アサルトリリィ -RED THISTLE- 作:ブリガンディ
迎えた翌日──。特型ヒュージ戦に向けてそれぞれが最終点検を行っていた。
これが終われば一区切りで、暫しの間休息が貰えることになる。そうなれば一葉の両親に顔を合わせるのも、慰霊碑に足を運ぶこともできるだろう。
「(今日からの俺は……今までと明確に違う)」
別に実力が変わったとか、そう言う訳ではない。好きな相手を自覚したので、その人に関しては変わる。
特型ヒュージがどんな相手であれ、それぞれがベストを尽くせば必ず討てるし全員生還できると言う確信はあるが、万が一があればきっとまた深い悲しみを抱えるのも読めていた。
「(何としても守る。そして、俺も生きて帰る……それだけだ)」
とは言え、やることは変わらない──。正確に言えば、前よりしっかりとやるくらいだが。
まあ、それだけだなと思いながら点検を終え、後は時が来るまで待つだけだった。
「おっ……引っ掛かったわね。二水さん、そっちはどうかしら?」
「はいっ!こっちでも補足しました!特型ヒュージに間違いありませんっ!」
程なくして、時は来た。今回自分たちが追ってきたターゲットである。
彼奴を討ち、この戦いにひと段落を付ける。全員の考えは一致していた。
「では、先行隊は出撃!特型ヒュージの足止めを行います」
「一柳隊の皆さん、後でまた会いましょう」
ヘルヴォル、グラン・エプレのメンバーは一足先に特型ヒュージの元へ向かう。
途中までは二水も見逃しがないようについていくが、それが必要無くなれば戻ってくるので、その時に一柳隊は合流しに行くと言う段取りになっている。
「もうすぐで、特型ヒュージが視認できる距離まで入りますっ!」
「分かりました。ありがとうございます」
「二水さん、一柳隊のみんなと一緒にノインヴェルト戦術はお願いね」
暫く歩いて行くと戦闘可能距離に近づいていたので、二水の同行はここまでで残りの十人で引き付ける行動が始まる。
「この奥だね……」
乗り上げれば見える場所があるので、そこで辺りを見回して見れば、確かに情報で見た通りの姿をしたヒュージがいた。つまりはあれが特型ヒュージだった。
逃がすつもりはなく、今回自分たちの役目は引き付けることである為、件のヒュージの前に躍り出る。
「いつでもいける……!」
「こっちも、準備いいわ」
それから即座にCHARMを手に取り身構える。こうすれば、流石の特型ヒュージもこちらに注視せざるを得ない。
「「では、行動開始!」」
一葉と叶星が宣言をしきった後、特型ヒュージの触手らしき刃が伸びて来るのと、散開しながら避けるのは同時だった。
* * *
* * *
「じゃあ、いくよ……!」
散開した後、真っ先に飛び出したのは藍で、特型ヒュージに肉薄するとCHARMを真っ直ぐ振り下ろす。
ガード等をされることなく一撃入ったが、そもそもとしてかなり硬いらしく大したダメージにはならなかった。
「藍ちゃん。私たちは引き付ければいいから、無理攻めはしないようにね」
「わかった」
普段はルナティックトランサーも兼用し、ガンガン突撃していくことが多い藍だが、今回はそれをやるわけにも行かないのでルナティックトランサーは発動していない。大したダメージにならなかった理由としてこれが考えられるが、かすり傷程度の傷しか見せなかったので、発動してもかすり傷より少し深い傷程度しか与えられなかっただろう。そんな相手に暴走状態で付き合う必要はない。
殆どヒュージを倒せたか否かの判断が多い藍だが、今回は作戦があるので千香留の声を聞いて素直に反撃を避けながら仲間の所へ退く。
そうすると射線に味方がいなくなったので、全員で一斉射撃の援護が入る。ダメージこそ与えられなかったものの、足止めはできたので今回はこれで良しとした。
「次、同時に行くわよっ!」
無理にダメージを与えると言うよりは注意すべきものを増やすと言うのを狙いに、叶星と高嶺、一葉と藍が前に出て接近戦を仕掛ける。
行き道の途中で残りの全員で援護射撃を再度行い、特型ヒュージの気を逸らさせ、四人を取りつかせる。
一回ではかすり傷程度だが、何度も攻撃すればそれなりのダメージになるはずなので、反撃はしっかりと避ける。または援護射撃で妨害するでやり過ごしていく。
「引き付けに参加した場合、その二人は後ろ側に回していいな?」
「ええ。それと、役割が多すぎるのでフィニッシュショットはやらせないように。参加しなかった人たちで行きましょう」
一方で、一柳隊も移動を始めており、最後の簡単な確認を済ませていた。
引き付けを手伝った人はフィニッシュショットまでやるのは負担が大きすぎる。その為、こうするのがいい。
他には、特型ヒュージが変化を見せたら注意を払うのも大切で、何かあればすぐに引き付け組の支援に回ることになるだろう。
「特に変化なし……常にこのままかしら?」
「まだダメージ与え足りないとか?」
暫し戦いを続けているが、特型ヒュージに大きな変化は見られない。それ故に少しずつ推測も増えてくる。
「逃げる様子も無し。余裕……っていうより、結構早く逃げてたヴァイパーがおかしかったんだろうね」
特型ヒュージは依然として戦闘体勢を解く様子はない。恋花はポツリとヴァイパーのことを引き合いに出したが、よくよく考えたらあれはこの人数を前にしたら真っ先に逃げるので、やはり異質だった。
実際、アレは特殊過ぎるので、比較や例に入れると色々と狂ってしまうので、考えない方がいいだろう。
「取り敢えず、このまま続けよう……」
「もう少し続けていれば、何か起きるかも知れないものね」
ともあれ、戦闘を続けてくれるならそのまま戦い続けて引き付け、一柳隊に託す──。自分たちがやるべきことはそれだけだった。
弾数の都合等もあるので、多めに弾数を使ったものが接近戦を行うように、反対に弾数を使っていない者が援護射撃を行うように交代する。
「……えぇいっ!」
何度かそれを繰り返していき、紅巴の斬撃が綺麗に他の皆が付けた傷の場所に入り、それが深くなり、広がる。
その直後に来る反撃を飛びのけて避け、援護射撃を貰いながら皆のところまで後退すると、特型ヒュージが姿を変え始める。一柳隊が戦場に辿り着いたのもその時だった。
姿が変わるだけではなく、妙な威圧感も得ており、心なしか自らの傷を広げられて怒りを抱いたかのようにも思えた。
「……怒ってる?」
「ぽいな。ちょっと行ってくる……結梨も来てくれ」
「でしたら、お二人は途中まで引き付けをお願いしますわ」
許可を得れば早く、結梨を引き連れて隼人は縮地で現場へ駆けつける。向かう先はその怒りを向けられた紅巴の下だ。
「ま、まさか……あの一撃で?」
「……!いけない、紅巴さんっ!」
特型ヒュージの怒りと威圧を感じてすくんでしまった紅巴を助けるべく、すぐさま駆け付けた高嶺は彼女を突き飛ばすものの、そこからヒュージの攻撃を避ける余裕はない。
攻撃は自分に当たる──。その確信と、来るだろう痛みに備えて目を強く瞑るが──。
「いいな、結梨!」
「いいよ、隼人っ!」
「「せー……の!」」
──それはやってこず、かわりに鉄と鉄がぶつかっただろう音が聞こえた。
何があったのかと思って目を開けて見れば、特型ヒュージの攻撃を、隼人と結梨が二人で弾き返して自分を助けたのである。
「大丈夫?」
「ええ。おかげさまでね」
結梨の問いに肯定を返したのを確認した後、隼人は紅巴の下に駆け寄る。
「立てるか?」
「あ、ありがとうございます……」
それは二重の意味であることは察せており、手を差し伸べて立つ手伝いをする傍ら、「無事で何より」と返した。
何がともあれ、無事であるならそれでいいので、後はさっさと特型ヒュージを倒して終わりにしたいところである。
「隼人ー、結梨ーっ!こっちから声かけるから、ちゃんと戻ってくるんだぞ~!」
梅の声に対してジェスチャーで隼人が返し、引き付け組に参加する。
とは言え、ノインヴェルト戦術のこともあるので、少し控えめに動くことになるが──。
「あと少しよ……一柳隊の皆がノインヴェルト戦術を決めるまで、継続して引き付けます!」
「攻撃を再開しますっ!ただし、特型ヒュージの攻撃には警戒を忘れずにお願いします!」
そこから、隼人と結梨も交えて特型ヒュージへの引き付け攻撃が再開された。
隼人と結梨は弾数が有り余っているので、援護射撃を垂れ流していくのが中心となる。
一撃一撃が先程より重いので回避が大事になるが、幸いにも攻撃のパターン自体は幸いそこまで変わることはない。
「準備できましたっ!ノインヴェルト戦術、始めますっ!」
「ふーみん、いつでもいいよ」
雨嘉が特殊弾を装填した二水をあだ名で呼びながら答えたので、彼女はそちらに特殊弾を放ち、雨嘉はそのまま神琳にパスをする。
既に包囲は完了しているので、後は特型ヒュージの動向に気を付けながらパスを回していく形になる。
「注意を逸らしましょう!ここは全員で攻め込みますっ!」
「了解よ!隼人君と結梨さんは援護射撃をしつつ合流の準備を!」
パターンさえ変わらなければ何とでもできる──。この判断がその選択をさせた。
隼人と結梨は二人で撃つだけ射撃を撃って、回避と合流に意識を集中させる。
「さっきのお返しよ……!」
「助けてくれた……二人の分まで……!」
「逃がしはしない……ここで朽ち果てろ!」
そろそろ射撃されるのも嫌なので陣形を崩してやろうかと思っていた特型ヒュージだが、見事に多人数が接近戦を仕掛けて来ていたので、迎撃に回らざるを得ない。
そして、数人で一斉に攻撃してくるとなれば一人の手数も向上するので、防げる攻撃が減ってしまい、傷を負う箇所が増えていく。
そんな間にも、神琳から鶴紗、ミリアム、梅とパスが回ってくる。
「お前らーっ!楓に回すから、その後どっちかが受け取れ!」
──じゃ、後は頼んだ!そう言って彼女は楓にパスを飛ばした。
「さて、選択権が委ねられましたが……。そうですわね。お願いしますわ、隼人さん!」
「分かった!結梨、あの二人によろしくな!」
「うんっ!夢結、梨璃、お願いっ!」
そこからは完全に引き付け切った状態なので、後は迅速に回していく。
最後のパスは夢結が受け取り、梨璃とお互いのCHARMを重ね合わせる。
「梨璃、行けるわね?」
「はい、お姉さま。ここで決めますっ!」
「みんな、もう大丈夫よ!後は私たちに任せて!」
夢結の声を聞き、引き付け組は特型ヒュージの攻撃を避けると同時に退避する。
それを確認した後、特型ヒュージが警戒を緩めている真正面から堂々と二人は突っ込んでいく。
「「やあぁぁぁああああっ!」」
そのまま体当たりの要領でぶつけられた、11人分も集められたマギスフィアを特型ヒュージは耐えることが出来ず、マギスフィアに触れてからものの数舜で体に大きな風穴を開ける。
まともに攻撃を受けた特型ヒュージはそれが致命傷となったようで、体から光が溢れた後に爆散した。
これは戦いが終わったことを証明しており、長かったようで短かった特型ヒュージの追跡もここで終わりとなった。
* * *
「はいこれ。ちゃんと特型ヒュージは撃破できているわよ」
「そう。なら大丈夫ね」
その後、百由からも撃破確認をもらえたので完了は間違いないことを確認できた。
全員でお疲れ様等労いの言葉を送り、そこから追加の連絡がやって来る。
「そうそう。実はこのレギオン同盟の各レギオンリーダーに、後日に新宿で行われる防衛構想会議に参加してほしいって言うお願いがあってね……」
「会議……ですか?だ、大丈夫かなぁ……?」
「……梨璃には、私もついて行った方が良さそうね」
梨璃は今年からリリィになったばかりなので、その辺りに慣れていない。その為、夢結の動向は必要だろうと考えられた。
その為、百由は反対するどころか寧ろお願いする形でそれが了承される。
「なら、その日で残っている人は
会議をする日、自分たちは手すきになるだろうと見越した恋花の提案に、高嶺も乗っかり、百合ヶ丘のメンバーがそれぞれどちらに行くかを選んで来るようにすることで話が決まった。
早い話が今回の特型ヒュージ会議にあたり、本来は他のメンバーが百合ヶ丘に足を運ぶはずだったが、今回はその逆をやろうと言うことである。
「うーん……どっちがいいだろう?」
「(あれ?何か忘れているような……)」
各々がそれぞれ興味を持った方を選んだり、仲良くなれた人と話すのを目的として選んだりしているが、隼人は気掛かりになった部分を考える。
思考の焦点は防衛会議のことであり、そこで隼人は百由に確認を取ることにした。
「百由様、俺も新宿に行く必要ってありますか?」
「おっと行けない……それを忘れていたわ」
問われた百由は、その回答を口にした。
一旦一区切りです。
以下、解説入ります。
・如月隼人、一柳結梨
ちょっとだけ引き付け協力。おかげで高嶺が傷を追わずに済んだ。
防衛会議の日はどちらへ……?
・楓・J・ヌーベル
パス相手が隼人になり、何かにつまづいてこけることも無かった。
隼人相手の場合、真面目とリラックスは切り替えるべきと考えていたのが大きい。
・宮川高嶺
隼人らの助けもあってヒュージからのダメージ無し。
その為、普通に引き付け参加を続行。
来週までアンケート集計期間を取るので、次回投稿は再来週を予定しています。
アンケートに関してまさかの結果が出たので、活動報告にて今後の方針を記載しました。
こちら
特型ヒュージを討った後、隼人の行き先は?(選ばれなかった行き先の場所は原作とほぼ変わらないので、スキップします)
-
新宿
-
エレンスゲ
-
神庭女子