アサルトリリィ -RED THISTLE-   作:ブリガンディ

3 / 51
前回の後書きみたいな解説は自分で読んでても分かりづらいので、やり方を戻そうと思います。


第3話 最終攻撃

「……百合ヶ丘の近くに歴戦個体(レストア)が出現?」

 

隼人が百合ヶ丘周辺の調査に赴いてから一週間と一日が経った後、ヒュージの情報を伝えるモニターを見て由美が眉をひそめる。

レストアと呼ばれたヒュージは、損傷を受けながらも、ヒュージの巣と呼べる場所である『ネスト』に帰り、傷を癒して強くなった個体を指す。正式にはレストアードと呼ぶが、後ろの二文字が長いからと省かれるのが専らだ。

こう言ったヒュージは戦場から生き返って経験値等を積んでいる都合上、他のヒュージよりも強い。

と、これだけなら百合ヶ丘のリリィに協力する口実をどうしようかと悩む所であったが、何の躊躇いも無く隼人を送り込める理由が現れる。

 

「……おいでなすったわね?ヴァイパー」

 

ヴァイパーがそのレストアの存在する場所へゆっくりと接近中であった。

隼人は今、自室で読書でもしながら待機している状態である為、まだ間に合う。

 

「隼人君、聞こえるかしら?」

 

『聞こえます。どうしました?』

 

「百合ヶ丘の近くにヴァイパーが接近中よ。出撃できるわね?」

 

『いつでも行けます。現場に急行。ヴァイパーの撃退に向かいます』

 

CHARMを取って出撃するだけなので、隼人はそのまま現場に急行する選択が取れる。

今回が単独撃破の可否を決める最後の攻撃となる。その為、気構えはバッチリだった。

 

「ヴァイパーの方が速い場合、リリィを奇襲から守る必要があるわ。移動範囲の都合もあるけど、今回()『レアスキル』、『縮地』の準備も忘れないで」

 

『了解。準備しておきます』

 

リリィはマギを扱うことができるのは共通しているが、その中でも能力の発現が著しい──得意分野と呼ぶこともできる物をレアスキルと呼ぶ。

当人の生き様が反映されると言われており、一人につき原則として一つしか有せず、その能力をどれにするか選ぶことはできない。

現在確認できていたのは16種類であるが、新たに発見された場合はそれを学会に資料を提出し、その後名を決められるらしい。

隼人のレアスキル──縮地は既に確認できているものの一つで、これは消えるようなスピードで移動を可能にする高速移動スキルで、物理世界で速く動くスキルなので回避、攻撃共に活用できる。

尋常じゃない機動力で攻撃にも防御にも活用できる器用なスキルであり、隼人からすれば非常に嬉しいものとなっている。

連絡事項を全て伝えきったので、隼人に移動中だけ自身の位置情報を出して欲しい旨を伝えてから通信を一度終了し、由美はレストアとヴァイパー、そして隼人の位置を凝視する。

 

「(この位置……ヴァイパーより先にレストアと接触する……)」

 

──なら、ヴァイパーの被害は抑えられそうね。三者の動向を見て由美は一安心つつも、気を抜かずに監視を続ける。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

{ 第  話 }

 

最 終 攻 撃

Final Attack

 

 

命運を分ける戦い

──×──

The wheel of fate begins to spin

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

『もうすぐでレストアと交戦距離に入るけれど、何か妙な反応がレストアに取りついているわ。留意しておいて頂戴』

 

「……妙な反応?」

 

『ええ。まるで、リリィが内側のマギを暴走させているような感じよ……『ルナティックトランサー』持ちが暴走している可能性があるわ』

 

「了解。こっちも現場に着いたら確認します」

 

由美の情報は有難く、自分がどう動けばいいかの判断材料を増やせた。

今の会話にあったルナティックトランサーも、隼人の持つヘリオスフィアと同じくレアスキルの一つで、こちらはヒュージに近いエネルギーを人の身に宿すことで、精神は正常なまま狂戦士化(バーサーク)状態で戦うことが可能になる超が付くほどの戦闘特化スキルである。

途轍もない戦闘力を発揮できる代わりに、狂気を身に宿す都合から戦闘時の自制が効きづらいのが難点である。故に、最悪連携は諦めるしかないのだろうと考えられた。

 

「レストアを発見しました。さっき言ってた妙な反応って、あの白い髪の子ですか?何か様子がおかしい……」

 

『レストアに取りついているならそうよ。その子との連携は難しくなるわね……』

 

遠い位置からだったので分かりにくかったが、どうやらそのリリィは自分が一週間前に目撃したリリィの一人だったことに気付く。

目の前に映る狂戦士(バーサーカー)ぶりから彼女がルナティックトランサーを使っているのが伺え、今回は連携を諦めるしかないと感じさせる。

──なら、どうするか……と、まるで戦艦や山を彷彿とさせる、目の前にいるヒュージのことを考えようとしたが一つ大事なことを忘れていた。

 

「由美さん、ヴァイパーの位置は?」

 

『レストアから見たら右側……隼人君の反対側から接近中よ。近くにリリィがいるなら事前通達して、奇襲を防いで頂戴』

 

「了解」

 

決めるが早いか、隼人は縮地を活用する速度によって、レストアの真正面を突破するべく移動を始める。目指す場所は自分の反対側にいる五人のリリィの居場所である。

建物を飛び越えながらと言う不便もあるが、幸いにも一回の移動量を増やすような動き方ができるので、どうとでもなる。

 

『隼人君、レストアからミサイル反応よ!』

 

「方向は……俺か。ならこうだ!」

 

幸いにも数はちょっとでもと撃ったのか五発と少ない。ならば問題なく捌けるし、後々リリィたちの方に来ないよう叩き落す。そう判断した隼人は全てのミサイルをCHARMで斬り裂き、爆発が起きるよりも前にリリィたちの前に移動を始める。

最初の一歩を踏み出す瞬間に隼人がその場から消え、直後にミサイルが爆発を起こす。その爆発が起きてものの一秒で、隼人はリリィたちの前にいきなり現れたかのように到着する。

 

「あなたは……一週間前の!えっと、今のはあなたが?」

 

「大丈夫。俺のレアスキルは縮地だから」

 

「あの位置からすぐに来れたのも、それが理由でしたのね……」

 

問いかけて来た梨璃に、隼人は軽く答え、楓が納得する。

三年前の惨劇ではは何もできなかったが、今はこうして抗い、結果として誰かを守れる力がある。それで十分だった。

 

「蛇を追う者であるあなたが助けに来てくれたのかしら?それなら助かるわ」

 

「レストアを討つ……って認識してるならそれは違います。この近くにヴァイパーが接近してきています」

 

声を掛けてきた、一人だけCHARMでは無く携行可能なノートPCを持ったリリィの問いに、隼人は否定を返す。

その回答に、問いかけてきた紫色の髪を持つ眼鏡を掛けたリリィは「なるほど。合流されると厄介ね……」と苦い顔をみせた。

だが、それは一瞬で、隼人の存在を見て一つ確信を持って次の問いかけをする。

 

「と言うことは、あなたはヴァイパーを止めに来たのね?」

 

「ええ。俺がヴァイパーを止めるので、その間にあなた方でレストアの方をお願いします」

 

その確信は大当たりで、隼人はもとよりそのつもりだったようだ。

これならばヴァイパーに戦力を割いた結果、レストア相手の戦力が足りないなんて事態を避けられる。

 

「……いいんですか?」

 

「撃破は分からないけど、撃退くらいなら何ともないよ」

 

そこまでやるのは危険というよりは、ヴァイパーの危機回避能力が高すぎて不可能な意味合いが強い。

ともあれ、これで役割分担が終わったので、隼人が向かおうとしたその矢先、梨璃が声を掛ける。

 

「私、一柳梨璃です。あの時、名前言えなかったから……」

 

「そっか……そう言えば俺も名乗ってなかったな」

 

梨璃が右手を差し出しながら名乗った際、楓が理不尽に嘆く声を上げたが、それは気にしないことにした。

実際、これから共に行動する可能性は十分あるので、彼女らにだけは名乗ってもいいだろうと考え、梨璃の想いに答える。

 

「俺は如月隼人。お互い頑張ろうな、一柳さん」

 

「な、なぁぁっ!?わたくし握手すらしたことありませんのにっ!?」

 

その差し出された右手に対して隼人も右手を差し出し、握手を交わす。

短い時間で終わらせてなお、楓が「あんまりですわ~っ!?」と叫びながら頭を抱えながらくねくね動いて悔しさを滲ませているが、構っている余裕は無いので咎を受けるなら後回しだ。

 

「それじゃあ、俺は改めてヴァイパーの撃退に向かいます」

 

気を付けてと言う梨璃の声を後ろからもらいながら、隼人は木々中へ飛び込んでいく。

百合ヶ丘のリリィたちから距離を取れた為、ここから由美との通信を行い、ヴァイパーの位置を再確認する。

 

『もう間もなく接触よ。準備はいいわね?』

 

「いつでも。……来ました!攻撃を開始します」

 

見つけるや縮地を使って一瞬でヴァイパーに近寄り、そのままCHARMを袈裟懸けに振り下ろす。あからさまな不意打ちではあるが、ヴァイパーもヒュージである以上、四の五の言ってる場合じゃない。

横から奇襲してきた隼人に反応の遅れたヴァイパーは、せめて攻撃手段が失われないようにと、自身の中で頑丈な尾の部分を前に出して防ぐ。

この時、ヴァイパーがあからさまに嫌そうな声を上げるが、隼人の狙いはそれによって自分に意識を向けさせることにある。

 

「ヴァイパー、お前の好きにはさせないぞ!」

 

そのまま返す勢いでCHARMを振り上げヴァイパーに追撃を掛けるも、ヴァイパーも体の右側から刃を伸ばして防いだ為、これは有効打にならない。

直後に左側から刃の反撃が来るが、隼人はこれを左前──要するにヴァイパーの右側に回り込むように避け、CHARMを水平に振り払う。

ヴァイパーはこれを戻して右側の刃を滑り込ませるようにして、防ぐのを間に合わせる。

 

《──》

 

「そうだ……俺を狙え、俺を見ろ!彼女たちの邪魔はさせない!」

 

邪魔して来て、簡単に振り払わせてくれず、更には自身にちょっとじゃ済まないダメージを確実に与えてくる隼人をヴァイパーは振り切りたいが、しつこいくらいに食いついてくるので打ち払うしかなく、イラついた声が聞こえる。

隼人からすればこれでよく、このままヴァイパーに至近距離射撃をできるチャンスを伺いながら戦う。

ヴァイパーを自分から意識を外させないようにする為、隼人は空中に上がる選択肢は完全に捨て、地上戦でヴァイパーを押し切るプランを立てている。と言うのも、空中へ上がった僅かな隙にヴァイパーがレストアの方へ行ったら不味いからだ。

なので、地上戦をする上で更にはレストアから遠ざけるように押し込んでいく。

 

《──!》

 

「来るか……なら!」

 

途中で痺れを切らしたヴァイパーが防御を捨て、両側の刃のコンビネーションで猛攻してくるが、隼人は冷静に回避しつつ、これ以上離れると合流が厳しい距離なので付かず離れずを意識する。

ここまで来れば、チャンスを見つけた瞬間反撃して硬直を誘い、至近距離射撃を撃ち尽くすだけだ。

ヴァイパーが今はそれぞれの刃を交互に振り回しているが、両側の刃を交互に振り出したら、その時こそ反撃するチャンスである。

とは言え、待っているだけでダメなら動くことも必要なのは確かで、隼人は途中から片側だけの刃による攻撃を何度か弾いて両方を同時に振らせるように急かす。

すると遂に抑えられなくなったヴァイパーは、両側の刃を左から──隼人から見れば右から水平に振り回して来たので、隼人はそれを自身から見て左斜め上に行くように受け流した。

これによって変に勢いを加速させられてしまったヴァイパーは体を回し、体制を立て直しながらその刃をしまって正面を見ると、鼻先にCHARMの銃口が突きつけられていた。

 

「ヴァイパー!ここでお前との決着を付ける!」

 

──覚悟しろ!啖呵を切りつつ、至近距離によるバスターキャノンの連続射撃が始まった。

二発、三発、四発と、次々と至近距離で強力な弾丸をぶつけられたヴァイパーは悲鳴を上げながら顔に当たるだろう部分の攻撃を防ぎ、隼人を追い払おうとするが、彼は完全に二つの刃の動きを見切っていた。

追い払う為の攻撃を全て避けながら、防ごうとしている位置から外れるように陣取り、ガラ空きになっている箇所へ至近距離での射撃を繰り返す。

隼人がそうして撃ち続けてダメージを与えて行き、残り一発になったところでヴァイパーが悲鳴を上げながらヤケクソに両方の刃を滅茶苦茶に振り回す動作が見えたので、隼人は縮地を用いて離脱して距離を取り、最後の一撃を撃つチャンスを伺う。

最初の数発を当て、そこから逃がさないようにした時点で、今回の狙いは成功と言っていい。

 

「(せめて俺に一太刀でも当てたいのか……)」

 

この時バスターキャノンの射撃が何発も当たっているせいで煙ができているが、ヴァイパーが滅茶苦茶に刃を振り回している結果、少しずつ煙が切り払われていき、彼奴の姿がハッキリと見えるようになってくる。

そして煙が晴れた瞬間にヴァイパーの動きが止まり、そこを逃さず再び縮地で距離を一気に詰める。

 

「……行けぇ!」

 

そして、最後の一撃をぶつけ、悲鳴を上げたヴァイパーに反撃されないように距離を取って警戒する。

すると、せめてこちらだけは葬ると言わんばかりに両側の刃を振り回しに来たが、その軌道を見切って隼人は回避した後、刃を飛ばしている本体の左側にCHARMで斬撃を加える。

この時の斬撃はCHARMに込められるだけのマギを瞬間的に入れ込み、刃を蒼い光で覆わせた状態になっている。

 

《──!?》

 

「……手応えが強い!?」

 

その結果ヴァイパーに浅い傷跡ができ、隼人もヴァイパーも予想外の事態に双方が驚く。

これ以上は無理だと判断したヴァイパーは、レストアのいない方へ逃走を始めた。

 

「通りはしたけど……あそこを狙って倒すのは机上の空論になりかねないな。それと……」

 

本当にどうなってるんだ、あの硬さ──?刃が身を守るからそうでも無いと考えて攻撃したのだが、ヴァイパーの耐久力を考えるととても現実的とは言えない結果と言える。それどころか、至近距離のバスターキャノンをあれだけ受けても撃破出来ないどころか全く傷を見せなかった耐久力に驚きである。

であれば、ヴァイパーの単独撃破は不可能だと判断できるので、それを伝えることと、ヴァイパーの逃走先を確認する為にも由美に連絡を入れる。

 

「由美さん、ヴァイパーの逃走先はどうですか?」

 

『百合ヶ丘周辺から距離を取るように逃走、その後反応が消失したわ。どうやら巣に帰ったみたいよ』

 

であれば、彼女たちに対してできる最大のことは果たせた。隼人はそう判断し、レストアの様子を確認するためにそちらへ戻ることにした。

ヴァイパーに関する報告は後でもできる為、とにかく今は急ぐ必要がある。

走っている最中、上空で光る物が見え、隼人は思わずそちらに目を向けた。

 

「(あれは魔法球(マギスフィア)……?トドメを刺すつもりなのか)」

 

隼人がみた、光の球体は二つのCHARMを重ねた時に発生するもので、これによって強力な一撃をぶつけることが可能である。

百合ヶ丘ではヒュージの核から作り出した専用弾丸を用いることで、九人分のマギを集めた膨大なマギスフィアをぶつける必殺級の戦術があるらしいが、これと今回のマギスフィアは作成法や威力が全く異なる。

今回の方法の方が威力が下がるのだが、ヒュージが傷ついているならそれでも十分であり、急降下していくマギスフィアがレストアに吸い込まれていくのを、丁度戻って来たばかりの隼人も目撃した。

 

「(あれを倒し切ったのか……)」

 

その威力は脆い部分を露呈したレストアを倒すには十分であり、体内の中心部に魔法球を叩きこまれたレストアは跡形も残らず爆散した。

これは戦闘の終了を意味しており、百合ヶ丘のリリィはレストアから自分たちの帰る場所(ガーデン)を守ったのである。

 

「(百合ヶ丘が得意としている連携戦術……それが、あのマギスフィアを更に強力なものにしたやつだと聞く……)」

 

──俺があの蛇野郎(ヴァイパー)を討つには、それが必要だ。確信を抱いた隼人は、連絡できる状況になり次第由美に報告を入れることに決めた。

この報告をするよりも前に、先ずは引き受けたヴァイパーのことを伝えねばならない。

 

「ヴァイパーの撃退、終わりましたよ」

 

「本当?助かったわ……」

 

これで今回の戦いが全て終わりであることを告げられ、後は周囲の確認をした後撤収に入るそうだ。

 

「でも、どうして急にこっちへ来たのかしらね?」

 

「あいつの活動範囲が変わったんです。こんな大規模に変わるとは思いませんでしたが……」

 

これの影響で今までより移動が面倒になってしまい、隼人の到着が遅れかねない事態にもなる。

 

「あっ、如月さん!もう終わりましたか?」

 

「ああ。一柳さんも無事で何よりだ」

 

状況を伝えた後、梨璃が夢結と一緒に戻ってくる。どうやらあのマギスフィアの片割れは梨璃だったらしく、ここ一番で戦えるタイプなのだろうと隼人は考えた。

このやり取りを見た夢結が梨璃に対して驚き、自分に対して複雑な表情を見せるが、隼人は前者くらいしか理由が分からないし、後々面倒になりそうなので詳しく追及をする気は無い。

 

「(あれは、こっちの人にも伝えておくべきか……?)」

 

ヴァイパーの単独撃破が不可能だと断言できる状態になったからこそ、共通認識を持っておいた方がいいだろうと思えた。

これからは彼女らと連携する必要も出てくるので、連携戦術を使わせて貰う代わりに、こちらも情報を提供する──早い話、ギブアンドテイクと言うやつである。

 

「……どうかしまして?」

 

「ヴァイパーのことでちょっとな……。そうだな、ここにいる人たちには先に共有しといて貰おうかな」

 

要らないところで犠牲者を出すつもりは無いので、隼人は今回の戦闘による結論を伝える。

 

「結論から言いますけど、ヴァイパーの単独撃破は不可能だと言っていいでしょう」

 

『……!?』

 

隼人の発言に全員が衝撃を受けた。こうなると撃破前提の動きがほとんどできなくなるのだ。

だが、二年半もの間独自に追い続けた人が単独では討てないと言うと説得力があり、現にヴァイパーは生き残り続けている。

今回の戦闘結果を説明すれば、単独での撃破が以下に絶望的かが伝わった。

 

「じゃあ、他に倒せる方法はありそう?」

 

「そちらのガーデンが得意としていた戦術がありましたよね?俺が考える限りで、最も望みがあるのはそれです」

 

だが、この戦術には非常に大きな問題があり、これはCHARMの核であるマギクリスタルは10代の少女たちに共鳴しやすく、高い共鳴率を必要とするされるものである為、男である隼人はこの戦術を使えない可能性が極めて高い。

絶対とは言えないのだが、これまで必要な共鳴率を満たした男性は一人もおらず、それが出来上がって以来男性リリィと言うのは存在しない。

せっかく追って来たのに──と、思う者も出てくるが、隼人自身も討てないのなら他の方法で討つと割り切りは出来ていたので、そこまで深刻では無く、ハッキリしただけ良かったと言える。

 

「まあでも、全部ダメってわけじゃないし……俺はこれからもできることをやっていくつもりです」

 

逃げている最中の人をヴァイパーやヒュージから守る、近場のリリィと連携してそれらを討つと言うのは、この現実を前にしてもできることとして変わらない。

ヴァイパーに関しては悩みの種になっただけであり、絶望することではないのだ。

 

「さて、合流もあるから、俺はそろそろ行きます」

 

──また共闘することがあったら、よろしくお願いします。と、協力的な姿勢の旨を残し、隼人はその場を去った。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「──よし。こんな感じね」

 

その日の夜──。百合ヶ丘の一室にて報告書の作成を完了させた、赤フレームの眼鏡を掛ける紫色の髪を背中まで伸ばした少女がいた。

彼女の名は真島(ましま)百由(もゆ)。先程隼人が出会った中で、唯一CHARMを持たずにあの場にいたリリィである。

と言うのも彼女は本来今日の防衛当番では無く、レストアのデータ収取の為にあの場に居合わせたリリィだったのだ。

そして、本来はこのレストアのデータを報告する為の報告書だけで良かったのだが、ヴァイパーと隼人の戦闘結果の報告を追加書きすることになった。

 

「(この報告を出した後、蛇を追う者──いえ、如月君をどうするのかしら?)」

 

彼がヴァイパーを討つのであれば、どこかのガーデンによる助力が必須になる。よって、ここである程度都合がいいように誘導することだって可能な状態なのだ。

とは言え、今までヴァイパーを含む、都心近くでの対ヒュージ迎撃・逃げ遅れた市民の救助等、頼まれなくとも自分たちの助けになる行動をし続けているのも事実であり、ここがどう響くかである。

 

「(取り敢えず、こっちでもできることはやったから、後は祈るしかないわね……)」

 

百由が書いた報告書の内、隼人とヴァイパーに関する内容を簡潔に纏めると、以下の通りになる。

 

如月隼人の証言とこれまでの動向によるヴァイパーの特性報告と今後の対応考察

 

・今年度から百合ヶ丘近辺に現れるようになり、活動範囲が変わった模様。

・尋常でない耐久力を誇り、遂に至近距離のバスターキャノンを全弾撃ち込んでも撃破出来ないどころか、全く損傷を見せない。

・ヴァイパーが刃を伸ばしている際に脆い箇所が出てくるが、そこにマギを多量に込めた近接攻撃をぶつけ、ようやく軽傷。

・レアスキル『フェイズトランセンデンス』を発動し、脆い箇所を狙えばよりダメージを出せると考えるが、ヴァイパーの特性上机上論の域になり、非推奨。

・上記四点から、ヴァイパーを単独での撃破するのは不可能と判断、如月隼人(以下彼とする)は『ノインヴェルト戦術』が最も見込みある撃破法と考えている。

・彼はヴァイパーを討つためにノインヴェルト戦術を欲しているが、当の彼にノインヴェルト戦術が使えるかは不明。検査の必要性有。

・検査に当たっての問題点は彼の行方を掴めないことにあり、日付を指定して適性検査を行うことができない。その為、通常通りの検査を開き、動向を伺うしかないのが現状。

 

以上の点を踏まえ、以後ヴァイパーと対峙した場合は早急な撃退、或いはノインヴェルト戦術を持って撃破を狙うことを推奨。

また、彼の行方は適性検査の張り込み以外に、都心近くの捜索が最も期待できる。

 

 

 

 

 

そして、この報告書を提出した結果、百由の危惧通り誘導しようとする声もあったが、「あくまでもリリィと似たような立ち位置であり、完全にリリィと同じではない」と指摘する声が決定打となり、見つけ次第適性検査を受けてほしい旨を伝える方針に決定される。

この案件は百合ヶ丘と都心近くにある全ガーデンに通達され、翌日からその活動は小規模ながら実行されることになった。




第三回目となる、原作からの変更点や、ちょっとした小ネタ等の解説を入れていきます。

・如月隼人
レアスキルは縮地。ヘリオスフィアもアリだと考えていたが、大正義機動力と言うことでこちらに。
何だかんだ1話で名乗らず去って行ってしまったので、ここで始めて梨璃と名を伝え合う。
ついぞやヴァイパー単独撃破は不可能と判断。ここからどう動く?

・一柳梨璃
隼人が合流するまでは原作と同じく、夢結のスパルタ(或いは無茶ぶり)な訓練を受け、そこからレストア戦。
隼人にせめて名前だけでも伝えたかったので、それが叶った。

・白井夢結
やってた事は原作と全く同じ。隼人が合流した時にはルナトラ発動中の為、本当に全く変わらない。

・楓・J・ヌーベル
隼人が合流するまでは原作と同じ。
一週間前の会話しかしていないのに、隼人が梨璃と握手までやっているので軽くショックを受けた。

・真島百由
原作と同じ行動の後、隼人の証言等を基に報告書を作った。
隼人が他のガーデンに都合よく誘導されないか考えたが、彼の今までの行動を信じるしかなく、フォローするような文の記載はなし。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。