転生TSサキュバスは独占欲が強い   作:葛城

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この話と、次の話で主人公(サキュバス)の大まかな性格というか、性質が説明されます。既にサラッと説明をしてはおりますが、基本的に主人公は己を『かつては人間の男だった』と客観的に記憶として覚えてはいますが、感覚は完全にサキュバスであり己を人間とは思っておりません
また、本人は自覚出来ていませんが、人外の感覚で思考し行動しております

サキュバスにとって、♂は捕食対象であり番の対象だけど、♀は生存競争の相手だからね、情けは欠片も掛けないのは当然だよね


第二話: サキュバスのお食事

 

 もし……私が、世間一般の人達のように、当たり前のように友達が出来て、当たり前のように恋人が出来て、当たり前のように結婚して子供が出来ていたのなら。

 

 おそらく……今の私は生まれなかったと思う。

 

 しかし、それは起こりえなかった『IF』だ。『IF』をいくら語ったところで『IF』でしかなく、それはけしてリアルには届かない。私の世界には、存在しない。

 

 

 ──故に、人間(おんな)に対する情など、今の私には欠片も無い。

 

 

 

 言い換えれば、私には人間(おんな)への未練が無いのだ。

 

 7回も送った人生で、一度として人間に生まれて良かったと思ったことは一度も無い。

 

 

 何時だって、私は愛されない存在だった。

 

 

 だから、変異体サキュバスとなった事への忌避感も無い。いや、むしろ……この身体になれて良かったとすら私は思っていた。

 

 何せ、愛されたのだ。愛しき彼らから愛を向けられる喜び。あの快楽に比べたら、人間である事に拘る理由など全く無い。

 

 逆に、この人間の部分を利用して、より多くの愛を独占出来たのならば……とすら私は考えていた。

 

 

 ……とはいえ、だ。

 

 

 考えるだけなら楽だが、現実はそうはいかない。

 

 いくら私がサキュバス(変異体とはいえ)だとしても、その肉体はまだまだ脆い子供でしかないからだ。

 

 一般的な人間に比べたら圧倒的に頑強であるとはいえ、それは子供にしては……でしかない。

 

 

 つまるところ、今の私はまだまだ貧弱かつ脆弱でもある。

 

 

 人間としてもサキュバスとしても、他者がその気になれば何時でも狩られる程度の雑魚でしかない……というわけだ。

 

 だから……私は、その日の夜。傍で寝息を立てている薄汚い雌共の寝首を狩ろうとは、しなかった。

 

 

 まだ、この雌たちは利用価値があると思ったからだ。

 

 そこに、母親や血の繋がった姉妹に対する情は……薄い。

 

 

 全く無いわけではないが、ほとんど存在していないと言えるぐらいには薄い。せいぜい、居なくなると今は困るから……といった程度。

 

 自分でもどうかと思うが、仮に、『見知らぬ愛しい者』と、彼女たちの命……どちらかを選ばなければならない事態になったら、間違いなく愛しい者を選ぶだろうなあ……という程度の感覚しかなかった。

 

 薄情だろうとは思う。少なくとも、人間の私の部分は、自らの感情をそのように捉え、恥知らずな行いであることを自覚していた。

 

 

 けれども、耐えられないのだ。どうしても……傍に雌がいることが我慢ならない。

 

 おそらくサキュバスの性質から来る嫌悪感なのだろう。

 

 

 自覚する前は分かっていなかったが、自覚した今は……とてもではないが、無理だ。

 

 

 臭いが、駄目だ。

 

 気配が、駄目だ。

 

 とにかく、駄目なのだ。

 

 

 頭では分かっていても、身体が拒絶する。

 

 己以外の『雌』という存在自体が、許せない。

 

 

 傍にいるだけで、虫唾が走る。

 

 

 同じ空気を吸っている事を意識するだけで、鳥肌が立つ。

 

 ましてや、肌が触れ合おうものなら……嫌悪感のあまり、我を忘れてしまうだろう。

 

 

 

 それがたとえ、己の母であったとしても。

 

 

 

 たとえ、愛しい者たちを産み落とす存在だとしても……少しずつ湧き始めるこの憎悪を、私は抑えられそうにない。

 

 ……サキュバスがどうして雄しか狙わず、鉢合わせた雌を食わずに殺すのか、謎な事ばかりであったが……その理由の一端が分かった気がする。

 

 

 私は半分が人間であるというのに、コレなのだ。

 

 

 何もしていない雌に対して、こうも一方的に敵意を抱いてしまう。しかも、それを抑えられないどころか、日に日に増大してゆくのを実感している。

 

 これで仮に、私が変異したサキュバスではなく、元のサキュバスとほぼ同じであったなら……間違いなく、この場は凄惨な殺戮現場に成り果てていたことだろう。

 

 

(……とりあえず、腹は満たされた。私が力を付けるまでは、せいぜい利用させてもらおう)

 

 

 何をするにしても、今はまだその時ではない。サキュバスとしての寿命は長く、生命力を……愛を得ている限りは、その寿命は数千年、数万年は保たれる。

 

 それを、私は知っている。だから、とりあえずは矛を収める事にする。たかが、数十年の我慢だ。

 

 愛しい父の下腹部を魔法で清めてから……そっと、寝床を父の傍に変える。次いで、大きく息を吸って……堪らず、私は肩を震わせた。

 

 

(ああ……良い匂い)

 

 

 反射的に口づけようとした唇を、寸でのところで堪える。

 

 少しばかり疼くが、先ほどの赤らんでいた頬も治まり、すやすやと安らかに寝息を立てているのを見ているだけで……ああ。

 

 

 ……この幸福を味わえるだけでも、サキュバス(変異体ではあるけど)に成れて良かった。

 

 

 そう思いながら、私は……愛しい者たちの鼓動に耳を澄ませながら、夜が明けるのを静かに待つのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……そうして始まった、変異体サキュバスとしての生活……なのだが。

 

 

 

 特に、何かが劇的に変わることはなく、私は記憶を思い出す前と同じく、相変わらずな日常を送っていた。

 

 

 まあ、考えてみれば当然だ。私が暮らしている場所は田舎も田舎であり、そのうえ村人たちの身なりから推測した限りでは、文明のレベルはそう高くない。

 

 文明レベルが高くないということは、日常を送るうえでしなければならない雑事を簡略化(あるいは、自動化)出来ないということ。

 

 すなわち……かつての私が暮らしていた世界にあったような、インフラ設備が整っていないということで。

 

 インフラ設備が整っていないということは、つまり……何か事が起これば、それがそのまま生命に直結しかねない事態に発展する可能性が高いといということでもある。

 

 故に、やることは山のように……は、言い過ぎなのかもしれないが、とにかく、家事の合間になんて言葉は無く、遊んでいる余裕だってないぐらいに色々とあった。

 

 

 まず、農民である村人たち(つまり、大人たちだ)の仕事は、何と言っても畑……並びに、田んぼの世話だ。

 

 

 パッと見た限り、村が抱えている畑の5割近くと、田んぼの7割近くが植え付けを終えている。今日の天気は良いから、雨で中断するなんて事はならないだろう。

 

 大人たちが手にしている作業道具から推測する限り、やはり作業は全て手作業だ。効率を良くする為の利器は、あまり見られない。

 

 

 ……力仕事は、基本的に大人がやるというわけだ。

 

 

 理屈としては単純だ。というのも、かつての私や前世の私が暮らしていた世界ならいざ知らず、どうも……この世界の者たち(今の私を含めて)は、全体的に小柄なのだ。

 

 

 私たちが(あくまで、似たような意味で)日本人だからなのか。

 

 それとも、私たちに限らず、この世界の人間はそうなのか。

 

 あるいは、私たち遺伝的な体質が原因なのか。

 

 

 真実は定かではないが、おそらくは、単純に大きくなる為の栄養(要は、食事だ)が足りて無いせいだろう。なので、大人でも全体的に小柄なのだ。

 

 そして、その小柄な大人の子供ともなれば……で、大人たちは畑や田んぼに向かうとして、私たち子供が何をするのかといえば……だ。

 

 ぶっちゃけ、それ以外の大半(子供にさせると)である。大半って……そりゃあ、大半だ。

 

 

 いちおう、年長者と年少者でやることは違う。

 

 

 年少者は、とにかく大人たちの邪魔をしないようにしておけばいいのだが……その分を、年長者が全て担うわけだ。

 

 具体的にはまず、畑の雑草取りだ。というか、毎日の日課だ。炊事洗濯は女たちの仕事らしい(忌々しい事に、今の私ではつまみ出されて手が出せない)。

 

 

 これに関しては、子供がうってつけである。

 

 

 何せ、私がこの世界に産み落とされる前から、子供たちが毎日やっている事なのだ。おかげで、そこまで深く根を張る雑草はそう多くはない。

 

 中には成長早く根を張るやつもいるが、そんなのは全体の1割にも満たない。やり方とコツさえ掴めば、子供の力でもけっこう大きなやつを抜くことが出来る。

 

 故に、とにかく雑草抜きだ。大人たちに交じって、せっせ、せっせ、一心不乱の雑草抜きだ。

 

 雑草を残すと、収穫の量が減る。ソレを、大人たちは(というか、この世界の人達は)地中の栄養素だとかは欠片も頭には無いだろうが、経験則で知っているようだ。

 

 だから、雑草抜きであっても真剣に取り組まなくてはならない。後々に直結するから、下手にサボると大人たちから拳骨が飛んでくる。

 

 なので、この時ばかりは生意気盛りの愛らしい坊やたちも真剣だ。

 

 実際、これに手を抜くか否かで秋頃の食べられる量が目に見えて減るのだ。そりゃあ、食べ盛りは必死だ。かく言う私も、愛しき彼らの好感度を上げる為に真剣に取り組む。

 

 さて……雑草抜きが終われば、今度は抜いた雑草の処理だ。

 

 しかし、処理といっても大したことはしない。適当に土を払った後、それを定められた場所に纏めておくだけ。後は、大人たちが色々と処理を終えた後、肥料として使うのだとか。

 

 私にはよく分からないが、どうも先人の知恵というやつらしい。そんな事でと思わなくはなかったが、それで効果が出ているのであれば大人しく従うまでだ。

 

 そうして……ひと段落つくまでやって、小休憩を挟み。日も登って午後に(時計は無いので、体感で)なってからは、水汲みである。

 

 この村には小さいながらも井戸がある(曰く、お偉方の人達も手を貸したのだとか)のだけれども、如何せん、無限にぽこぽこと湧き出ているわけではない。

 

 楽だからと、やたらめったら使ったらあっという間に空っぽだ。

 

 まあ、枯れているわけではないから、放って置けば徐々に溜まってはくれるが……遅い。なので、基本的に井戸の水だけでは足らないのだ。

 

 では、足りない分を何処から得るのかといえば……考えるまでも無い。水が有る所まで、歩いて汲みに行くのだ。

 

 幸いなことに、この村の近くには湧水が出ている場所がある。

 

 慣れている年長者でも徒歩で片道30分近く掛かるが、四の五の言える環境ではない。嫌なら渇きに苦しむだけだから、子供たちも文句言わずに行くわけだ。

 

 

(……まあ、もっとも。コレに限っては、話は別だろうな)

 

 

 チラリと、汲み置き用の壺と背負子(しょいこ)を背にした年長者たちを見やる。

 

 そこに、男女や年齢の区別はない。

 

 運べるまで身体が大きくなっているのならば、体調が悪くない限りは強制だ。

 

 けれども……集まって出発を待つ年長者たちの表情は、悪くない。

 

 

 それも、当然だろう。

 

 

 湧水を汲みに行くこの仕事は、言い換えれば大人たちの監視が外れる唯一の機会。他にも、その場所のほど近い場所に、小さな川がある。

 

 水を汲むには浅すぎるが、運が良ければ川魚などが獲れる。他にも、手拭いを使って身体を洗うことも出来る。大人たちも、そこで多少なり遊ぶ分は目こぼししてくれている。

 

 だから、そこまでこの仕事は嫌がられてはいない。時期によっては嫌がられるが、今はまだ温かい方だから、自然と誰もが笑顔で出発の時を今か今かと待っていた。

 

 

 ……その中で。

 

 

 私は、自らに向けられる視線に目を細めていた。けして、振り返って確認はしない。

 

 そんなことをしなくとも、変異サキュバスであるこの身体は……愛しき坊やたちの視線を感じ取れていた。

 

 

 

 ──分かる、その気持ちは良く分かる。内心にて、ほくそ笑む。

 

 

 

 自慢ではないが、私はこの村に住まう子供たちの中では一番の器量良しだ。元のサキュバスのように魔法が使えないとはいえ、サキュバスである事には変わりない。

 

 今はまだ時期が早いので、雌たちの前ではわざと体つきを貧相にして注視から逃れているが……その程度で、大人への第一歩を迎え始めた坊やたちの興味が削がれるわけがない。

 

 

 ……私だって、元は男だ。年頃の少年たちの身に秘められた情欲の強さは、身に染みて理解している。

 

 

 伊達に、風が吹くだけで反応してしまう敏感な時期を7回も経験してはいない。だから、坊やたちの逸る気持ちがよく分かる。

 

 仮定の話ではあるが、私が逆の立場であったなら、仕事が手に付かなくなっていただろう。

 

 時代が違っても、文明が違っても。

 

 

 肉体の本質は変わらない。

 

 生物の本質は変わらない。

 

 

 生き物である以上は、誰もがそうなってしまう。

 

 多少なり栄養状況が宜しくなくても、それでもなお変えられない。年頃になれば雄は雌を求め、雌は雄を求める。

 

 それが、生き物の本質なのだ。そうでなければ、生き物はとっくの昔に滅びているのだ。

 

 

 ……さて、だ。水汲みに向かう年長者たちが集まったので、出発する。

 

 

 さすがに年少者は危ないのでお留守番。比較的身体が早く大きくなる雌たちが先に向かい、その後ろを私が、最後尾を坊やたちという形で水汲み場へと向かう。

 

 何時の時代も、雌がお喋りなのは変わらないようだ。

 

 耳を澄ませれば、話し声が薄ら聞こえる。また、年少者や坊やたちの、愛らしいヤンチャを宥めることに不満を溜めていたのか……その足取りは、坊やたちよりも少しばかり速い。

 

 

 ……とはいえ、はぐれるのは警戒しているのだろう。

 

 

 時折、思い出したように振り返ってはこちらの様子を伺っている。距離が離れすぎれば立ち止まり、近づいて来たら歩き出す。常に、一定の距離を保つようにしている。

 

 理由は、考えるまでもない。こんな山奥にまで人さらいが来る可能性は皆無だが、野生の獣は時期を問わずに出るからだ。

 

 今の所は熊が出たなんて話はないが、野犬や猪は普通に出る。

 

 まあ、集団で動いていればまず出てくることはないから、そこまで心配する必要はないだろう……と。

 

 

(……くふふ、もう辛抱も限界かな?)

 

 

 ジリジリ、と。いよいよもって強くなり始めた視線を背に受けた私は……堪らず、舌なめずりをした。

 

 何も知らない子供ならまだしも、背後の坊やたちはもう知っている。女体がもたらす快楽を……精を吐き出す快感に心底のぼせ上がっている。

 

 

 ──私が、教えたのだ。

 

 

 チラリと……前方の雌たちが、私たちとの距離を確認した。

 

 そのまま、再び前を向いてお喋りを再開させたのを見た私は……雌たちに気付かれないように、そっと着物の裾を掴み、坊やたちに臀部を見せ付けた。

 

 

 ──瞬間、ごくり、と。背後の坊やたちの気配が変わるのが分かった。

 

 

 分かったうえで、私は脂の乗った、自分でも見事だと思える柔尻を後ろ手で撫でる。たぽたぽ、と掌で転がすように尻房を弄び……そっと、上げていた裾を下ろす。

 

 途端……心の底から坊やたちが残念に思っているが伝わって来た。あまりに明け透けな反応に、私はこみ上げてくる笑みを抑えるのが大変であった。

 

 

 ……そうなってしまうのも、当然だよなあ……と、私は思った。

 

 

 この村には(というか、世界中そうだろう)まだ、美容の為の筋力トレーニングという概念は無い。言い換えれば、まだそんな事に気を回せるだけの余裕が無いのだ。

 

 もちろん……お洒落という考えは雌たちの間にはある。

 

 しかしそれは、あくまで上から重ねるモノだ。髪形を整え、そこに飾りを付けたり、着物の裏地に模様を付けたり、肌に白粉(おしろい)を塗るなど……けれども、致し方ない事なのだ。

 

 何せ、飽食なんて事が許されるのは一部の特権階級のみ。それも、世界的に見て、だ。

 

 この村だって、飢えることすら数少ないが、毎日腹いっぱい飯が食えているかといえば……けして、そうじゃない。

 

 男も雌も、基本的には痩せ形なのだ。

 

 加えて、毎日が肉体労働ともなれば……脂の付きやすい雌であっても、痩せ形の傾向になるのは当たり前の話である。

 

 故に、村に居る雌たちの身体は良く言えば自然的で、悪く言えば生まれ任せ。顔立ちだって、生まれが全て。だいたいが……こう、野暮ったいのである。

 

 

 ……だが、私は違う。変異サキュバスである私だけは、違う。

 

 

 肉体をある程度作り変えられる私にとって、男の情欲を誘う体型に変化するのは呼吸をするように容易い。思わず目が釘付けになってしまう、魅力的な身体に成ることだって、簡単だ。

 

 現に……背後の坊やたちは、私の尻に釘づけとなった。

 

 形に見惚れ、柔らかさを想起し、それがもたらす快感に身体を固くした。単純な性欲だけでなく、その美しさに唾を呑み込んだ。

 

 だがそれは、仕方ないことだ。何せ、今の私の下半身は客観的に見ても芸術品だから。

 

 痘痕一つ、弛み一つ、汚れ一つ、無駄毛一つない尻房。十二分に脂と肉を乗せたが故に、その形は桃のように張り出している。遠目からでも、その柔らかさが嫌でも想像させられたことだろう。

 

 加えて……臭いもそうだ。

 

 この村には、入浴の習慣が……全く無いわけではないが、如何せん、薪の用意が大変だ。せいぜいが、沸かしたお湯で身体をこれでもかと擦って、垢を落とすぐらいが関の山。

 

 湯船に浸かって温まるというのは、年に1回、有るか無いかだ。まあ、実の所、湯船に浸かるという行為自体、世界的に見ても贅沢な事なのだけれども。

 

 他には……汲み置きした水で洗うぐらいだろう。

 

 男よりも雌たちの方が気を使ってはいるようで、水汲みの際に身体を洗いはしているが……その程度で固まった皮脂(垢も)が完全に取れれば、香水などが世界中で流行るわけがない。

 

 

 けれども……私は違う。私だけは、そうならない。

 

 

 雌たちにとって、私が放つ臭いは汗臭いとしか感じないだろう。しかし、坊やたちは違う。

 

 目覚めてしまった坊やたちにとって、これはフェロモンだ。『甘い匂い』としてしか認識されず、本能に訴えかける匂いでしかない。

 

 

 ──故に、坊やたちは想像した。形から、匂いを。動きから、その柔らかさを。そして、その二つから……温もりを。

 

 

(くくく……いいね、凄く良い。ああ、身体が疼いてきた……!)

 

 

 もう、間もなくだ。身体を洗いに行った雌たちと、見張りに向かう坊やたち(交代制らしい)が離れた後。一人残った私と行う……一時の悦楽。

 

 雄の本懐、雄の本能、雄の宿命。

 

 それらを果たす為に、鼻息荒く私に圧し掛かってくるのを想像しながら……私もまた、堪らず頬を染めるのであった。

 

 

 

 

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