アサルトリリィ -RED THISTLE- 作:ブリガンディ
特格後サブ派生→前>後覚醒技格闘派生で333ダメージって……(F覚醒)
それはさておきとして、遂にアニメ最終話分が始まります。
飛び込もうと決意してから、ルナティックトランサーの狂気に身を支配された夢結の行動は速かった。
「……はぁっ!」
常人ではまず捉えられない速度でヒュージに接近し、CHARMを振り下ろす。
その一撃は確かに命中こそすれど、本体には傷一つ付いた様子が無い。ルナティックトランサーの狂気に呑まれ、パワーが一時的に増大している夢結の一撃であってもだ。
今の一撃が行動開始の合図となったのか、ヒュージは自身の周囲に漂わせていた九つのユニットのうち、四つを夢結に向かって順番に飛ばす。意図的に残しているのは、まだ余裕があるからだろうか。
流石に食らうつもりは無く、必要最低限の動きで夢結は攻撃を回避する──が、この回避が本当にギリギリを攻めた回避である為、これを何度も続けるのは危険である。
「……邪魔!」
追撃をして来た五つ目のユニットは、CHARMを横薙ぎに振って雑に打ち払い、もう一度攻撃を試みる。
流石に二度目もただで通してくれることは無く、ヒュージも本体自衛用に三つだけ残し、残りのユニットで手数が減らないように迎撃行動を取る。
なるべく前進を選択している夢結は前に進みながらの回避と打ち払いを行うものの、途中でゆく道を塞がれて後退し、また前進──を繰り返すと言う立ち往生に近しい状況に置かれた。
「戦闘……?」
ヒュージがユニットを使った迎撃は地面に勢い良くぶつかっているものもあり、その音が隼人らのところにも届いていた。
梨璃と夢結、どちらが戦闘を始めたかは分からない。だが、それの影響で何か起きたかもしれない。そう考えた隼人はCHARMをシューティングモードに変形させようとしてみたが──。
「流石に都合よくは行かないか……」
──結果はダメで、この後の動向を伺うしかなかった。
先程は焦ってしまった隼人だが、楓のフォローもあって、今度はそのようなことは起きなかった。
「もう始まってる……急がなきゃ……!」
ヒュージの姿を捉え、戦闘音が聞こえた梨璃も急いでそちらへ足を運ぶ。
急いで向かえば、余りにも攻撃的過ぎる戦いをするあまり、いつ被弾してもおかしくないと思える状態の夢結がいた。
その攻撃的な姿勢が功を奏したのか、夢結が六つのユニットの迎撃を突破し、一撃を本体にぶつけようとしたところで、自衛用に残していた一つのユニットが横槍を入れようとしていた。
「お姉さまぁーっ!」
それに対しては辛うじて間に合った梨璃が、CHARMをぶつけることで阻止する。
これ以外にも、残った二つのユニットが梨璃を討つべく襲い掛かって来るも、彼女はそれを避けてやり過ごす。
突然の増援で警戒したらしく、ヒュージは九つのユニット全てを自身の周囲に集結させ、いつでも動けるような準備をした。
「……!」
「っ!?」
──次は何が来る?そう考えていた梨璃は、その思考を突然真横から襲って来た殺気で止めることとなる。
真横にいるのは誰かと言えば夢結であり、ルナティックトランサーの狂気が梨璃を敵と認識させてしまったようだ。
どうやって止めるかを考える間もなく、夢結がこちらにCHARMを振って襲い掛かって来たので、止めることを余儀なくされてしまう。
「(お姉さまを正気に戻すなら、私のCHARMをお姉さまのCHARMにぶつければ……!)」
手段は理解しているので、後はタイミングだ。タイミングを合わせてマギを込めてぶつけ、それで夢結を正気に戻す。勿論、自らの想いも乗せて──。皆を守る為、梨璃は己の為すべきことを見出す。
幸いにも、ヒュージは共倒れしてくれたら楽と思っているのか、行動を見せない。それなら好都合、こちらは自分のやることをやればいい。
夢結の攻撃をどうにかやり過ごし、大きく振りかぶったのが見えた。
「(……!ここしかないっ!)」
その一回きりのチャンスを逃さなかったのは、非常にいい目をしていたこと以外にも、夢結との訓練で動きを見ることができていたのが大きい。
彼女がCHARMを振り下ろすよりも前に、こちらもCHARMにマギを込め、準備が直前で間に合う。
「お姉さまっ!」
夢結がCHARMを振り下ろすと同時、梨璃も当初の予定通りにCHARMを振り下ろしてぶつける。
CHARM同士ぶつけあった影響か、その激突した位置の中心から蒼白い光が広がり、空を覆っていた結界が薄れていく。
「(薄れた?だったら……!)」
自分が原因として仮定していた要素が消えた隼人は、早速行動に出る。やることは、CHARMの変形だ。
ブレードフォームの状態から全く動く様子の見せなかったCHARMは正常に動き、シューティングモードへと変形する。
「よし……動いた!」
「こちらも問題無しですわ」
「私もっ!」
「流石に整備不良は無かったの。ひやひやもんじゃったわい」
次々とCHARMの動く様子が散見され、これならば戦えることが判明する。
そして、どんなヒュージなのかを見るべく、隼人がマギを使った跳躍で姿を見てみる。
「……赤いヒュージ!?デカいな……!」
サイズからして、結梨が単騎で撃破したヒュージよりも巨大だろう。となれば、普通に戦うのは無理でノインヴェルト戦術一択になる。
ただ、それ以上に赤い体を持ったヒュージと言うのは、ヴァイパーの怨念でも籠っているのではないかと一瞬邪推してしまう色でもあった。
「隼人、どうだったんだ?」
「無茶苦茶デカいです。結梨が単独撃破した奴よりも」
これを伝えれば、ノインヴェルト戦術は間違いなく必要なのが一柳隊に伝わる。
「それは、いいけど……特殊弾、あるの?」
後はやるだけとはいかず、雨嘉の指摘通り、現在その特殊弾が手元にないのが問題だ。
原則としてレギオンリーダーが控えておくものであり、何事もなければ梨璃が持っている為、実行しようにも実行できない──。
「……!」
「結梨ちゃん、どうかしたんですか?」
「ちょっと待って……えっと……」
──かと思ったが、結梨が何かを思い出したかのように制服のポケットを探る。そして無事取り出せたそれは──。
「……!ノインヴェルト戦術用の特殊弾……結梨さん、持って来ていたんですか?」
「えぇーっ!私たち、一回も教えてないですよねっ!」
──何と、ノインヴェルト戦術の特殊弾であり、目にした神琳と二水が驚愕する。
「もしかしてだけど、梨璃が結梨に渡してた?」
「夢結を探しに行く時にか?あの時にもう気づいてたって言うのか……」
そうだとすれば、落ちてきたのがヒュージだと気付くのが相当早いと言える。また、その際に自分の行動故に、特殊弾を託す判断もだ。
もし、今梨璃が特殊弾を持ちっぱなしであれば、ここから何かできたかは怪しいが、今回はそうはなっていない。結梨に託された特殊弾のおかげで、自分たちはやれることがある。
「まあ、何がともあれ……わたくしたちのやることは決まりましたわね?」
「よし、じゃあやるか。ノインヴェルト戦術」
「ノインヴェルト……?」
「ああ、結梨はまだ知らないんじゃったな……。細かい理論とかは今度にして、簡単にやり方を説明するぞ?」
その場で簡潔に説明し、頷いてもらったところで今回結梨にはやることの少ない始動役を任せることになった。
「では、各自散開っ!始めますわ!」
「隼人、パスやり方は任せたぞ」
結梨からのパスを受け取る為、隼人と彼女がその場に残り、ほかの全員は移動を始める。
ある程度移動するのが見えたところで、隼人がCHARMを構え、いつでもいいと合図を見せた。
「えっと、いいんだよね?」
「ああ。遠慮せずに来い」
結梨の打ち出した特殊弾を問題なく受け止め、出来上がったマギスフィアをパスすることを告げ、一言宣言してから味方のいる方へパスを飛ばす。
「頼んだぞ、みんな!」
一柳隊は現在、メンバーが11人と言う通常のレギオンよりも大人数レギオンであり、メンバーが二人戦闘行動中でも通常のノインヴェルト戦術を実行できる。
──が、あのヒュージを確実に倒す為には11人分を込めてしまった方がいいだろうと言う考えもあり、今回は全員でパスを繋いだ後、梨璃たちに回す手筈に決めている。
なお、隼人たちは預かり知らぬことだが、CHARMが使えるようになった時、梨璃の一撃で夢結を正気に戻すことは成功しており、今は何の問題もなく連携をしていた。
「……何だ?アレ?」
「隼人、どうしたの?」
「あのヒュージ、ノインヴェルトの
梨璃と夢結に届いてフィニッシュ──とはならず、ヒュージは九つのユニットの内一つを使って横取りし、残りのユニットへ順番に回してパスを繋げていく。
横取りされたまま一撃は撃たせまいと、先回りが間に合った梨璃はCHARMでマギスフィアの奪還を試みる。
しかし、既にリリィ九人と超大型ヒュージが込めるに込めたマギの量は極めて膨大であり、梨璃のCHARMは先端が耐えられずに変色を始めていた。
CHARM一振りでは到底抑え込めない量になってしまったマギが原因で、このままでは抑えるどころかマギスフィアを一身に浴びて梨璃がお陀仏してしまうのが分かった夢結は、咄嗟に割り込んでマギスフィアを上空に弾き飛ばす。
これにより、マギスフィアの奪還に成功したものの、梨璃CHARMは先端から少し先が折れてしまった。
「……?隼人、みんなが……」
「もう一回パスを繋ぐってことか……?一柳隊のみんなは……?」
他のリリィたちが、全員でパスを繋ぐ為にと次々とび出していく中、一柳隊のメンバーは隼人らに伝えるべく一度戻ってきた。
彼女らもパスを繋げていくが、長い時間マギスフィアを保持しておくことはできず、短時間でパスをし、その直後にCHARMが破損する状態になっていた。
「二人とも、もう一度行きますよ」
「隼人さん、わたくしと来てくださいっ!二度目のパスを一柳隊全員に送りますわ」
「結梨は私たちと一緒に、梨璃たちに届けるぞ」
他のリリィたちがパスを繋げる中、役割分担を決めた一柳隊は再び飛翔する。
なお、パスはどんどん繋がっていくものの、その分マギスフィアが有しているマギの量は規格外の域に達しており、最早弾き飛ばすも同然のパスをするだけでもCHARMの耐久が追いつかず破損する姿を見せていた。
この後工廠科のリリィたちが地獄を見るかもしれないが、自分たちが死ぬよりは何倍もマシである為、ここでCHARMが破損することすら厭わない。全てのリリィがパスを終え、再びこちらに戻ってくる。
「合わせますわっ!思いっきりやって下さいな!」
「助かる!じゃあ、行くぞ!」
二人揃ってCHARMを重ねた状態で飛来して来たマギスフィアを一柳隊の方へパスする。ここで二人のCHARMも限界が来て、破損した。
「よし、お前ら準備はいいな?」
──せーのっ!と言う梅の合図と共に、送られてきたマギスフィアを全員で同時にパスし、梨璃と夢結の二人の所へ送る。
残りのメンバーもCHARMが破損し、もうこの後は梨璃たちがしっかり受け取ってくれることを祈るしかない状態になった。
二人の所へ飛来するマギスフィアを、ヒュージがユニットの一つを使って再び横取りしようとしたが、受け止めることはかなわず、一瞬でユニットを突き破る形で破壊してそのままマギスフィアは進んでいく。
「わたくしたち全員のマギスフィアを込めたんですもの。そう易々と奪い取れませんわよ?」
更にこれが幸いしたのか、マギスフィアが減速し、夢結のCHARMが問題なく受け止める。
そして、梨璃と二人して迷うことなく突っ込んでいき、本体に直撃を狙う。
この時ヒュージが残りのユニット全てを使って防御を試みるが、そんなものは存在しないと言わんばかりにものの一秒もかからず突破され、本体に攻撃が到達する。
本体に届いた攻撃もまた、そのまま突き抜けて行き、少しした後大きな爆発を起こしてヒュージは消滅した。
「(何を思って赤い体をしていたのかは知らない。ヴァイパーが絡んだのかも知らない。だけど、これだけはハッキリと言える……)」
──例え何をやって来ようとも、俺たちは抗い、人を守り、生きていく……ただそれだけだ。晴れる空を見ながら、自分の意思は変わらないのを隼人は認識した。
* * *
* * *
ヒュージとの戦闘が終わり、脅威も去ったことでガーデンに戻ることができたのでガーデン内を確認してみると、まさか温泉の沸いている場所が発見された。
「(これ、露天にするのか?それとも、壁とか直して通常にするのか?)」
みんなが温泉に驚き、喜ぶ最中、隼人は一人この場所についての思考を始める。
いずれにせよ、いつかは自分も入ってみたいところではあるが、恐らくそれは叶わないだろうなと思いながら、無意識にため息が出た。
「俺は一人去ろうか……」
「なら、上がった時に一声いるか?」
助け船の一声にはお願いする旨を返し、隼人はそのまま一人で寮の部屋に戻ることにした。
そうして一人部屋に戻った後、隼人は施設に連絡を入れて、無事等の確認を始める。
『……隼人君?連絡をしてきたと言うことは、そっちのガーデンは無事でいいのね?』
「はい。壁とか一部は壊れちゃったんですけど、人的被害はゼロです」
──なら安心ね。隼人からの報告で由美は安堵する。この後、話を聞いてみると施設は特に損害は無く、帰る場所は残っているようだ。
それから、玲とアリスとも一言ずつ話すことになり、由美は連絡を変わる。
『由美さんから話は聞いたよ。あんな反応するヒュージ相手に怪我無くてよかったよ』
「ありがとうございます。ただ、すみません……ブリューナクは修復に相当時間かかっちゃうみたいです」
隼人のCHARMであるブリューナクは、以前のヴァイパー相手に想定外の10人ノインヴェルト戦術と、今回の戦闘が重なり、他のCHARM以上に酷い壊れ方をしていた。
正直に言ってしまうと、新規に取り寄せた方が早いとまで言われており、現在は楓のところに契約したCHARM待ちになっている。
それを伝えると、玲は『隼人自身が無事であることが大事』であることと、『また必要になったらいくらでも取り寄せる』と伝えてくれ、その有難さと頼もしさに感謝する。
『今日も無事にやって来れたわね。それはそうと、腕の方は大丈夫かしら?』
「今度またそっちに戻るけど、今は問題ないよ」
『それは安心だわ。なら、また今度無事な姿を見せて頂戴』
そうして皆と一言話終えた後、今度右腕の確認と、近況報告に戻ることを告げてから連絡を終えた。
──さて、豆の整理でもするか。そう考えて行動に移そうとしたところで、ドアノックの音が聞こえ、そちらに向かう。
「お待たせしましたわ。日が暮れてしまうので、お早めにどうぞ」
「助かるよ」
伝えに来てくれた楓に礼を言い、そのまま入浴の準備を始める。
「そう言えば、俺のCHARMって大体一ヶ月後だっけ?」
「ええ。ですので、それまでは余程のことがない限り出撃不能になりますわ……」
誰かを救う為に戦う力を得た隼人が、暫くの間再び何も出来なくなる──。きっと辛い事だろうと楓は思った。
だが、それを前にしても隼人は特に燻ったりも焦ったりもする様子は無い。それならそれで、その時を待つだけである。
「随分と落ち着きましたわね?」
「お前を泣かせるくらいなら、ちゃんと待ってから動く……。緊急事態だったらしょうがないけど、できる限りそうしたいと思えるんだ」
「……!」
正直自分でも大分驚いている。自らの信念と、自他問わず救える範囲の命にあれだけ従事していた自分が、大切にしたいと思える知人の意向を誰が言うまでもなく汲み取っているのだから。
だが、それは悪い変化ではないのだろう。嬉しそうな顔をした楓を見て、隼人はそう思った。
「(まあ多分、個人への比重が大きくなったってことだよな……)」
移動中、泣かせたく無い相手に個人を上げた理由を隼人は冷静に分析した。
アニメ最終話の敵とは言えども、ああやられたらアッサリ撃破されるのもやむなしですねw
以下、解説入ります。
・全員でやったノインヴェルト戦術
アニメ本編だと最後に梨璃と夢結へパスするのは楓一人、ブルーレイ版だと一柳隊全員でやってた。
本小説は隼人と楓→その他一柳隊のメンバーと言う形で順番にパス。
この方針には「いくら何でも9人は入りきれないよなアレ……」と言う懸念と、「この感じなら隼人と楓は分けても良くないか?」と言う思いつきの二つが大きい。
・如月隼人
流石に全員の温泉に混ざりはしなかった。
現在、楓に対する意識の比重が増加中。ここから進展はあるか?
CHARMの破損具合は百合ヶ丘のリリィで一位の酷さ。対ヴァイパーでやった想定外の10人ノインヴェルト戦術が影響を及ぼした。
・楓・J・ヌーベル
隼人に番が回ってきたことを伝えてくれた。
実はこれ、誰かの計らいだったりしたり……。
コミケの準備があるので、次回の投稿は遅れます。
ラスバレ編は読みたい?
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別にいい