クソザコ種族・呪われし鎧(リビングアーマー)で理不尽クソゲーを超絶攻略してみた【web版】 作:へか帝
シャルロッテから受け取った新装備。具合を確かめる意味も含め、俺はカノンを連れて再び湿地に戻ってきた。
俺たちは湿地のフィールドボスを撃破し蜂蜜という希少な素材、そして新装備という素晴らしい報酬を受けとることができた。
だが、この湿原における目標はまだ完遂していない。
そう、マッピングが完了していないのだ。
これはまともな金策をしていない俺にとって、非常に大きな収入源。
これをやらないことには首が回らないのだ。
他の情報がドーリスに安く買いたたかれるとは思わないが、収入などあればあるほどいい。
カノンとの契約が続いているうちに探索しきってしまいたいしな。
なお、今回リリアは同行していない。
……実をいうと、俺はまだリリアがついてきてくれるものだと思っていた。
だが、リリアは自分の口で改めて村を救ってくれたことについて礼を告げ、その上で謝罪した。
片腕の私では、もはや力にはなれないと。
リリアは俺を毒霧解決の任に縛り付けるため、呪いを行使した。
その代償に彼女は片腕を失ったのだ。
リリアは森の恩恵を強く受けられる場所でなければ、到底戦力にはなれないと言っていた。
そうしたいきさつで、彼女とのパーティは実質的に解散となった。
エルフの村をリフトによってスキップできるようになったこともある。
今までパーティーを組んでいた中では、彼女が最長。いなくなって惜しく思う気持ちは、ある。
尊大な物言いの割にはよく転んだりとアクの強い彼女だったが、頼りになる仲間だったのは本当。
まあ死んだわけでもあるまいし、そう悔やむこともないだろう。
気持ちを切り替えていこう。
さて、改めて確認するのはこの湿地のエネミー。
濁り水とキノコしかいなかったこのフィールドは、虫と花の楽園と化している。
こいつらの情報をモンスター図鑑にぶち込むのも俺の役割だ。
現段階のこいつらの傾向は分かりやすい。
植物は弱くて、虫は強い。
人喰い花に代表される花や草の姿をしたエネミーは、その場を動くことができないようだ。
蔓をムチのように払ったり、花粉の塊を飛ばしてきたりといった攻撃のレパートリーを持つようだが、やはり動けないのは弱い。
カノンに適当なものを投げてもらうだけで完封できる。的が動かないから外すこともない。
厄介なのは深部のかつて沼だったあたりまで進むと現れる敵。
沼は浄化された今ただの水辺となっているが、この辺りまで進むと敵が植物から虫に変わる。
そしてこいつら、防御を捨てた速攻攻撃タイプが多い。
一度カノンにダメージを入れたのもこの虫タイプだ。
序盤で遠距離攻撃持ちを優遇したと思わせておいて、ここでメタってきている。
一度目はしてやられたが、後衛を優先的に狙うとわかっていれば立ち回りはやりやすい。
前に立って敵のヘイトを買おうとする必要はない。
後衛のカノンと同じラインまで下がって、突撃してくる虫どもに一太刀浴びせるだけだ。
重要なのは後衛と距離を離さないこと。ぴったりと距離を保って受けて立てばいい。
どういう判断基準かわからんが、俺を無視して必ず後衛に突撃するのだ。
それも、前衛をわざわざ迂回して。
だから陣形を組み替え、カノンを狙って無防備な側面を狙えばいい。いかに速かろうと狙いがわかっていれば対処は可能。
そのため、湿原の序盤はカノンが活躍するが後半になると活躍するのは俺になる。
出てくるのはカブトムシ、テントウムシ、アメンボ。
このうち初見だったのはアメンボだったが、こいつもやってくることは同じだった。
前衛の気を引くように詰めてきたかと思いきや、水面を滑るように迂回して後衛を狙いに行く。
前に様子見で軽く散歩しておいてよかったな。敵の攻撃傾向がわかっているのはかなりアドバンテージが大きい。
前回のような不審な釣り人の影を見かけもしないし、デカい帽子を被った女が蹴り込んでも来ない。
新品の鎧を傷つけることもなく、カノンの回復アイテムを消耗することもなく進んでいき、マップを埋めていく。
……不思議だったのは、沼エリアの最深部。
かつて神殿蜂の巣の残骸が転がり、苗床が根城としていたおぞましい毒霧の発生地。
全てのキノコが姿を消したのはもちろんそうだが、奇妙なことに神殿蜂の巣のほうも瓦礫がきれいさっぱり消失していた。
あの巣も上質な建材らしいので、欠片程度でも拾っておいたら役に立つかと思ったのだが、残念だ。
ゲーム的な都合で消滅したのか、誰かが持ち去ったのか。奇妙に思っていたのだが、答えはすぐにわかった。
俺たちに撃破を依頼してきた方の神殿蜂の巣が巨大化していたのだ。
空に浮かぶ正八面体が巣なのはもちろんとして、そのすぐ近くにもう一つ双子のように巣が出来上がっていた。
巣の瓦礫は蜂たちが回収してリサイクルしたらしい。苗床の菌とか残ってねーだろーな。
まあ湿地のキノコが全滅したんだしありえないだろうが。
と、以上のように湿地全土の探索を改めて終え、俺はドーリスの拠点へ戻ることにした。
晴れてモンスター図鑑埋めとマッピングの両作業がひと段落したからだ。
ワープには契約が続いていることもあってカノンも同行することとなった。
まあドーリスの元に連れていってまずいこともないだろう。
むしろ貴重な忘我キャラと会話できることにドーリスは喜ぶんじゃないか?
まあカノンは嫌がるかもしれんが。
そう思いながらワープを実行し、例の薄暗い木造の小屋へと移動する。
だが、今日の情報屋は少し様子がおかしかった。
「久しいな、ドーリス。おかげさまで湿地の方はうまくいったぞ」
「……リビングアーマー? ああ。その姿、お前アリマか」
「ドーリス、どうした?」
なんと、あのドーリスがいつもの胡散臭い笑みを浮かべていなかったのだ。
「中々調子が良さそうでなによりだぜ。かくいう俺は、実をいうとあまり芳しくない」
ストック作るのに数日更新が止まるかも