宇宙戦艦ヤマト・シン   作:ジム・ビム

3 / 7
スペシャル9

 30年の歳月は短いようで長く、人類は明日の地球の存亡をかけてアズリスの技術を吸収していった。

 

 最初期からアメリカより派遣されていたアルベルト・アインシュタインや日本の湯川秀樹などを中心にアズリスの学者や墜落船から多くの知識を解析していた事も大きく地球人類の科学力を底上げすることなり、後にドイツやイギリスの優秀な科学者たちが参加することによって10年の月日をかけてアズリスの技術を習得した。

 

 1955年頃にはこちらがわの1970年代レベルの科学技術が一般社会に流出することとなった。日本の家庭ではカラーテレビがちらほら置かれるようになり、押しボタン式電話機が一家に1台という光景が普遍に見られるようになった。

 

 それが世界規模で巻き起こり、アズリスの居留地となった満州の地には世界各国からお金が注ぎ込まれ建設された工場から、単純作業を行うロボットが生産されていった。バッテリーとモーター駆動の金属の骨格とワイヤーのみで構成されたそのロボットが生み出された理由はただ一つ。過剰に発展した技術に追いつかない生産、特に大量に必要となる金属を筆頭とした原材料不足、そして枯渇した人材を補うためであった。

 

 アメリカ・ドイツ・イギリス・日本が国内外で人材の育成に力を注ぐようになったのは前話の通りではあるが、その弊害が最初に出始めたのが1950年のアメリカだった。

 

 すでに子供はハイスクールを出るのが一般的だったアメリカは、その高い学歴を持ちながら採掘作業に従事する道を選ぶ人が皆無だった。さらにアズリスの技術を扱える人材の育成に力を注いだため新たな工業系の大学が乱立した。また低利率の奨学金が国から支給されたこともあって多くの学生は大学への進学を選ぶこととなり、ますますキツイ・汚い・危険(3K)な採掘業へ就く若者が減る事となった。

 

 アメリカもただ指をくわえて見ていたわけではなく、低所得者へ採掘業などへの就職を勧めたり保険システムの整備を国民の反対を押し切り行ったりしたものの、やがて採掘地から若者が消えて行くこととなった。このままでは今後爆増する必要資源の確保ができなくなるのは目に見えていた為、新しい採掘重機の開発と人材不足を解消すべくアズリスの元居住惑星で多用されていた単純作業用ロボットの採用を決定した。

 

 アメリカに続き多くの先進国が似たような失敗を積み重ねていたものの、失敗に対応する早さはアメリカという教材があったためか早かった。日本は早期に作業用ロボの導入に踏み切りその多くは農作業に使われ、ドイツを筆頭としたヨーロッパ諸国も鉱山の現場で動くのは人間よりロボットの方が多くなった。

 

 さてこの作業用ロボはモーター駆動、電気を喰らう事で動くものでたった5kgのバッテリーで10時間作業を行え、制御もアズリスの技術でもたらされた半導体を用いた高性能PCを搭載しており、アメリカであろうとこれと同じ物を生産する場合、当時のアメリカのM4中戦車3台分のコストがかかるほどの代物。しかしアズリスの居住区域で生産されたそれの価格は日本円に換算して1台一千万ほどと、遥かに格安であった

 

 理由は単純で、アズリスの乗ってきた移民船に乗せてあった生産施設を移動・復旧させ使用できたからだ。そこに原料を投入するだけで勝手に生産を行ってくれるそれはアズリスにとっての外交武器であり生命線であり、それは同時に人類にとっての生命線でもあった。そしてその生産工場を稼働させる為の電力は同じく移民船から移送してきた船のエンジン、波動エンジンを改造してまかなっていた。

 

 ―――波動エンジン。アズリスが古くから継承してきた超技術の中でも最大の代物で、それ1台で当時のアメリカで消費されていた電力を全てまかなえるほどの出力を持つものだった。人類もそれのコピーを最終目標としてアズリスの技術の解明計画を立てており、本来ならただの発電用として改造する事はおろか、船から下ろす事も許されないはずだった。

 

 しかしロボットの生産設備が想定より早く復旧できたこと、それの電力を賄うはずだった原子力発電の開発が遅れに遅れて試作はおろか研究すら終わっていないことの両方が理由となり、2つあった波動エンジンのうちの一つを発電用に使用することが決定された。

 

 ロボット工場に併設された波動エンジン発電施設は工場だけでは消費しきれない電力を産みだし、余剰電力はロボット用の給電用大型バッテリーへの給電に回されることとなった。簡単に言うならロボット用のガソリンスタンドならぬ電気スタンドが世界各国の数多の場所に設置されることとなったのだ。

 

 

 軍事力に目を向けてみると、おおよそこちらの現代レベルの兵器とシステムが天地海を護っている。ただ核兵器はなく、海には戦艦が砲塔を天空に向けて各国の港に鎮座していた。また各々の軍事基地には戦艦の主砲より巨大な砲塔が塔のように聳え立てており、それらは国民の不安を大きく和らげていた。いや、和らげる程度の効果しかなかった。

 

 同盟の発足と共に異星人の存在と脅威を全世界に打ち明けはしたものの、その脅威がどれほどのものかの詳細を明かすことはできなかった。大気圏外から地球全土を焼きつくす砲撃を行うことができる事を馬鹿正直に伝えることは不可能だ。そのような事をすれば全世界の国民は暴動をおこし、地球防衛に貴重な金と時間を注ぎ込むことができなくなるだろう。ゆえにどの国家も政府の重鎮や軍のトップ周辺にのみ真実を伝え、一刻も早く地球外での戦闘を行えるように努力を重ねることしかできなかった。

 

 

 人類が母なる地球から足を踏み出したのは1962年、ドイツが建造した有人ロケットによって初めて大気圏の外へ人間を送り込む事に成功し、その後はアメリカ・日本・イギリスの順に続々と宇宙への道を切り開いていった。これらのロケットは液体燃料を使用した多段式ロケットで使い捨てであった。アズリス技術を用いていたため打ち上げ失敗は一度もなかったもののロケットを使用した人類の宇宙進出は非効率的であり、これらの挑戦は単なる実験と人類の宇宙進出を印象づけるためのプロパガンダであった。これらで得られたデータを元に、ロケットは人工衛星の打ち上げに使われるのが主流となった。

 

 とはいえ何も進捗がなかったわけではなく、翌年1963年にはドイツが悲願だった人類初の波動エンジンの製造に成功。その2年後にアメリカで建造された実験艦『ニューワールド』に搭載され1年間の大気圏内での飛行実験をこなしたのち、1966年の冬に様々な国家から選りすぐられた乗組員100名を乗せて大気圏外へ進出、7時間後には月に到着し人類初の月面着陸を行った。その時に乗組員の一人であるユーリイ・ガガーリンが発した「宇宙は暗く星々が瞬いていた。地球に目を向けると青みがかって美しかった」という言葉は地球とはどういった星なのか、そして宇宙とはどういったものだったのかを端的に表していたので一大ムーブメントとなった。

 

 『ニューワールド』は10日もの間、月や地球周辺に浮遊している岩石の採取や艦内外様々なデータの計測などを行ったのち地球に帰還した。その時に得られた膨大なデータにより人類の宇宙進出は大きく進むこととなる。地球圏コロニーの建造地が決定されたのもこの時に得られたデータに基づいての事だった。『ニューワールド』はその後幾度も宇宙へ飛び立ち、様々なデータを持ちかえることとなる。

 

 

 1970年に入る頃、軍事用ではあるものの少なくない宇宙港が建造されるようになった。この時に活躍したのがドイツに本社を置くジオン工業社の生産したモビルワーカーだった。

 

 1974年、『ニューワールド』のデータと波動エンジンの生産体制が整った事で、本格的な宇宙での戦闘に耐えうる艦艇の建造に各国が着手して行くこととなる。最初にイギリスがドレッドノート級宇宙戦艦1番艦『ドレッドノート』と2番艦『ネルソン』を建造した。

 

 次にアメリカがワシントン級1番艦『ワシントン』2番艦『ケンタッキー』3番艦『モンタナ』を同時に建造すると、すぐ後にドイツがアドルフ級1番艦『アドルフ』2番艦『リヒトホーフェン』を建造。最後、1975年に日本が三笠級1番艦『三笠』と2番艦『阿蘇』を建造し、これでやっと宇宙で戦える戦力を整えることに成功したのであった。

 

 これらの戦艦は海上航行も視野にいれた設計を行っており、既存の戦艦の艦尾にロケットをくっつけたような形状をしていた。主砲もそれぞれ連装、3連装の違いはあれど14インチ(35.6cm)ショックカノン(日本名:陽電子衝撃砲)を搭載し、実体弾を装薬発射することも可能。宇宙用対空魚雷(英名:ミサイル)や対空迎撃用として対空マシンガンをあらゆる部分に装備している。また実験兵装として次元波動理論を応用した防御システム「次元波動振幅防御壁」通称「波動防壁」を装備しており、20分という短時間ながらも圧倒的防御力を発揮できる。

 

 ちなみに波動防壁は元々『ニューワールド』の大気圏脱出/突入用の装備として考案、実装されたものでその優れた防御システムは後に軍事のみならず多くの宇宙船に搭載されるようになった。

 

 この9隻の宇宙戦艦はスペシャル9と呼ばれ、後に開発される各国の宇宙戦艦のひな型となった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。