アサルトリリィ -RED THISTLE-   作:ブリガンディ

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第8話 迎撃

あれから訓練やレギオンメンバー集めをしていくことで、早くも隼人が入学してから二週間が経過した。

訓練により梨璃と二水は着実に強くなっているが、レギオンメンバーはあれから一人も引っかからない。

そんな風に時間を過ごして行くが、ちょっとだけ嬉しいニュースが出てきた。

 

「と言う訳で、俺は無事に免許取れたんだ」

 

「「おぉ~っ!」」

 

隼人が物凄い短期間でバイクの免許を取得することに成功しており、それに梨璃と二水が感心しながら隼人の免許証を食いつくように凝視した。

ちなみにこれは、短期間で取得させてもいいと認定された人が取得できる認定証も兼ねたものであり、高い運転技術と強い自制心、更に十分な知識把握の三点が揃ったものにのみ与えられるものである。

それを聞いた梨璃と二水は更に関心を強めるが、その他の人は素直に称賛していたのが雨嘉、残りの四人は少々呆れ気味だった。

 

「隼人君……あなた、自慢するのはいいけれど……」

 

「今まで無免許運転していたこと、忘れたとは言わせませんわよ?」

 

夢結と楓が言ったことに対し、隼人は「忘れはしないが、もう時効」と言う旨を堂々と返した。この男に、命を救うためなら罪も何もないのだ。

寧ろ、変に法を守って命を助けない方が罪だと考えているレベルであり、こう言う所は致命的に嚙み合わない人もいるだろう。否、実際にいた。

 

「(この無遠慮さと言うか、配慮の苦手具合が、人付き合いが苦手と言う理由なのでしょうね)」

 

以前、人付き合いは苦手だと言っていたが、この辺の余りにも狭義的な思考や、自分の発言で微妙な顔をされても余り意に介していない様子が原因なのかもしれない。

実際の話、隼人は今回の場合「考え方が違うから仕方ないか」と納得してしまっており、思考に焦点は行ってるものの、感情への焦点がまるで足りていないのが問題だった。

都心近くで一般の人と話すように、感情を意識していればまだいいのだが、思考が優先されるとこうなってしまうのが不得意と感じている理由である。要は、自分の狭義的な思考で反感を買いやすいのだ。

 

「何という堂々さじゃ……まあ、それくらいの度胸がないならこんなことせんじゃろうな」

 

「し、神琳……無免許運転って、どういうこと?」

 

「彼……人の命を救うためと言う名分で、免許無しにバイクを乗り回したことが何度もあるんですよ」

 

雨嘉は去年度の三月に編入していた為、隼人のことをそこまで詳しく知らない。ヴァイパーを追っている少年と言う認識だけだった。

ちなみに、神琳やミリアムが詳しい理由としては、隼人のその無免許運転行為を誰かが目撃し、それが広まったからだ。

また、楓の場合は百合ヶ丘に編入する前に事前学習で知ったからである。

 

「梨璃、二水さん。あなたたちも免許が必要と思うなら取得を考えておいて」

 

「「はい、分かりましたっ!」」

 

隼人がやらかしている故の釘差しの意味も察した為、二人はちょっと緊張気味に返した。

ミリアムたちも頼むから隼人のような無茶(堂々と無免許運転)だけはしないでくれと思っていたところ、ヒュージ襲来を告げる鐘と、誰かの端末から着信音が鳴る。

それは隼人からのもので、送られて来たメッセージであろう内容に、隼人が顔を怒りで歪める。

 

「隼人君……?どうかしましたか?」

 

「出てきやがったな、ヴァイパー……!」

 

──どこにいようと、お前の好きにはさせないからな!凡そ三週間ぶりとなるヴァイパーとの邂逅となり、隼人は早速出撃の準備に取り掛かった。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

{ 第  話 }

 

迎 撃

intercept

 

 

新たな居場所での戦い

──×──

combination of thought and emotion

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

出現したヒュージは幸いにもヴァイパー一体らしく、隼人が行けばすぐに解決できる事案だった為、今回は彼が向かうことになった。

 

「助かるよ。手伝ってくれて」

 

「構いませんわ。わたくしも、ヴァイパーのことを知っておこうと思いましたので」

 

その時、百合ヶ丘近辺はまだ覚える余裕がないはずと踏んで、楓が同行を進言してくれたので、それを隼人が承諾し、二人で出撃するに至る。

本当なら一人で行っても良かったのだが、これを拒否すると後々人間関係が面倒そうなので、素直に乗っておくことにした。

ちなみに今回、連絡が隼人にしか来なかったのは、まだレギオンが確立出来ていない為、そのメンバーにヴァイパー襲来の通知をできる状態にしていなかったのが理由だ。

 

「またこの道か……」

 

「そう言えば、あなたと始めて出会ったのもこの近くでしたわね」

 

ヒュージ迎撃の為に舗装されている道に来て、もう結構時間が進んだんだなと二人は思った。

あの時は梨璃の無事な姿を見たいと走っていた楓と、偶然梨璃の近くにやって来たヴァイパーを追撃していた隼人。何気に梨璃が要素に絡んでいる二人は、今はこうして二人でヴァイパーを追っていた。

 

「ところで、ヴァイパーがこの近くに来たと断言できる要素はありますの?」

 

「実は、あいつが自分でその近くに出現するって決めた時、マーキング行為みたいに刃でどこかを軽く斬るんだ……。それが残ってるかどうか、ヴァイパー追い払った後に確認しよう」

 

百合ヶ丘に所属するリリィに見て貰えば、より意識してもらえるだろうと思い、隼人は提案する。

それに楓が納得した後、大体その斬り跡を付けた場所の近くにいるのを伝え、そちらに急行する。

 

「「いた……!」」

 

隼人が先導する形でそちらに走ると、ヴァイパーがこちらの方に移動していた姿を発見できた。

百合ヶ丘近辺に来てからはほぼ一方的に不意打ちで追い払えたが、今回は正面からなので、流石にヴァイパーはこちらに気づき、左右の刃を少し出しながら威嚇姿勢を取る。

ただ、それを受けて怯むような二人ではないので、意に介さずそれぞれのCHARMを構える。

 

「ぶっつけ本番の連携だけど……俺が前行っていいか?」

 

「ヴァイパーへの慣れもありますし、お願いしますわ」

 

──その代わり、バッチリとサポートしますから!自身のCHARMをシューティングモードに切り替えることで肯定の意を示した楓を見て、隼人はそのままヴァイパーの左側に回り込むように走り出す。

自分の為に射線を開けてくれたことを確信した楓は、そのまま牽制を開始し、弾を放たれたヴァイパーはとっさに刃を使って迫りくる複数の弾丸を連続で弾き飛ばす。

 

「これで十分でしょう?」

 

「ああ、ナイスアシスト!」

 

楓が一度撃ち終わる直後、隼人がヴァイパーの左側からCHARMを横薙ぎに振るう。

それをヴァイパーの左の刃で防がれると分かるや、すぐに離脱。その後楓が再び援護射撃でヴァイパーに防御を強要する。

すると、この射撃が鬱陶しく感じたらしく、ヴァイパーが狙いを変え、二つの刃を連続で伸ばして楓に襲い掛かる。

 

「あら、わたくしを狙えば倒せると思ってまして?」

 

が、当の本人は素早くブレードフォームに切り替えてその刃を弾き返して余裕の笑みだった。確かにヴァイパーとの戦闘経験は皆無だが、今の迎撃行動くらいなら朝飯前と言える。

何なら、そこから再びシューティングモードで射撃を始めるのだから、ヴァイパーはイライラを加速させる。

 

「あの時と同じだ!持っていけ、ヴァイパー!」

 

《──!》

 

その結果、楓に意識が向き過ぎたあまり隼人を意識から外してしまい、至近距離からまたバスターキャノンを一発貰うことになった。

再び土煙が上がってしまったので、不意打ちを避けるべく、隼人は楓の隣まで戻る。

 

「さて、こっちで始めて戦った時は離脱。レストア戦の邪魔を止める時はせめて一撃と向かって来たけど……」

 

──今回はどうだ?早いとここでヴァイパーが退くかどうかを決める段階まで来たので、煙の中を注視する。

煙が晴れて行くと、まだヴァイパーがそこに立っていた。

 

「まだやる気みたいだな。リリィと俺の二人だから、すぐ逃げてもおかしくはないんだけど……」

 

「何を言ってますの?()()()()もう、立派にリリィでしょう?なら、わたくしたちでコテンパンにして、とっととお帰り願いますわっ!」

 

短期決戦で決着を付ける──。そう決めた後の行動は早かった。

二人揃ってブレードフォームにCHARMを変形させた後、隼人が縮地を使って即時にヴァイパーの後ろへ回り込んで振り下ろし、ヴァイパーがそれを防御できず直撃する。

 

《──!》

 

「今だ!」

 

「はぁっ!」

 

隼人の不意打ちにキレたヴァイパーが刃を同時に振り下ろし、それを隼人が受け止めている最中に、今度は先ほどまで正面だった楓に、背後からCHARMで横薙ぎに斬られる。

後ろを見せたらまた斬られると感じたヴァイパーが隼人と睨み合いを続けようとしたら、楓がもう一撃加えてきたので、今度は片方の刃で隼人、もう片方の刃で楓を対応しようと考える。

しかし、それは先ほどまで両方の刃で止めていた隼人を自由にさせてしまう悪手であり、自由になった隼人が刃を伸ばしてガラ空きになっている右側の脆かった部分に攻撃を加えた。

 

「(やっぱマギを込めるだけ込めないと、全く通らないよな……)」

 

有効な範囲が狭い、多量のマギを込めて始めて有効打、ヴァイパーはダメと分かればすぐ逃げる。この三つの要素で狙い続けるのはいくら何でも無理がある。

 

「全く……よくもまあ、こんな硬さだけのヒュージが生まれましたわね……!」

 

「けど、コイツのせいで嫌な想いをした人だっている……。その人らを減らす為にも、好きにはさせない!」

 

この後、二人で何回かに一度のタイミングで位置を入れ替えながら、次々とヴァイパーに対し連続で斬撃を浴びせて行く。

 

《──!?》

 

そして、何度も攻撃を受けている間に堪らなくなったヴァイパーはヤケクソになり、二つの刃を滅茶苦茶に振り回し出したので、二人は距離を取る。

これはとにかく自分たちを追い払いたかったらしく、距離を取れたと分かるや否、即時に逃げて行った。

ああなったヴァイパーを追っても無駄なのが分かっている隼人は、ヴァイパーの反応消失を確認しようと端末を取ると、そのタイミングで反応消失の通知がやって来た。

 

「よし。撃退成功だ」

 

二人してお疲れ様と労い、互いにCHARMを背負うなり腰に下げるなりして、戦闘体勢を解く。

今回はヴァイパー以外の反応はない為、これで後は戻るだけだが、その前に斬り跡が残っているかを確認する。

 

「ああ、残ってたな……これがヴァイパーの斬り跡だよ。場所を移動して一回目の時にこういうことをして、自分はこの周囲に出てくるってアピールするんだ」

 

「なるほど……これが目印でしたのね」

 

目印も確認できたので、ガーデン内に戻るべく二人は足を進める。

 

「前々思ってたけど、結構変わったCHARMしてるよな……どこ製の?」

 

「いいところに目を付けましたわね?このCHARMはグランギニョル製……わたくしのお父様が経営しているところですわ!」

 

「……お父様が経営?ってことはお前、ご令嬢って事か……!?」

 

隼人は始めて知った事実に驚愕する。初対面の時の、戦いが影響して整いが無くなった恰好でもなお、育ちの良さを感じたのはそう言うことなのだろう。

そんな風に納得したところで、隼人は自分の持っている知識を楓と認識合わせしてみることにした。

 

「確か、グランギニョルってフランスの方で経営している……トップのCHARMメーカーだよな?」

 

「話が分かるお人で助かりますわ♪このCHARM、そこで作った特注品ですの」

 

最初はトップクラスと言おうかと思ったが、家元の人にはこう言った方がいいと思って言葉を変えたら案外成功だった。

楓のCHARMの話を聞いた時、隼人は「どれぐらい金掛かるんだろ?」と思ったと同時、形状をみて「扱いづらそうだな」と思ってしまったのは内緒である。

隼人は今まで預り知らぬことだったが、実はCHARM一機は戦車一台とほぼ同額らしく、出撃手当ての報酬と共に後々驚くことになる。

 

「もし、新しいCHARMが必要でしたらお声掛けを。わたくしの名義でカリカリにチューンしたものを差し出しましてよ?」

 

「それはありがたいけど……動作速度と剛性、それから火力と取り回しの良さは意識してくれよ?長物になる都合で、少し取り回しが悪くなる分にはいいけど」

 

──あら、結構注文なさりますのね……?かなり具体的な以上特に文句はないが、予想以上に内容が飛んで来たことに楓が驚く。

実はこれ、単純に楓のCHARMみたいなのが来たら卒倒し兼ねないから故の念押しであり、今使っているCHARMのようなタイプを好んでいるだけである。

ただ、楓には今の注文と隼人の使っているCHARMを見て、何となく予想はできた。

 

「気に入っていますのね?そのCHARM(ブリューナク)が」

 

「まあな。コイツ、結構無茶についてきてくれるから……」

 

隼人の使っているブリューナクは、現在夢結が使用しているCHARMと同型で、それの色違いである。

ブリューナクは対ショック機構や高速変形、基本速度、攻撃力や剛性に重きを置かれながらもバランスのいい性能をしたCHARMで、この扱い安さとタフさが隼人に愛着を抱かせた。

また、この回答により隼人が実用性重視で選ぶ人間であることも楓は理解し、彼がこちらに注文する際はリクエストに応えようと決めた。

 

「なら、わたくしからはヴァイパーを追う理由の方を……」

 

「まあ、そうなるか……」

 

いずれ話さなければならない時が来ると分かっていたので、そろそろ潮時なのかもしれない。

 

「と、言いたいところですが……今はまだ構いませんわ」

 

──その代わり、他の皆さんにも話さなければいけない時が来たら、ちゃんと教えてくださいまし?楓の気遣いに素直に感謝し、その時は必ず話すことを約束する。

 

「ですので、代わりに聞きたいことはヴァイパーを討った後……その時にあなたが何をしたいのか、ですわ」

 

「俺のやりたい事か……そうだな。一個決まってるのは、この上着を二度と着ない生活を送ること。コイツはヴァイパーへの復讐を誓った証みたいなものだから……」

 

──まあ、気持ちを入れ替えて生活を送ってみる以外何も決まっていないんだ……。ちょっと頭を搔きながら申し訳なく言えば、今度は楓が思わず吹き出して笑う。

 

「……えっ?何で笑ったんだ?」

 

「す、すみません……まさか何も決まっていないとは思っていなくて……」

 

「し、しょうがないだろ!?人を助ける為に全力だったんだから……!」

 

とは言え、本当に何も考えが纏まっていないのは事実だ。叶えたい夢も特にない。

ただ、人を助ける姿勢──。これを悪く思うわけは無く、楓はその姿勢を素直に称賛した。

 

「やりたい事、決まるといいですわね?」

 

「……ああ、そうだな」

 

隼人が見る未来の地図──それはまだ、誰にも分からない。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「(何というかまあ、女の子同士二人きりで……って言うの結構見るな……)」

 

──女子校とか男子校とかになると、こう言うの増えるんかな?出撃から戻った隼人は、ガーデン内を歩いてそんなことを思った。

百合ヶ丘がリリィたちの自立性を重視した結果、それが顕著になっている所はあるが、それでも多い分は多い。

 

「やりたい事か……あんまり思いつかないな」

 

今この百合ヶ丘で過ごす上で──ならいくらでも思い浮かぶのだが、他はそうでもない。

何かあるかと考えてみるが、やはりヴァイパーを討つ方へ思考がシフトしてしまい、どうも長期的なものは思いつきそうに無かった。

 

「(しょうがない……今は日課とかをこなそう)」

 

特に思いつきもしないので、まだやっていなかったトレーニングを済ませることにする。

これのおかげで大分体は頑丈になってきており、結果としてものを持った時の保持力や、姿勢の維持する強さも得ている。

 

「(他にやっとくべきなのは、外出申請の確認とかか?)」

 

一応、自分も必要ならその申請書を書けば出れるらしいが、あまり高頻度ではいかないで欲しいと頼まれている。

というのも、現状たった一人の男性リリィなので、その辺りは我慢してほしいとのことだそうだ。

この為、隼人は買い出しと右腕のチェック程度にとどめておこうと考えた。

 

「(右腕か……そろそろ半月経つし、一回由美さんに頼もう)」

 

思い立ったが吉日、早速外出許可を取り、今週の休日に早速戻ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

*   *   *

 

 

 

 

 

 

 

「はい。これでチェック完了よ。特に問題なしね……」

 

「ありがとうございます」

 

早速今週の土曜日。隼人は由美たちのところに戻って右腕のチェックをしてもらった。

どうやら全てが問題なかったらしく、これくらいの頻度で戻って来れればと思うが、定期的過ぎると何かあると思われるかもしれないのと、今回が少し早すぎたので、少し間を開ける必要があるかもしれない。

幸いにも二ヶ月に一回くらいでもそんなに問題は無いし、最悪三ヶ月に一回でもまあ何とかなるらしいので、これなら遅れさせても良さそうだ。

ちなみに、ここまでは免許を取ったので堂々と百合ヶ丘内にあるバイクを一台借り、それでここまでやって来た。

 

「礼儀作法はどう?上手く使えてる?」

 

「おかげ様で。後は、紅茶の淹れ方をどうにかできればいいんですけど……」

 

こればかりは自分でやるしかないので、玲に頼れる範疇を超えてしまっている。

その為、彼女からも練習あるのみと返され、そこまでになってしまった。

 

「この後は何か予定でもあるの?」

 

「特にはないけど、買い物と慰霊碑に顔を出すくらいは」

 

「あら、丁度よかった。私も買い出しする予定だったから、行きましょうか」

 

都心近くに買い出しへ行く直前、由美からは渡したいものがあるから、直帰せずに戻って欲しいと頼まれ、それを承諾する。

 

「ここに来るのも大体二週間ぶりか……」

 

「三年前と比べれば、流石にあなたも落ち着いたわね」

 

当時は心のどこかで香織が死んだことを否定したい自分がいたが、遂に否定できなくなったことで悲しみにくれたこともあったが、少しすれば流石に受け止めることはできた。

ただ、その分ヴァイパーを討つ意思は完全に固まり、討つ以外にヴァイパーから多くの人の命を救う決意を抱く事にもなった。

 

「ねえ、隼人……右腕のことで、私のことを恨んでる?」

 

「……どうした急に?」

 

突然、沈んだ表情で問いかけてくるものだから、隼人も思わず聞き返した。

 

「確かにその右腕のお陰であなたの命は助かった。けれど……その腕のせいで、あなたの体は一つなのにある意味で()()()()()()()()()()()()()から……」

 

()()()()()()()()んだろ?そんな一時的なものに、一々恨みを持ったりしないよ」

 

「隼人……」

 

結局のところ、マギが使えない年になってしまえば一般人に戻るのだから、気にする必要はない。

 

「寧ろ、お礼が言いたいくらいだ。お前があの時俺を助けようとしてくれたから、俺はまた明日を見れるんだから……」

 

「そう……そうよね」

 

──ありがとう、隼人。アリスは隼人の言葉に素直に感謝した。

その後買い物だけ済ませて戻り、由美の言っていたものを受け取ることにする。

 

「待たせたわね……右腕の資料は完成よ」

 

何かと思えば、遂にその資料が完成したのである。

他の人にも説明する為に部数印刷する必要があるのは目に見えているが、何部必要かは分からない。そこで、由美がいくら欲しいか聞いてきたので、隼人が整理する。

 

「(レギオンメンバー揃う前提で九人、俺のこと調べてくれてる百由様で一人、後は生徒会の方々で三人……でも、ここから少し増える可能性があるから……)」

 

──大体十五か。結論を出した隼人はそれだけ貰うことにした。

何ならその資料が崩れないようにクリアファイル数枚をセットで渡してもらえたので、それも有難く受け取っておく。

その後は三人に送られながら、バイクを走らせて百合ヶ丘のガーデンに帰ることになった。途中でガソリンを満タンにしておくことだけは忘れていない。

 

「(結局何やりたいかは全く決まらないんだよな……とは言っても、考えてるだけで答えが出るわけでもない)」

 

楓に言われてから考えて見ているが、結局その辺りは決まらない。

今すぐ何を成し遂げたいかと言えば、やはりヴァイパーを討ちたい。そうなると結局情報収集やら何やらで全く普段と同じことしかしない。これでは全く進捗しないだろう。

 

「(しょうがない……コーヒーでも飲んで、一回落ち着くか)」

 

たまには思い切って濃いやつもいいかな──。ガーデンに戻ってくる頃。隼人は一度休憩を決め込んだ。




次回、本編に戻ります。

ここからまた解説に入ります。

・如月隼人
CHARMは実用性を優先する復讐者。ブリューナクがメインのCHARM。
基本は思考が先に来る人。バイクの無免許運転はもう全く気にしていない。ヴァイパー討った後、やりたいことが決まっていないことが悩み。
一応、右腕のことは知っている。


・楓・J・ヌーベル
他者の感情に気遣った対応のできるご令嬢。隼人も少し気が楽に。
隼人の要求の多さにビックリしたが、注文を考慮してくれるだけ十分。


・アリス・クラウディウス
隼人の右腕に関して罪悪感を持っている。
だが、隼人は対して気にしていないどころか感謝している為、そこで救われる。


・その他レギオンメンバーの皆さん
隼人の免許に関しては感心と呆れの二分。これはどれだけ隼人の話を聞いているかによる。

今後アニメ版準拠の展開はどのようにしてほしい?

  • 今みたいな感じで大丈夫
  • もうちょい細かめが嬉しい
  • サクサク気味がいい
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