クソザコ種族・呪われし鎧(リビングアーマー)で理不尽クソゲーを超絶攻略してみた【web版】   作:へか帝

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ご報告いたします

本小説が第3回HJ小説大賞にて入賞、それに伴い書籍化による出版が決定いたしました。
すっげ~


情報屋の仮面

「ドーリス。お前が道を歩いているのをみると妙な気分だ」

「ばかやろう。せっかく身分隠してんのに名前を呼ぶやつがあるか」

 

 それを言うドーリスは、顔に奇妙な古木の仮面を着けていた。

 ドーリスの身柄を捜しているという占い師の場所を聞いたところ、なんとドーリス自ら乗り込むと言い出したのだ。

 そして取り出したのが、いま彼が装着している仮面。

 これを装備したところ、なんとドーリスのプレイヤーネームが別のものにすり替わったのだ。

 

「しかしだな、お前の持っているお宝にも一言言わせろ。このゲームってそんなことさえできるのかよ」

「ヒヒ、便利なもんだろ? これは『なりすましの仮面』というんだ」

「俺のなかで、お前のうさん臭さの階級がひとつ上がったぞ」

 

 仮面の名前からしてもう酷い。

 なりすましなど、言葉からはどうあっても前向きなイメージを抱けない。

 顔を覆ったうえで、プレイヤーネームだけを他人のものに捏造する効果だと?

 そんなものは、もはや悪用されることが宿命づけられているような装備品ではないか。

 しかもそれを装備しているのが、仮面の裏からくつくつと陰険な笑い声をあげているドーリスとかいう男なのだ。

 きっと仮面のサイケデリックな色彩の裏で、お馴染みの風船頭が三日月の笑みを浮かべているに違いない。

 

「そんな便利な代物があるのなら、初めから一人で行けばよかったんじゃないのか?」

 

 素朴な疑問を投げ掛けたのは、同行してくれたカノン。

 彼女とドーリスとは引き続き今回が初対面だが、俺が懇意にしている情報屋ということでむやみに警戒したりはしていないようだ。

 その代わり、彼の振る舞いによる胡散臭さは如実に感じ取っているようで、やや当たりが強い。

 いいぞ、その調子だ。毅然とした態度でドーリスと接しないとすぐ煙に巻かれてしまうからな。

 

 しかしドーリスもカノンのようなストレートな物言いにも慣れっこのようで、へらへらと笑いながら聞き流していた。

 

「おいおい、相手は俺の身柄を狙ってるんだぜ? 一人で行ったら怖いだろ、普通によ」

「そんな普通の人みたいなこと言うなよ」

「アリマお前俺が普通のプレイヤーってこと忘れてねえか?」

 

 いや正直ときどき忘れそうになるよ。

 お前半分くらいNPC側に足突っ込んでるだろ。

 

「ま、いい。占い師のところまで距離があるから暇つぶしがてら話してやるよ。この世界はよ、しばしば仮面屋ってのが出没すんだ」

 

 大鐘楼の道を歩く傍らで、ドーリスが聞いてもいないのになにか説明を始めだした。

 こうして金も払っていないのにドーリスがものを語り始めた時は、ゲーム内にて既に常識とされている知識だと相場が決まっている。

 

「初めて聞く名前だが。その名の通り、仮面でも売り歩いているのか?」

「いや、ただの自称さ。だがその仮面屋ってのが困ったイタズラ小僧でな、仮面の力を使って悪さをしていくのよ」

「じゃあ、お前が付けてるその仮面も?」 

「そういうこった。そんで懲らしめると仮面をひとつ落として去っていくわけよ。この『成りすましの仮面』のときはよ、お前の知っているあの巨大な遮光器土偶が二つ並んでたんだぜ」

「……それは壮観だな」

 

 土偶のシーラが成りすましの被害に遭ってんじゃねえか。

 あのデカい土偶が二つもあったら圧が凄まじそうだ。

 現場に居合わせたかったような、そうでないような。

 

「ま、そんときはシーラのが一枚上手でな。自分は絶対に先に喋り出さなかった」

「どういう意味だ?」

「イヒヒ。痺れを切らして成りすました仮面屋の方がとうとう喋り出したんだがな。容姿も名前も声色もシーラと一緒だったが、口調が本物とはまるっきり違ったのさ」

「ああ……なるほど」

 

 シーラって喋り方がお嬢様だったもんな。

 初対面のときにかなりインパクトを受けたからよく覚えている。

 ああいう特殊な口調なら本人の認証にもなり得るし、先に口を開かなければ偽物にも本人にも口調が伝わらない。

 

「へぇ。賢い対処法だなぁ」 

 

 シーラが偽物をあぶりだした方法を聞いてカノンが素直に感心しているが、俺も同じくそう思う。

 突然自分の偽物が出現したというのにかなりクレバーな対処法だ。

 パニックになって自分が本物だと証明しようと躍起になった挙句どんどんドツボにハマりそうなのに。

 というか俺だったら絶対にそうなる。そのままうまく自分を証明できないまま泥仕合になりそうだ。

  

「ん? というか名前だけじゃなくて外見も変えられるのか」 

「一応な。ま、今は無用なトラブルを避ける為に発動してないだけだ」

「ああ、それもそうか」

 

 ドーリスの言う通り、別のプレイヤーの名前と外見両方を成りすましたら声を掛けられる可能性もある。

 それこそめんどくさいアクシデントに繋がりかねない。

 名前が知り合いと被っている程度なら、わざわざ声を掛けることもないか。

 

「仮面屋はよくそういう揉め事を起こしていてな。プレイヤーもNPCも関係ないから気を付けろよ」

「気を付けろったって、どうしようもなさそうだが」

「まあ心配はいらねえよ。子供じみたイタズラばかりですぐ馬脚を露す。面白い仮面が手に入ったらいい値段で買うからよろしくな、イヒヒヒヒ……」

「それは効果次第だな……」

 

 便利な特殊効果のあるものがもし手に入ったら、普通に自分で使いたい。

 今ドーリスが使っている成りすましの仮面だけでも、仮面屋の所有している仮面の効果の強さが窺い知れるというものだ。

 逆に自分では活用できない、あるいは悪趣味な性質の仮面だったらとっとと手放すしな。

 

 それこそ成りすましの仮面がいい例だ。

 こんなの持っているだけで何か事件が起きた時にあらぬ疑いを持たれそうじゃないか。

 もっとも仮面屋もイタズラばかりするそうだから、そういう効能の仮面が多いのかもしれないが。

 

「そら、着いたぞ。ここが占い師のいるテントだよ」

 

 ドーリスに促されるまま辿り着いたのは、大鐘楼の街の露店市場の一角だった。

 濃い緑色の布のテントが張ってあり、外から中の様子はわからない。

 

「繁盛してるって話じゃなかったか? 客がいないようだが」

「『情報屋を捕まえるまで占いはしない』って公言してんだよ」

「それでわざわざ探しているヤツがたくさんいるわけか」

「自分の需要が分かってるからこそなんだろうがよ、フツーにむかつくぜ」

 

 仮面を被ったドーリスが、ポケットに手を突っ込んだまま悪態をついている。

 ドーリスのこういう姿はなかなか珍しいな。

 占いを必要としている人物が多い状況だからこそ、ドーリスを捜すプレイヤーも多いわけか。そりゃ厄介だ。

 

「ま、それも今日で終いだぜ。中に入ろうや」

「……ああ」

 

 再会した当初はまぁまぁ参ってそうな様子だったのに、今は全然大丈夫そうだな。

 それどころか積極的に乗り込む姿勢さえ見せているというのだから、中々に調子のいい奴だ。

 

 普段はNPCっぽいけど、なんだかんだで人間臭いんだよなぁ、ドーリスも。

 




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