アサルトリリィ -RED THISTLE-   作:ブリガンディ

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第3話 接近

特型ヒュージとの初遭遇から早くも約一週間──。十年ほど前から恒例行事と化した、百合ヶ丘主催で行うグリーンフェス時期がやって来ていた。

一柳隊はグラン・エプレのメンバーと共にその準備を手伝うことが決まっており、隼人らに取っては叶星以外のメンバーと始めて顔を合わせることになる。

 

「なるほど……以外と用意するものは多いんですね」

 

「本当だ……準備する人の人数が多いのって、そう言うことなんだね」

 

隼人や梨璃、二水と言った比較的初参加のメンバーが一柳隊には多い、それ故か、用意する内容等が記載されている資料を見ても今一その規模の大きさにピンと来ない者もいる。

一応、やれば分かるだろくらいに構えておけばいいなと割り切ってはいるので、不安に思うものも特にはいないが。

その後少ししてからグラン・エプレの五人も到着し、それぞれ簡単に挨拶を済ませる。

そして早速、それぞれのところで仕事が始まることになった。

 

「……使う土に違いとかあるのか。それでこんなにあると」

 

「複数のお花を並べるらしいから……大変だけど、頑張りましょう」

 

培養土、真砂土、赤玉土、腐葉土……それぞれ育てる花に向いている土が違うらしく、それの種類と数の合計を見て、隼人は一瞬だけ硬直する。

ちなみに、育てること自体は終わっているので、育ち切ったものを運んでいくことになっているのだが、それでも多いことには多い。こちらは単純に力仕事である為、隼人は自然とこちらを手伝うことになっていた。

 

「あっ……そう言えばなんですけど、そっちの人たちって俺を警戒してたりとかは……?」

 

「それなら心配ないわ。あなたが切れるナイフみたいな人じゃないこと、みんな分かってるから」

 

神庭女子は隼人への目線はしっかりしており、『ヴァイパーを追っている人物ではあったが、ヒュージから人を守る為に共闘する仲間』であると認識しており、そう言う人はいない。

それを聞いて一安心した隼人は、気を取り直して割り振られた仕事の遂行に移るのだった。

 

「へぇ……こりゃいいな」

 

「こうやって複数のお花たちが並ぶの、綺麗よね」

 

この辺の知識は素人目の隼人でも一発でいいものだと分かった。何というか、心が落ちついていく感じがする。

こう言うことをやってみるのもいいと思うが、やるためのスペースは無いので、今回のこれが完成された時の景色を楽しむことに決めた。

ちなみに、運ぶ花はまだまだ残っているので、一度戻って次に運ぶ花を取ってくることになる。

 

「(次はこれか……)」

 

担当の人もそれなりにいるのだが、後もう三、四往復くらい必要そうなので、早いうちにやってしまおうとも考える。

グラン・エプレのメンバーは交流も兼ねて百合ヶ丘のリリィたちと組んで準備しているようで、叶星もその一環で隼人と共に準備をしていたのだが、花を育てるガーデニングは叶星がよくやるようで、その辺の話のおかげで話題には困らなかった。

もし時間があれば一年生組とも話すことを進められた隼人がそれを承諾したところで丁度運ぶものも無くなり、一旦戻ることになる。

 

「お疲れ様。そっちの彼とは上手くやれた?」

 

高嶺(たかね)ちゃんもお疲れ様。大丈夫。上手くやれたわ」

 

丁度、夢結と一緒に作業をしていた金髪の髪を伸ばした神庭女子の生徒である少女──宮川(みやがわ)高嶺がこちらに来て叶星に声を掛けた。

実際、隼人も途中の会話での話題が向こう任せだった故に、ここは素直に頷いて肯定する。

 

「なるほど……それなら、私がいなくても叶星は大丈夫そうね?」

 

「た、高嶺ちゃん!?そんな大袈裟なこと言わなくたって……」

 

「(気のせいか?叶星様の目が揺れたような……?)」

 

顔を赤くして恥ずかしそうにしているが、瞳からは普段を感じているようにも見える。高嶺は普段通りなのか、いたずらっぽい笑みを浮かべている。

恐らくだが、この二人に取ってはいつも通り過ぎて気付いていないのかも知れない。この為隼人は、可能な限りでこの二人が戦場から共に生還できるようにしようと考えた。

 

「……隼人君?」

 

「ああ、すいません。ちょっと考え事してました」

 

「そうなの?何かあったら誰にでもいいから相談しなさい。あなた、抱えがちだから……」

 

実際、この前もやってしまったので、答えが纏まらなかった時点で誰かに話そうと隼人は心に決めた。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「私、実は……で……!」

 

「分かりますっ!土岐(とき)も、実は……で……!」

 

「……なんか、凄い楽しそう」

 

その一方、別の場所で準備していた二水と、グラン・エプレのメンバーの一人で、青磁色(せいじいろ)の髪を持った少女、土岐紅巴(くれは)が共にリリィオタクだった故に、意気投合していた。

実際、二人揃って自分たちは魂の友(ソウル・フレンド)だと共に言ったりするものだから、この投合具合は相当なものである。

その光景を見て、結梨も純粋に凄いと思った。ちなみに、紅巴がシュッツエンゲルの絡みが好きだと言うので、二水はそれはもう嬉しそうに梨璃と夢結のことを話し、この結果一緒にいた梨璃が顔を真っ赤にした。

 

「(この前のヘルヴォルの時もそうでしたし、今回の叶星様とも問題なく話せてるようですし、大丈夫そうですわね)」

 

隼人と楽しそうに話している叶星が羨ましいと思わないでもないが、それでも楓の中では安心の方が勝った。

──どうせならこう、デートでもできないかしら?楓はどうにかして隼人を誘えないかと思考が回る。

作業も終わったのだから、そろそろ誘っても大丈夫だろうか?そんなことを考えるが、一旦後回しにする。その時誘えばいいのだから。

 

「いよーし、終わったーっ☆」

 

そこまで考えを纏めた直後、作業を終わらせた一人の少女が声を上げる。

僅かに桜色が混ざったような銀髪を持つ少女──丹羽(たんば)灯莉(あかり)の声であり、彼女はグリーンフェス用のポスターの絵を描いていたのだ。

その出来栄えの良さは近くにいて見せてもらった全員が感心する出来で、彼女の画力の高さが伺える。

──と、ここまでは完璧だったのだが、一つ気になった部分があるので、それを問うてみる。

 

「これ?定盛(さだもり)

 

「……ちょっとぉ!?」

 

それを聞いたピンク色の髪をツインテールにした少女──定盛姫歌(ひめか)は憤慨する。

無理もない。何を持って彼女にしたのかと言えば、最早その人の原型をとどめてない何かの丸い物体的なものだったからだ。

彼女もグラン・エプレのメンバーで、灯莉も同じくそうであるため一緒に行動していることが多いことになるが、もしかしたら相性が悪いのだろうか?と一瞬思ってしまったが、言うほど本気とは言えない状態での言い合いだったので、そこまで心配することはないだろう。

姫歌は自らのことを『アイドルリリィ』──アイドルのように持て囃されるリリィの総称を名乗っており、神琳に対しては尊敬と対抗心の二つを見せていたようだ。と言うのも、神琳は丁度そのアイドルリリィに該当するからであった。

アイドルリリィの分類としては、ガーデンの中で他のリリィに愛されるガーデン代表タイプとリリィオタクなどにもてはやされるアイドルタイプ。そして、ガーデンの学校案内の表紙を飾る前者二つの中間のタイプが大まかにあり、神琳はガーデンの学校案内の表紙を飾るタイプであるようだ。

これに関しては二水と紅巴も知っていることであり、近いうちまたその話で盛り上がることになるだろう。

 

「……梨璃さんも素養ありそうですわね。勿論、結梨さんも」

 

「ふぇっ!?私!?」

 

「……そうなの?」

 

自己評価の低い梨璃は驚き、その辺の知識が疎い結梨は少々困惑を返した。

逆に、隼人とは全く縁のない話だろうなと楓が思った直後、ヒュージ襲来の警報が聞こえた。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

そして急遽出撃することになった隼人たちだが、今回、叶星と高嶺は夢結と楓の二人と組み、グラン・エプレの一年生組は隼人、結梨、梨璃、二水の四人が一緒に組むことになった。

この二組は別方面へそれぞれ向かい、この二組が行かなかった場所も残りの一柳隊のメンバーで対処していくことになっている。

ちなみに、この七人は少しだけ規模の大きい場所を担当しており、逆に、叶星や夢結が組んだチームは規模が少ないが、近くに集まった複数の場所を担当するそうだ。

 

「なるほど……それなら、こうしましょう」

 

この四人の特性を教えて貰った姫歌は基本的な陣形を提案する。

天の秤目を使える灯莉は基本的にバックアップ。狙撃で一体一体遠くの敵を狙っていくのが中心。接近戦に秀でる隼人と前で戦う傾向の強い結梨で前衛を張り、近くに来るヒュージを倒していく。

二水は索敵しつつ可能な範囲で援護。周囲の確認が大事なので、無理はしすぎない。そして、残った三人で明確な役割を持っている四人のフォローに回る。

姫歌は戦術指揮も可能なリリィで、この中で即座に指揮を執ることができる人がいるのは大きかった。

 

「隼人、行くよ?」

 

「合わせるよ。行こう!」

 

決まるが早いか、隼人は結梨と共に前に出る。しかしながら突出はしない。あまり前に行き過ぎると後ろの五人がから十分なサポートも受けられないからだ。

二人はそれぞれの方向から来るヒュージを見て、早く対応できる位置にいる方がそちらへ向かい撃破。囲まれそうならすぐに少し距離を取り、そうでないならもう一体撃破してから少し距離を取って仕切り直しをしていく。

奥にいるヒュージは事前の打合せ通り、灯莉が一体ずつ狙撃で的確に倒していき、効果的な狙撃が見込めなくなれば素早く移動をする。

 

「後ヒュージが多い方ってどっち~?」

 

「左側がまだ残ってますので、そっちにお願いしますっ!」

 

移動の際、聞いた方が早いので二水に確認を取ってから移動する。こうすることで一々自分から探す必要はなく、すぐに次の狙撃を始められる。

基本的に鷹の目で索敵に徹することの多い二水だが、余裕さえあればこちらにヒュージの意識を集中させすぎない程度に皆の援護を目的とした攻撃もしている。

万が一危なくなれば、その時は足の速い二人か、近くにいる誰かがフォローが入るのでこの辺は非常に助かる。鷹の目を使いっぱなしで戦闘するのは距離感等が狂いやすく、非常に難しいのだ。

 

「梨璃っ、ちょっとだけお願い!」

 

「任せてっ!」

 

無理をしすぎれば自らの負担が大きくなり、却って味方の救助を要することになる。故に、そうなってしまうより前に助けを呼ぶ。それが、大規模迎撃作戦をした時に得た反省である。

そうすれば自分が呼んだ梨璃も助けてくれ、自分も無理なく立て直しができる。

 

「ちょっと頼めるか?」

 

「は、はいっ!」

 

隼人もその辺りは同じで、すぐ近くにいる紅巴が手伝ってくれる。

立て直しの際に早撃ちで一体撃破しているのも、弾をあまり使わない戦術故に、多少使ってもいいからである。

そして、手伝って貰ったことへの素直な感謝も忘れない。これから戦う仲間との一種の交流でもあった。

 

「二水ちゃん、残りは!?」

 

「後は真ん中の集団だけですっ!」

 

「なら、後は一気に終わらせるわよ!」

 

そこまでヒュージの数が減ればそれぞれのポジションで一々行儀よく戦う必要もない。全員で畳み掛けるだけだ。

ここに来ていたヒュージたちは統率できる存在もいなかったらしく、こちらの動きの変化には全くついてこれずに殲滅されていった。

 

「周囲に反応なし……ここはもう大丈夫ですね」

 

最後に鷹の目でチェックを入れ、戦闘が終わったことを認識する。

 

「みんなもう終わったのかな?」

 

「ここの規模は大きかったし、もう終わったんじゃないかな?」

 

気になって確認を取って見たところ、全て終わっていたらしく、グリーンフェスの最終確認さえ終われば開催できるらしい。

 

「ところで如月君、一つ気になったんだけど……」

 

「……?気になるって?」

 

「何というか、都内で活躍していた時と比べて大分戦い方も落ち着いてたように見えたのよ。そこに心辺りはある?」

 

──なるほど、そう言うことか。姫歌の問いで隼人はその意図を察した。それはそうだ。今の自分には殺したい程憎んでいる相手もいないし、何よりも──。

 

「他の誰よりも悲しませたくない相手ができた……多分、そこなんだと思う」

 

『……えっ?』

 

誰だろうと気になる結梨を省き、全員が予想外の回答に驚く。落ち着いた理由が無茶の反省でもなく、特定の相手だった。

 

「もしかして、その人……好きだったりするの?」

 

「うーん……そこはちゃんとした回答を出せないな……。ただ、気になる相手ではあるよ」

 

実質的な告白までされてしまっている以上、気にしないわけが無い。後は自分がどうするか。その回答を見つける必要がある。

 

「あ、あの気になるってことは……!」

 

「見れるんですかっ!?ガーデン内で正真正銘の恋愛が見れるんですかっ!?」

 

「おおっ!?どうした急に……!?」

 

リリィに関することを色々追いかけるリリィオタクの二人だが、そこは年頃の女子でもあるし、恋愛沙汰が気にならないわけでもない。

そうなれば食いついても来るし、隼人もいきなりで面食らうことになる。とは言え、楓のあの状態からすればそうなるのだろう。

 

「(……グリーンフェス、アイツ誘って回ってみるのもアリか)」

 

そうなれば、隼人は決断を下した。普段は向こうから来てくれるが、たまにはこちらから誘ってみるのも悪くないだろう。

 

「ところで隼人くん、その気になる相手って……誰?」

 

一柳隊のメンバーはあの一件があるので気になる相手に関して予想はできるのだが、一応聞いてみることにする。

 

「ああ、その相手は……」

 

そして、隼人の回答はその予想通りの相手であった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「おお……!本当に、この時が来るだなんて……!」

 

「ガーデンで過ごしている内に、見れるとは思いませんでした……」

 

そして戻った後、グリーンフェスは無事に開催され、隼人は先ほどの宣言通りに楓と一緒に回りたいので誘い、楓がそれはもう嬉しそうに承諾したため成立。こうして一緒にグリーンフェスを回っている光景が広がった。

先ほど一緒にいた六人は、それを陰から見ていた。こんな機会次はいつ訪れるかなんて分かりやしない。実際、周りから滅茶苦茶注目を集めている。

 

「おおー……見事に手を繋いでる。らっぎーやるなぁ~……」

 

「それ、彼へのあだ名?まあでも、楽しそうね」

 

ちなみにこのあだ名、この瞬間に思いついたものである。

本人がどう反応するかは分からないが、その時の反応次第続けるかが決まるだろう。

 

「梨璃と夢結の時と何か違う……?」

 

「あ、あはは……確かにそうだね」

 

確かに夢結ともそうやって仲睦まじくしていたので、そう見えるのもおかしくはない。

ちなみに隼人は楓と一緒に並べられた花を見て回る最中、叶星に教えてもらった知識を引き出してそれについて一つ一つ簡単に話していっている。

その途中、花にはそれぞれ花言葉があることと、自らの経緯もあってこれを思い出した。

 

「そう言えば、復讐とか、そう言う花言葉を持ったやつもあるんだったな……。確か赤いアザミの花だったはず」

 

それはアリスに教えてことだった。自らの憎悪をその花に例えたのである。勿論、今はそうではないし、それが終わった状態でこのグリーンフェスを迎えられたのは良かったことだと思う。

アザミの花と言えば白いアザミの花もあると聞いたが、それは何という意味だっただろうか?それは今一思い出せないでいた。

 

「同じアザミの花ですが、白いアザミは「ひとり立ち」、「自立心」を意味するそうですわ」

 

──自分の意識でここに残り、最後はあそこを旅立つことを決めたあなたにはピッタリではなくて?さりげなく出された回答に物凄い納得した。

それに対して素直に礼を述べ、今の自分を大切にしたいと改めて思った。

 

「ありがとう。また一個貰い物したよ」

 

「お返しなら別に構いませんわよ?今回、もう十分すぎる先払いは貰ってますもの……♪」

 

思いっきり左側に胸元を押しつけて来るのに驚いたし、胸の高鳴りを感じたりもしたが、楓が楽しんでくれているならそれでいいと隼人は思った。

彼女の伝えた想いに対して、隼人は肯定を返してもいいんじゃないかと思い始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

{ 第  話 }

 

接 近

approach

 

 

距離の縮まる瞬間

──×──

White thistle approaches the answer




メインシナリオ1話の2が終わりました

以下、解説入ります。

・如月隼人
楓への気持ちが大分強まった。
叶星と高嶺の間で不安定そうな何かを感じた。そう遠くない内に誰かに話しておくつもり。


・楓・J・ヌーベル
隼人にデートのお誘いを受けてウッキウキ。
今の現状に対して白いアザミと表現。その裏で隼人がいい返事をくれないかドキドキもしている。


・グラン・エプレの皆さん
叶星以外はこれが初登場。叶星と高嶺は何かあった模様。
戦場でになってしまったが、一年生組と隼人もまあ上手く行っていた。この先は今後次第。

ロックマンエグゼのコレクションで遊ぶので、また次回の投稿が再来週になります。
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