転生TSサキュバスは独占欲が強い   作:葛城

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駆け足ですけど、最終回

とはいえ本編の話で、後日談というか番外編が少し続きます


最終話: 彼女たちの始まり、彼女たちの終わり

 

 

 

 煌々と輝くネオンの眩しさと、夜の闇を打ち払うが如く鳴り響く、様々な店から漏れ出すBGM。焼け野原となった町は、数十年の時を経てすっかり傷痕を覆い隠していた。

 

 

 餓死して横たわった子供が掻き集められてもいなければ、行き倒れてそのままになっている大人もいない。無造作に荷台へと積まれて行く亡骸も、今は昔の事。

 

 焼夷弾によって焼け野原となった街並みに散らばる瓦礫等をかき集める人たちもいなければ、絶望に蹲った大勢の者たちもいない。今にも死ぬかのような足取りで、何処かへと向かう姿も、今は昔の事。

 

 

 全ては、過去の事。

 

 全ては、通り過ぎた事。

 

 

 かつてはそうだったという写真の中にしか存在しない、過去の出来事となって久しかった。

 

 

 ……いや、少し違うかもしれない。

 

 

 傷痕を覆い隠すのではなく、形を変えて治ったという方が正しいのではないだろうか。傷を負った場所が治癒した時、必ずしも完全に元通りになるかといえば、そうではないのと同じように。

 

 負った傷は深かったが、致命傷にはならなかった。

 

 故に、相応の血は流れて多少なり形を変えはしたが、かつての……いや、かつて以上の輝きを取り戻し、その日もまた賑やかな夜を形作っていた。

 

 

 ──東京『夢華通り』。

 

 

 それは、『夢華屋』と呼ばれる風俗店から暖簾分け(という言い方も何だが)された店のみが立ち並ぶ通りの事であり、全長4kmに達する、『性の商店街』とも揶揄される通りである。

 

 始まりが何時だったのか……それを知る者はほとんどおらず、近くに住まう者たちですら知らず、そういった事に興味を持って調べている者以外は知り得ていない、そんな昔。

 

 戦中を生き延びた御老人の中で、とある港町に住んでいた者たちだけが、『アレは元々、小さな風俗店から始まったんだよ』と零す程度の……そんな昔から、夢華屋は存在していた。

 

 しかし、夢華通りが出来た歴史なんぞに興味を抱く者は、そう多くはない。100年200年も前の事よりも、今よりも未来……夢華通りとは、そう言う場所であって。

 

 現代の日本において唯一残され、世界でも珍しい『性の技術』を専門的に学んだ者たちが提供する、性の商店街こと性風俗の歓楽街。

 

 

 文字通り、『性』を楽しみたければ『夢華屋』。

 

 マンネリを解消したければ『夢華屋』。

 

 あるいは、『夜』を楽しみたければ『夢華屋』。

 

 

 それが、『夢華通り』を知る者たちの共通認識であり、事実であった。

 

 

 

 ……で、だ。

 

 

 

 その、世界でも珍しい夢華通りだが、その『珍しさ』の理由である、他とは決定的に違う点が夢華通りには幾つかある。

 

 

 まず、一つ目。

 

 

 通りに入ればすぐに気付く事なのだが、実は夢華通り……世界的に見ても上から数えられるぐらいに……いや、世界一といっても良いぐらいに、綺麗に整備されている通りなのだ。

 

 何せ、地面を覆っているレンガ敷きの床には、ガム等の汚れは一切無い。また、歓楽街にはある意味付き物である客たちの粗相の跡も、ほとんど見られない。

 

 建物だって定期的に修繕が施されているおかげで、どの店も外観も内観も綺麗だ。落書きだって見つかり次第即座に洗浄され、実行犯は逮捕されるから、そういった乱れもここにはない。

 

 いったいどうして……それは、夢華通りの元締めである『女王』が、色々な意味で衛生というモノを重要視しているからだ。

 

 

 女王曰く、『性』と『穢れ』は表裏一体。『性』を増やせば『穢れ』は増すが、『性』と『穢れ』は切っても切り離せないという事らしい。

 

 

 この『穢れ』は、何も汗や糞尿などの即物的な汚れを差しているわけではない。曰く、『穢れ』とは様々な要因の集合体であり、それは目に見えないモノも多分に含まれる……ということらしい。

 

 つまり、提供する場の空気というか、治安の悪さは衛生面の悪さというか、そういうのも大事にしないと諸々に影響が出るよね……というわけで。

 

 そもそもが、本能に根差した行為をするわけだから、どうしても……こう、色々な意味で暴走した結果、景観が悪くなってしまうわけで。

 

 要は、最終的には身体を使うのだから汚れるのは当たり前で、汚れは新たな汚れを生み出すばかりか、増え続ければ色々な意味での病気が発生してしまうので、そうなる前の段階で色々綺麗にして予防に努めましょう……というわけなのだ。

 

 なので、夢華通りにはガム一個落ちていない。ゴミだって落ちていないし、万が一『意図的に』路上に捨てようものなら係りの者がやってきて、穏便な形で通りから排除されるだけである。

 

 ちなみに、過去にはわざと捨てて法律だとか弁護士だとかを立てて強請ろうとした者がいたらしいが、二日後には東京湾に浮かんでいたとか、関係者たちのリンチ死体が発見されたとか……まあ、それは別の話である。

 

 

 

 ──夢華通りを綺麗にしている会社は、一つだけ。

 

 

 

 それは、夢華通りの女王が独自に起ち上げている清掃会社『夢魔セキュリティ』の社員が、定期的に通りを巡回して清掃等を行っているからだ。

 

 この職員は、治安の維持も兼ねている(シルバー枠として雇われた者は、掃除専門なので別口)保安員でもあるので、基本的には男性のみとなっている。

 

 理由としては、何といっても『事』が起こる前に争いを止めさせる威圧感が求められているからで……はっきり言えば、屈強な者でないと駄目なのである。

 

 

 何故って、それは身に纏う防具と、護身用(鎮圧用)の装備一式が相応に重いからだ。

 

 

 特注の防刃ベストを始めとして、装備一式はそう易々と壊れたりしないよう、目的に合わせて頑丈に作られている。どれだけ身に着けるかによるが、重さにして総重量は十数kgにも達する。

 

 それを身に纏ったまま、通りの中を(あるいは周辺を)掃除する為に練り歩く。並の男では、半日務めただけで足腰がパンパンに腫れて、翌日は筋肉痛に悩まされる重労働だ。

 

 もちろん、ただ身体が屈強なだけでは夢魔セキュリティの社員には成れない。あくまで、そこは最低条件だ。

 

 最低限の学力もそうだが、ある程度格闘技を学んでいる事に加え、夢魔セキュリティが提示する訓練を半年行ったうえで、試験を突破した者のみが正規雇用されるという非常に狭き門となっている。

 

 

 ……それだけ判定を厳しくして人が集まるのか? 

 

 ──もちろん、集まっているから条件が緩和されないのだ。

 

 

 何故なら、夢魔セキュリティの社員(シルバー枠は別)の給料と福利厚生は、上場企業並みに揃えられている。つまり、金払いがとても良いのだ。

 

 また、夢魔セキュリティが求めているのは、学歴よりも物理的な強さだ。

 

 故に、学力は劣るが体力等には自信有りな男たちが毎年採用試験に押し寄せ、必要数の人材が確保できているというわけであった。

 

 

 ……さて、だ。

 

 

 そうして徹底的に清掃が成された通りに入れば、まず目に留まるのは……何と言っても、立ち並ぶ風俗店(合わせて、酒などを提供するキャバクラ等の夜の店も相当数ある)の数だ。

 

 店舗数は、おおよそ500を超えていると言われている。提供されるサービスの種類も数に比例して豊富であり、ここに来れば世界中の性風俗を体感出来るとすら豪語されるぐらいだ。

 

 

 何せ、この夢華通りで働いている女たちは、日本人だけではない。

 

 

 髪の色が異なれば、瞳の色も違う。骨格からして人種が異なれば、肌も違う。文字通り、気質というやつが根本から異なっている者たちが大勢いる。

 

 しかも、夢華通りの店に勤めている風俗嬢……通称『夢華嬢(ゆめはなじょう)』は、一人の例外も無く美人である。個人の好みもあるだろうが、写真と実物が全然違う……なんて事は全く無い。

 

 写真に写った女性が美人であるなら、実物も美人なのだ。

 

 いや、場合によっては『写真よりも実物の方が凄い!』という感想も出るぐらいで……つまり、騙しは一切無いのである。

 

 

 更に付け加えるなら、ここでは言葉に不自由する事は無い。

 

 比喩ではなく、文字通りの意味で。

 

 

 広東(かんとん)語だろうがスワヒリ語だろうが、案内所にて言語に対応出来る店を探せば、最低でも1件は見つかるぐらいに、対応出来る言語の層が厚いのだ。

 

 その分厚さときたら、ありとあらゆる言語を学んだ夢華嬢たちがひしめくここでは、それこそアマゾンの秘境でしか使われていない言語を理解する者すらいると言われているぐらいだ。

 

 おまけに、言語に合わせてその国の風習……いや、場合によってはその国に住んでいたと話す者たちまで居る。

 

 正に、『性を楽しみたければ夢華屋』という言葉通りなのであった。

 

 

 

 ……そう、これこそが、二つ目の理由。

 

 

 

 世界広しといえども、これほどの規模と層の厚さと手広いサポートが伴う風俗街を作り上げたのは、歴史を顧みても夢華屋を除いて他には無いのである。

 

 そして、三つ目の理由だが……夢華通りに立ち並ぶ風俗店に勤めている、夢華嬢たちの顔に共通して出ている、『淡い色の小さい痣』の事だ。

 

 この『淡い色の痣』とは、第二次大戦後しばらくしてから国連等で『前触れもなく突然、顔に模様らしき痣が発現する者』が報告されるようになった事から、その存在が確認されたモノだ。

 

 痣が何時頃から現れたのかも、その原因に関しても、当時は全くの不明。

 

 それは戦後数十年になっても変わらず、どのようなメカニズムの果てに痣が発現するのか、その糸口すら掴めていないのが現状だ。

 

 

 

 ……しかし、何もかも分からないわけではなく、時を経て導き出されたモノも幾つかある。

 

 

 それは、この痣が発現するのは、『女性のみ』であること。

 

 

 

 また、この痣を発現する者は1人の例外も無く、何故か、人々の美醜の基準において『美女』、あるいは『美少女』に分類されている者にのみ発現すること。

 

 この痣は遺伝性であり、痣を持つ子の母親にも同様に痣が発現していること。

 

 例外は無く、遅くとも12歳頃までには(生まれつき痣が発現する者もいる)発現し、以後、外科手術を行わない限り痣は消えないこと。

 

 痣自体は目に留まるが、嫌悪感を抱かせる類のモノではなく、だいたいがひし形や三角形といった形をしており、自然発生で生まれる一般的なシミとは根本的に見た目が異なっていること。

 

 そして何よりも、『右目の下に痣が有る者は純愛一途』、『左目の下に痣が有る者は多淫かつ好色』という眉唾な話を改めて調べ直した結果、統計にまでバッチリ眉唾がそのまま出たこと……等が挙げられた。

 

 おかげで、最初の頃は『痣が移る』と忌避される事も多かったらしい。

 

 日本のみならず、海外でも差別が横行したらしいが……それも、教科書に載る程度に忘れ去られた昔の事。

 

 痣の位置と意味を逆に覚えている者はいるが、既に痣が有るからと差別する者は限りなく0に近づいていた。

 

 

 ──何故なら、痣を持つ女性が昔に比べて増えたからだ。

 

 

 国や地域によって偏りはあるが、今では都市部に住まう女の子の7人に1人が痣持ちと言われ、地方にいたっては、若い女性のほぼ全員が痣持ちという所もあるぐらい。

 

 日本を除いて、次いで、偏りが大きいアメリカを始めとした大国と、ヨーロッパ諸国。特に、ヨーロッパ諸国の偏り具合は年々酷くなっているらしく、時折ニュースで取り上げられるぐらいであった。

 

 なので……今では痣を持つ女性は『病気とは無縁の才色兼備』の象徴とされていて、痣を持つだけで就職の面で有利に働くとすら言われる程に、その意味は様変わりしていた。

 

 ……で、そんな痣を持った女性ばかりが、この夢華通りで働いている。

 

 というか、ばかりではない。夢華通りに勤めている女性は何故か全員、痣持ちだ。

 

 それも、今では『サキュバスの象徴』とも揶揄されている、『左目の下に痣』を持った女性しかいない。

 

 

 だから……というべきなのか。

 

 

 あるいは、元締めである女王の方針がそうなっているのか。

 

 どちらが正解なのかは定かではないが、夢華通りの風俗店の値段は、他所と比べておおよそ半額以下の値段となっている。

 

 

 

 ……それが最後の、他所とは違う四つ目の理由である。

 

 

 

 世界的に見ても、夢華通りに立ち並ぶ風俗店の利用料金は異常なまでに安いのだ。それも、少しでも風俗を利用した事がある者なら、思わず目を疑ってしまうぐらいに。

 

 他所ならば、最低でも4万(60分)は取られるぐらいの美女が、夢華通りでは1万円以下で買えるのだ。それも、避妊具不使用&時間90分で、その値段。

 

 価格崩壊なんて言葉が生易しくなるぐらいの、低価格。

 

 実際、往復の移動時間と交通費を考慮しても、計2時間の手間を惜しむ為に3万を払う者がいるかといえば……数えるぐらいしかいなくて。

 

 

 おかげで、東京周辺にある風俗店は全て、夢華通りの発展と共に壊滅した。

 

 

 一部が違法風俗店として散らばったらしいが、それすらも潰れ……生き残っているのは地方ぐらいしかないのが現状であった。

 

 

 

 ……まあ、それも時間の問題だろう。何せ、その地方にすらも夢華屋の手が伸び始めているからだ。

 

 

 

 夢華屋が行っている独自の対策もあって、他店からの妨害(店舗に嫌がらせをする等)も何のそので人気は上々。

 

 元々が有名な事もあり、常時20人が勤務しているはずの予約状況が、当日で『満席』になったのだから、如何に夢華屋が凄まじいかが窺い知れるだろう。

 

 そのせいで、ネット上では、『夢華屋が進出してから3ヵ月後に地元の風俗店が4店も潰れた』とか、『客を夢華に全部取られてクビになった』とか、『コレのせいで、前以上に男が婚活市場に来なくなった』等といった書き込みが、ちらほら起こっているのだとか。

 

 

 ……ちなみに、だ。

 

 

 どうしてそんなに値段が安いのかって、それはただ単に、左に痣が有る夢華通りの風俗嬢たちが好き者だからだ。比喩でも何でもなく、誰一人の例外もなく、みんなSEXが大好きなのだ。

 

 それこそ、三度の飯よりも好きだと誰もが豪語しているぐらいに。

 

 だからという言い方も何だが、夢華嬢たちは1人の例外もなく、お金なんて二の次と口を揃えているからこその、値段設定なのであった。

 

 ……一方、時々ではあるが、勘違いした一部の者たちが勝手に代表を名乗って抗議の声を挙げるが、その度に夢華嬢たちがこぞって反対するという、ある種のコントのような事も、こっそりと繰り返されていた。

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………とまあ、そんな感じで。

 

 

 その日もまた、夢華通りは昭和の時代から全く変わらない大賑わいを見せていた。

 

 周辺に広がっている、静まり返った住宅街に反比例するかのように、そこだけは大勢の人々で溢れかえっていた。

 

 

 

 ……顔ぶれは、様々だ。

 

 

 

 主な客層である二十代半ばの青年もいれば、まだ幼さが見え隠れしている少年もいれば、もうよい齢だろうというお爺さんもいれば、一目で外国人だと分かる風貌の者もいる。

 

 仕事帰りに立ち寄った者。

 

 休日の終わりに立ち寄った者。

 

 初めから夢華屋に向かう者。

 

 雑談の流れで夢華屋に向かう事になった者。

 

 その気は無かったけど誘われた者……等々など。

 

 夢華通りに風俗店が多いのは事実だが、飲食店の他にもカラオケ店といった商業施設等も相当数ある。

 

 だから、その顔ぶれは正しく様々としか言い表しようがなかった……が、そこへ。

 

 意外な事に、夢華通りには夢華嬢以外の、『右目の下に痣を持つ女性』の姿もちらほら見受けられた。

 

 それも一人や二人ではなく、年齢も人種も体格もバラバラで、そのほとんどが……男を伴っていた。

 

 つまり、カップルなのだが、いったいどうして……理由は色々あるが、けっこう現金なモノというか、何というか。

 

 とりあえず、カップル割引(夫婦でも同様に割引)をやっている飲食店が多いのが一つ。

 

 ……割引出来るなら割引してもらった方が良いし、何より美味しいという理由から。

 

 同じく、カップル割引をやっている宿泊施設が多いのが一つ。

 

 これも、気分転換というか、人によっては中々自宅ではタイミングが……というか、選択肢は多い方が良い……と。

 

 他にも、カップル限定で割引される商品(代表なのが、避妊具)が有るばかりか、カップルで来場すると割引されるストリップ施設までもがある。

 

 ……要は、互いにそういう場所や機会を用意し辛い者たちにとって、夢華通りは……色々な意味での強い味方なのであった。

 

 なので、ここにいる女性は意図的に通りに入って来ない限り、中にいるのは痣持ちの女性だけである。

 

 まあ、働いている女性は全員、痣を持っているのだから、当然と言えば当然か。

 

 ……そうなのだ、夢華通りに居る女性は痣持ちだけ。

 

 何時頃からそうなったかは、誰も分からない。だが、気付いた時にはもう、そのような事になっていた。

 

 でも……気付いた所で何がどう有るわけでもないから、その不思議な事実は誰の目に留まることもなく、素通りされて。

 

 その日もまた、愛しき彼氏の腕を引いて引かれて、愛しき彼女の腕を引いて引かれて連れ歩くカップルと。

 

 そんなカップルを横目に、お気に入りの一つになった夢華嬢の店へと向かう男たちと。

 

 施設を利用出来る年齢ではないけれど、好奇心と、出来上がりつつある衝動に突き動かされるがまま、人目を忍ぶようにホテルへこっそり向かう……若すぎる少年少女たちが。

 

 外国の一部の雑誌にて『観光スポット』の一つとして紹介されている夢華通りの中を進む。

 

 多くの人々が吸い込まれては満足気な様子で離れて行くのと同じく、少しばかりの間を置いた後……満足気な様子でそこを離れて行く。

 

 

『──行ってらっしゃい! 病気や怪我にだけは気を付けて、また帰って来てね!』 

 

 

 その背中を見送る夢華嬢たち。色々な店から出てきた男たちの送り迎え……それは、夢華通りの風物詩。

 

 満面の笑みを浮かべる彼女たちの声援に、照れ臭そうに反応をする、一部の男たち……それは、夢華通りの風物詩。

 

 

『……大丈夫、ちゃんと最後まで男の子をやれていたし、私も気持ち良かったよ。自信も付いたし、これなら痣持ちの彼女が見せてくれた勇気に……答えられるよね?』

『は、はい、ありがとうございます! あ、あの、本当に御代は半額で良いんでしょうか……?』

『うふふ、良いのよ。君の初めてを貰えたんだから、それが御代の半分。ほら、今日はゆっくり休んで、明日は……ね』

『──っ! はい、あの、本当に、本当にありがとうございます!』

『それじゃあ、また何時か機会があったらね……あ、そうそう。痣持ちの女の子って、私たちみたいな痣持ち以外の女に浮気すると、後が大変だから気を付けなさい』

『え、あ、それってネットで見た……えっと、それって嘘じゃなくて本当なんですか?』

『尋常じゃないぐらいに勘が鋭いのは確かよ。でもまあ、同じ痣持ちの私たちなら大目に見る子が多いって聞くから、次に此処に来るときは彼女さんと相談してから……ね?』

『わ、分かりました……』

 

 

 そして、そんな人たちの中に紛れるようにして……今日もまた一人、大人の階段を上った後のレクチャーを受ける者がいるのもまた、風物詩で。

 

 今では年頃になったら当たり前ぐらいになり掛けている……男たちの通過儀礼。

 

 そんな光景が、ここでは今日も繰り返されていた。

 

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………それは、明日も、明後日も、明々後日も変わることなく。

 

 

 

 

 ──そりゃあ大目に見るわよ、私たち相手なら、ね。というかあんた、嫉妬と仄暗い興奮で、凄く大変な事になっているだろう……隠しても無駄だぞ。

 

 

 ──あ~あ、案の定凄い事になっているじゃないか……え、何それ、もしかして……うわ、あんた、あの子の型をこっそり取って道具を作って……可愛らしい事をするね、あんたってば。

 

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………一週間後も、一か月後も、一年後も……変わることはなく。

 

 

 

 ──気持ち良かったでしょ。私を通して、貴女を喜ばせたい一心で一生懸命に練習するあの子の気持ちと、叩き付けられる情熱がこれでもかと伝わってきて。

 

 

 ──ほら、馬鹿な意地っ張りが、愛おしくて堪らないでしょ……ええ、分かるよ、それぐらい。だって、肉体と精神は別でも、奥底の根っこは……全て、私に繋がっているから。

 

 

 

 ……。

 

 ……。

 

 …………遠い未来、様々な要因が重なって人々の営みが消え去り、この世界から男女が途絶えてしまう、その時まで。

 

 

 

 ──言われなくても、分かっているだろう。どれだけ血が離れようとも、お前たちは私の子供たちでもある。私は、あんたを含めた、私たちの女王。それだけは、けして変わらない。

 

 

 ──そして私は、愛しき彼らの、愛しき者であり、愛しき女。彼らの親であり、兄妹であり、友達であり、強敵であり、子供であり……彼らの唯一でもある。

 

 

 

 この営みは、繰り返されるだろう。愛と、肉欲と、快楽を伴った、この営みが。

 

 

 

 

 

 ──覚えておくと良いぞ……私はな、お前たちが思う以上に……独占欲が強いのさ。

 

 

 

 

 

 互いの子孫が途絶える、その日まで。

 

 

 

 

 

 

 

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