。本当に気づいたらいつの間にかである。
「(わ、わたくし……一体、どうしてしまいましたのっ!?)」
あれだけ梨璃に運命を感じていた自分が、気づけば隼人への意識が非常に強くなっている。しかも、これが今まで全く自覚が無かったのだから尚更である。
そして、ここに気づけば早く、楓は頭を抱えながら顔を真っ赤にして暫し混乱の様子を見せる。
だが、それも冷静に自分がどこでどんな経験をし、何に興味を持っていたかを振り返れば自ずと納得もできた。何しろ彼と出会ってから半年も経っているのだ、変わる為の時間は十分足りていた。
「ええ。そう言うことですのね」
──これも、わたくしの気持ちですから。自分を認めることが出来た楓の表情は非常に晴れやかだった。
確かに梨璃のことも大切だ。しかしながら、隼人のこともまた大切。だったら無理にどちらかを否定する必要は無い。
自らがアプローチを掛けるのがどちらなのかと言う話であるが、これも最近の動向を考えれば逆転しているし、
「(であれば、何がいいか……それを考えてみましょうか)」
移動の最中──自らの気持ちに気づき、何をやるべきかを決めた楓の足取りは非常に軽かった。
* * *
* * *
「誰か異性を意識してるか、か……」
同日の夜──隼人は楓に問われたことを思い返してみる。誰かを名指しして言うことこそ流石にしなかったが、一人いると答えてはいる。
まあ、誰かと言われれば楓なのだが、やはり当の本人に言ってしまうとどうなるか分かったものではないので、珍しく隼人が曖昧に回答してしまったようにも見える一幕だった。
ただ、楓自身はならば自分がそれを超えるように──或いは、より確固たるものにする為努力するように決めた目を見せたので、悪いわけではないのだろう。
「(相手によっては回答を変えるべき……?いや、変に噓をつくのもよくないのか……)」
別段、楓以外に意識している異性はいないし、今回のことも遠回しとは言え、正直に話しているだけでやましいことは無い。
寧ろ、変に噓をついて後々大変な想いをするくらいなら今回のようにするのが一番である。
「楓がそうやってアプローチを掛けて来た……つまり、今すぐじゃないけど、俺はどこかでそれに答えなきゃいけない」
──曖昧な回答をするのはダメだ。少し遅くなってでも、ちゃんとしたものを出す。自分にできるのはそれだけだと隼人は定義する。
であれば、自分が今楓に対してどう思っているかを考えてみると、以外にも、いいものばっかりが上がってくる。
今まで残念要素と思っていた梨璃への執着も、よくよく考えればあれは一種の愛嬌みたいなものだろうと考えられるようになっており、こうなるといよいよ自分が彼女の気持ちに応えたいと思えるか否かだけになっていた。
「(じゃあ、それをどうするか……しっかり決めて行こうじゃないか)」
どんなに遅くとも、ガーデンを去るまでに決める。それを決意した隼人はもう迷わなかった。
こうなれば、自分がこの時どう対応すればいいのか──それを考えてみる方向にシフトする。
「(感情への疎さ……は、最低限楓に対してだけは治そう。後々楓のアプローチに応えられなくなる……)」
今まで分からなくていいやと思っていた隼人だが、始めてこの自身にある難所と向き合う心持ちが出来た。
* * *
「(そう……アレはお姉さまでは無い)」
翌日の放課後──。昨日と同じくラウンジに移動中の夢結は、昨日偶然ラウンジで姿を見た時、その後自室にいてまた見た時のことを踏まえて出し切れなかった答えを出す。
何故二回目が必要だったのかと言えば、一回目の会話した時間が短すぎたのだ。その為、自分が錯覚しただけだと思っていた。
だが自分のいるところに二回も突然に現れ、話しかけてきたということは、何かが自分にみせている幻であると結論付けられる。
その後も、百由からダインスレイフのことに関する説明を受けている最中に一度出てきたが、恐らく彼女は見えていなかった可能性が高い。だが、可能性だけで確証は無い。
「(なら、どうして私の前に……?)」
そうなると疑問はここになる。自分の精神が疲弊しているのか、はたまた疲労が取り切れていなくてこうなっているのか。
前者は美鈴のことを今でも引きずっている証拠になるので分からないわけではないが、後者は流石にないと言える。
或いは、別の何かが自分に揺さぶりを掛けている可能性も高い──が、それが何かまでは全く分からない。
「参ったわね……これでは解決のしようもないわ」
現状打つ手がないことに気づいてしまった夢結は頭を抱えるが、仕方ないことは仕方がない。であれば、自分にできることを欠かさずやっていくが現状は正解だ。
そして、昨日言われた「自分たちのようにはしない」を実践するのであれば、まずは梨璃と結梨が今回の試験でどんな結果を出すかをしっかり見て、然るべき対応を取るところから始めることにする。
「お姉さまっ!」
「……梨璃?」
そして移動中、授業を終えた梨璃が自分を見つけて声を掛けて来た。
移動するならどうせだし一緒に行きたいと言う、何とも可愛げのある素直な感情表現には心が和む。穏やかになった気分になる。
それならば一緒に行こう──。そう言えば梨璃が喜ぶ。そして、今度こそ移動を始めようとした時、再び
「(……また!?一体何故……いえ、そもそも梨璃には見えているの?)」
もし、自分にしか見えていないなら、何かが自分に揺さぶりを掛けに来ているのだが、それの原因は分からない。また何かを調べる必要があるだろう。
梨璃が懐へ入り込むのが上手いことを語り、原因は元より上手いのか、或いは相手にそうさせるのかと疑問を提示する。
「カリスマ持ちなら後者かな?」
「(周りには私たち以外いない……せめて、誰かいれば良かったのだけれど……)」
極力話を聞かないようにしながら考えるも、非常に判断材料が少ない問題点が出てきた。
余り時間を掛け過ぎればこちらに余裕が無くなる。ならば、余裕がある今のうちに判断材料を増やすしかないのだろう。
「……お姉さま?」
「ねぇ、梨璃……」
──あなたの後ろに、美鈴お姉さまは見えてるかしら?何を言ってるんだと言われそうだが、聞いてみた──否、聞かずにはいられなかった。
聞いた瞬間にその幻影は姿を消した。自分を揺さぶって満足だったのか、自分以外に知られるのを良しとしなかったのか。原因は不明だが、今この場で悩まされることは無くなる。
「いえ、いませんね……もうどこか言っちゃったのかな?お姉さま、美鈴様って以外に恥ずかしがり屋だったんですか?」
「えっ?いえ、そう言う人では無かったわ」
自分の言ったことを別段おかしいと思った様子もなく、彼女の人物像を聞いて来た梨璃に対し、一瞬目を丸くするも、それにはしっかりと答える。
唐突に普通の会話になりそうな空気だが、それはそれでいい。少しでも気を紛らわせるならそれでいい。自分が誰かに話して見た結果が安らぎの時間なら、ありがたく受け取ろうと思えた。
「それはそうと、試験の準備は大丈夫かしら?」
「はいっ!それはもう、バッチリです!」
元気いっぱいに答える梨璃の回答に楽しみにしている旨を返しながら、ラウンジにつくまで他愛ない話を続けていく。
そして見事、梨璃は今日の試験で合格してみせ、夢結を感心させるのであった。
「(さて……何から教えるべきかしら?)」
残念ながら結梨は不合格だったので、もう一回試験を受けてもらうことになるが、梨璃はこれから実戦方式で教えて行くことになる。
この辺りは戦術に知恵のある人、或いは何かを想定した訓練を知っている人に頼るのがいいだろう。
「(あの幻が、私に何をさせたいのか。何を見せたいのかなんてきっと分からない……けれど、例え何をしようともみんなを守る)」
──もちろん、生きて戻ることを前提で。この決意に自己犠牲が薄まっていたのを、夢結が気付くのは後々になるのだった。
Q1.楓に恋心を気づかせた(抱かせた)理由は?
A1.隼人との流れ的に、そろそろいいかなと。どうしようどうしよう悩んでたけど、思いっきりやってしまう舵取りに。
Q2.じゃあ何で隼人は気になる程度?
A2.今後まだ展開を切り替えしやすいようにな措置もあるが、そもそも隼人が人の……特に、異性の情に対して鈍い点が治り切っていなかった。
当初30話くらいで終わる予定でしたが、付け足しとかやってたら5話分くらい超えそうになりました……w
以下、解説入ります。
・如月隼人
楓のことは気になるレベル。ここから恋心になるのは、今後の関わり方次第。
問題の参考資料の提供者。参考元と訓練で復讐心等による暴走を抑えた実績もある為、問題なく採用された。
楓の件もあり、相手の情への疎さに対する改善を視野に入れた。
・一柳梨璃
無事にこの話で試験合格。これのおかげで、焦る気持ちは収まった。
今度こそ大事なものを守れるか?それはまだ分からない。
・白井夢結
結梨が生存しているおかげで、心境が原作よりマシ。
とは言え、現在辛うじて小康状態である為、油断はできない。
・楓・J・ヌーベル
遂に(隼人に対しての)恋心を自覚。こっちは無事に実るか……?
今までが梨璃に傾いていたのもあり、流石に動揺。それでも気持ちの分析と整理はできた。
隼人の参考元を編集した試験の問題作成者。結梨の分はまた今度作る。
・一柳結梨
以前のヒュージ戦での反省から、試験を受けることにした。
結果はまだ実らず。これから勉強していくことになる。
最後に、元々この小説はアニメ本編のみをやって終わりにするつもりでしたがやって欲しい声が多いなら、ラスバレ編の第一章と一部イベントシナリオをやってもいいかなと考えています。
その為、よろしければアンケートの協力をお願いします。アニメ本編完結部分まで時間を取って、その時やって欲しい票が多ければプロット組みからやろうと思います。
ラスバレ編は読みたい?
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