【まるで蜘蛛の】転生したら多脚戦車に乗ってるんだが【行進】 作:NTK
2148年 10月13日
「渡れるわけ…ないよな」
「当たり前だろ」
広大な河を前に、ライデンとシンエイが言葉を交わしていた。脚周りが脆弱なうえにコクピットに隙間すらあるジャガーノートではあっという間に浸水して流されるのがオチである。その後他のメンバーもゾロゾロと集まり、河を眺めていた。
「これはジャガーノートじゃ渡れないな」
「いや、案外浅いかも…よしダイヤ!一緒に飛び込んで確認しようじゃないか!」
「えぇ⁉︎いや、でも…確かに確認はいるよな…」
「あら〜?ダイヤくん、もし流されたら一体誰が回収するのかしら〜?」
「… ヤメトキマース」
(ここにクジョーがいたらダイヤ、色んな意味で流されてたな…)
結局、橋を使おうにもレギオンの偵察隊が戻ってくる可能性を考え、しばらくここで待機する事となった。
釣り上げた魚を焼いて食べながら一同はこれまでの事を話していた。
「にしても、こんな大勢でハイキングとは思っても見なかったな」
「そうだね。精々数人ってとこかと思ってたし」
「おかげでファイドの荷物が凄いことになってるよな」
「ぴ」
超長距離砲での砲撃等で戦死したルイ達に関しては完全にこちらの理解の範疇を越えた攻撃だったことを考えれば、あれさえなければ20人生存という快挙になっていたので、レーナの成長ぶりには彼らも舌を巻いていた。特にトーマは例の中佐の戦術に似てると口にしていたが、それを聞く前に彼が戦死し、結局真相は聞けず仕舞いであった。
それに伴い、ファイドに搭載された物資の量も多くなったが、シンの異能の事もあり、移動にさほど影響は出ずにいた。
時が経ち、旧ギアーテ領にてボイラーを見つけた彼らはそれを用いて湯を沸かし風呂を用意、先に女子たちが入浴していた。久しぶりの風呂を堪能する中、シン達も一緒に入れば良いのにとクレナが呟くと他の女子たちが意味深な目を向けていた。
「…何?どうしたの?」
「いやー…ね?」
「そう言う所が妹扱いされてる理由じゃないかな〜?」
「えーなんで⁉︎みんなで入ったほうがコーリツテキ…ていうか、エーセーテキでしょ⁉︎」
「そんなに入りたいなら、シンが入ったときに乱入すればいいんじゃない?」
『そうそう!』
「え…?いや…それは…その…」
「何故そこで恥ずかしがるの…」
『クレナ、かーわいいー‼︎』
わいわいきゃあきゃあと姦しい声が遠くで聞こえてくるなか、男子組は聞き耳を立てるもの数名、必死に耳を塞ぐダイヤとそれを引き剥がそうとするハルトとセオの攻防戦が広がられる中、呆れるライデンの近くでシンは我関せずといった様子で焚き火に枝を放り込んでいた。
「なぁ、あいつら俺らが近くにいるのわかってんだよな?」
「そうだと思う。そうでなければあとで聞かなかった事にしてくるだろ」
「だろうな…にしても、なんでクレナはあぁなんだか…」
「それをおれに聞くな」
「それは、ごもっともで」
直後、ふとシンが後方に視線を向けるの見て一同はレギオンが近くにいるのかと身構えた。
「いるのか?」
「いや、違う。ヤツはまだ共和国にいるのかと思っただけだ」
「ハーヴェスターか…」
一度だけ、シンの
「
「自分からレギオンになったのだろうけど、戦い抜く誇りよりもそれを選んだきっかけは何なんだろうな」
2149年 6月25日 レギオン支配域
《ノゥ・フェイスよりネクロマンサー。貴官を本日より統括ネットワーク指揮官機へと昇格。及び来たる掃討作戦におけるサンマグノリア共和国攻略軍での総指揮官機へと任命する》
ノゥ・フェイスからの通信を聞き、ネクロマンサーはひとまず自身が共和国担当になる事が決まり、内心安堵していた。
統括ネットワーク指揮官機というのがよくわからないが、これまでの事を考えるに、ノゥ・フェイスと同等の立ち位置となったと見ていいだろう。大量の頭部の回収や
日付等は未だ伝えられていないが、このまま何もなければ
《ネクロマンサー了解。作戦遂行に関して該当攻略地域内での優先目標の開示を要求》
もしかしたら本来の物語で共和国を壊滅出来なかったのには理由があったのかもしれない、そう考えた彼女はノゥ・フェイスに作戦目標を問いだした。
《ノゥ・フェイス了解。今作戦における貴官の優先目標は主に二つ。一つは共和国北部、シャリテ市の制圧及び確保。もう一つは共和国市民の大規模鹵獲。優先度は後者の方が高位である》
それを聞き、ネクロマンサーは疑問に思った。後者はのちの牧羊犬のために必要なのでわかるが、前者に関しては理由がわからなかった。牧羊犬の為の
《ネクロマンサーよりノゥ・フェイス。両優先目標の理由を要求》
《…ノゥ・フェイスよりネクロマンサー。これより連絡することは統括ネットワーク指揮官機のみの機密事項故、他の指揮官機への他言を禁ずる》
そう言ったのちにノゥ・フェイスは説明をし始めた。後者はやはりのちの牧羊犬の開発のためであったが、前者の方は意外なものであった。
シャリテ市を制圧後その地点にマスドライバーを建設し、そこから人工衛星を射出、質量砲弾として利用する事実上の弾道ミサイルのために必要だというのだ。また、
(なるほど…大攻勢で大多数の人類を殲滅した後、その後開発した牧羊犬や弾道ミサイルで残った人類を撃破すると言う算段か…これが全てってわけではなかったのか…欺瞞プランは恐らく、
《以上である。ネクロマンサー、他に疑問はあるか》
《ネクロマンサーよりノゥ・フェイス。鹵獲目標数達成後、共和国市民の掃討の承認を求む》
《ノゥ・フェイス承認。予定数確保後、残存兵力で可能であれば速やかに殲滅せよ。また、先述した目標を完遂するための行動内容は貴官に一任する》
要するに、シャリテ市の制圧と市民の確保が出来れば好きに行動していいし、残った市民を鏖殺してもいい。それを聞き、彼は兼ねてより考案していたプランを実行できるとわかり安堵していた。
《ネクロマンサー了解。直ちに掃討作戦に向けての準備を行うため、通信を終了する》
通信を終えたネクロマンサーはほぅ、と無いはずの口でため息を付いた。
(あと二ヶ月…ようやく、『この子』の復讐を行える…)
彼が憑依し、自らレギオンと成り果て今や
両親と双子の妹と暮らしていた彼女だったが、戦争が始まり、軍人だった父は戦線に向かい、果敢に戦っていたが陣地ごと吹き飛ばされ、戦死してしまった。その知らせを聞き嘆いていた彼女たちだったが、その翌日に例の政策が行われ、彼女らを連行しようと軍の者がやってきたが、そこからが地獄であった。
─お前らをもう少しだけ人間にさせてやる─
妹共々発育がなまじ良かったのが災いしたのか、はたまた連行しにきた彼らの趣味だったのかはわからなかったが、その一言を聞いた後、彼女は妹と母親と共に
しかしこの一件で母親は精神を病み、86区に収容後一週間と経たないうちに首を吊って自殺した。その後は残された妹と共になんとかして生き延び、戦場へと降り立った。
妹とは戦隊から離れることはなく、アルミの棺桶を駆りレギオンがひしめく絶死の戦場を生き延びていった。この頃は他のエイティシックス達と同じく、復讐はせず最後まで生き抜くことを是としていたのであった。確かに彼らは憎いが、復讐しようにも一人ではどうしようもなく、ならば残された最愛の妹と共に生き抜こう、そう考えていた。そして彼女と妹は特別偵察任務が下されるまで生き延びたのである。
だが出発する前日、二人しかいないのに関わらず緊急出撃を命じられた挙句、担当ハンドラーの嘘情報に惑わされた結果、妹が目の前で
戦闘が終わり、唯一残った左腕を抱えて泣き叫ぶ彼女とは対称的にゲラゲラと笑うハンドラーの声を聞いた時、今まで溜め込んでいた復讐心が溢れ出し、彼女の取る道は決まっていた。
翌日、整備士達に目もくれず特別偵察任務に出た彼女はレギオンを血眼で探していき、ようやく見つけると存在を知らせるため空に向けて砲撃し、注目を寄せ、キャノピーを開いて身を乗り出しこの身を捧げるかのように両手を広げた。レギオンらもこちらの意図に気がついたのか、はたまた元から首を狩るつもりだったのかはわからないが、彼女の願いは聞き入れられ『羊飼い・ネクロマンサー』へと生まれ変わり、そして彼に憑依され今に至っていた。
(憑依した関係か、今はもう彼女は残滓のみの存在となってしまった…なら彼女が成そうとしたことを実行するまで…)
2149年 7月25日 サンマグノリア共和国北部戦線
《ファリアンよりハンドラー・ワン。敵部隊の撤退を確認したのです》
部下であるファリアン、もといミチヒの報告を聞き、エルマンは次の指示を出した。
《ハンドラー・ワン了解。周囲に警戒しつつこちらも撤退してくれ。それと戦隊各員に連絡。急な人事異動があって、俺は別の戦隊を担当することになった。君らには別のハンドラーに引き継がせる。ちなみに次のハンドラーは俺の傘下の者だからそこは安心してくれ》
《それを聞いて安心したのです》
《でもどうせなら少佐に最後までいて欲しかったな》
《なんだってまた人事異動が?》
随分と慕われるようになったなと、エルマンは微笑みながら説明をし始めた。理由は単純で異動先のハンドラーが酔った拍子に階段から落ちて亡くなったため、急遽エルマンが担当することになったというわけであった。
《ちなみに、次の戦隊は『スレッジハマー戦隊』だ。偶然とはいえ、やっと担当できるようになって良かったよ。かつて担当した他の奴らに会えるかね》
《……少佐さん、もしかしてそのハンドラーを事故に見せかけてやったのです?》
《やってないからな⁉︎流石にそこまではやらないさ。んじゃ、お疲れ様。君らのことはずっと覚えておくよ》
そういい通信を終えるエルマンだが、まさかこの後思ってもいない形で再会するとは、夢にも思わなかったのであった。
2149年 8月25日 レギオン支配域
《…当該ネットワーク所属の全レギオンに告ぐ。ただちに撃滅を開始せよ》
どこまでも澄んだ星空の下で、ノゥ・フェイスの指令が下り、各レギオンはそれぞれの攻略目標に向けて進軍し始めた。当然ネクロマンサーもその一つではあるが、その前に自身の指揮下にあるレギオンに通信を繋げた。
この場にいるレギオンは全てが黒羊、または羊飼いであり、彼の人選により全員が元エイティシックスの者達であり、そして羊飼いの実に半数近くがレギオン志願兵であった。
《ネクロマンサーよりサンマグノリア共和国攻略レギオン全機へ。ようやくだ、ようやく我らの復讐が始まるぞ。我らを壁の外へと追いやり、家族や恋人、そして己自身を死なせたあの憎き
《まぁ貴官らの中には私や他の同胞に首を落とされた者もいるだろうが、そうなったのはそもそもが彼らの所為だ、そこは承知したまえ》
指令を受け取り実行するしかない黒羊は元より、羊飼いからは何の返答もないが、彼らからふつふつと憎悪が湧き出てくるのを感じながら彼は言葉を続けた。
《さて、諸君らは鮭という魚を知っているか?アレは川から海に下り、成長してまた産まれた川に戻ってくるのだ。今の我々と状況が酷似していないか?さらにはブタの逆は鮭という話を聞いた事がある、実に気に入った。故に私は私の独断でこのサンマグノリア共和国攻略作戦を『サーモン・ラン』と名付けよう》
《あぁ、それと鏖殺とは言ったが、命令の関係である程度連中を捕まえなくてはいけないのでね。予定数の確保の連絡が来る前に全滅させないように》
そこまで語るとネクロマンサーは少し黙ると改めて指示を下した。
《では各機、進撃せよ。目標、サンマグノリア共和国…
エルマンという脅威がいると分かっている以上、馬鹿正直に北部戦線に攻め込む必要はない。無論、西部戦線に異動した可能性もなくはないが、長年北部戦線に勤めていた彼が今更異動とは考えにくいし、仮にいたとしても互いのホームグラウンドである北部戦線よりは比較的突破しやすいだろう。
それに、いかにも大攻勢が北部からくるように見せかけるために戦力を集中させる素振りを見せたり、渡河オプションをつけた
だがその代わり、彼の指揮下でほぼ無傷の北部戦線のエイティシックスらと85区内で戦うこととなるが、それはそれとしてある程度策は練ってある。
《レギオン各機、壁の中の白ブタどもに本物の戦争を、本物の戦場を教えようではないか》
初手から原作崩してくスタイル〜。
顔無上司、原作だと共和国にいたけど、元々大攻勢での共和国担当だったのか、その日だけそれらしい理由付けてダイナミック里帰り&娘の授業参観()に来てたのかがわからんところよ…
あ、次回から掲示板に戻ります。