アサルトリリィ -RED THISTLE- 作:ブリガンディ
このイベントシナリオやるならさ……やるしかないじゃない?
船に戻された後、隼人は艦長や皆に謝罪と礼を述べた。自分一人では結局止めることができなかったからだ。
「隼人、聞いてもいい?」
今回大分心配をさせてしまっていた結梨に問われ、隼人は先を促す。そう言えば、結梨には話したことないかも知れないと思い出していた。
気になったのは隼人の『元復讐者』と言う名乗りで、この理由を結梨は知らない。故に、ずっと気にしていた。隼人の悲しみの匂いはこれなんじゃないかとも思って。
「やっぱり……気になる?」
「うん。なんかずっと、隼人が無理してるみたいだから……」
「えっと……俺、そんなにしてた?」
結梨は頷くし、周りを見れば誰も彼女の言い分を否定しない。これは相当なのだろう。
こりゃ反省だなと割り切った後、隼人はヴァイパーと言う特殊なヒュージと、それに幼馴染みの少女と右腕を奪われた自分。そこから半年のリハビリと訓練に、三年近くの戦いの末に討ち終えたことを話した。
それが隼人の悲しみの匂いとその終わりであり、今回ぶり返してしまったのは神琳と言うもう一人の復讐者を想っての結果だった。
また、この戦いの終わりは自分一人では迎えることができず、最終的にはこの一柳隊の協力を経て終わらせることができたのも大きい。
「俺は多くの人に手伝ってもらって終わらせることができた。勿論、その中には神琳もいる……だから、今度は俺が手伝う。暴走を抑えられるようにしようって思ったらこうなっちゃったんだ……」
「そうだったんだ……」
──じゃあ、ちゃんと休まないとだね?気を張りすぎていた理由が分かったので、結梨が出した返しはこれだ。
手伝うのなら万全の状態であるべきなのは確かで、梨璃や楓からも「考えるのはこっちでやるから、今はしっかりと休んで」と言われ、そうさせてもらうことにした。
「なら、一室貸すとしよう。そこでゆっくりと休むといいだろう」
「ありがとうございます。使わせてもらいます」
艦長の気遣いは素直に受け取り、隼人はそこで体を休めることにした。
* * *
「……ああ、やっちまった」
今より二年半程前──。隼人が復讐者となっておよそ一年が経過した時のことだ。
その日の夜、隼人は今日の出撃のことに関して自省する。理由は今回共に戦ったリリィに対する態度になる。
というのも、現場で当時のヘルヴォルと協同し、その後物凄い恨み節をぶつけてしまったのが問題である。
「まあ、あなたの気持ちが分からないわけではないわ。被害者だもの」
「そうなんだけどさ……」
聞いた話によって得た怒りが先行した結果であり、よくよく確認しなかったことが不味かった。ただ、それでも当時日の出町にいた人たちの一部は、隼人のようにエレンスゲ女学院──その代表のヘルヴォルにいい印象を持っていない。
向こうもそうなること承知の上だったのか、こちらに反論してくることは無かったが、それでも言い過ぎではあった。
ただ、こうして話を聞いてくれるアリスは、自分が隼人と同じ立場なら止まらないかも知れないと告げた。あまり感情が表に出ない彼女でも、そこまで条件が揃えば止まれなくなる。
とは言え、同情だけでは隼人の求める解決にはならないので、一つ回答を出す。
「私はこう考えるわ。現場で戦うリリィは関係ない、皆必死で戦っている、とね……」
「……そっか。なら、俺は……」
その言葉を元に、隼人は恨む対象を当時のヘルヴォルメンバー。または惨劇の引き金を引いた張本人のみに絞り込むことを決めた。
そうすることで新しい感情のコントロールを成功させ、以後、今回のようなことを繰り返しはしなかった。
* * *
「……神琳がどこか行った?」
「一人になりたいって言って、行っちゃったみたい……」
隼人が休息を終えて戻って来るや否、そんな話を聞かされて一瞬焦ることになる。戦いに行ったとなればシャレにならない。
だが、流石に戦いに行ったとは考えづらく、どこかで頭を冷やしているんだろうと考えた。
「言い過ぎちゃった……かな?」
「いや、それは大丈夫だと思う」
どうも神琳と雨嘉が言い合いになったらしく、少し反省していた雨嘉だが、鶴紗は彼女を悪いとは思っていない。
ちょっと経緯を聞いてみれば、「確かにそうだな」と隼人も鶴紗の言い分に納得した。もし目の前で言われていたらひっぱたいていたかもと思える程に。
「大丈夫そうでして?先程、簡易チェックも済ませましたが……」
「問題ないよ。コイツ、ビックリするくらい元気だ」
先程ヒュージの打撃をまともに受けてしまった隼人のヘリテージスだが、しっかりとマギを込め切れていたことと、そんなに長い時間拮抗せずに飛ばされたおかげか、ダメージはほとんどなく、戦闘の継続に支障はない。この簡易チェックは、ミリアムも協力してくれている。
これに関してミリアムは「CHARMの剛性と隼人の技量、それからヒュージのパワーが全部嚙み合った結果じゃの」と述べていた。ヒュージのパワーはともかく、隼人側のどちらかが欠けていたら大変なことになっていただろう。
隼人のCHARMに関して問題ないのはいい。昨日の段階で試験運転で一回だけなら使用できる高威力補助パーツの取り寄せをミリアムが大急ぎでやってくれるので、それもいい。後は神琳が一人でどこにいるかだ。
「神琳どこにいるんだろう……?」
二水からは静かな場所に──。と言うヒントをもらえたが、今は遠征で来ているので、その辺はあまりあてにできないかもしれない。
しかしながら、遠征で来ていると言う事は行き先も限られるので、そこにいるかいないかくらいの確認に行くだけなら十分にできる見込みはある。
「……私、ちょっと……行ってくる!」
「お、おい?見つかるか分かんないじゃ……?」
「もしかしたら、雨嘉は当たりがついたんじゃないか?」
鶴紗が制止の声をかけたが、もう既に雨嘉は全力疾走し始めてしまったので、間に合わなかった。
ただ、梅は雨嘉の行動を見てそう予想したし、梨璃は理由はさておきとして雨嘉なら見つけてくれると言うどこか確信めいたことを述べる。
何で毎回そう言えるんだろう?とは思うが、実際にその通りになっているのを何度も見た以上、もう言及する気はない。
「そう言えば、昨日試験運転した補助パーツってどんなの?」
「隼人君はまだ共有していなかったわね……では、簡単に説明します」
ざっくりと言えば雨嘉や百由が使っているCHARMに外付けで装着させる超高威力射撃用のパーツであるらしく、威力は折り紙つきらしい。
そして、これの運用をすると言う発送に至ったのは、近距離まで寄るとすぐに攻撃されてしまったのが見えていたことと、これによってヒュージと一定距離以内で使うノインヴェルト戦術のパス回しが安定しないことが予見されたからだった。
これらが理由で遠距離から十分な高火力攻撃ができるものを用意したいと言う結論にいたり、その手段のパーツが一回だけなら射撃できる──。要するに、一回しかないが実現できる方法であることから緊急的に採用されることになった。
現状それしかなかった故に賛成も早く、ミリアムは急ぎでそのパーツの取り寄せを始めてくれたのである。
ここからは、現在ある情報や装備を元にあのヒュージを討つ為の作戦会議を始めることになっていく。
「うまくいけば……神琳、元気になるかな?」
「うん。神琳さんも元に戻るよ。だから、頑張ろう結梨ちゃん」
「(
結梨を安心させようとする梨璃を尻目に、隼人はかのヒュージを討つ決意を強めた。
* * *
「(やっぱりそう……神琳は、最初からそれを目的でリリィになってない)」
当たりを付けて神琳を探している最中、雨嘉は彼女のリリィになった理由に結論が出ていた。この答えに至った理由は隼人がいたことが影響している。
隼人は最初からヴァイパーを討つことを目的としている為、彼の方はもうそれは当然なのだが、彼女の場合は東シナ海の情報を得てそのように振舞っているのが見えた。
「(やっぱり、ちゃんと伝えよう……)」
どうしてああも厳しいことを言ったり、無茶なことをしようとしたりするのか。普段から彼女を見てきていたから分かる。だからこそ言えないことも──。
正直に言えば、雨嘉はかなりの怒りを抱いていた。昨日のお茶の時からさっきまでで段階的に溜まって来ていたとも言える。
神琳は例え自分を犠牲にしてでもあのヒュージを討とうとしているが、そのことには思うところがある──と言うよりも、思うところしかない。
故に伝えるのだ。彼女が堂々と自分に身の思いを伝えるのと同じように──。
「(結局、一人で先走りしてしまったわ……)」
雨嘉が当たりを付けて向かう先、一回目の襲来を防いだ後に一柳隊メンバーで赴いた観光場所で一人己を顧みていた。
艦長や雨嘉にああいうわ、隼人の忠告も全く活かせないわで、自らの自制心が予想より低いと感じでいたのが原因で、落ち込んでもいる。
だがそれでも、何としてでも彼奴を討ちたいのは確かで、最悪は自分一人だけでもそうするつもりでもいた。
これは一族の無念と考えているのが起因しており、故に神琳の思考を狭めてしまっている要因にも繋がっている。故に、可能性が低くとも、やろうと思わずにはいられない。
「神琳……ここにいたんだ」
「……雨嘉さん」
そして、不出来な妹で申し訳ないと、天にいる兄たちに心の中で詫びていたところに雨嘉がやって来た。
少しくらい気持ちが変わるかと思ったが、それが変わることは無かったようで、神琳は自らが持っているあのヒュージへの情と考えを伝える。
「これは、わたくしの一族の問題……全て、この時の為に」
「ううん。それは……違うよ」
だが、雨嘉はそれを否定する。静かに──しかしながら、ハッキリと。同室で過ごしていて、今の彼女と同じく復讐者だった少年と言う比較しやすい相手もいた。故に結論も出しやすかった。
彼女は──無理に自分を押しとどめようとしているのだ。復讐者と言う枠の中に。
「……何を言ってるんですか?」
「だって、そうでしょ……?最初からヴァイパーを討つ気だった隼人はともかくとして……神琳はちゃんと、違う理由があったんでしょ?リリィになる時に……」
「っ……」
「無理してウソばっかり……ちゃんと話して」
もしかしたら、一番言われたくないところを言われてしまったかもしれない──。それくらい、神琳は誤魔化しようのない言葉の詰まらせ方をしてしまった。
とは言え、自分がリリィになった理由が違うとしても、やはり自分があのヒュージに対してどうするつもりかは変わらない。
「例えそうだとしても、わたくしは……刺し違えてでもあのヒュージを倒すつもりです。それを、雨嘉さんは止めるのですか?」
「ヒュージを倒すのは、止めないよ。でも、刺し違えてもだけは……
それだけは許容できないのが雨嘉の考えで、それなら自分を止めるられるか?と神琳が問いかければ、自らに飛びつき、しがみついてでも咎める気概を見せた。
これは、友だからこそ間違っていることを止めると言う意思の現れでもあり、それが見事に神琳を止める結果となった。
あまり争いや自己主張を好まない雨嘉がここまでするのに面くらい、何故かと理由を問いかけてみると、こんな回答が返ってきた。
「あのヒュージを倒したって、その時隣に神琳がいないんじゃそんなのちっとも嬉しくなんかないっ!」
──そんなの……
神琳は彼女にとって、自分が本当に大切な存在で、自分もまた彼女が大切なのだと再認識する。
自分がとんでもないことをしでかそうとするから、少しでも遠ざけて悲しみを減らそうとした神琳と、様子がおかしいから気にかけ、本気で止めようとする雨嘉。方向性が違うだけで、どちらも相手が大切だからこそできる行動である。
「……ありがとう」
その相手の気持ちが分かったからこそ、やっと素直に礼も述べられたし、目尻から涙も浮かんできた。さっき隼人が自分を庇った時は驚愕と仇敵への怒りで染まっていたのが冗談に思えてくる程に、今はスッキリした気分でいる。
素直になったこともあって、兄からもらった最後のメッセージを正しく伝えることもできた。
──いつか
そして、朋友とは生まれは違えど、死する時は同じでありたいと心から思える存在のことを指すようで、血縁よりも大事だとも伝えられていたようである。
「雨嘉さん……あなたはわたくしにとっての、朋友──だったのですね」
「……!」
大切だと思う気持ちを神琳も伝えたと同義で、お互いにそう思える存在であることが通じ合った。お互いが認めたことでこの日、二人は朋友となる。
この直後に雨嘉が始めて出会った時にちゃんと言えなかった悔しさから、改めての自己紹介をしたので神琳も自己紹介を改めて返し、少なくとも昨日から続いた二人の衝突は終わりを迎えた。
その終わりをよしとしたのか、あれだけ大降りとなっていた雨が、一時的かどうかは分からないが、この時は止んでいた。
* * *
本当にいいかどうかは結構迷いました。
でも、このイベントシナリオでやっぱここだけは外しちゃ行けない思ったんです。
以下、解説入ります。
・如月隼人
結構自己管理が疎かになっていた。
実は過去にヘルヴォルメンバー(一葉たちじゃない時代)に相当キツイ当たり方をしてしまっていた。
それはそうと、神琳の復讐はちゃんと終わらせるつもり。
・郭神琳、王雨嘉
本当の意味でやっと出会えた(ガンダム00感)
本イベントシナリオの要の二人である以上、アレだけは外せなかった。
雨嘉は隼人の存在がヒントになって、神琳の無理してる状態の気付きが僅かに早くなった。
また、神琳は隼人のアドバイスもあったのにで結構ショックを受けてた。
・一柳結梨
隼人が無理する理由が分かって納得。後々ヴァイパーのことはちょっと聞いてみるつもり(相手が許すなら)。
悲しみの匂いが無い人(要するに梨璃みたいな)人が増えて欲しいから、今回の遠征も頑張る。
読みたいイベントシナリオはどれ?
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ノーブルリリィレポート
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アーセナルジェラシー
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朋友のブルーストライク