聖遺物の守護者っていうありふれない職業で無敵。 作:気まぐれな富士山
「数万の魔物の軍勢ね··········」
「それだけの量なら、この街は地図から消えることになるな。」
ティオの話とハジメが感知した大量の魔物。
「俺は降りる。さっさとフューレンにウィルを送り込んで、先に進む。」
「な、何を言っているのですか?ハジメ殿。」
ハジメは、保護対象であるウィル・クデタをフューレンに送り込むことが自分にとっての最優先事項。
しかし、当の本人が嫌がっているようだ。
「こんな状況で、自分だけ先に逃げることは出来ません!私にも出来ることがあるはず。ハジメ殿も··········」
ハジメ殿も協力して下さい、と続けようとする。
「はっきり言わないとわからないのか?俺の仕事は··········」
「止めとけハジメ。コイツに伝えても無駄だ。」
「··········お前は、ここに残るのか?」
「まー、先生に頼まれたからな。お前の仲間になった以上、お前の意見を最優先にするが、俺がいなくてもお前はどうこうするだろうさ··········兎も角俺は、愛子先生に恩を返してからフューレンに向かう。お前がどうするかは、肯定するよ。」
「そうか··········よし、ならとっとと向かうぞ。」
「だが、この人が許すかな?」
「南雲くん!··········君なら、魔物の大群をどうにかできますか?··········いえ、できますよね?」
愛子先生だ。
「おいおい、俺だって万能じゃないんだ。四万超えの軍勢相手にどうこうなんて··········」
「でも山にいた時、こんな起伏の激しい上に障害物だらけのところで殲滅戦なんてやりづらくてしょうがない、と言っていました。それは、平原なら可能、ということですよね?」
「ヒュー!よく覚えてるな!流石社会の先生だ!」
「シンジ、やめろ。··········で、俺に何を求めるか、言ってもらおうか。」
愛子先生は、至って真剣な表情で頼みを伝えた。
「南雲くん。どうか力をかして貰えませんか?このままでは、この美しい街が消えてしまうだけでなく、多くの人々の命が失われることになります。」
「··········意外だな。あんたは生徒のことが最優先だったと思っていた。色々活動しているのも、それが結局、少しでも早く帰還できる可能性に繋がっているからじゃなかったのか?なのに、見ず知らずの人々のために死地に赴けと?そんな意思もないのに?まるで、戦争に駆り立てる協会の連中みたいだな?」
アイツには、精一杯の皮肉だった。
どれだけ酷い事を受けようが、根っこは大して変わらない。
急に変わることが出来るなら、人間苦労しないさ。
「あんなに穏やかだった君が、そんな風になるには、きっと想像を絶する経験をしてきたのだと思います。」
それでも聞いて欲しいと、先生は語り始めた。
それは、先生としての本気の説教だった。
「幸せを望むなら、出来る範囲でいいから··········他者を思いやる気持ちを忘れないで下さい。元々君が持っていた大切で尊いそれを··········捨てないでください。」
ハジメが今まで体験したことを、肩代わりし、共感するような発言だ。
切り捨てるのは簡単だ。
しかし、千の手も万の言葉も、受け取れば『経験』となる。
ハジメがユエを見つめる。
2人にしかわからないものがあるのだろう。
ハジメにとって、牢獄であり地獄であるこの世界に指した一筋の光、ユエ。
アイツにも守りたいものが出来たのだ。
アイツが求めているものは、味方なのだ。
「···············先生は、この先何があっても俺の先生か?」
「当然です。先生の役目は、生徒がより良い判断が出来るようサポートすることです。」
ハジメは何かを悟ったかのように先生を見つめ、踵を返し出入口へ向かう。
「な、南雲くん?」
「···············流石に数万の大群を相手取るなら、こっちでも準備したい。話し合いはそっちでやってくれ。」
「てな訳だ。頼んだぜ、先生。」
「南雲くん!西田くん!」
先生の顔に、喜びはなかった。
またしても生徒を戦地に送らなければならない自分に無力感を感じていた。
しかし、ハジメに伝えたことは紛れもない本心であり、それは先生の愛だった。
「全く、惚れるじゃねぇか相棒!」
「··········いじるなよ。キモイぞ。」
「俺のどこがキモイってんだ!?」
「そーゆーとこだよ。ったく··········ハハ、ハハハハ!」
「プッ、フハハ、ハァーッハッハッハ!!」
何故か俺たちは高らかに笑った。
友達として、相棒として。
大きな声で楽しく笑った。
「さて、そうとなれば用意しなくちゃな。オートボット集結だ!」
『戦いか。よし、任せてくれ。』
「ありがとうオプティマス。ついでだ、サイドスワイプ達も呼ぼう。レッカーズもな。」
戦いはもうすぐだ。
早急に準備をしなくちゃならない。
「まあ、俺達なら何とかなるさ。弾薬は任せとけ。」
「サンキュ、あーそれ取ってくれ。」
「急に2人とも作業に入り出しましたね··········」
「正に、阿吽の呼吸。」
「妾、かなり重要参考人の筈なのに··········これがっ、放置プレイというやつなのじゃっ··········ああっ、流石ご主人様なのじゃあ··········」
「うるさいぞ変態。精々魔力温存しとけ!」
「明日は早朝からだからな。一気にブチかまして短期決戦だ。3人とも、先に休んでくれ。」
「その前に、今日のハジメ。」カプッ
「おいユエ、作業中だから危ないぞ。」
「私はすぐ再生する。だから大丈夫。」
「お前の顔に傷がついちゃいけないだろ。」
「こんのクソカップルゥ·····羨ましい!」
「思いっきり本音で喋りましたね··········でも、ユエさんの待遇は羨ましいですぅ。」
「妾は本気で無視されている··········ああっ、たまらないのじゃ〜!」
戦闘準備の夜はふけていく··········
青春してるなぁ(遠い目)
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