アサルトリリィ -RED THISTLE-   作:ブリガンディ

42 / 51
メインシナリオ1話の3をやっていきます。
次からやるメインシナリオ1話の4と5が終わると一旦ターニングポイントかな?


第4話 練習

「なるほど……高嶺様にはそんな事情があったのか」

 

「向こうはそれでも戦うつもりでしたので、止めはしませんでしたが……」

 

グリーンフェスから数日後、隼人と楓はガーデン内を共に歩きながら、高嶺の事情を共有した。明確な回答が得られなかったので、楓に聞いてみた次第である。

どうも過去にヒュージから攻撃を受けた時の影響で、マギの受容量が非常に少なくなってしまっているようで、これをグラン・エプレ一年生組にはまだ話していないそうだ。

楓はいつかしっかり話してあげてほしいとだけ伝えてそれ以上は干渉しない方針を取り、その場では丸く収まっている。

隼人も自分が気になっていた叶星のあの目に関しての答えを得れたので、事情はさておき今はよしとする。

 

「まあ、本人が戦うって決めたんだしそこは無理にアレコレ言わなくていいと思う。後はこっちでさりげなく意識すればいいはずだ」

 

「……止めませんのね?」

 

正直意外だと思った。何しろあれだけ命への執着が大きい隼人が、そこに関して過干渉をしないような言い方をしたのだから──。

だが、理由自体はちゃんと存在している。

 

「だって、俺が実際に無茶やってるじゃん」

 

そう言われて、楓は大体察した。

確かにそうだ。彼もこうやって自ら危険な場所に赴いているのだから、そう言う事は割と言いづらくもあるし、言おうともしないのだろう。

戦果だなんだであれば、違っただろうが、人を助ける為等であればこう言う人であった。

 

「確かに、そうでしたわね」

 

実際、彼は結構無茶をしていた。それはきっと、アリスの行動と想いを尊重すると同時に、自分の意志にしたからなのだろう。

最近こそ、本当に行かなければ不味い時以外は無茶を控えるようになったが、それは他者の心配等も配慮するようになったからだ。それまではずっと無茶をやり続けていた。

生還できる範囲(マージン)を絶対に守っているからいいものの、何度も見るのは気が気ではない為、正直助かっている。

これによって自分が重い奴だと思われているかもしれないと言う不安も少しはあるが、隼人自身は自分に非があると言う認識である為、意外と問題は無い。

 

「……聞きそびれていましたが、どうして百由様のところに行こうとしてますの?」

 

「ああ……それは着いてから話すよ。()()の話だから」

 

そこで事情を察した楓はそれ以上の追及をしなかった。

 

「お疲れ様です。百由様」

 

「おっ、来たわね隼人君。楓さん、今回もちゃんとパーツの配送出来てるわよ。たった今パーツの交換作業中だから、お二人ともちょーっとだけ待っててね」

 

「少しだけ、タイミングが悪かったようですわね……」

 

「百由様、戻ったぞ……ってお主らも来ておったか」

 

部屋に訪れて見れば、相変わらずの様子を披露していたのと、ほぼ同時にミリアムが戻ってきた。

隼人自身が割と丁寧な扱いをするので、今日まででどうにか二回目の交換で済んでいる。本人向けに最適化されている所も多分にあるが、そもそも本人が環境の都合で消耗させすぎないように気を付けていたのもあるのだろう。

実際、隼人は最初こそ消耗率が激しかったものの、少しずつ改善されて今のように至っている。

 

「よし、今回も無事に終了よ。余程激しい戦闘をしないなら、今回と同じくらいのペースで構わないわよ」

 

──夢結とかも、これくらい丁寧に使ってくれればいいんだけどなぁ……。と言う百由の嘆きは聞かなかったことにしておく。

とは言え、隼人も状況次第では荒い扱いをしてしまう為、そこは気を付けたいところだ。

 

「そう言えば、話って何かしら?」

 

「一応事前通知なんですけど、俺の右腕の話は覚えてますよね?」

 

「勿論、覚えてるわよ。ということは、それの話ね?」

 

「ええ。アレの公開可能な人にヘルヴォルとグラン・エプレのメンバーが追加になったって言うのと、ヴァイパー討った後にナノマシン取り替えたからその更新版を一足先に渡そうと思いましてね……」

 

ちなみに、先行配布は百由と楓、ミリアムにのみ可能だったので、それを一足早く渡しておく。

ご丁寧に何の資料か分かりづらくする為に、カラーファイルに入れて渡していた。

 

「基本的な部分は変わらんの……まあ、わしらからすれば復習みたいなもんじゃしの。ところで、わしも見てよかった理由はなんじゃ?」

 

「単純に百由様と一緒に作業する以上、タイミング次第でバレるってのと、一度教えてるから別にいいやってのが理由だよ」

 

楓は隼人との距離が近いことと、実際にナノマシン交換の場面を見せていて隠蔽も何もない。百由は自らで答えに辿り着いたもので、百合ヶ丘の性質上信頼できると判断されてだった。

これ以外にも、今後の隼人の生活に自分たちが関わる必要性を極限まで下げるべく、ここから百由が独自にメンテナンスシステムを作っても、情報管理さえしっかりしていれば問題ないとすら思っているとも言っていたことを告げる。

 

「それは大きく出たわね……まあ、()()()()()にあるナノマシン技術を解析してコピーできるようになればどうとでもなるけれど」

 

資料と隼人の右腕にあるナノマシンの技術を知ることは条件だが、それさえあれば何とかなると言えてしまうこの人も大概だと隼人は思った。

 

「……なりますのね?」

 

「百由様なら、時間さえあればできてしまうじゃろうな……」

 

一人でメキメキやっていくだろうと考えていた矢先、ミリアムの肩を百由が軽く掴む。

 

「あら、何他人事のように言ってるのかしら?ぐろっぴも一緒に決まってるじゃない」

 

「サラッと死刑宣告をするんじゃないわっ!百由様の新規開発に付き合ったら地獄が始まるんじゃぞっ!?」

 

そこからちょっとだけ口論が起きたものの、今は隼人の右腕の話をしていた最中なので、すぐに冷静さを取り戻す。

 

「じゃあ改めて、これは貰っておくわね。私たちはコレに保管しておきましょう」

 

「了解じゃ。わしの分も預けておくぞ」

 

「わたくしも、こちらは丁重に管理いたしますわ」

 

約束してくれた三人に礼を述べ、お願いしますと隼人は返した。

これで用は済んだので、一先ずその部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

そして翌日──特型ヒュージはレギオン同盟で討つことが正式に決まり、百由の尽力によって特定の目途も立った。後は出現予測が出来次第討ちに行くこととなる。

特定できるまではまだ少し時間があるので、一柳隊とグラン・エプレで顔を合わせ、ノインヴェルト戦術に関することの講義を行うことになった。

意外にもこのレギオン同盟で九人体制が基本となるのは一柳隊──要するに一柳隊のみで、他の二レギオンは使う機会が中々訪れないことから、この機会に基礎知識の学習ないし、おさらいをし、その後練習してみようということになって今に至る。

その説明役は二水が任されており、ノインヴェルト戦術がどんなもので、どういう流れでやるのか、その辺りの説明をやってくれる。グラン・エプレのメンバーもこの辺知識はあれど、実際にやったことは無いので、改めてしっかり聞いている。

 

「ちなみに、五人でやる場合は『フンフヴェルト戦術』と呼ばれることもあるみたいですよ」

 

ノインがドイツ語で9を意味するのだが、フンフもまたドイツ語で5を意味する。単純に人数に比例した数字付けである。

──と、ここまで改めてノインヴェルト戦術の話を聞いたのはいいが、やはり当然の如く一つの問題点は出てくる。

 

「ノインヴェルト戦術は、共鳴率の都合上、10代の少女にしか使えないはず……」

 

──なら、隼人君は使えるの?一人だけ男である以上、事情を知らなければ当然疑問が出てくる。

これに関しては使える使えないだけなら答えることもできるが、どこまで話していいかは慎重にならざるを得ない。

隼人がヴァイパーを討つべくノインヴェルト戦術を求めていたのは、都内のリリィたちには周知の事実であり、そんな彼が使えないのであれば非常に悲しい話だ。故に、気になってしまう。

 

「(……?)」

 

「(大丈夫だよ。隼人くんを信じてあげて)」

 

そして、唯一一柳隊の中で事情を知らない結梨は梨璃の方を見るが、一先ずは彼女の言う通りにすることにした。

ちなみに隼人自身もどう答えるか自体は決めてあるが、即公開だけは流石にできないのが現状である。

 

「使える使えないだけなら使えますよ。ただまあ、理由に関してはちょっとだけ待ってて欲しいです。それは三レギオン全て揃っている時に話すので」

 

「答えられるならでいいけど……人体の方が理由かしら?」

 

「まあ、そんなところです」

 

高嶺の勘が非常に鋭いのか、それとも隼人の事情が分かりやすいのか。問われたので右手を開いたり閉じたりして回答する。気付く人は気付くだろう。右手、または右腕が理由だと。

実際、隼人も今すぐ技術を公開しろと言われたらそれは拒否するが、それ以外は別に答えてもいいラインだった。その為、特に隠すことはしない。寧ろ隠しすぎると疑問を持たれてしまう可能性がある。

 

「って、すいません。いきなりこんな空気にしちゃって……」

 

「い、いえ!私の方こそごめんなさい!そもそも聞かなければこうならなかったのだから……」

 

妙に空気が重くなってしまい、事情持ちの隼人と最初にノインヴェルト戦術の可否を聞いた叶星がそれぞれ謝る。

──今後もこう言うのは増えるかもな……。そう思いながら、隼人は今回の件を頭の中で素早く水に流した。

 

「では、説明等も程々に練習してみましょう。パス回しからフィニッシュショットまでを、決めてくださいな」

 

「梅がヒュージ役として妨害するから、盗られないように気を付けるんだゾ」

 

少し変則的な形でにはなるが、グラン・エプレのノインヴェルト戦術練習が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

{ 第  話 }

 

練 習

practice

 

 

今のうちにやっておく

──×──

sure it won't go to waste

 

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

梅はこう言うものの、流石に始動の弾から一発目で取ろうと考えてはいない。パス回しのタイミングで取り合いの強要を狙って割り込もうと思っている。

始動は今回姫歌が担当することになり、それを灯莉に向けて飛ばす。

特殊弾を受け取ってマギスフィアが出来上がったのをみて、梅はそこから仕掛けることにした。

 

「おおっと……!?」

 

「中々速いな……次はどうする?」

 

マギスフィアを持ったCHARMにCHARMを重ねればパスになる為、今回梅へ強制的にパスさせられれば、それを奪われてロスト扱いとなってしまう。その為、上手いこと梅を避けてパス回しをやっていく形になる。

実戦ではヒュージに対して射撃攻撃等をして牽制をすることも大事になってくるが、流石にリリィ相手にそれをやるわけにもいかないので、その辺を考慮して梅も有情さは残して妨害行動を行う。

とは言え、相手の練習になるよう手抜きはしないが──。

 

「よし……とっきー、コレお願いっ!」

 

「は、はい……!」

 

どうにかCHARM同士の衝突によるマギスフィア強奪を避け、パスを飛ばす。

飛ばされたパスを紅巴が受け取ったのはいいが、直後には梅が目の前にいて張り付いていた。

 

「……!?」

 

気付くや否、すぐに盗ろうとして来たので、CHARMと身体を後ろに引いてそれを避ける。

早いことパスを回そうと強奪を避けながら周りを見渡すが、問題点が出てくる。

 

「(灯莉ちゃんと姫歌ちゃんにはもうパスができない……叶星様は梅様の向こう……高嶺様は……?)」

 

パスをしようにもパスをする相手に物凄い難儀な状態となっていたので、周りを確認しながら避けるをするしかない状態だった。

 

「紅巴さん、こっちに回して!」

 

「……お願いしますっ!」

 

その声を聞き、咄嗟にその方向へパスを飛ばす。

避けた直後にパスを飛ばしたのもあってか、少々際どいパスコースになってしまったが、高嶺は見事にそれを受け取って見せた。

 

「簡単には取らせないわよ?」

 

「じゃあ、遠慮なくいくゾ?」

 

そこから二人による取り合いが始まる。梅の盗ろうとする行動に対し、高嶺は素直に引く、敢えて押す、身体を回しながら避ける等、択を絞らせないようにして避け続ける。

これらが先ほどとは違い、かなり高速で繰り広げられている。梅も高嶺相手は本気を出していいと判断したのだろう。

 

「(さて、そろそろね)」

 

「……!」

 

このまま取り合いが続くかと思いきや、梅が少し緩急を付けるべく、意図的にペースを下げた瞬間に高嶺が無言でマギスフィアを飛ばした。

目で追って見れば綺麗に叶星の方へとパスが回されており、これで五人分のマギスフィアが集まったので、叶星は空へ向けてフィニッシュショットを放つ。

本来はヒュージに向けて撃つのだが、今回は例外である。

 

『……』

 

その一連の流れに、一同は目を奪われた。それだけ完璧な連携だったと言える。

 

「いやー……一本取られたな」

 

実際、梅もそんなことをされるとは思ってはいなかったので、完全にしてやられた形になる。

それと同時、この二人が非常に息が合っているのは分かったがどうしてそこまでできたかは純粋に気になった。

 

「長い時間共に戦って来たから……と言うのもあるけれど、信じているからよ」

 

確かに、相手を理解していても信じられないならああはできないだろう。信頼と理解の両立は非常に難しいことだ。

彼女らの連携を注視してしまいがちだが、その連携をする為の繋ぎをやり切った紅巴の行動も見逃せない良い点の一つである。

 

「そ、そんな……!土岐はただ、声を聞いてが精一杯だったので……!」

 

当の本人は恥ずかしそうにしていたが、あれをやれるだけでも中々である。

ノインヴェルト戦術は味方との連携が何よりで、それぞれが自らにできることを精一杯やり、助けられる限りで助けるのが大事である以上、反応できた紅巴も、際どいコースを拾った高嶺もそうだが、全員での成果になる。

グラン・エプレのメンバーによるノインヴェルト戦術の練習は問題無しとなり、彼女らが気になるだろう隼人がノインヴェルト戦術を可能なのかの紹介をすることにした。

こちらもフンフヴェルトの形式で行えばいいと考え、隼人、楓、梨璃、夢結、結梨の五人で行うことにした。

 

「では隼人さん。締めはお願いしますわ!」

 

「任せろ!」

 

楓からのパスを受け取った隼人はそのまま上空へとフィニッシュショットを放ち、彼が問題なくノインヴェルト戦術ができることを証明した。

これが終わってから実際に口にはしなかったものの、普段よりも明らかに負担が軽いと隼人は考えた。ヴァイパーをフンフヴェルトでも討てたかは()()()()()()()()

 

「隼人君がノインヴェルト戦術をできるかどうか。これなら大丈夫かしら?」

 

この夢結の問いに対して、グラン・エプレの五人が納得してくれたことで、今回のノインヴェルト戦術の講義と練習は終わることになった。

その後少しの談笑による交流を重ねて、この日は解散となった。




前回のメインシナリオ1話の2を書いた感じとして、一々ヒュージ襲来を入れるのはゲーム的にヒュージと戦うシーンが必要だからであって、この小説でも無理に入れる必要はあるのか?と感じました。
そう言う訳で、ここのヒュージ戦はカットです。

以下、解説入ります


・隼人の右腕に関して
あの三人的にはもう、自分が関わるのを極限まで減らす方針。
そうなると誰かが製作に関わった方がいいので、信頼できる人間にそれを託すことを選んだ。


・フンフヴェルトの威力に関して
ノインヴェルトより威力は低いが、これでもギリギリヴァイパーは討てる。
ただし、マギスフィアが本体に深く到達するまではより時間が掛かってしまうのだけが難点。


・真島百由、ミリアム・ヒルデガルド・v・グロピウス
その内どこかでナノマシン製作のデスマーチが始まる(百由はウキウキだが)。
今は特型ヒュージの追跡があるので、ちょっと後回し。


・今叶星、宮川高嶺
ゲーム本編でもそうだが、練習とは言え、無言でパス回しをぶっつけ本番でやったのは控えめに言って頭おかしい連携力。
これも高嶺の事情を配慮した努力の結果だと思うと、それはそれで凄まじい。



最後に、恐らく本小説最後のアンケートの協力お願いになると思います。
内容としてはメインシナリオ1話の5で特型ヒュージを討った後、隼人が何処へ向かうかです。

特型ヒュージを討った後、隼人の行き先は?(選ばれなかった行き先の場所は原作とほぼ変わらないので、スキップします)

  • 新宿
  • エレンスゲ
  • 神庭女子
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。