クソザコ種族・呪われし鎧(リビングアーマー)で理不尽クソゲーを超絶攻略してみた【web版】   作:へか帝

95 / 104
カルシウム

「ドーリス。やっぱあれって」

「あの言動だ。掲示板に出没するアイツとみて間違いないだろう」

 

 周囲のスケルトンとまったく同じ見た目でありながら、別格の存在感を放つスケルトン。

 奴の正体は間違いなく掲示板で確認された『骨』という名前の者とみていいだろう。

 ドーリスが触れた通り、あんな独特な言動のスケルトンユーザーがそうそういるはずがない。

 

「なあ、そこのスケルトンのあんた」

 

 明らかにアクの強い人間性だろうが、こんな場所で出会えた他のプレイヤーだ。声を掛けないわけにもいくまい。

 まさかスルーしようとしたって、向こうもそれを許さないだろう。

 近づいてみれば、やがてスケルトンの頭上に『骨』というプレイヤーネームが浮かんで見えた。

 そのまんまじゃねえか。

 

「あん? ここにプレイヤーが?」

 

 俺たちの存在に気づいた骨は、怪訝そうに顎に手を当てていた。

 この場所では、プレイヤーの存在が珍しいようだ。俺たちがメライによって転移させられたように、この墳墓にプレイヤーがアクセスする手段は限られているのかもしれない。

 

「……後ろに情報屋も見えるな。お前らどっからやってきた? ここはスケルトンの楽園だぜ。そうじゃねえ奴らが簡単に足を踏み入れられる場所じゃないはずだが」

「その情報屋絡みで、ちょっとしたクエストがな。なんでもここと繋がってる儀式場まで連れてけって、転移で飛ばされてきたんだよ」

「ふむ。なんにせよ非カルシウムがここ訪れることは珍しいことだ。ここの住人として歓迎するぜ」

 

 背後のドーリスを見て情報屋だとわかったらしい。ドーリスもやっぱり名前が知られてるんだな。 

 ていうかこいつスケルトン以外のことを非カルシウムって言ってるのか? まあたしかに俺たちは種族的に骨とか無いし間違っちゃいないんだろうが……。

 

「見たところ最低限のスケルトン対策はできているようだ。カルシウムにも満たない有象無象に後れを取ることはないだろう」

「そういうあんたはここで一体何を? さっき他のスケルトン相手無双していたのを見たぞ」 

 

 しかも武器も持たずに、素手で他のスケルトンを圧倒していた。かなり実力であることは疑いようもない。

 

「スケルトンという種族の探求だ。スケルトンはほぼ全ての職業に高い適正を持つが、俺は今スケルトンが元来持っているポテンシャルに注目していてな」

「あー……。あんたが連呼しているカルシウムってのも、それと何か関連が?」

「まさしく! 話の分かるやつだ、スケルトンでないのが悔やまれれる。カルシウムを追求すれば、俺たちスケルトンは体が強化されていく。お前もカルシウムを軽視した愚かな骨畜生の末路を見届けたんだろう?」

「まぁ……」

 

 ちらりと足元に目を向ければ、このスケルトンに粉砕された骨片があたりに散らばっている。

  

「俺はスケルトンにカルシウムというマスクデータがあるんじゃないかと確信に近い疑惑を抱いている。そのカルシウムこそが、スケルトンとしての能力の限界を決めるじゃあないかとな」

 

 マスクデータとは、プレイヤー側からは確認することのできない隠しステータスのことだ。

 この骨はスケルトンという種族には専用の能力上限を定める隠されたパラメータがあるんじゃないかと検証しているのか。

 それをカルシウム呼ばわりしているから何やら話がおかしく聞こえるが、言っていることは非常に興味深い。

 

「お前もスケルトンという種族が、極端に強さにバラツキがあることくらい知っているだろう?」

「逆にあんたが強いのはカルシウムの影響ってことか?」

「カルシウムとはすなわち力だ。スケルトンは脆さを代償に職業適性が非常に高い。それこそ魔法分野などは最上位の適正を誇るといっていいだろう」

 

 確信めいた口ぶりなのは、彼自身がそれを検証したことがあるからだろう。

 だって遭遇したことがあるもんな、その検証に使われたスケルトンと。

 忘我サロンにいた頭蓋骨が天球儀と融合した星辰魔法使いのことだ。

 名前に骨無双って入っていたのを覚えている。ワードセンスといいコンセプトといい、ぜったいにコイツが生み出した検証キャラだろ。

 

「だがスケルトンの真価はこのカルシウムにこそあるはず。全貌が明らかになった暁には、スケルトンこそが無類無敵の種族として君臨するだろう」

「なるほどな……」

 

 ぶっちゃけ割と面白い話だ。

 種族に特有のマスクデータがあって、それを上げることで更なる力を手に入れる。

 このゲームにはレベルアップという概念がないとばっかり思っていたが、実はそうでもないのか?

 この骨はそれをカルシウムと呼称していたが、俺のリビングアーマーという種族にだってそれと同じようなパラメータが用意されている可能性もある。

 たぶんスケルトンは特にそのマスクデータの影響が強く表れる種族なんだろう。

 リビングアーマーの場合はどういう形で影響するんだろうか。それともやっぱりスケルトンにしかないマスクデータなのか?

 

 考えたってわからないし、誰も教えてくれない。

 彼がそうしているように、俺も俺でリビングアーマーの検証をいつかがっつりしないとな。

 情報を共有してくれる仲間とかいないし。というかまず俺以外のリビングアーマーがいないんだから。

 

「この墳墓は同じスケルトンでさえ歓迎されないカルシウムが全ての世界。弱いカルシウムから順に淘汰されていく。俺は俺のカルシウム探しに行く。ま、クエストでもなんでも好きに頑張りな」

 

 骨は最後にそう言い残すと、パキパキと足元の骨の残骸を踏み砕きながら暗闇に消えていった。

 思っていたより話の通じる骨ではあったが、やはり奇人で間違いはなさそうだ。

 

 なんだよカルシウムが全ての世界って。 

 




力こそカルシウム
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。