アサルトリリィ -RED THISTLE- 作:ブリガンディ
今日で療養解除なので、四日もお預け食らったオバブで遊んで来ました。
「ん……んん……?」
結梨が目を覚ました時、視界には知らない天井があった。
「……どこ?」
「……結梨!目を覚ましたのね……」
「夢結……?」
すぐそばに夢結が座って待っており、ここが負傷したリリィたちの避難場所の一つであり、一柳隊のメンバー数人と恋花が一緒にいることを教えてくれた。なお、隼人はここにはいないらしい。
幸いにも、結梨は軽傷で済んでおり、すぐにでも動くことは可能な状態だった。
「梨璃は?」
「まだ目を覚まさないわ……けれど、大丈夫。生きているわ」
「なら、良かった……」
結梨は一度死にかけている為、それだけでも安心できた。完全では無いとは言えまた一緒にお喋りも。買い物も。やりたいことをできる時間があるんだと言ってくれているのに近いから。
ならば、静かに待とうと思った。梨璃を信じて。
「ところで結梨。隼人君が
「隼人が……?」
あんなことと言うのは叶星を助けに行ったことであり、それは幾ら千香留のヘリオスフィアがあったとは言え、明らかに無茶な行動のそれだったからだ。
結梨が理由を少し考えると、割とすぐに思い出せた。
「お互いを助ける……。初めて一葉と叶星と話した時……隼人もわたしも、楓と一緒に約束したから……」
「そう。そうだったのね……」
要するに隼人は、その日その時の宣誓を愚直に守ったのだ。叶星を助ける為に──。
その理由は一先ず説明が着いたのでよしとして、一つ注文だけ入れておこうと思った。
「なら、隼人君にあった時に伝えて頂戴。この戦闘に限り、そのような無茶は禁じますと」
「……隼人に?」
それを何度もやってはこちらの心臓が持たない故に、夢結はこの提案を出した。
結梨は最初こそ疑問に思ったものの、みんなを逃亡終了直後の時の梨璃みたいにさせたら悲しいので、そこは承諾した。
* * *
「隼人さん……」
「楓……?」
楓に呼ばれて目を覚ました隼人は大きな木の下で目を覚ました。
辺りを見渡した景色はとても綺麗で、先程まで戦っていたのがウソみたいだった。
「疲れたでしょう?今はゆっくりお休みなさいな」
「休む、か……」
確かに、この空気ならそうしてもいいかも知れないが、妙な違和感がある──。その為、隼人はその気になれなかった。
ならば仕方ないと割り切った楓は、次のことを問いかける。
「なら、隼人さん。わたくしと何かしませんこと?見るからに退屈そうでしょうから……」
「何かか……そうだな」
思慮に浸っているうちに、隼人の視界は真っ白に染まって行った。
* * *
「……か、楓……お、俺は……っ……。……?」
背中に痛みを感じながら隼人は目を覚ます。
よく見てみれば真っ白な天井で、先程いた場所とは違うことが分かった。
「ここどこだ……?」
「隼人さん……!」
「うおわぁっ!?」
上体を起こして周りを見ようと思ったら近くで見ていただろう楓に思いっきり抱きつかれ、隼人の上体はベッドに逆戻りする。
ベッドの質が非常に良かったようで、幸いにも特に痛みに繋がるようなことはなかった。
「アホンダラ……!あんな無茶して……!本当に……っ……本当に……!」
「……ごめん。ああしないと、間に合わなかったんだ……」
──いい加減、こう言うのやめないとな……。楓に詫びながら隼人は本気でそれを考える。
彼女が泣き止むまで待ち、落ち着いたところで理由を素直に話した。
「いでっ」
「全くもうっ!このアホンダラに出す薬はありませんわね……とは言え、それを止めなかったのも事実ですし、これ一発で帳消しにしますわ」
「面目ない……」
デコピン一発でお許しを出すだけでも相当寛大である。
恐らく察してしまったのだろう、自分が危なければ隼人は同様に迷わなかったのだと。
「あっ、バカが起きたみたいだね……」
「もうこれで懲りただろ?」
既に先に起きていた鶴紗と梅が戻って来て、隼人を揶揄する。
見る限り、今自分たちがいる場所は比較的軽傷やほぼ無傷のリリィたちが多く、少し休めばすぐに動けそうな状態だった。
「……体の心配はないんですね?」
「楓にやってもらっただろ?」
「えっ、あ……ま、梅様っ!?」
確かにやってもらったので、まあいいやと隼人はそこで流すことにした。
「……!隼人、もう大丈夫なの!?」
「何とか……まあ、背中がちょっと痛むけど」
「湿布持ってきたけど……使う?」
「頼むよ」
隼人の筋肉量で暫し全員が驚いたり凝視したりはあったが、貼るだけなのですぐに終わり、その後はともかくレギオン同盟で合流を目指し、周囲を助けながら移動を始めることになった。
なお、ここにいるのは隼人、楓、鶴紗、梅が一柳隊のメンバー。ヘルヴォルは一葉、藍、千香留だった。グラン・エプレのメンバーは一人もいない。
避難場所から出るや否、思いもよらない事態が起こる。
「ここにいたのね、隼人」
「え、えっと……隼人の知り合いですか?」
「あ、アリス!?お前こっちに来てたのか!?」
バイクでここまでやってきたアリスと偶然遭遇することが起きた。
非常事態故にここからは加勢するとのことだったので、それはもう非常にありがたい話だった。
「大丈夫なの……?」
一葉もそうだが、そもそもヘルヴォルのメンバーはアリスのことを知らないので、そこは非常に判断が困る。
また、一柳隊のメンバーも顔合わせこそしたものの、実力の程は知らない。それを知っているのは隼人だけだ。
それ故に判断に困るのだが──。
「今度はヤツを殺す為じゃない……一人でも多くの人を助ける為に、俺に……いや、俺たちに力を貸してくれ」
「ええ。早いところ終わらせてしまいましょう」
──自らに戦う術を教えてくれた隼人は迷うことなく頼み込み、彼女はそれを承諾した。
* * *
* * *
「隼人、連携パターンDで迅速に合流。その後は一葉さんの指示の下、ヒュージの撃破支援。なお、あなたが病み上がりな以上、私が主導でやるわ……いいわね?」
「了解だアリス。病み上がりだから、そっちに任せる」
方針を聞くや否、アリスは自らが使えるカードの中で最善手に近いものを選ぶ。
隼人とアリスで組んだ連携パターンは複数あり、この内パターンDはどちらかが突破口を開く為のメインになり、もう片方がサポートをする形になる。
場合によっては縮地を使った強引な突破も視野に入れており、今いるメンバーの消耗具合を考慮すれば、アリスはそれを選ぶだろう。
ちなみに、指揮が一葉に任せることになった理由として、楓はレギオン同盟等のしっかりとした体制での指揮を得意としており、今回のような突発的な状況は一葉の方が得意だったからである。
「お一つよろしくて?確かにわたくしたちは消耗しているので、引き受けてくれるのはありがたいのですが……本当に大丈夫なんですの?」
「大丈夫よ。いざとなれば、すぐにあなたたちのところへ後退するわ。その為の縮地よ」
──隼人さんの戦いの原型……この人ですのね。アリスの返答で楓は大体を察した。それと同時に、戦闘に関しては明確に師弟関係であることも伺えており、実力的に気にする必要もなくなった。
そう考えたらこれ以上追求するよりかは実際にやってもらった方が早いだろうと考え、そのまま先を促すことにした。
「では、タイミング合わせ……3、2、1……GO」
「走りながらでいいんで、皆もサポートお願いします!その方が早く辿り着ける」
アリスが縮地を発動してヒュージの群れの中心に飛び込むと同時に、隼人の促しで全員が走り出す。
「まあ……本当に隼人さんそっくりの戦いですわね」
「けど、ちょっと射撃が多いね……やり方の問題?後、その場早撃ちみたいなのはやってない。動きながら撃ってる」
サポートする先で見たのはよく似ているが微妙に違うアリスの戦闘スタイルだった。
最初が離れていたし、突破口を開く為の突撃なので高速で斬り込みから入るのはどちらも変わらないが、隼人は遠い敵をその場で早撃ちしてからすぐ高速戦闘を再開するのに対し、アリスの場合は絶えず高速戦闘を続けて近接と射撃を細かく切り替えながら比較的近くのヒュージの殲滅を優先としている。
砕いて言うなら、隼人が近接重視、アリスはバランス型とも言える差であった。
また、こちらの消耗を気遣ってか、アリスは密集している箇所を優先的に潰して回る選択をしており、密集箇所に射撃を連射して意識を向けさせ、近接攻撃で通り魔するかの如く数体撃破、残りを射撃で離脱しながら撃破を繰り返している。
これによって、自分たちは残りのこちらに来そう、或いは実際に来ているヒュージたちの撃破に努め、そのまま追走をしていく。
「あの、隼人君」
「どうしました?」
「その……背中の方、大丈夫かしら……?」
「大丈夫です。痛んでる分も自業自得ですし……そもそも、あそこで千香留様がヘリオスフィアを使ってくれたからこそ、俺は
千香留は自らの判断の遅さが原因だったと考えていたようだが、そもそもこれは隼人の危険を冒した行動が問題なのであり、寧ろ彼女の判断は十分に早い。
寧ろ、千香留の判断なしにやろうものなら、叶星の代わりに隼人が死ぬ──なんて可能性が十分に高かったので、隼人は感謝する側であり、怒られる側であるのだ。
「よし……道は開けたわ!」
「あっ、みんないる」
そして、突破口は完成され、進んだ先にヒュージ相手に奮闘しているリリィたちがいた。
まずは適正距離に入ってすぐに射撃を行い、加勢に来たことを知らせる。
「皆さん、大丈夫ですか!?」
状況と彼女らの安否を確認した後、一葉の指揮の下迎撃行動が始まる。
まずは立て直しの時間を作るべく、後続として来た自分たちで射撃を行う。
そして、残りのリリィたちを第一陣から第三陣までで編成し、そこから第一陣で追加の射撃を行い、ヒュージの足を止める。
「第一陣は後退を。次は第二陣で追撃、可能な限り撃破をお願いします」
あくまでも第一陣は足止めが中心で撃破は考えていない。第二陣は第一陣が止めてくれたヒュージの撃破を担う。
ここで撃破できなかったヒュージは前進してくるので、今度は第三陣が近接攻撃で迎撃をすることになる。
少し余裕ができたので、今度は第一陣と第三陣が同時に射撃で前進してこなかった残りのヒュージを射撃で掃討する。
これで終わり──かと思えば、少数ヒュージが現れたので、陣を関係なしに、後続の自分たちで掃討して殲滅完了となった。
「お疲れ様です。問題ありませんか?」
「はい。助かりました」
現地のリリィにも被害は無く、問題なく救援ができたことが判明する。
「流石だなアリスは……まだまだ俺よりも強い」
「鈍らないようには気を付けていたもの。そういうあなたも、よりいい動きになったわね」
どうやら百合ヶ丘に隼人が行って以来、彼女は訓練を再開したらしく、その影響で問題なく動けるようになっていた。
鈍りのないアリスの強さは、当時の隼人の吸収力を持っても届くことはなく、今でも届き切っていない。
ただそれでも、確実に追いついてきているし、あの時代では一時的にしか過ぎなかった共闘能力も大きく伸びていた。
「ところで……藍はどこに?終わったきり見当たらないのですが……」
「それなら、わたくしの方で寝てますわ」
「むにゃー……」
一瞬不安になった一葉だが、楓が支えてあげていた。
とは言え、このままだと姿勢がちょっと辛いので、一旦膝を貸してあげることにするが。
「ご、ごめんなさい……藍ちゃんが」
「これくらい構いませんわ」
「(アレ、今度もう一回やってもらいたいな……)」
膝の上で眠る藍の頭を撫でる楓を見て、隼人は思わず新佐瀬保から帰っている時のことを思い出した。
「そっか。お前にとってもアレはよかったんだナ?」
「まあ、あの時の隼人……色々走りすぎたからね」
「えっ?何で分かったんですか?」
「おお……やっぱりそうだったのか」
梅と鶴紗に問われた隼人が顔を少し赤くしたことで、それが当たりだと判明してしまった。
「あ……あの隼人が、楓さんに……?」
「なるほど……その辺は自分で進めていたのね?」
一葉は驚き、アリスは安堵する。とは言え、隼人はその辺自分で進んでいくのだろう。
なお、楓はと言うと……。
「ふふっ……あんな反応の隼人さん、初めて見れましたわ……♪」
相手の驚きとかどうのをさておき、隼人の反応を見て満足していた。
結果的に、あの時とほぼ正反対の反応となった。
「んー?……なにはなしてたの?」
「あら?お昼寝は十分でして?」
「うん。ありがと」
その直後当たりで藍が軽い眠りから覚めたので、藍が起きたら移動しようとしていたとはぐらかし、一先ず移動を再開することにした。
「(叶星様、あんまり考えすぎてないといいんだけど……)」
自分がやってしまったということもあり、叶星の状態を隼人は案じた。
後一個の避難場所はまた次回にて。
以下、解説入ります。
・隼人とアリスの実力差
近接戦闘とパワー……隼人>アリス
その他……アリス>隼人
ところどころ隼人が上だけど、基本アリスが上。
スパロボで言うなら、隼人は「格闘・防御」で勝ち、アリスが「射撃・技量・回避・命中」で勝つと言ったところ。
他にはなんか特殊技能一個教えろと言われたら、隼人は「底力(L8)」、アリスは「見切り(L3)」。
・如月隼人
楓らがいた軽傷組が集まってた避難場所で目を覚ます。
流石に背中に痛みは生じており、湿布を張ってもらった。
正直、楓に膝枕してもらった藍が羨ましかった。
また、結梨くらいの吸収力があればアリスは抜かせていた。
・楓・J・ヌーベル
隼人が無茶したので流石に泣きついた。断罪内容は大分甘々。
今回のケースのような指揮は一葉の方に分があるので、素直に譲った。結構柔軟。
弄られる対象が隼人だった為、今回の膝枕ネタは平気だった。
・アリス・クラウディウス
遂に合流。隼人らの戦線に加入。
レアスキルは縮地。偶然の一致か、義手による影響かが分かる日は……?
隼人を若干射撃に寄らせた戦い……ではなく、彼女の戦い方が元であり、隼人はそれを近接寄りにしている。
・一柳結梨
梨璃たちと同じ場所で目を覚ます。
隼人の行動の理由を知っているので、夢結に説明。
幸いにも彼女自身も軽傷。
・芹澤千香留
自らの判断に関して詫びるタイミングが少し早い。
体を痛めた隼人が許すどころか感謝してくれたので、早い段階で気を楽にできた。
特型ヒュージを討った後、隼人の行き先は?(選ばれなかった行き先の場所は原作とほぼ変わらないので、スキップします)
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新宿
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エレンスゲ
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神庭女子