クソザコ種族・呪われし鎧(リビングアーマー)で理不尽クソゲーを超絶攻略してみた【web版】   作:へか帝

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作戦決行

 応援に駆け付けた神殿蜂の力でしっかり余裕を持った高さまで浮き上がると、極太のキノコビームが地上をしつこく薙ぎ払い始める。

 そして苗床はビームを薙ぎ払うと折り返し、再び薙ぎ払う。そしてまた折り返して薙ぎ払い、そしてまた折り返し……。

 オイ。ビームを薙ぎ払うんなら普通一回きりだろふざんけんな。そんな往復ビンタみたいにビームを薙ぎ払うやつがあるか。

 どんだけ殺意込めてんだ。いや、カノンの閃光が実は効いていたのか?

 それでがむしゃらにビームを薙ぎ払っていたのかもしれん。

 

 まあ真相はどれでもいい。

 蜂の運搬によって十分な距離まで近づけたので大地に降ろしてもらう。

 この間合いなら突進もよけやすいしビームが放たれるより先に懐に潜れる。 

 さあ、今こそ会議した作戦を始動するとき!

 

「ところで私はいつ出してくれるんだ?」

「あっ」

 

 やべ。カノンの投擲アイテムでヤツの注意を逸らすのが作戦の第一歩なのに俺の鎧に格納した状態ではそれどころではない。

 カノンを取り出すにしても苗床とこんなに近くては暇もない。まずったな、なんとかすることに夢中で後先を考えていなかった。

 

「すまん、しばらくこのままで……」

「えー!」 

 

 体内からくぐもった抗議の声を上げるカノン。いや本当に申し訳ないと思っている。

 でも時間がないんだ、どうか勘弁してくれ。ちょっと確認する余裕がないが、俺の種族名がオートマタキャリアに変わってたりするのか?

 いやいや、種族名ってそんな節操なく変わるようなものでもなかろう。怖いから確認はしないけどね。

 しかしどうしよう、これじゃ戦力がひとり減ったも同然じゃないか。これは考えものだぞ。

 

「アイテム作れはするけど、これじゃ外に出せないぞ」

「参ったな……。いや、なんとかなる……か?」

「なんかいい方法でもあるのか?」

「ああ。手ごろな爆発物を兜のほうに持ち上げてくれ」

「これでいいか?」

 

 背に腹は代えられまい。よし。

 中に爆発物が詰まった兜を取り外し、手で掴んで苗床に投げつける!

 

「アリマお前それでいいのか!?」

 

 体内からカノンのくぐもらなくなった驚愕の声が聞こえるが、全て承知の上。

 これで俺は首なし騎士のデュラハン状態。鎧の一部を失ったことでHPが二割ほど減少するが構わん。

 目前に飛んできた兜を苗床が払いのけようと触手で弾いた瞬間、内部の爆弾が刺激され俺の兜が爆発。

 リリアの方を見ればしっかりと位置に着いている。苗床の側面に立つ俺たちに対し、リリアは苗床を挟んだ反対側にいる。

 準備はできているようだ。ならば、存分にやらせてもらうぞ。

 

「ミスるなよリリア!」

「来い!」

 

 まず装備を腐れ纏いから失敗作【特大】に持ち替える。

 そして狙うのは、苗床ではなくリリア。両手に失敗作【特大】を構えリリア目掛けて【絶】で蹴りを繰り出す。

 リリア目掛けて強引に引っ張るように運ばれる体。引き摺って運ばれる重い特大の剣が、リリアに至る過程にあった苗床の触手を強引に切り裂き続ける。

 

「せいっ!」

 

 そして放たれた俺の蹴りはリリアが叩き返す。コォンと気味のいい音が、あれ、しないな。

 

「いってぇ! お前私が中に入ってるの忘れてただろ!」

「すまん!」

 

 いっけね、俺いま主のいない鎧じゃないんだった。誰かに鎧を着せることはランディープの無断着用のせいで初めてじゃないが、ほとんど初みたいなもの。

 中に人がいることをすぐに失念してしまう。ましてその状態で戦ったことがないもんだから尚更だ。 

 それはともかく、振り返って苗床の様子を確認すれば、びっしり生えていた菌糸の触手は根本からばっさりと斬り落とされている。 

 作戦は成功だ。

 俺とリリアで触手を左右から挟み、この特大剣を構えたままリリアに【絶】で近寄ることで触手を根こそぎ切り刻む。

 【絶】の特性上必ずリリアに蹴りが届いてしまうことがネックだったが、うまくいなしてくれて助かった。

 作戦会議したときには『私に同じ攻撃は通用せん』などと自信ありげに嘯いていたが、本当に有言実行してくれたしな。

 カノンと俺が合体してしまうというイレギュラーが作戦に支障を来たさなかったのは不幸中の幸いだな。

 

『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ーッ!!』 

 

 苗床は触手を失ったことで絶叫しながらもがき苦しんでおり、また足を失ったことで転げまわりながら苦しんでいる。

 ふむ。カノンを取り出すなら今の内かとも思ったが様子がおかしいな。

 

「なんか溶けてるじゃん」

「よせお前俺の視界が」

「どうなってんだお前」

 

 ひょこっと兜のない鎧から頭を出したカノン。まるで戦車のハッチから顔を出して外の様子を窺う兵士のよう。

 やめろお前そういうことすると俺の視界がお前の金髪の後頭部によって塞がれるんだぞ。

 彼女の指摘した通り、蜂の頭の内部に巣食っていた苗床は尋常ならざる苦しみ方をしており、徐々に液状化していた。

 苗床はドロドロと輪郭を失っていき、最後には女王蜂の頭だけを残して消滅してしまった。

 それに合わせ、神殿のあちこちから突き出ていたキノコが水分を失ったかのように萎んでいく。

 倒した、のか?

 

「……もしかしてあの菌糸の触手が本体だったのかな」

「かもな。布で触手を守っていたのもそのためか。というかそろそろ外に出すぞ」

「おっす」

 

 再び装備を取り外していき、体内に潜むカノンを摘出していく。

 しかし足を失って機動力を失ったところを叩こうと思ったのだが、その前に倒してしまった。

 そういえばキノコは目に見える部分が本体ではなく、地下に伸びた菌が本体だとなにかで聞いたことがある。

 できれば戦闘中にその知識を思い出して弱点に気づきたかったな。まあ偶然弱点を引いて倒すというのも、こういうゲームにおける一種のあるあるか。

 

「これで湿地の霧が晴れるはずだが……」

 

 目的を達し感慨深く呟くリリア。霧の根絶は彼女の悲願。

 元凶を倒したことでこの湿地から霧が晴れると思ったんだが。

 ──その時、神殿全域が強く揺れた。気づいたリリアが声を上げる。

 

「待て、上だ!」

 

 続いて響き渡る轟音。神殿の上部が崩れ落ち、何かが降ってくる。

 瓦礫と共に落下してきたもの。その正体は、女王蜂の首から下。その巨体。

 体のあちこちにフジツボのような噴出孔が発生しており、霧を強烈に噴出していた。

 だがその巨体は落下の勢いによって地表に力強く叩きつけられ、バラバラに砕け散る。

 

「脱出するぞ! このままじゃ生き埋めになる!」

「また走るのー!?」

 

 激しく崩落する神殿蜂の巣。巣の上部にあった女王蜂が落ちた衝撃の影響か?

 何はともあれとっととずらからないと死んでしまう。全員で一斉に出口目掛けて走り出す。

 帰るまでが冒険だ。ここで死ぬわけにいかない。だがここで、再び聞き覚えのあるけたたましい羽音が近づいてきた。

 

「いや待て、蜂たちが手伝ってくれそうだ!」

 

 戦闘中は上空で待機していた神殿蜂たちが、俺たちを運ぼうとこちらに寄ってくる。

 そしてカノンの方に近寄る蜂の数がやたら多い。そっか、そうだよな。

 再び俺は前を走るカノンを後ろから抱き捕まえる。

 

「なんだ!? もしかしてもう一回か!?」

「すまん、文句は蜂たちに頼む!」

 

 もう一回カノンに俺の鎧を着させることとなった。 

 




事案再び
レシーさんランディープさんあの鎧です
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