健康優良児リシテアちゃん   作:幸イテ(旧名:kouta)

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 今回は本編に入れたかったけど入れられなかった裏話的な短編集3本となります。内容は以下の通りです。


その1 エーデルガルトとベレト

その2 ジェラルト父さんの憂鬱

その3 その頃のコーデリア家 夜明け編


 ちなみに今回リシテアちゃんは出てきません!


短編集 その1

 

 

 エーデルガルトとベレト

 

 

 エーデルガルトは困惑していた。

 贈り物を貰う事自体はよくある事である。次期皇帝ともあれば当たり前の事だ。しかしながらエーデルガルトにとって贈り物とは、裏の思惑が透けて見えて、厄介ごとだけが増えるというありがたくない代物でしかなかった。

 そもそもエーデルガルトは実力主義だ。政治力も必要と理解はしており、礼には礼をと表向き対応もしてはいるが、その本心は冷めたもので、小手先の賄賂でなびくような事はまずない。

 そんな彼女の前にベレトは急に現れ、突然の事に身構える彼女へあるものを手渡した。

「鋼の斧……よね? これが何か?」

「エーデルガルトにあげようと思って」

「はっ?」

 思わず目が点になるエーデルガルト、それはとても貴重なシーンであった。

「ちょ、ちょっと待って。何がどうなってそうなるの?」

「鋼の斧は嫌いだろうか?」

 好き嫌いの問題ではない! エーデルガルトはそう叫びたくなったが、常識に疎いベレトを鑑みて何とか堪え、冷静に説明するように勤める。

「女性への贈り物に斧は流石にどうかと思うけど……一般的な女性は持つ事すらままならないわよこれ。まあ、私個人としては嫌いではないけど? でも」

「良かった。じゃあこれ」

「ええ、ありがたく……じゃなくて!! 私違う学級よ!! しかも級長なのだけど!!」

 エーデルガルトは度を越えた非常識に頭を抱える。菓子折りなど普通の贈り物ならまだしも武器はまずいだろう。

「違う学級って言っても生徒は生徒だろう? ただ担任じゃないというだけで」

「いえ、常識的に考えて、他の学級はあなたにとってライバルと呼ぶべきもので、より直接的に言うなれば『敵』よ。師は敵に塩を送るつもり?」

 ありったけの敵意を向けてエーデルガルトはベレトを睨みつける。しかしエーデルガルトの全力を受けているはずのベレトは冷めたものだった。

「敵じゃないさ。エーデルガルト、もし君が敵だとしたら」

 敵だとしたら……

 エーデルガルトは緊張からベレトから貰った鋼の斧を無意識にきつく握りしめる。 

「俺はもう斬っている」

「……っ!!?」

 ベレトが見せたそれは一瞬だった。しかしエーデルガルトにとっては十分であった。死んだと思った。足が恐怖で竦んだ。普段教師として振る舞ってるため、見る事のない『灰色の悪魔』としての姿、ヒューベルトに彼の身辺調査をした際に得た情報であったが、その片鱗を見たエーデルガルトに冷たい汗が流れた。

「俺には政治の面は分からない。ずっと傭兵稼業をしていたから、今の級分けがその縮図と聞いていてもピンとは来ないんだ。でも傭兵をずっとやってきたからこそ、身に降りかかる悪意はすぐに分かる」

 一瞬の殺意は鳴りを潜め、後は淡々と告げるベレトであったが、それが余裕にも見えたエーデルガルトはうすら寒いものを感じざるを得なかった。

「君は俺に対して何か後ろめたい気持があるようだが、本気で殺そうとしているのなら、君はここで忠告なんてせずに素直に喜んで受け取るべきだった」

「……っ!?」

 反論も何もできなかった。ここでの沈黙は肯定でしかない。例えバレていたとしてもしらを切り通さなければならない場面だ。しかしエーデルガルトは何の手も打てなかった。もしもベレトが危険な存在であるのなら消してしまうのも辞さない。それは確かにエーデルガルトが心の内に秘めていたものだ。

 そしてベレトの言う通り、本気で殺すつもりならここで忠告なぞせずに、友好的な顔を見せていた方が都合が良い。それが出来なかったのはエーデルガルトの中で、ベレトへの未練がまだ燻ぶっていたからに他ならない。己の内の迷いをよりにもよって当人から指摘された事は、エーデルガルトからすれば痛恨の極みであった。

 己の内側がすべてが読まれている事を理解したエーデルガルトに打てる手は最早ない。政治では素人のベレトであっても生死のかかる状況では格上過ぎた。情報からではなく気配で察してしまう相手に嘘はどうやったって通じない。これ以上の化かし合いに意味はない事を悟ったエーデルガルトは問いかけた。

「何故あなたはそんなに平然としていられるの? 腕に自信があるから? どうしてそんなに……強く在れるというの?」

 ベレトの強さはフォドラでは異質だ。単純に戦闘能力が高いという事じゃなく、彼の在り方は何物にも縛られない自然体そのもので、どこにも属さない強さはエーデルガルトにとって眩しいものであった。

「エーデルガルト、自信とは結局のところ経験の積み重ねだ。その全ては己の無力を自覚し、受け入れるところから始まる」

 ベレトの言葉は真っ裸にされたエーデルガルトの心にしみ込む。奇しくも無力な自分と言う言葉は彼女の過去の境遇そのものであった。

「受け入れてしまえば後は簡単、先に進むだけだ。それを愚直に続けていれば早々に動じなくなるさ」

 命を狙っていた事を知りつつも、なお真摯に接してくれ、道を示してくれるベレトの懐の広さにエーデルガルトは泣きたくなる。それでも耐えたのは、ここで泣いてしまったら全てを捨てて彼のところに行きたくなってしまう、そうエーデルガルト自身が確信しているからこその意地であった。

 

「……もしも」

 

 もしもクロードではなく、私の方が先に声をかけていたら、あなたは私を導いてくれたかしら? 

 

 その言葉はとうとう発せられる事はなかった。

 エーデルガルトにとって、それだけは言ってはいけない言葉であった。

 

 代わりにエーデルガルトは別の疑問をベレトにぶつけた。

「ところで金鹿の学級にも斧使いはいたわよね? ヒルダ……だったかしら? 何故彼女じゃなくて私ななのかしら?」

「試しに一度振ってみてくれないか?」

「え? ええ」

 言われるがままにエーデルガルトは鋼の斧を軽く一振りしてみる。

「あら?」

 意外なほどにしっくりきた事に驚いたエーデルガルトは、不思議そうに己の手の内にある鋼の斧を見返した。もしやと思い、今度は力を込めて思いっきり振ってみる。自分の想定と完全に合致したそれに思わず顔を綻ばせる。その一体感は斧が己の腕になったかと錯覚するほどであった。

 先ほどとは打って変わってどこか恍惚とした表情で斧を見るエーデルガルト、それを見たベレトは満足そうに頷いた。

「それが答えだ。もちろんヒルダの事も考えたが、その斧は君にピッタリなんだ。重さと言い、長さと言い、バランスと言い、この斧は面白いほど君を持ち手として指していた」

 我に返ったエーデルガルトはこほんと咳払いをすると、気恥ずかしさから年相応に頬を染めながらベレトに向き直る。

「まるで武器が私を選んだみたいな言い方ね」

「そう言っても良いかもな。傭兵を長年していたからこそ分かるが、自分と合う得物と出会えるのはかなり稀だ。だからこそ代えがたい物になる。この貴重な経験を他の学級だからと言って隠してしまうのは惜しいと思った」

 万人に公平であるのが実にベレトらしいとエーデルガルトは苦笑する。だが心の内ではちゃんと見ていてくれた事に対する喜びもあり、何ともちぐはぐな感情を持て余していた。していいようにやられるのは好きではないはずなのだが、今回だけはその限りではないと言うのだからどうしようもない。

「でもよく私に合うって分かったわね? 体格とかで分かるものなのかしら?」

「もちろんそれもあったが、一番はエーデルガルトとはたまに訓練場で打ち合った事があったからな。相手の事を知るには打ち合うのが一番良い」

「たったあれだけの事でそこまで把握できるなんて……正直恐怖しか感じないわ。でも……」

 ベレトの相手の実力を完全に把握する力、それは恐るべき能力だ。敵として想定したらこれほど嫌な力はない。でもそれは逆に言えば真っ当に評価してもらえる事でもある。皇帝だからではなく、ただのエーデルガルトとして……

 

 それは孤独である少女にとって

 

「この鋼の斧、大切に使わせてもらうわ」

 

 何よりも幸せな事であった。

 

 

 

 

ジェラルト父さんの憂鬱

 

 

 息子は笑わない。それはジェラルトにとって心配の種であった。

 笑いだけではない、表情らしい表情が存在しないのだ。生まれた時すら泣き声を上げなかった。だからと言って可愛くないというわけでは決してない。ジェラルトは息子であるベレトを愛していた。

 何せ最愛の人との間に生まれた子だ。嫌いであろうはずがない。それに表情こそないが、ベレトは良く話を聞く、とても良い子だ。しかし良い子である事こそがジェラルトにとってしこりとなっていた。

 要するに良い子過ぎないか? って事である。ジェラルトが子供だった頃は遠い昔だが、残った僅かな記憶では相当にやんちゃしていたような気がする。記憶の中にある子供の自分と比べて、ベレトは我儘を言わず、言われた事を淡々とこなす。

 

 これは子供として正しいのだろうか?

 

 ジェラルトはどうにもその事から頭が離れなかった。その悩みは深く、ペンを持っているものの、目の前にある日記は白紙のままだ。考え事で筆が進まないのも確かではあるが、日記が白紙である事にはちょっとした理由があった。

 ベレトには空いた時間を使って、仕事のノウハウだけでなく、ちゃんと教育も施しており、その甲斐もあってベレトは文字をちゃんと読める。つまりは日記の中身がベレトの目に触れてしまうと親としての悩みがバレてしまうのだ。

 日記は普段目に入らないところに隠してはいるが、ひょんな事から見つかる可能性はある。具体的に言えば酒飲み過ぎた日など。丸一日記憶が飛んでいたりするのでやらかす可能性はゼロではない。

 ジェラルトの自分に対する変な信用が、悩みの部分を日記に書く事を躊躇させていた。

「うーむ……」

 その結果、日課である日記はただの作業日報と言う、なんとも味気ないものになってしまった。これはこれで怪しくないかと首をひねっているとジェラルトの元へ小さな客がやってくる。

「父さん」

 それはもちろんジェラルトが愛してやまない息子であった。

「ベレトか」

「作業……終わった」

 今日のベレトに課していた仕事は干し肉づくりである。狩りで仕留めた得物の内臓を取り、それぞれの部位を切り分け、塩と調味料を塗って天日干しにする。その一連の作業をベレトは文句も言わずに淡々とやっていた。量としては相当あったはずだが、随分手際が良くなったものだとジェラルトは感心する。

「よし、よくやった。これから冬が来る。余った肉はできるだけ保存食にしておいた方が、後々楽になるだろう」

 ジェラルトはベレトの頭をぐりぐり撫でる。ベレトは相も変わらず無表情だが、決して嫌がる事はなく、それを許容していた。

 冬は物資の消費が一気に多くなるので多くの蓄えが必要である。だが傭兵団としての仕事は安定したものではない。変な話であるが世が平和であれば傭兵に用はないのだ。運悪く仕事にありつけない日々が続いた事は一度や二度じゃない。

 だからこそ冬前にジェラルト傭兵団は狩りを行い、もしもの時のために保存食を過剰なまでに作って備える。屈強な男共の胃を満たすのは本当に大変なのだ。

 そんな狩りも今日で十日目、その甲斐あって食料はかなり溜まってきており、ざっくりとした計算ではあるが、十分ではなかろうかとジェラルトは思い始めていた。

 時間に余裕ができたとなれば、彼が考えるのはどう息子とコミュニケーションを取るかだ。ジェラルトとしては、仲は決して悪くないと思っているが、ジェラルトの知るベレトはいつも何かを手伝っている姿で、子供らしい遊びをした事がない。今この時間に何かできないか、意を決したジェラルトは咳払いをするとベレトの方に両手を置き、精いっぱいの笑みを浮かべた。

「なあベレト、たまには……」

「父さん他に仕事ない?」

「んん?」

「去年のこと考えると、今日の作った分だとちょっと食料足りない。それを買い足すだけのお金も。皮は綺麗にはいだから多少のお金にはなると思うけど……」

「いや、父さんとしてはもう十分だと思うが……」

「でも前の冬は最初は良くとも最後の方は節約せざるを得なかった。それを考えるともうちょっと蓄えないと」

「ベレト、あの、一回仕事の事は忘れてだな?」

「駄目だよ父さん。父さんの言った通り、冬越えの準備はしっかりしなきゃ」

 正論と言う最強が相手とあっては、いくら『壊刃』ジェラルトはぐうの音も出ない。息子がしっかり者過ぎて泣きそうであった。色んな意味で。

 ジェラルトは良くも悪くも大雑把だ。日記を書くマメな点はあるし、戦場では恐ろしく頭が切れ、戦士としても将としても一級品だが、その反動と言えばいいのか、プライベートだとフォドラの各地の酒場にツケをため込んでいたり、ある種の怠け者のようなところもある。

 それは傭兵団の皆も似たようなもので、腕は立つと自負してこそいるが、計画性がないというか、金銭感覚などちょっと怪しい。だから正直ベレトが計画的にこなしてくれるのは凄く助かるのであるが、戦いではともかくとして、それ以外の場面で、父としての威厳が失われていっている事に、ジェラルトは危機感を覚えざるを得ない。

 息子に団の運営を半分、もしくはそれ以上頼っている今の状況、亡き妻にどう言い訳すればいいのか。やばいと気づいて以来、こうしてジェラルトは父としての責務を果たすため、何度か息子を甘やかそうとしているのだが、結局今日も敗北するのであった。

 

 

「俺は親失格なのだろうか……」

「団長またですか……」

「ベレトはまだ8歳なんだぞ? 遊びたい盛りじゃないか。確かにこの厳しい世で生きていくために色々と仕込んではいる。だがな? 言う事を聞いてくれるのはありがたいが、あいつは文句すら言わない。それは子供として……」

 ジェラルトは一度こうなったら止められない。彼の元に勤めて20年となるベテラン団員は知っていた。この男はかなり面倒くさいと。

 思い返すはジェラルトが今は亡き妻と交際する前の時の事、このジェラルトと言う男、見た目性格共に豪快そのものなのに内々の事になるとどうして、途端にうじうじとし始める。はたから見ればゴールイン待ったなしなのに、そこから進まないのはすっごくイライラさせられた。

 『俺は彼女にどう思われてるんだろう?』と聞かれた時、彼は軽く殺意を覚えた。あんな良い娘に好かれておいて、何て贅沢な悩みか。告白まで至らせるのに団員達がどれ程苦労したか。

 そしてその面倒臭さは今度は息子に対して発揮されている。確かにベレトは表情乏しく、笑ったりしない。だが気が付くとジェラルトの後ろをついて回っている。それこそ親鳥を追う雛のように。子供は根が素直だ。嫌いだったらそもそも近づいたりしないだろう。

 ジェラルトの後ろにびったりのベレトの様子は実に微笑ましく、周りからすればどう見たって、親子関係は良好以外の何物でもない。

 正直もう勝手に悩んでろ、と思わないでもないが、長年の付き合いとなる団員達の何人かは、何故ジェラルトが己の幸せを素直に享受出来ないか、その理由を知っている。今一緒に酒を飲んでいる団員もその一人だ。

 ジェラルト本人はバレていないと思っているが、実は酒の席でポロっと漏らした事があるのだ。ちょうど彼の妻が亡くなり、ベレトを連れて教団から抜け出したときの頃だ。心身共に弱っていたのだろう。年を取ったように見えないジェラルトを不思議に思っていた団員達であったが、長年抱えていた疑問の答えは想像以上であった。

 成り行きでセイロス正教会の最高責任者であるレアを助けた際、ジェラルトは大怪我を負ったとの事だが、その時にレアから血を与えられたと言う。傷は見る見るうちに塞がり、命の危険もあったはずの怪我は完全に癒えたが、血の効果はそれだけでは収まらなかった。

 突如与えられた永遠に近い寿命、長寿による孤独に苛まれている事を知った団員だったが、だからと言って何かしてあげられるわけでもなかった。

 たまたまその日に酒場に居合わせて真実を知った団員達は、ジェラルトの抱える秘密を広げる事はせず、そのメンバー間だけで秘密を共有した。知った当初こそ何とかできないか色々考えもしたが、できるのは結局こうして愚痴を聞く事と、秘密を守り通す事くらいだった。

 普通じゃない存在になったからなのか、ジェラルトにとって『普通の幸せ』は今後得る事の出来ない理想であり、さながら呪いのように彼を縛っている。

「もっと肩の力を抜いたらどうですか。気持は分からなくもないですが、親ってのは完璧を目指すものじゃないですぜ」

「それはそうなんだが……」

「それに俺は『普通』が必ずしも幸せだとは思いませんな」

 ジェラルト傭兵団の行動範囲は広く、フォドラの先々で依頼を受ける事から、彼らが行った街、村は数多くあり、そこで様々な形の親子を見てきている。団員が思い出すのは親のこうあるべきに振り回される子供の姿だ。それは習い事の多い貴族だけでなく、庶民にだって存在する。

 そこに共通するのは子供の意思を考えない事、親の理想は時として子供を不幸にする。いくら『良い事』であっても、子供が納得しない限りはそれは子供にとって悪い事だ。

 それを基準に考えると、ベレトが本気で仕事を嫌がっているのなら、今の状況は問題ありとなるだろう。でも今のベレトは働く事を喜びとしている。

 子供は大人より直観力に優れる。傭兵団というものの運営が如何に難しいか、ベレトはすでに知っている。子供が気ままに遊べるのは無知であるからで、知ってさえいればどうにかしようと思うのは当然なのだ。そこに大人だから、子供だからと言う線引きはない。

 大人の都合を押し付けるのも問題だが、一方で『子供は子供らしく』も結局は押し付けなのである。

「団長、団長は俺にとって大先輩だが、家族を持ったのは俺が先となります。そんな俺からアドバイスするとすれば……」

「すれば?」

「親子の問題の答えは一人で探すものじゃない。家族全員で共有するものですぜ。無論それは子供も一緒に、って意味です」

「だが……」

「団長のそれはベレトの坊やを事を思っているようで、その実ないがしろにしていまっせ。子供は上から押さえつけても納得しません。団長はベレトの坊やが子供らしくない事を悩んでますが、子供は子供である以前に一人の人間です」

「うむぅ」

 親だけで悩むから行き詰るのだ。第一子の時にありがちな問題だが、これにはかの壊刃であってもどうにもならず、他の親達と一緒だったらしい。何とも言えないようなジェラルトの顔は傑作であった。

「団長もなんだかんだで『人の子』って事ですな」

「……俺だって母親の股から生まれてきたんだ。お前は俺を何だと思ってる?」

 団員は知っていた。ジェラルトが一瞬息を呑んだのを。普通でない事を悩む彼の苦悩を普通である者が取り除く事はできない。だからこそ茶化した言い方くらいがちょうど良い。少なくとも子の事で悩む親の姿に特別さはどこにもない。

 団員にとって如何に寿命が長かろうが、ジェラルトはただの人だ。ずぼらで繊細で、でも悪魔のように強くて男気のある我らが団長だ。ジェラルト本人がどう思っていようが、それが団員の中での唯一の真実だ。

「しかしお前に教えられるようになるとはなぁ。時の流れとは早いもんだ」

「何だかんだで20年経ちましたからね」

「もうそんなになるか……」

 少しは調子が戻ってきた団長に安堵の笑みを浮かべると、団員は昔の事を思い返していた。それは今からちょうど一年前くらいの事、珍しくジェラルトが高熱で倒れた事がある。日頃の疲れが出たのか、はたまた飲み過ぎたのか、とにかく寝たっきりの状態にまでなった事は過去20年の中で初めてだった。

 その時付きっきりだったのがベレトである。普通子供は親が風邪をひいた時、最初こそ心配するが、状況に慣れてしまうとどこかに遊びに行ってしまうものだ。しかし当のベレトは食事と用を足すときだけ離れはしたが、それ以外の時間は基本的にジェラルトのそばでじっとしていた。

 その事実を知るからこそ団員は思う。やっぱり団長は贅沢な悩みを抱えていると。ここまで親を慕ってくれる子供なんて滅多にいない。ジェラルトは間違いなく妻に愛されていたし、子にも愛されている。彼の悩みはすべて杞憂なのだ。

 ベレトは誰に言われたわけでもなく、自分の意思で行動し、父の役に立ちたいと思っている。それに感謝こそすれ、不安に思う必要なんて一切ない。

 ただ団員が思うのは、これも他人だから分かるのかもしれないという事。今でこそ客観的に見れるが、団員の方も第一子の時てんやわんやだった記憶がある。

「案外幸せって本人は気づかないのかもしれないなぁ」

 今度はどうやってベレトと本音で話すか、方法を考えている我らが団長を見て、団員はしみじみと呟いた。

 

 

 

 

 

その頃のコーデリア家 夜明け編

 

 

 かつては有力貴族として栄華を誇っていたコーデリア伯爵家、今やその栄光は見る影もない。多くいた使用人達の大半はいなくなり、どこもかしくも閑散としている。美しかった庭園は手入れが行き届いておらず荒れ果てていた。永遠と続くかのような空虚さ、それはさながらコーデリア伯の心を映しているようであった。

 彼は何も悪くなかった。彼がした事と言えばフリュム家の援助をした。過去より続くコーデリア家の同盟関係の者を助けた、それだけである。だがたったそれだけの事がコーデリア伯爵家を崩壊へと導いた。

 あろう事か、フリュム家が帝国からの独立をかけて反乱を起こしたのだ。コーデリア家は反乱には加担してはいなかったが、援助していた事実から繋がりを疑われてしまった。コーデリア伯は必死に身の潔白を訴えたが、責任問題から逃げられる事ができず、最後には監視と言う名目で実権のすべてを奪われてしまった。

 権力を奪われ頭が真っ白になったコーデリア伯であったが、それでも良かったのだ。形だけとはいえ貴族のままでいられたし、命までは取られはしなかったのだから。だが真の地獄はここからであった。

 監視として帝国からやってきた集団は何故か怪しげな魔導士達であった。コーデリア伯は嫌な予感をひしひしと感じていたが、それが現実となったのは彼らがやってきて3日程経った後の事であった。

 その怪しい集団はあろう事かコーデリア家にいる人を利用して実験を始めたのだった。それには使用人だけでなく、コーデリア伯の実子、リシテアすら含まれた。

 彼らの求めたのは金や名誉ではなく実験材料、普通なら到底許されない行為であったが、敗者であるコーデリア伯に正義を訴える力はない。結局コーデリア伯は己の無力感に苛まれながら、死にゆく者達を見る事しか許されなかった。

 幸いだったのは幼いリシテアが生き延びた事。コーデリア家に仕えた故に死んでしまった使用人達に申し訳ない気持ちはあったが、それでもリシテアが生き残ってくれたのはコーデリア夫妻にとって救いであった。

 だが現実は非情で、わずかな希望すら許さなかった。

 唯一の生き残りであったリシテアであったが、その対価は大きく、両親と同じであった髪は色を失い、寿命の多くを失っていた。淡々と結果のみを語る魔術師に対し、コーデリア伯は首を絞め殺してやりたかったが、相手はこれでも大義名分を持つ帝国の使者であり、一方でこちらはただの裏切り者、一度付いたレッテルはどこまでもついて回り、何もできなかったコーデリア伯の心にはただただ絶望だけが広がった。

 その後、実験対象がこれ以上いなかった事から、魔術師達はコーデリア家から興味を失い、やっとの事で解放されたわけだが、自由を得たとしても壊れてしまったものは元には戻らない。

 そこから続く失意の日々、妻も生き残った娘も笑顔を失い、さながら死霊のようだった。コーデリア伯が元気づけようにも、己の地位こそが娘を地獄へ追いやった事実は拭いされず、言葉をかける事すらできない。

 もうこのまま終わるのだろうか、心の半分以上が諦めに支配された時、ふと娘であるリシテアが言った。ガルグ=マグ士官学校に通いたいと。

 初めこそ前向きな決意と思いコーデリア伯は喜んだが、そこにあるのは家を畳む準備をしたいという悲しい決意だった。そんな後ろ向きな理由でも後押ししたのは、例え後ろ向きな理由であっても、やりたい事が見つかったリシテアを尊重したい故の事であった。

 ひょっとしたら家を畳む時間すら与えてもらえず、学生生活中に命を落としてしまうかもしれない。突如の発作で死んでしまった者達を見てきたコーデリア夫妻にとって、娘が入学のために家を出る日は今生の別れになるかもしれない悲しい日だった。

 それでもコーデリア夫妻は涙をこらえ精いっぱいの笑顔で娘を送り出した。

 新たな出会いがもしかしららリシテアを救ってくれるかもしれない、という一抹の望みもあった。他力本願はなはだしいが、今のコーデリア家に救いの道はない。

 しかしながら外に救いを求めても、そもそもリシテア本人は体の事を隠しているし、ただ見て全てを察して欲しいというのは都合が良すぎる話だ。

 さらに悲しくなったのは、リシテアがとても学生生活を楽しんでいるように見えなかった事であった。リシテアは律儀にコーデリア夫妻に手紙を度々送っていたが、その内容は勉強の事ばかりで、他人がどこにもいなかった。

 つまりそれはリシテアは誰も友人を作らず、淡々と一人で勉学に励んでいるという事。士官学校は確かに遊びの場ではないが、それでも何かしら楽しい事はあるべきだ。ただ勉学のみをし、一人孤独にひっそりと終活をしているリシテアに、コーデリア夫婦は余計に失ったものの大きさを思い知らされた。

 思い切って外へ行ってみたとしてもどこにも道はなく、暗黒のみが広がっている。そう錯覚するほどにコーデリア家はどん底にいた。

 その日々に異変が起きたのは何時だったか。リシテアからの手紙に初めて他人が出てきた。『担任が変わった』、たったそれだけの内容だが、コーデリア伯は新鮮に感じられた。コーデリア伯はその日、今もなお絶望の中にいるにも拘らず、不思議と穏やかな気持ちで一日を終える事が出来た。

 何せ地獄の日々が始まってからの、初めて前向きな話だ。他人に興味を持つ、たったそれだけの事が救いになるほど、コーデリア家は幸せに飢えていた。

 リシテアの手紙は間違いなく吉報と言っても良かったが、だからといってそこまで期待していたわけではない。根本にある寿命の件は解決していない事にはリシテアに普通の学生生活は訪れない。そうコーデリア夫妻は考えていた。しかし、

 

 

『先生の教えてくれる戦術はすごいんです。実戦的と言うか。優雅に美しく、魔法は威力さえ上がればと思っていましたが、そもそも当てられなかったら宝のもち腐れというのは盲点でした。生きた知識とでも言いますか、本で学べない事を教えてくれるのは新鮮です』

 

 

『野菜ってこんなに美味しいモノなんですね。初めて知りました。それになんだか体調も良いんです。健康は食が基本らしいのですが、身を持って体感してみると凄いなって思います。何個かレシピを教えてもらったので、コック長に頼んで試してみてください。びっくりしますよ』

 

 

『今度剣を初めて見る事にしました。先生の授業を受けてから、どう魔法を当てようか考えていたのですが、接近戦する人達の動きを自分で覚えるのが近道かなと思い至った次第です。でも剣というものはとても重いんですね。皆軽々と振っているから、軽い物だと勘違いしていました。ちなみに今私は木刀を振ってます』

 

 

 あの日を境にリシテアの手紙の内容が明らかに変わった。淡々と事務的な報告のみだった手紙が、今や興奮冷めやらぬといった感じで、『楽しい』『面白い』と言う言葉がポンポンと飛び出す。

 初めこそ両親を気遣って書いたものかと勘繰ったが、文章の至る所から放たれる喜びは本物で、そこに嘘偽りは一切感じられなかった。文字だけとはいえ、長い間見られなかった活き活きとしている娘にコーデリア夫妻は肩を抱き合い、歓喜の涙を流した。

 それからコーデリア夫妻は手紙を今か今かと楽しみに待つようになった。最近では『先生』だけじゃなく、同じ学級の生徒の名前もちょくちょく上がるようになり、リシテアに友人が出来たと舞い上がったのは記憶に新しい。

 そんなコーデリア夫妻の喜びは使用人達にも伝染する。コーデリア家になおも残っている使用人達はコーデリア夫妻とほぼ同年代の者が多い。それは若者が皆実験の犠牲者になってしまったからである。

 使用人の中には代々のコーデリア家に仕えてきた家系もあり、それこそ子供と一緒に勤めていたという者達も少なからずいる。彼らはコーデリア家に仕えていたからこそ子供を失ったわけであるが、それでもコーデリア夫妻を恨む様な事はせず、むしろリシテアが元気になった事を喜んでくれた。

 あまりにもの悪意のなさにかつてコーデリア夫妻は使用人達に聞いた事がある。何故全てを失った私達に尽くしてくれるのかと。何故子供達を守る事が出来なかった無能者に付き従うのかと。

 使用人達の答えは一様に同じであった。もし罪を問うのであれば、それはコーデリア伯の罪だけではなく、コーデリア家の大人全員の罪であると。

 確かにあの魔術師達がやってきた時、コーデリア伯は何もできなかった。それについて使用人達の方で思う事は確かにあった。だが何もできなかったのは使用人達も一緒だったのだ。

 一度でもたてつけばコーデリア家は明確な反逆者と見なされて皆殺しにされる。迂闊に手を出せば子供達だけでなく、全員が処刑されていたかもしれない。故にあの時コーデリア家の大人達は誰もが等しく、子供達が実験を生き残るのを祈る事しかできなかった。

 それは言い換えれば子供達を犠牲にして大人達が生き残ったと言っても良い。だからこそコーデリア家の使用人達は自分達に夫妻を責める権利はないと項垂れた。

 生き残ってくれたリシテアはコーデリア夫妻だけでなく、使用人達にとっても最後の希望であった。リシテアがいてくれるからこそ大人達は贖罪の機会をまだ持てる。自分達の子供は決して帰ってこないけど、リシテアが幸せになってくれたなら失った何かを取り返せるのでは、見殺しにしてしまった子供達に顔向けできるのでは、そんな淡い思いがあった。

 それに使用人達はリシテアと言う少女を昔から好ましく思っていた。リシテアは昔から実力主義のような部分があったが、それゆえ貴族、平民の先入観がなく誰に対しても対等であった。その平等さは使用人達にとっても気持よく、また子供達もリシテアに認められようと躍起になるので、放っておいても勉強してくれるというありがたさ。

 そして何よりあの甘いもの食べるときに表情である。あの愛くるしさにやられてしまったものも多い。

 そんなリシテアだからこそ使用人達は彼女に対して親愛を感じていた。そう、リシテアはただの仕える主の娘じゃなく、使用人達にとってもまぎれもない身内だったのだ。

 きっとそれは今は亡き子供達も一緒である。特にメイド長の娘は、リシテアと年齢が近いせいもあって姉妹かのように仲が良かった。実際に一度どちらが姉かと争っていた事もあった程だ。

 メイド長の脳裏には今も楽しそうに語らう二人が焼き付いていた。だからこそリシテアには幸せになってもらいたいというのは、メイド長にとって心からの願いであった。

 

 

 リシテアから手紙が来た当初は、余りにも寂しいその内容をコーデリア夫妻のみが抱えていた。リシテアの無事を安堵するとともに、彼女の抱える空虚さを見せつけられる。大人達の罪を再度自覚させられる手紙は、ある種の拷問のようでもあった。

 そんな手紙の内容が変わり始めたらしい事を、初めに察したのはメイド長であった。これは別にメイド長が特別鋭かったとか、そういう訳ではない。

 ただいつも夫妻に手紙を手渡していたのが彼女だっただけの事だ。何か変化があったらしい事については、誰が見ても分かったであろう。何せコーデリア夫妻が笑っていたのだから。何時も泣きそうな顔をして読んでいたのに、それが急に幸せそうな表情に変わったら誰もが疑問を持って当然だ。

 そして今度は夫妻からリシテアの現状を教えられたメイド長が、掃除中に思わず笑みを浮かべ、それを不審に思った周りのメイド達が、またリシテアの手紙の事を知って大騒ぎとなる。

 ここから事態は一気に加速する。知ったからにはじっとしてられないと、メイド達はコーデリア家を駆け回り、コック、衛兵、庭師と次々と幸福は伝染していった。こうして彼女の吉報は瞬く間にコーデリア家全体に広がった。

 今では手紙が届くと、内容を知りたいが先行してしまい、皆の仕事が進まなくなるので、コーデリア夫妻は使用人をすべて集め、手紙の内容を大々的に読み上げるようになっている。そうして活力を得た使用人達は各々の持ち場へと帰っていくのだ。

 ここまでくるともはや一大イベントのようで、手紙が来た日は毎回最後に書いてある野菜レシピを元にコック長が腕を振るい、学校でリシテアが食べているであろうものと、同じものを皆で食べる事で祝うのが日課となった。

 生きる活力を取り戻したコーデリア家はここに復活した。かつて荒れに荒れ果てていた庭園は今のコーデリア家にもう存在しない。

 

 

 だがコーデリア伯はここで満足しなかった。満足なぞ出来る訳がない。

 楽しい思い出が作れているのなら学校に行った価値は大いにある。しかし寿命の問題だけは未解決のままだ。普通の寿命を望む事は欲張りなのか、せっかくどん底から這い上がり、楽しい事を見つけ、先へと進み始めた娘をもっと幸せにしたい。

 リシテアが元気になった事で活力を取り戻したコーデリア夫妻はとうとう決心した。

 

 娘の治療法を探し出すと。

 

 魔術師どもは長く生きられないと言ったが、コーデリア夫妻はそれを疑う事すらしなかった。リシテア以外の若者が全員死んだ事実が、絶対的死を連想させ、調べるという気力を根こそぎ奪った。だがそれはとても愚かな事だ。

 魔術師どもは別に娘の生存を望んでいない。治療法はないと言ったが、そもそも助けようともしていない奴らの言葉を信じる道理はない。リシテアの体の問題はまさに未知の領域、治療法を探す道は険しく雲を掴むような話であるのは分かっている。

 

 それでもコーデリア夫妻は決めた。娘の幸せのために、最後のその時まで諦めないで探し続ける、と。

 

 さあ、やるぞ!

 

 それはコーデリア伯が庭で使用人達を集め、リシテアの寿命問題を解決すると宣言した時の事だった。使用人達の歓声が飛び交う中、控えめで遠慮がちな声が聞こえた。

「あ、あの……手紙届きましたけど……」

 屋敷内に誰もいなかった事から、庭園まで探しに来た配達員である。彼は今日から仕事を始めた新人であったが、何ともタイミングが悪い男であった。

「「「「手紙!!」」」」

「ひぃぃ!!」

 一斉に手紙に視線を向けるコーデリア家の面々に思わず配達員は悲鳴を上げた。何せ今のコーデリア家において、手紙は幸福の象徴で、最も価値のあるものとなっている。面々の睨みつけるような視線が、一か所に集中するのは普通に怖い。

 妙な緊張の中、真っ先に動いたのはメイド長であった。さっと顔を営業用スマイルに切り替えると、熟練の話術で配達員の恐怖を拭い去り、流れる動作で署名をし、手紙を受け取る。最後のお見送りは丁重に。

 最後のお見送りするまで完璧にこなすのが真のメイドです。

 この間実に30秒、とりわけ急いで動いたわけでないが、10歳に満たないころからメイドをしていた彼女だからこそできる、優雅に、丁寧に、そして無駄なく、の極意がそこにあった。

 手紙を受け取ったコーデリア伯はまずは差出人を確認する。それは紛れもなくリシテアからのものであり、期待する夫人に強く頷く。コーデリア伯は丁寧に包装を開け、徐に中身を開く。そして、

 

「…………うむ」

 

 卒倒した。

 

「あなたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」

 

 慌てて駆け寄るコーデリア夫人、倒れた夫を支え起こしつつも、原因となったであろう手紙を手に取る。何か悪い事でも書かれていたのか、夫人は中身を確認しようとして、

「……………」

「……奥様?」

 

「あふぅ……」

 

 これまた意識を失った。

 

「お、奥様ぁぁぁ!! 一体何が……な、な、な何ですってぇぇぇぇぇぇ!!!!?」

 

 今度はメイド長が絶叫の後、その場にへたり込む。意識こそ保っているものの呆然自失状態だ。その瞳にはうっすら涙が浮かんでいる。さながらミイラ取りがミイラになる光景に現場は大混乱である。

 

「あ、あなた達、早く旦那様と奥様、メイド長を寝室へ……うそぉぉぉぉぉぉぉ!? これって本当? やった! やったよ!!」

 

「皆一体どうしちまったんだ? ま、まさか何かしらの呪い? お、これって、お、おおぉ……そうか、そういう事か!! うぉぉぉぉぉぉぉぉん!!!」

 

 その後も、とある者は急に踊り出したり、とある者は崩れ落ちてむせび泣いたり、カオスな状況は続き、この事は後にコーデリア家きっての珍事として記録される事となった。

 

 全ての引き金となった手紙、そこにはこう書かれていた。

 

 

 

 

 寿命の件、なんとかなりました。   リシテアより

 

 

 

 

 

 




 書いていて思ったのはやっぱりエーデルガルトとリシテアって似ているなぁって部分。正直この二人の関係を書きたいからこそ、このリシテアちゃんを書き始めた部分ってあります。
 ジェラルトパパンに関しては、本編の例の日記の事とか、酒場での息子(娘)自慢エピソードなど、裏の部分が相当に面白く、一見厳しそうに見えるけど、この人実は相当な親馬鹿だなとイメージが固まってああなりましたw
 今回書いていて一番楽しかったのはコーデリア家でしょうか? あれだけはっちゃけると決めていたので、前半がどれほど鬱屈とした内容でも我慢できました。子供が不治の病から完治した親の喜びはもう言葉に表せないほど凄いでしょうからね。


 今回もお読みいただきありがとうございました!!

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