アサルトリリィ -RED THISTLE-   作:ブリガンディ

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残業ラッシュが増えてしまったところどうにか間に合いました。


第3話 遭遇

遭遇次第撃破を狙う方針ができたのはいいが、情報が足りないのでそこから少しヒュージの情報を聞いてみる。

そこで分かったこととしては形状は龍を彷彿とさせるヒュージで、特殊な個体だと断定できる。強力なレーザー攻撃を持つ。目覚めると暴れだして手をつけられなくなるので、目覚めるよりも前に決着を付けてしまいたい。重要なワードと言えばこの三つだろう。

 

「蛇の次は……龍……」

 

話を聞いて思ったこととして、雨嘉は少なくとも小型ではなさそうだと思った。大型のヒュージで、通常の攻撃をするだけでは厳しそうだ。

更に、ヴァイパーの時は硬いだけで攻撃はそうでも無かったが、今度は大型故に硬いしパワーもあると想定できた。場合によってはノインヴェルト戦術も必要かもしれない。

 

「そのヒュージですが、東シナ海にいます」

 

また、そのヒュージの所在が神琳から断定系の言葉で告げられた。これには現地人である艦長が大いに驚いたが、事前に情報を仕入れたとの回答が帰ってきて納得した。

どうやらそれが昨日のニュースにあった詳細らしく、全く攻撃することなく滞在している大型のヒュージで間違いないようだ。神琳の証言を元にするなら、出てくるだけ出てきて休眠状態なのだろう。

神琳の故郷である台北の時はこれが暴れだすまで気づけない、ないし放置されてしまったことが原因なのか、最終的に陥落状態に陥ってしまっている。

故にここがそうならない為にも、急いで討つ必要がある──。そう訴える神琳の目はどことなく焦りも見えていた。

 

「わたくしの故郷のようになってしまってはもう遅い……ですが、今から行動を起こせばまだ間に合います……!」

 

──新佐瀬保(この場所)を、そうするわけにはいきません。焦りの理由は、再び繰り返されるかもしれないことへの恐怖であった。

実際、繰り返されるのはよろしくない。阻止できるのならばそれが一番である。

故に、一柳隊のメンバーは当然、艦長も可能な範囲で協力を約束してくれた。この艦は通常兵器である以上、流石にそのヒュージとの戦闘をすることはできないので、他のヒュージの撃破や、足止め等が主になるだろう。

そのヒュージを撃破することが決定したので、移動を始めることになるのだが、その際に隼人は少しだけ神琳に話しておこうと思った。

 

「なるほど……だから、隼人君はヴァイパーを前にしても冷静でいられたと」

 

「俺も訓練で身につけたから、今からは間に合わないかもしれないけど……」

 

「いえ。土壇場でもやってみる価値はあるはずです。何もしないよりはいいですから」

 

それと戦うこと前提だったとは言え、隼人は戦場に出るよりも前に感情を出しても冷静さを保つ訓練を受けていたので、問題なかったのだ。

憎悪の対象だし、ぶっつけ本番でやらなきゃいけないので、正直厳しいのはそうだが、教えてもらえるだけでも少しは変わるはずだ。

 

「少し安心しました。確かに、ヴァイパーに囚われて周りを考慮できない事態を避ける訓練はしたと聞いていましたが、そういうこともしていたんですね?」

 

「向こうの人たちを手伝うのもあったけど、そうしないと俺も死ぬかもしれないからさ……」

 

実際、やらなければそのまま死んでいただろう。それはアリスの想いを無駄にすることにも繋がる。

慣れなければきっと誰もが同じ。しかしながら、人間慣れれば案外大丈夫なのだと、改めてそう思わされた。

 

「わたくしもやってみます。ただ……もし、あなたが近くにいるのなら……」

 

「ちゃんと止める。だから、お前も頑張れ」

 

──お願いしますね。隼人の返事に満足した神琳は最後にそれだけ返した。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「(さて……大体こんなところか)」

 

その後、隼人は今回やるべきことや、この艦の装備を簡単に教えて貰って情報の整理をしていた。元復讐者故に、そこら辺の協力が人一倍積極的だった。

 

「偵察用ボートか……これ、神琳が一人ですっ飛ばなきゃいいけど」

 

「その通りですわ。一人で無茶な突撃するアホンダラなんて、隼人さんだけで十分でしてよ?」

 

纏めたデータで一人悩んでいたら、楓が同意の旨を出して来た。どうやらこちらの様子を見に来てくれていたらしい。

本当にそれをやられてしまったら、緊急離脱させる為に隼人は同乗するつもりでいるが、出来ればもう一人は欲しいと思う。とは言え、そもそもそうなる前に引き留められるのがいいのだが──。

 

「その様子だと、難しそうですわね……」

 

「ああ。俺も訓練し始めの段階で止まれなかったし、いきなり実戦なら多分無理だ」

 

隼人も訓練し始めの頃に復讐心のコントロールができず、本来の目的等を見失って暴走した。であれば、いきなり実戦の神琳はもっと制御が難しいだろう。

さっき一声を掛けはしたものの、それがどれだけの効果を与えたかは分からない。

こうなっては仕方がない──そう感じた楓は、隼人の左手の上に自らの左手を重ねる。

 

「何としても止めろ……とは言いません。ただ、誰も失わないようにして下さいな。あなたも含めて」

 

「楓……分かった」

 

──また手間をかけさせるな。そう思いながらも、隼人は素直に好意に甘えることにした。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

その後、艦に振動が走ったのと、艦長からヒュージの襲来が伝えられたので、一柳隊は大急ぎで迎撃に出る。

前回の襲来に続いて更に強いヒュージが現れており、いよいよ神琳の故郷で起きたことが再現されるかもしれないと言う危惧が大きくなって来た。

 

「神琳、まだ続くってみていいんだな?」

 

これに関しては肯定が返された。目覚めてからは遅いと言われている以上、手を打ったほうがいいかもしれない。

ただ、問題として移動する手段が限られすぎていることがある。海上移動手段を使って渡るほかないのだ。

 

「なるほど……。分かった。何かあったら連絡を頼む」

 

連絡を終えた艦長曰く、何か大型のヒュージらしき反応が動き出したとのことで、更には天候が一気に雨に変わった。

もう既に件のヒュージは動き出してしまっているだろう。だが、肝心な対応手段が明確にできてはいない。

しかし、このまま何かしないでいるなら、そのまま飲み込まれてしまう可能性が高い。どの道動くしかない以上、急ぎで方法を練り出す必要がある。

 

「この艦には、偵察用のボートが備わっていますよね?」

 

「ああ。確かにそれはあるが……まさか、それで向こうへ渡ろうと言うのか!?」

 

神琳の問いに返答した艦長は途中で理由を察し、驚愕する。あまりにも無謀がすぎると。

 

「ま、待って神琳……!いくら何でも無茶だよ……!」

 

雨嘉もあまりにもらしくない彼女の行動を見て、たまらず静止の声を投げる。普段なら明確に手段を見出してから動き出すはずなのだが、行動が先に来てしまっている。

更にこの状況、普段はあまり自発的に行動するのを得意としない雨嘉が、神琳の目の前に立ちふさがるようにしてやっているのだから、この異常さがよくわかる。

 

「……」

 

先程から、神琳は一つの物事に関して激しく思考を回していた。内容は当然、件のヒュージのことだ。

今すぐ行きたいし、もしかしたら自分一人でだろうと討てるかもしれないので行けと言う思考と、隼人の制止、雨嘉やレギオンメンバーの心配もあって止まれと言う思考が殴り合いをしているのだが、少しずつ前者が勝ち始めており、止まれなくなるだろうと予想できた。

 

「(どうしましょうか……)」

 

──いいじゃないか。彼だって途中までずっと一人だったのだから。

──何を言っているのか?向こうは冷静だったし、撃破は可能ならで動いていたから良かったのだ。それに対して、自分は撃破前提。条件が全く違う。

──かと言って止まる理由になるのか?現に、隼人は感情むき出しで戦い続けられていたじゃないか。

──否、それはコントロールする術を手にしたからこそ。今一人で行っても恐らく討てない。手は借りたほうがいいだろう。実際この現象を何とかする協力は約束してもらえている。

──それでも、巻き込む気にはなれない。これは自分自身の戦いで、協力してもらうことが必須とは限らない。

──心配させるかもしれないが、早く討って戻ってきてしまえばそれでいいはず。それに……。

 

 

 

 

 

──やはり、自分は彼奴をみすみす逃したくはない。神琳の中で、行くことが選択肢の答えとなった。

 

「どいてください。雨嘉さん……」

 

「……!?」

 

後々振り返れば、自分でも底冷えするような声を神琳は出していた。

その場にいる全員が信じられないような目を向けて絶句し、この様子だとそのまま行けると判断した神琳はすぐに戻るとだけ告げてボートを出そうとするが──。

 

「悪いけど、お前一人で行かせるつもりはないよ」

 

「……なら、どうするんですか?」

 

すんでのところで隼人が阻止する。今すぐ行きたいと思う神琳は、苛立ちを含んで問いかける。こうなる可能性も想定できていたのか、隼人は慌てる様子を見せない。

 

「俺も乗る。突っ込んだ俺たちで討てないなら、その場ですぐに撤退するぞ。場合によってはボートも放棄する」

 

選択としては、神琳が戻ってこれない事態を避ける為の保険のようなものだった。止めたいけど止められない。ならば、行った先で無理なら無理にでも連れ戻す。そんな算段だ。

一応、このボートは四人まで乗れるらしく、様子のおかしい神琳を放っておけなかった雨嘉と、途中から二人の様子に気を配っていた鶴紗の二人も同乗を決める。

 

「隼人、行っちゃうの……?」

 

「本当はあんまりよくないんだけどな……けど、誰かが行かなきゃあいつが戻ってこれなくなるから……」

 

誰かが行かねば、神琳は引き際なんて考えずに戦ってしまいそうな様子だったので、もう仕方がないのだ。

ただ、大型である以上は力を合わせなければならない。それは結梨も分かっていることで、しかしながらボート自体に乗れるのは四人。とてもじゃないが討つ為の戦力としては不足しているとみていいだろう。

 

「艦長さんっ!ボートっていくつあるの!?」

 

「残念だが、その一つしか備わっていない。四人が先行するなら、残りのリリィはこの艦で送るしかない」

 

何とも巡り合わせの悪い話だった。仕方ないので、結梨は後で皆と合流することになる。確かに隼人としても結梨が手伝ってくれるのなら、離脱させやすくて助かるのだが、それは万が一自分たちに何かあった場合、水上で高速に動けるのは梅一人で、彼女が物凄い負担を背負うことになってしまう。

その為討てるならそれでいいが、基本は本隊とも言える自分たちの合流まで無理はしない方向で決定となった。

 

「隼人さん。最悪、あなたが最後に縮地で離脱と言う手段を取れば逃げられる可能性は高いですが……」

 

「無理はしないよ。それは最後の手段、でしょ?」

 

分かっているのならばよく、楓は今度こそ引き留めるのをやめる。

それからすぐにボートを出し、四人は現地へ先行していくことになった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「隼人、大丈夫?」

 

「……俺か?」

 

偵察用ボートで移動している最中、隼人は雨嘉に心配された。昨日の相談といい、今日の神琳に気を使った行動や件のヒュージを討つ方針の発言といい、他者に気を遣うのはいいとして、自分を疎かにしていないだろうかと考えたのだ。

 

「そうだね。さっきも、色々艦内の確認とかまでやってたし……そもそも休めてるの?」

 

「まあ、休むには休めてるよ」

 

こうは言うが、実際普段より明らかに休息時間は少なくなっている。我ながら気を回すはいいが回しすぎたは間違い無いだろう。

一応、こういう時に備えた長時間行動の訓練自体はやっているし、実際にやったこと自体はあるが、その時は緊急事態故にそうなっただけで、普段はさっさと戻るのが常だった。

だからこそ、早めの離脱を視野に入れて行動することを方針として固めている。

 

「……見つけました。アレがそうです……!」

 

「あいつが……って、波が荒れすぎてるな」

 

龍のような見た目をしたヒュージを見て、神琳がヴァイパーを見つけた自分と同じような反応を示すが、それ以上に荒波が厳しくこれ以上ボートで進むことはできず、隼人は咄嗟にボートを停止させる。

これ以上は船が転覆するから進めないと言えば、神琳は空中から飛び出してしまう。

 

「なっ……!?流石にぶっつけ本番じゃ無理か……!」

 

それを見て感情のコントロールができなかったことを悟り、隼人は急いで連れ戻さないと行けないと判断を下す。

 

「雨嘉、鶴紗!手伝ってくれ!あのバカを連れ戻す!」

 

「分かった!」

 

「神琳を、お願い……!」

 

仕方ないので、隼人は海上に躍り出て、縮地で大急ぎで追いかけ、雨嘉と鶴紗はその場で射撃して取り巻きのヒュージを撃墜し始める。

中央のヒュージは神琳が容赦なく倒していくので、誤射の危険がある為そちらには撃てない。

 

「お前は……お前だけはぁぁーーっ!」

 

隼人が追いかける先、憎悪に満ちた声を上げる神琳の姿があった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

{ 第  話 }

 

遭 遇

encounter

 

 

許されざる仇敵

──×──

The other avenger is furious.

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「逸るな神琳、戻れ!」

 

「お兄さまたち、見ていて下さい……!神琳はコイツを討ちますっ!」

 

ブレードフォームで一撃斬りつけて見せるものの、ダメージは見受けられない。硬い場所に当たったのか、それ以外の理由か。ともあれ、有効打にはならなかった。

ともかく声を届けたいが、あの状態では聞く耳持たずだろう。更に、もう一つ悪いニュースが届く。

 

「神琳避けてっ!ヒュージが、神琳を狙ってる……!」

 

「っ!?」

 

よく見たら、ヒュージの体の青い部分が赤くなっており、その体の一部を使って神琳を叩き落そうとしている。

そして、神琳は空中にいるので回避が非常に難しい。しかも防御結界が弱いので、非常に危険である。

 

「やるしかない……!」

 

故に、隼人は思いっきり一飛びして神琳に体当たりする。

 

「……!隼人く……!?」

 

「ぐ……!うおぉっ!?」

 

どうにかして押しのけるが、もう速度は残っていないので、CHARMで無理矢理防御する。

幸いにも直撃は避けはしたものの、勢いは殺せず、隼人は吹き飛ばされてしまう。これはヒュージの攻撃によって生まれた風圧を貰った神琳も同じだった。

二人共それぞれ飛ばされて、海面に落ちていく。

 

「(ヤバイ、海面だ……!)」

 

落ちる先に気づいた隼人は咄嗟に息を吸い込んで鼻を摘んで海面に落ちる準備を急場で作る。

海面に落ちてから落ち着くや否、すぐに泳いで上に上がっていく。

 

「ぶはっ……!神琳は……みんなは大丈夫か?」

 

「隼人!?何ともないんだね?」

 

「背中痛いくらいで、まだ平気だよ」

 

鶴紗の伸ばした手を支えに使わせてもらい、隼人は水面の上に上がる。そこまで行けばマギで足場を作って移動もできるようになる。

後は雨嘉と神琳が見つかれば、そのまま離脱となるが、問題はヒュージの方だった──。

 

「アイツ……動きが止まってる?」

 

「さっきのは攻撃してきたから迎撃しただけか……?」

 

──が、攻撃してくる様子はなく、もしかしたら何か習性みたいなのがあるかもしれない。それなら行幸だ。

一方で、雨嘉は必死に海中で神琳を探していた。彼女の望んだことを全くやっていないし、もしかしたら嫌われてしまうかもしれない。

 

 

 

 

 

だが、そんなのは些細なことにすぎない。大切な人に嫌われてでも生きてもらいたい──それが彼女の選択だった。例え自己満足と言われようとも、決して曲げるつもりはない。

 

「(嫌われてもいい……!どこにいるの……?)」

 

暫く探して彼女を見つけ、急いで海面から顔を出す。急いで二人を引き上げたところで他の皆と艦長が乗る艦が来たので、それに乗せてもらって一時撤退することになった。




思ったより結梨ちゃん喋らせれてないな……(汗)

以下、解説入ります。


・如月隼人
最近の自分にしては割かしオーバーワーク気味。幸いにも疲労耐性はあるのでまだ平気。
大急ぎで神琳をカバー。自分に来たダメージも少なめ。


・郭神琳
感情のコントロールは残念ながら失敗。流石にぶっつけ本番は厳しかった。
隼人の咄嗟にやってくれたフォローで攻撃を直には受けてないが……?


・王雨嘉、安藤鶴紗
隼人を無茶していないかと気にしていた。お互いに助けるべき相手を助けた。
また、隼人が先行してそのままフォローしてくれたので、雨嘉が無茶なフォローをする必要がなくなった。

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  • ノーブルリリィレポート
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