宇宙戦艦ヤマト・シン   作:ジム・ビム

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もしも宇宙世紀が本当に祝福されたものだったら

 1965年から2015年の50年間は高度技術成長期と言われた。人類の宇宙進出が本格的なものとなり、1970年から始まった各国の宇宙港の建設により宇宙に人が住める場所が作れるようになると一気にその流れが早まった。先進4国による後進国への教育増進の効果が発揮されはじめたのもこの頃で、台湾やインドやアフリカのアメリカやドイツの影響が強い地域は実質的に植民地から保護国へと格上げされ、先進国の大学に入り学ぶことができた知識人たちが中心となって政府を形作って行った。

 

 話はやや逸れてしまったがその高度技術成長期の象徴と言えるのが1987年から立案、始動した宇宙コロニー計画だった。先だって建造された宇宙港は確かに人類が住める地ではあったが、決して快適な居住空間とは言えなかった。そして人類は技術の進歩と先進4国の強引とも言えるリーダーシップにより先進国・後進国問わず食糧は行き渡っている状態であり、人類の増える速度は年を重ねるごとに加速している状態だった。特に中華民国の人口の伸びは凄まじく1960年ごろの7億人から約30年で12億人にまで増大しており、中華民国政府は過剰な人口拡大を防ぐために様々な手立てを行ったものの増加に歯止めをかけることは難しかった。

 

 中華民国は極端な事例ではあるものの世界規模で人口は加速度的に増加して行っているのは誰の目からみても明らかで、このままでは地球に住める場所や食糧が不足してしまうのではないかという危惧の声が世界中から上がり始めた。これを受けて先進4カ国は日本とドイツを中心とした宇宙コロニ―建設計画を立案。また連動してアメリカとイギリスを中心に月面都市群建造計画も組まれ、人類は宇宙移民時代へと突入することとなる。

 

 まず最初に1回目の月面都市計画が1990年からスタートした。これは宇宙の建造予定区域(以後宙域と呼称)に機材・資材・人材を送り届ける為の拠点づくりを兼ねていた。ここでもジオン工業社の生産するモビルワーカーが多方面に活躍し、後の宇宙開発にはモビルワーカーが多用されるようになっていく。1993年に入り月面都市がある程度形になると宇宙コロニ―建造計画が本格的に始動した。

 

 この宇宙コロニ―はなるべく無駄なスペースを産まないように回転するシリンダー型に設計され、コロニ―の内壁に遠心力の押しつける力で擬似的な重力を再現するようになっている。以後この形状がコロニ―の基本型となる。建造宙域は『ニューワールド』から得られたデータを元に地球と月の重力が安定して作用されるラグランジュポイントに決定され、最も月から近いL1とL2地点にまず最初に宇宙コロニ―群が建造された。

 

 これらの宇宙コロニ―は1998年に完成し、最初の移民が宇宙コロニ―へ住まいを移したのは2000年の元旦だった。また1回目の月面都市も完成し、同年の秋には国際同盟の本部もその月面都市へ移転することとなる。同時に月面都市とL1・L2の宇宙コロニ―群の名も発表され、月面都市には【ルール】と、L1は【高天原】、L2が【ムンゾ】と名付けられた。その名からわかるように1回目の月面都市はイギリスが、L1コロニ―群は日本が、L2コロニ―はドイツの領土とされた。

 

 以降も月面都市とコロニ―の建造は続けられ、2010年にはL4にイタリアとフランスがそれぞれ【ハッテ】と【リリー】。L5にインドの【デーヴァ】とアメリカの【ニューエリス】、L3に中華民国の【瑶池】とそれぞれを保有するようになる。月面都市も各国が都市を建造するようになり、アメリカが【ニューワシントン】と【アナハイム】を建造し、続けて日本が【葦原】をドイツが【グラナダ】を建造しそれぞれの国民が移り住んだ。

 

 この宇宙移民は当時の地球人口の1割である約5億人が宇宙へ移り住むこととなる。そして国際同盟本部の移転と共に宇宙憲章を設置することとなる。宇宙開発の目的と地球防衛のための国際的な協力。そして宇宙で生きる者、生きようとする者が望めば国家としての独立を認めるといった事が内容に含まれており、地球人類の生存を優先する事が記されていた。

 

 

 

 

 宇宙移民の熱がたぎっていた頃、次世代の宇宙戦艦の建造計画も着々と進んでいた。先の宇宙戦艦から得られた反省点とより強力な武装の装備を主軸としつつ、各国はそれぞれの特色が出るような設計を行っていた。アメリカはより強固かつ長時間の展開ができる波動防壁の装備とより大型の主砲の装備を、イギリスは艦載機の搭載を前提とした設計、日本はよりオールラウンドな活躍ができるよう宇宙・空・海上・海中の全領域で活動できる設計へ、そしてドイツは波動砲を主砲とする研究を行っていた。

 

 最終的にドイツの波動砲を主砲とするもくろみは現時点では達成できず、波動エンジンの出力強化による速力強化へと舵を切る事となるがこの研究を止める事はしなかった。成果がでるのはまだ先の話である。

 

 『VF-1』のロールアウトと同時期にイギリスで一つの計画が発足した。それは現状の兵装、主に戦車に変わる新機軸の兵器の開発計画だった。【デストロイド計画】と名付けられたその計画は『VF-1』や『SV-1』の開発データを元にした既存の戦車より場所を選ばぬ2足歩行兵器の開発が目的であり、最終的に4種類の兵器が製造された。

 

 両腕に戦車砲を装備した『MBR-01トマホーク』、対空機銃を装備した『MBR-02ディフェンダー』、小型対空ミサイルを大量に装備した『MBR-03ファランクス』、長距離砲撃に特化した『MBR-04モンスター』の4機はイギリス軍に正式配備され、後に日本の工業連合が開発した両腕にブレードを装備した『MBR-05カタナ』と共に既存の戦車を過去のものとし、宇宙での活動も可能という事でイギリスのロビー活動のかいあって同盟軍を筆頭に各国の軍隊に配備されることとなる。

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