異能を発動して、体感二分が経過した。
現在、ボクは目の前を揺らめき流れていく
……可笑しい。
喉の奥から乾いた笑い声が出た。
「これがドグラ・マグラ、か」
どうやら自分自身にも適応できるらしい。つまり成功したのだ。賭けに勝ったのだ。
そうして私は再び笑った。
まるでこの人格と割り切れない現状を混ぜたような暗雲のようだ。赤、黄、青と色が混じり移り変わる天井、亀裂の入った石畳が目の先の建物──廃病院へと誘うように続いていく。
「まるでこの子の精神状態だな」
「さて、どこへ進もう」
その場をぐるりと見渡してみる。
錆び落ちた看板が恐怖を掻き立てる廃病院。鬱蒼と茂る森林。そしてどこからともなく聞こえてくる秒針の刻む音。…否、実際のところこの音の源は分かり切っている。空から地上に伸びる逆さの時計塔の影。その影が脳を直接侵すような気色の悪い音源を伴って
……もう一瞬たりとも意識を向けたくない暗がりのオブジェクトから目を背け、目の前の病棟を見据える。
―—アレは何だろうか?
アレも異能の一部…?否、こんな規模の異能なんて超越者級……
うんうんと唸ってみるも、取り敢えず探索しないことには始まらないと考えた末、行動を開始する。
「えっと、先ずはあの病棟に向かって…」
――『……かち、………かちり………』
……うっせえなこのオブジェクト………
病棟へ足を進めていくと、ふいに人影が見えた。この空間にボク以外の生物なんているのかと疑問に思うが、既に人影は掃けたようだ。現地民…いや、この場合ボクの異能から発生した異能生命体か?なんとか接触できれば万々歳だが、先ずはその全貌を目に収めることにしよう。
病棟に近づくにつれ、人影の正体がなんとなく分かってきた。
「アレ?おねーさん、どこから来たの?もしかして迷子?」
どうやらみつかってしまったようだ。見たところ友好的なようだが、彼は
「…あれ、おねーさんどこかであったことある…?」
「いや、完全に初対面…」
「うそ」
「え」
「だってさっき、目、見開いてたよね?ボクを見て」
不味い、表情管理が疎かだったようだ…
「いや、こんな奇妙なところに少年が立っていたら誰でも驚く…」
「ふうん?ま、いいけど」
見逃された…のか?まぁいい、今は彼に聞くことが沢山ある。
「因みにここはどこか分かるか?」
「分かんない。けど、なんとなく分かるよ」
「……何が?」
彼の瞳がじぃとボクの顔を見つめる。
次第に目の奥の光が消え、淡白な声色で言った。
「……君だね?ボクをここに
…………あっ、そういうこと?
※この作品は不定期更新です