アサルトリリィ -RED THISTLE-   作:ブリガンディ

40 / 51
第2話 受諾

大規模なヒュージ迎撃作戦を終えて早くも一週間が経過した日のこと──。特型と分類される今まで見たことないヒュージが現れたことと、それによって百合ヶ丘周辺に無断遠征していたエレンスゲのリリィたちの救援が必要になったことで、一柳隊は出撃をしていた。

本来、ガーデンの管轄外には遠征の勧告等をすべきなのだが、エレンスゲは最早常習犯レベルでその辺を全くやらないので、生徒会の一人がご立腹になっていたのは記憶に新しい。

とは言え、起きてしまったものはしょうがないので、とにかく救助と特型ヒュージの確認をする必要がある。優先度が高いのはリリィの救助で、特型ヒュージは討伐までできなくてもいい。最低限はケイブへの離脱を確認できるまでだ。

 

「小型のヒュージの反応を多数確認しましたっ!エレンスゲのリリィが交戦中ですが、少しずつ囲まれ始めてるので、このままだと危ないですっ!」

 

「時間もありませんか……でしたら、三人を先行させましょう。わたくしたちは後から合流と言うことで」

 

「三人とも、多少の取りこぼしは構いませんわ。とにかく、交戦中のリリィとの合流と、その救助を優先でお願いしますわ」

 

「分かった。すぐに後ろからやられないようにだけしておくゾ」

 

短い打合せの後、縮地を持つ三人は即座に行動を始める。三人が早い為、ここからは残った八人もヒュージを倒しながら追随を始める。

 

「エレンスゲの人たちがいるってことは、どこかに待機所とかもあるのかな?」

 

「恐らくは。救助した後、向こうのリリィに確認を取る必要があるわ」

 

遠征をしているなら、責任者がどこかにいるはず。であれば、救助したリリィはそこに送ることになるだろう。

こうしてヒュージを撃滅しながら進んでいく八人だが、進む先の正面にいるヒュージは少ない。横道から正面へやってこようとするヒュージはそこそこいたが。

 

「梅様たち、あと少しで合流出来そうですっ!」

 

「あの三人速いな……」

 

流石に縮地三人での高速進撃は速度が違った。これなら間に合うだろうと、鷹の目でずっと見ながら行動していた二水は判断する。

 

「(そう言えば隼人のやつ、エレンスゲのことは大丈夫なのか?)」

 

一方で、ヒュージを倒しながら進む隼人たちは順調に進んでいき、もう間もなく出来上がりつつある包囲網へたどり着こうとしていた。

ここで一つ疑問なのが隼人がエレンスゲに対してどう思っているかで、彼の経緯を考えれば恨みを持っててもおかしくはない。

 

「(信じるしかないか……。面倒にならなきゃいいが)」

 

自分がいくら気を張ろうとも、隼人の選択と相手の反応や態度次第になってしまうので、なるようになれと梅は思考を投げ捨てる。

これに関しては隼人と当人らの問題であり、自分らが首を突っ込んだところで却ってややこしいことになってしまう可能性が高い。故に信じるしかない。

そして、この三人がたどり着いた直後、まるで円に視力検査用の空きを作るかの如く、その包囲網に穴が出来上がるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「……百合ヶ丘から一柳隊がですか?」

 

『三人と少数だが、確かに百合ヶ丘方面から来た三人が先に交戦している我がガーデンのリリィと合流し、戦闘をしている。先行部隊の可能性が高い』

 

「先行部隊……?隼人たちが……?」

 

隼人ら三人がリリィたちと合流する前、一葉らヘルヴォルのメンバーは待機させられていた所に司令官から通信がやってきた。

エレンスゲと同じように、後続の序列上位にいるリリィたちがヒュージを討つべく使い捨てのように送り出されることは百合ヶ丘ではないはずだが、気が気でない。

 

『……本来ならば、特型ヒュージ補足まで待機させる予定だったが……予定変更だ。ヘルヴォルは移動を開始。リリィたちが合流した地点へ向かえ。レギオン同盟の一柳隊であれば、放置するわけにもいかん』

 

「……?了解。ヘルヴォルはこれより移動を開始します」

 

普段とは意図の違う指令が来て面食らうが、こちらとしてもありがたい命令なので、素直に頷いておいた。

ただし、ヒュージ討伐は他の者に任せて消耗を避けろと言う命令は、ヘルヴォルを起点にエレンスゲを変えていくつもりの一葉に取って聞く気のない命令なので、ヒュージを倒しながら向かうことにするが。

 

「じゃあ、そっちの彼に会うかもってこと……!?」

 

そのヒュージを倒しながら移動する際中、恋花は焦りと驚きが混じったような顔になる。想像よりも速いご対面に驚いている。

とは言え、レギオン同盟を組んだ以上、遅かれ早かれこうなるのだから、腹をくくるしかないだろう。

 

「あまり引きずっているようには見えなかったので、大丈夫だと思いますが……」

 

「向こうがどう思っているか、それも会って見て確かめるしかないわね」

 

茶髪をポニーテールにした少女──芹沢(せりざわ)千香瑠(ちかる)の言うことは最もで、隼人の答えはそこでしか聞けない。

確かに、一葉と話した時は大丈夫だったが、大元を作ってしまった自分はどうなるか分かったものじゃない。だからこそ恋花は不安で仕方ないのだ。

 

「……見えてきた。交戦中のリリィ、あれだね。もう合流してるみたい」

 

赤髪のショートヘアーの少女──初鹿野(はつかの)(よう)が指差す先には、隼人ら一柳隊のリリィ全員が先駆けてエレンスゲのリリィを守りながら戦闘を繰り広げていた。

 

「ヒュージ……やっつける!」

 

「あっ、(らん)!」

 

それを見た瞬間、銀色の髪を持つ小柄な少女──佐々木(ささき)藍はいの一番に飛び出していった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「結梨、弾撃ち交代してくれ!ちょっと撃ち過ぎた」

 

「分かったっ!」

 

「梅様、結梨がある程度以上撃ったら、次は俺が行きます」

 

リリィ二人の窮地を救った後はそのまま隼人と結梨で前衛、梅が後ろから射撃で援護の形を取っていたが、弾数消費の影響で射撃担当を交代する。

基本的にこの三人での先行行動時は梅がメインガンナー、結梨がセカンド、隼人がそれでも足りない時の緊急対応を担当しており、三人の射撃能力と、CHARMの小回り等を考慮して決めている。この中では梅が最も遠距離戦の適正が高く、逆に隼人が最も低い。

故に、隼人はが可能な限り前線を維持する方向でこの順番が決められているが、火力が必要になった場合は隼人が射撃をするように切り替えも可能ではある。

 

「多分、もうちょっとですよね?」

 

「時間的にそろそろだな……あいつらと合流したら、一気に殲滅してこの二人を逃がすゾ」

 

リリィ二人の内、片方が脚を負傷して動けない為、暫しとどまって抑え込む方向になっていたのが、射撃手交代の理由だった。

そして、後続の八人ももう間もなく合流のはずなので、そこからは一気に攻め込むことになる。

 

「大変だけど、もうちょっとだけ待っててっ!」

 

結梨の一声に、リリィの二人も首を縦に二回振って頷く。こちらに不安をかけまいとしてくれた心意気に暖かさを感じたのだ。

それから程なくして、自分たちではないものの銃撃がヒュージを襲った。

 

「待たせたわね。三人とも」

 

「そっちのリリィの人たち、大丈夫ですかっ!?」

 

「梨璃っ!」

 

「これでひと段落だナ」

 

一柳隊の後続部隊が到着したようで、負傷したリリィたちは片方が脚を負傷しており、このまま移動するのは危険なことを伝える。

 

「でしたら、後続部隊八人を主軸に……」

 

──周囲のヒュージを一掃しましょう。と、神琳が提案するよりも早く、どこからともなくCHARMが戦場に放り込まれ、それがヒュージの一体を真っ二つに切り裂く。

 

「ぬおぉっ!?CHARMが飛んで来おった!?」

 

いくら何でも使い方が荒すぎる──と言う如何にも技術者らしい感想をミリアムは抱く。

とは言え、こちらを援護してくれたのは変わりない。そのリリィはどこか──と探したところ、一人の少女が猛ダッシュでそのCHARMを拾い上げ、近くのヒュージを数体、それの一振りで薙ぎ倒して見せる。

 

「一柳隊の皆さん、大丈夫ですか?」

 

「あっ、一葉さんっ!」

 

どうやらその少女はヘルヴォルのメンバーの一人だったらしく、一人で突貫して来たのは、ルナティックトランサーを使用している影響だろうと夢結が推測した。

後から聞いてみたらその通りらしく、彼女に敵陣を切り崩してもらい、そこを四人で支える戦いも結構やるようだ。

 

「一葉、こっちの子が脚をやられてる。逃がすにはそいつらを何とかしなきゃいけない」

 

「脚が……?一柳隊の皆さん、協力をお願いします。二つのレギオンの総力を持ってヒュージを殲滅、安全を確保します!」

 

決まるが早いか、即興で陣形を作り、ヒュージに対して殲滅行動を開始する。

この間、隼人ら先行部隊の三人は消耗を考慮して射撃で援護攻撃に徹していた。

いくら数がいようとも、エレンスゲのトップレギオンたるヘルヴォルの五人と、個性的ながらも優秀なリリィ揃いの一柳隊の十一人が集まれば最早敵と呼べるものではなく、あっという間に殲滅され、リリィ二人を逃がす為の安全が確保されるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

──まさか、実際にこうなるなんてな……。ヒュージの掃討を済ませ、負傷したリリィを逃がした直後、隼人は目の前の現状に内心頭を抱えた。

 

「……」

 

「どれだけ謝ったって許されないかもしれない……恨みをぶつけられたってしょうがないとは思うの……」

 

理由としては、恋花が日の出町の惨劇の元凶だと告げて頭を下げて来たのだ。聞いてみれば、自らの独断行動によって戦場の混乱を招いてしまい、無用な犠牲が増えてしまったと言う。

この日の出町の惨劇によって、一葉の幼馴染みである自分は右腕を負傷するわ両親を失うわがあったことを聞いていたらしく、言わずにはいられなかったのだろう。本人の声音と瞳の潤み具合から、彼女の罪悪感が隼人には見て取れていた。

一応、隼人もそんな人が来た時の答え自体は決めている。なので、後はそれを告げる。

 

「本当にごめんなさい……あたしが、あんなバカなことしなかったら……」

 

「そこまでにしましょう。あなたが悔いてるのは十分に分かりましたから」

 

とは言え、この調子じゃこっちの答えも話せないので、先ずは聞いてもらえるようにストップを掛ける。

そうすれば彼女も一旦言葉を止め、隼人の方を注視する。

 

「例えあなたがそうしてしまっても、そうでなくても、起こったなら起こったことだし、起こったことで俺が殺したいと思うほど憎んだ奴は手伝ってもらったとは言え、この手で殺した。その時点で俺にとってのあの惨劇は……()()()()()()()()。だから、終わった以上は振り返りはすれど、気にしないで生きてくつもりです。何ならそれ、旧ヘルヴォルのヘマですし。だから、()()()()()()()()()()()()()。ただまあ、許すか許さないを言うなら……」

 

──俺はあなたのこと、許すつもりです。これが隼人の選択であり、恋花の詫びを受諾する宣言だった。

本当にそれが原因だとするなら、確かにこの人が幼馴染みである香織とその家族、自分の両親を死なせ、自らの右腕が斬られる遠因に繋がった許せない存在と言えるし、復讐者だった時代なら間違いなく許せなかっただろう。

だが、今の自分はそれらの過去に決着をつけ、未来へ目を向けて生きると決めたリリィだ。ならば、いつまでも過去を引きずっているのも変な話しだし、そうする気も残っていない。

何なら、元々は旧ヘルヴォルのレギオンリーダーの見積もりの甘さと、そこから来る緊急対応の酷さが原因で恋花に反発を招き──と言う形なので、そもそも彼女は元凶でもないのだ。であれば、そもそも怒りの理由がないし、向けるべき相手も違う。

 

「他の人はさておきとして、少なくとも俺に対してはもう気にしないでください。お互い上手くやっていきましょう」

 

「うん……っ」

 

ある意味では恋花が自分のせいだと抱えすぎていた早とちりとも見えるが、隼人が冷静に対応出来た結果一先ず一件落着ではあった。

少し恋花が落ち着くのを待った後、特型ヒュージの捜索を開始することになった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

{ 第  話 }

 

受 諾

acceptancs

 

 

罪を許す心

──×──

There is no feud there

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「えっ……?百合ヶ丘に来た時より酷かったんですの?あのアホンダラは……」

 

「ええ。口喧嘩とかもしょっちゅうで……昔から自分の意志はしっかりしていたと言えばいいのか、頑固だと言えばいいのか……」

 

移動している最中、楓は一葉に隼人の昔のことを聞いてみたら驚愕することになった。何となく昔もそうなんだろうと思っていたら、更にだったのである。

──そうなるとわたくし、彼が変わって行く様を間近で見れたってことですの?それはそれで嬉しいと楓は思った。

 

「あ、アイツ……その辺訓練内容に出てたんですか……」

 

「そうなんだよ……。普通にそんな状況になる?ってのが結構あってさ……」

 

逆に、隼人は恋花から一葉がどんな感じかを聞いてみれば、そちらはそちらで変な癖が治ってないのが判明する。

──一体、何を考えたんだ?詳しく聞きはしなかったものの、隼人は後々不安になったことを記しておく。

一応、隼人の方から恋花には遠慮はしないでいいように伝えてある為、こうして普通に会話ができている。近いうちに隼人に対する抱え事も完全に消えるだろう。

 

「あのふたり、だいじょうぶ?」

 

「うん。大丈夫そう」

 

「彼が冷静で助かったわ」

 

その様子を見て、ヘルヴォルの面々は一安心していた。状況もあるとは思うが、隼人が冷静に物事を見ている人物なのは非常に嬉しい話だった。

そうしてところどころ会話を交えて進んで行くと、件のヒュージ──特型ヒュージの姿を見ることができた。

 

「アレじゃの……」

 

発見さえできてしまえば、残りは討伐の為の追跡準備等は百由の方で進められるので、一柳隊としてはこの時点で最低限の目的は達成できた。

しかしながら、このまま特型ヒュージが居続けてしまえば、無用な被害が出てしまうかも知れないので、最悪撃退だけはしておきたい。

 

「まだ何もしてこない……?」

 

「でも、このまま放っておくこともできないし……うーん」

 

放っておくと何もしてこないで居続ける可能性もあるし、手を出せば反撃してくる可能性もある。

そして、居続けると何をしてくるか分からないので、やはり撃退するためには手を出すしかないのが現状だった。

 

「……!?私たちとあのヒュージの間からヒュージが出てきますっ!それと、あのヒュージが移動し始めましたっ!」

 

「逃げるのか?それとも……」

 

何であれ、このヒュージを突破して、追わねばならない。そう決まれば早く、先程と同じく連携を取ってヒュージを速やかに撃滅する。

消耗も回復しているので、先行行動の都合で先程は後ろに控えていた隼人と結梨も前衛に復帰しており、その影響か素早くヒュージを倒し、特型ヒュージを追い始めることができた。

しかし、攻撃等ができたのかと言えばそうはならなかった。

 

「……!ケイブが出てる……撤退する気ね」

 

何故ならこの特型ヒュージはケイブに入り込み、撤退することを選んだからだ。

二水の鷹の目でこの近くに他のヒュージは残っておらず、一葉も司令官への確認を取ってヒュージの反応が消失したことを確認したので、一先ずこの区域での対ヒュージ行動は終わりとなる。

それを聞いた隼人は一瞬息を吐いたあと、今回の特型ヒュージに対する一つの疑問を口にする。

 

「アイツ……ヴァイパーと同じで、何かの条件を満たしたら逃げるのか?」

 

「それは分かりませんが……意識する必要はありそうですわね」

 

十分な時間居座ったから撤退したのか、それとも自分が勝てない条件だったから逃げたのか──分からないが、今のところ留意する必要はある。

そして、それは今ここで考えても仕方のないことではあるし、ここに留まり続ける理由もない。であれば、今回はもう撤収してもいいだろう。

 

「よし。取り敢えず百由様にもデータは送ったし、後は解析待ちじゃな」

 

実際、特型ヒュージに関してはこうするくらいしかなく、この後は疲れを癒したり、次に備えて整備等を怠らないようにするくらいだ。

何か分かれば再び合流するとは思うが、一先ず今回は解散し、それぞれの場所へ戻ることになった。




一旦メインシナリオ1話の1が終わりました。

以下、解説入ります。


・如月隼人
本人に対する恨みも無いので、恋花の話を聞いて許した。
先行行動三人組で最も遠距離戦の適正が低く、多くの場面で前衛を張ることになる。


・ヘルヴォルの皆さん
一葉と恋花以外は今回初登場。先行行動三人組の影響で、揉め事とかなしで少しだけ早く移動が開始できた。
隼人がああ回答したので、今後の行動で変に抱える必要は無くなった。


・吉村・Thi・梅
描写にはないが、危惧したようにはならなかったので一安心。
先行行動三人組では最も遠距離戦の適正が高く、残り二人の戦術と性格の都合から後衛に回りやすい。


・飯島恋花
隼人に許してもらえてようやく肩の重みが一つ取れた。
それはそうとヘルヴォルでの活動は頑張るつもり。

読みたいイベントシナリオはどれ?

  • ノーブルリリィレポート
  • アーセナルジェラシー
  • 朋友のブルーストライク
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。